2020年10月22日

◆ MRJ の開発中止が決定

 MRJ の開発中止が決定した。「凍結」という言葉を使っているが、このまま終結するはずだ。

 ──

 記事は下記。
 三菱重工業が国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の開発費や人員を大幅に削減し、事業を事実上凍結する方向で最終調整していることが22日、複数の関係者への取材で分かった。新型コロナウイルスの流行が直撃し、納入先の航空会社の需要回復が当面見込めないと判断した。
 30日に発表する中期経営計画で詳細を説明する。今後は航空需要の動向を見ながら、事業を再開させるかどうかを検討するとみられる。
( → 三菱国産ジェット、事実上凍結へ 開発費巨額に、コロナで需要消滅 | 共同通信

 「事業を再開させるか」というが、再開したところで、売れる見込みはないのだから、再開する可能性は限りなく小さいと見ていいだろう。
 というわけで、もはや「終結」宣言が出たのも同然だ。

 ──

 MRJ については、本サイトは最初から否定的だった。(最初から開発するべきでなかった。)
  → 三菱の小型ジェット機 MRJ: Open ブログ

 2015年には、失敗を予想した。(この時点で撤退するべきだった。)
  → MRJ は失敗するだろう: Open ブログ

 2017年には、失敗は確実だと判定した。(この時点ではただちに撤退しなくてはならなかった。)
  → MRJ に死亡宣告: Open ブログ

 その後、3年間も無駄に事業を継続させて、赤字を垂れ流し、その末にようやく「中止」「凍結」と決めたわけだ。最悪と言えよう。

 本サイトの言うことを聞いておけば良かったのに。



 【 関連項目 】

 (i)
 MRJ について、サイト内検索。
  → https://bit.ly/31z5yYT

 (ii)
 トヨタとホンダは、燃料電池車を開発し続けているが、見込みがないのだから撤退するべきだ、という話をしたこともある。
  → 燃料電池の死 6: Open ブログ

 お先の見通しの真っ暗な道を、いつまでも進む。止まることも、引き返すこともできない。トヨタとホンダは、三菱航空機にそっくりだね。



 【 追記 】

 (1)
 経営的に見通しが暗いだけでなく、技術的にも問題点があるそうだ。
 Aviation Wireの取材では、設計変更を反映した最新の飛行試験10号機(登録記号JA26MJ)の完成度が低く、米国へ持ち込むレベルに達していないことがわかった。
( → 三菱スペースジェット、開発を事実上凍結へ 需要蒸発と完成度不足

 だとしたら、再開の可能性はゼロ同然だと見ていいだろう。そもそも、再開したところで、この飛行機が完成する見通しは低い。今になってもこのレベルなんだから。
 なお、当初の予定では、完成の予定は 2013年だった。
 当初計画では2013年に量産初号機が納入される予定であった。
( → Mitsubishi SpaceJet - Wikipedia


 (2)
 失敗の根源は、もともと技術がなかったことであるようだ。次の記事があある。
 筆者が今から7年前の2012年にある識者を取材していたとき、たまたま「MRJ」の話題になり、その識者は「MRJは絶対に成功しない」と断言した。
 「複雑・巨大なシステムの全体を設計することと、全体設計に沿ってその一部を設計することは別物であり、部分設計をいくら積み重ねても全体設計はできない」となる。航空機に当てはめれば、サプライヤーとしての実績が豊富でも、それだけで航空機を一から設計できるわけではないということになるだろうか。
 全体設計が部分設計と比べて大変なのは、「なぜそう設計するのか」という明確な根拠を求められるからだ。サプライヤーとして航空機メーカーに言われた通りに部分を設計していればよかったときとは異なり、自分たちの頭で考えなければならないことが多いのだ。
( → 7年前に聞いた「MRJは絶対に成功しない」という指摘 | 日経クロステック(xTECH)

 (3)
 もともと能力がないのに、なぜ三菱はこんな無謀なことをしたのか? その理由は、政府が産業政策で開発を推進したからだ。
 MRJ計画の発端は、2002年に経済産業省が発表した30席から50席クラスの小型ジェット機開発案。
 MRJ計画では、……開発期間は2003年度から5年間、開発費は500億円を予定し、その半分を国が補助するとした。
 この提案にいち早く注目した三菱重工業(以下「三菱」と略)は、同年秋には10人程度の調査チームをアメリカに派遣し、市場調査を開始した。
 2003年4月7日、経済産業省は……4月末を締め切りとして希望者を募集した。計画案を提出したのは三菱のみ。
( → Mitsubishi SpaceJet - Wikipedia

