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アイサイトX は手放し運転ができるのに値段が安い……という称賛記事が朝日新聞に掲載された。
「手放し運転」で運転中の負担を軽くする技術が普及し始めている。スバルは15日、ステーションワゴン「レヴォーグ」を全面改良し、年内に発売すると発表した。手放しできるのは高速道路上で渋滞時(時速約50キロ以下)の場合だけだが、条件を絞ることで価格を抑えた。
GPS(全地球測位システム)や準天頂衛星「みちびき」からの情報と、高精度の3D地図データを組み合わせて、自動車の位置を詳細に把握。さらに、前後部の四つのレーダーや新型のステレオカメラで周囲の車などを確認することで手放しを実現した。高速道路上で時速約 50キロ以下の場合に限り、ハンドルから手を離せる。
( → 「手放し運転」普及へ前進 スバル「アイサイトX」、各社と差別化:朝日新聞 )
一方、私は前に、アイサイトX については批判的に述べた。「高速道路上で時速約 50キロ以下の場合に限り、というような限定が付くのでは効果が薄い」という趣旨。
朝日と私では、評価が逆だ。そこで、あらためて考察してみる。
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私が思ったのは、こうだ。
「ハンドルが手放しにできるというのは、たいして効果が大きくない。それより、手放しにはできないだけで、同等の機能が実現できるはずだ。それは、オート・クルーズ・コントロール(ACC)機能である。これがもともとあるのなら、手放しにできることのメリットは大きくないはずだ。
こう思ったので、旧型モデルのアイサイトと比較してみたら、まさしく旧型でも ACC 機能はあった。
次の記事では、ベンツ Cクラスの自動操縦機能を賛美した後で、次のように述べる。( ※ という印の箇所は、引用者の注釈)
続いてレヴォーグのACCを試す。
機能的にはCクラスから渋滞時のハンドル制御機能を取ったものと考えればよい。( ※ つまり、渋滞時の ACC 機能がある。)
(※ さらに)65q/h以上の速度域になると、レーンキープアシストという「大雑把に車線の中央を走るような制御」をしてくれる。使ってると便利。
ハンドルに軽く手を触れているだけで車線をキープしてくれるのだ。スバルのステレオカメラは非常に精度高く、情報処理能力も高い。
ACCで重要なのが前方の状況を入手する『目』と、それを判断する『頭脳』の性能。アイサイトは世界最高の自動ブレーキ性能を持つだけあり、とにかくレスポンスいい。
( → レヴォーグらの追従型クルコンを試してみると…? 渋滞時はほぼ全自動に!? - 自動車情報誌「ベストカー」 )
つまり、ハンドルに軽く手を付ける必要はあるが、ACC でもほぼ同等の機能が達成されているのだ。
この ACC は、アイサイトX の非搭載車には付いているか? 付いている。アイサイトX の非搭載車には、ベーシック版のアイサイトが標準装備だ。
→ 新型レヴォーグ | SUBARU
このページで「グレード」をクリックすれば、グレードがわかる。価格の安いグレードでは、(アイサイトX ではない)アイサイトが搭載されている。それは、ハンドル手放しはできないが、ACC 機能は付いている、とわかる。
→ 予防安全(アイサイト・アイサイトセイフティプラス) | SUBARU
で、これに「手放し機能」が付くと、35万円も高くなる。
→ アイサイトXは35万円
しかし、たかが手放し機能ぐらいのために 35万円も払うというのは、ちょっともったいない。
それでも、たいていの人はアイサイトX の搭載車を購入するそうだ。
→ 【スバル レヴォーグ 新型】事前受注8920台…93%がアイサイトXを装着
しかしこれは、人々が勘違いしているせいではないか? 「アイサイトX を装着しないと、自動運転や自動ブレーキなどの機能が省かれる」というふうに。
実際は、そうではない。省かれるのは、手放し運転機能ぐらいだ。そのくらいのために 35万円もかかるのだ。実際には、35万円も払わなくても、ほとんどの自動運転・自動ブレーキ機能は付いているのだが。
朝日新聞も、そのことを勘違いして、やたらと過剰に褒めているようだ。「安い価格で高い機能を実現した」というふうに。
この記事こそ、「手放しで褒めている」という記事だろう。(やらなくてもいいところで、手放しを実現している。)
【 関連動画 】
【 追記 】
35万円をかけずに手放し運転を実現する方法
35万円をかけなくとも手放し運転を実現する方法がある。それを教えよう。
そもそも アイサイトX をつけなくとも、もともと「渋滞時の ACC 」という機能がある。渋滞時ならば、ハンドル操作は特に必要ない。そこで、渋滞時には勝手にハンドルから手を離してしまえばいいのだ。
ところが、勝手にハンドルから手を離すと、そのことを検知した自動車は、「危険」と判断して、自動車を停めてしまう。
だから、この検知する機能を解除すればいい。
この検知する機能は、ステアリングタッチセンサー」と呼ばれる。
→ 住友理工、自動運転対応のステアリングタッチセンサー初出展へ(Response.jp)
→ ステアリングを持っているか筋肉振動で検知、125℃対応のフィルムコンデンサーも
ここで検知する仕組みは、さまざまな方式がある。トルク方式やら、静電容量方式やら。……そのいずれも、ハンドルを握っているかどうかを検知するより、ハンドルに指を付けているかどうかを検知しているだけだ。
そこで、ハンドルを握ることなく、ハンドルに手を付けるだけにすればいい。では、どうやって? こうだ。
「足の腿の部分の上に、枕のような直方体の形の、硬いクッションを置く。そのクッションの上に、肘を載せる。こうすれば、腕の重量を、クッションが支えてくれる」
場合によっては、ティッシュボックスを二つ使うだけで足りるかもしれない。そこに左右の腕の肘を置く。
このとき、腕の重量をクッションが支えてくれる。だから、ステアリングを握らなくとも(指に力を入れなくとも)、腕は宙ぶらりんにならない。腕をステアリングから放しているのも同然で、力を入れずに済む。腕は脱力状態のまま、休んでいることになる。……ただし、指先だけは、ステアリングに軽くタッチしている。(握らないで)
これは、形の上ではステアリングに手を付けている。だから、本当に手放しをしているのではない。しかし実質的には、手放しをしているのも同然だ。(脱力していられるからだ。)
こういうことは、普通の運転中にやったら、もちろんヤバい。しかし、渋滞中に限っては、構わないだろう。どうせ渋滞中には、ハンドル操作なんかしないからだ。(稀に、少しだけ修正する必要があるが、それをやり遅れたところで、事故などは起こるはずがない。左右に 10cm ぐらいズレるだけだ。)
※ まあ、何が言いたいかというと、「違法行為となる運転の薦め」というわけではない。「渋滞中の操作なんか、いい加減な操作でも、危険なことにはならないのだから、自動にしようがしまいが、結果はほとんど同じだ」ということだ。つまり、「渋滞時の自動化なんて、たいして意味がない」ということだ。
標準ナビだと上下に余白ができて見た目が悪いから、仕方なしにつけてる人