 政府が「この指止まれ」と促した。そこに飛びついた三菱は、軽率ではあったが、元はといえば、政府の甘い見通しが根源だったと言えるだろう。
 国の産業政策のせいで、三菱は大損を食らって、倒産の危機に陥ったわけだ。
 


 【 後日記 】
 23日になると、三菱が公式に、「凍結は決定していない」と否定的見解を出した。といっても、元の記事が「 30日に決定」ということなのだから、まだ決定していないのは当り前だ。30日に決定するのだろう。
 一方、「凍結ではなく事業縮小・延期だけだ」とも言っている。といっても、この先でまともに事業化できる見込みはないのだから、「細々と生きながらえる」ということぐらいの意味だろう。
 つまり、「5年後に事業化を確約」というような話はまったく成立していなくて、「いつとはわからないが、ずっと遠い先の事業化を夢見て、少しずつ事業を継続していく」ということらしい。
 実はこれが最善かもしれない。現実には飛行機がまともに飛べるレベルだとすれば、あとは事業許可の事務手続きをするだけだ、となるからだ。そのための費用はあまり高くない。10年ぐらい先の事業化を夢見ながら、少しずつ開発を続ける、ということだろう。
 ただし、それで事業化が成功する見込みはまったくない。最善の場合でも、「これまでの投資の 7000億円のうち、2000億円を回収する」というぐらいのことであって、莫大な損失を出すことは避けがたい。
 ライバルはエアバスに吸収されたボンバルディアと、ボーイングに吸収されかかったエンブラエル。後者は、最後の土壇場になって、ボーイングが買収をキャンセルしたそうだ。コロナ危機のせいらしい。
  → ボーイング、エンブラエルとの小型商用機事業の統合を断念(米国、ブラジル)
 とはいえ、コロナ危機が過ぎれば、エンブラエルはまたもやボーイングに買収されるかもしれない。元サヤで。あるいは、エンブラエルは中国の会社に買収されるかもしれない。
  → エンブラエルがボーイングに対し仲裁手続き開始、中国との提携も | ロイター
 どうなるにしても、MRJ がエンブラエルに勝てる見込みは薄い。すでに大幅に負けている。(相手は後発なのに、MRJ を追い越して、6年前から販売中だ。)
  → MRJ と心神の現状: Open ブログ

 MRJ は、今すぐ中断しても、細々と事業を継続しても、茨の道だ。たしかに、「これ以上の大幅な出血を避ける」ということぐらいの効果ああるかもしれないが、すでに大幅に出血しているので、総合的には失敗の道しかありえない。
 できることなら、数年前に開発中止の道を取るべきだったが、今となっては、どうなっても茨の道しかない。うまく行けば、事業化が可能となって、赤字の規模を 5000億円ぐらいで止めることができるかもしれない。あるいは、赤字がさらに拡大して、三菱本体が倒産してしまうかもしれない。……そういうギャンブルだね。
 三菱自身も、自分が馬鹿なことをやっているとわかっているのに、自分で自分を止められないそうだ。
 開発費はすでに7千億円にのぼり、1兆円規模に膨らむとされる。国からの500億円の支援は、すでに使った。
 三菱関係者は苦しい胸の内を明かす。「ここまで投資して簡単に捨てるのは選択肢にない。何より、われわれの判断だけではやめられない」(
( → 投資7000億円超、引けぬ三菱重 スペースジェット、事業化困難:朝日新聞

 本体もろとも倒産する可能性は、十分にある。
 とはいえ、そうなると、国産の戦闘機や一部兵器も作れなくなるから、防衛上の難点が出る。そこで国が救済のために国税を投入して、半・国有化することになるのかも。
 
posted by 管理人 at 22:58| Comment(3) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 【 追記 】 を加筆しました。(1)(2)(3) の三つあり、かなり長い。
Posted by 管理人 at 2020年10月23日 06:56
東大のプライドがMRJの開発をここまで続けさせてしまったのかもしれませんね。

国(経産省)と東大がベッタリ癒着。。。
Posted by 反財務省 at 2020年10月23日 23:11
こういう無責任な官民プロジェクトは止めて欲しい。言い出した官側は無駄に税金使って、ドブに捨てても何の責任も取らず、給料もそのまま。
飛びついた三菱側も税金で補填されてそんなに損しないようになってんでしょう。
ひでえ話だ。失敗しました。税金を無駄にしました。だれも責任取りません。おしまい。
Posted by 横レス at 2020年10月24日 08:20
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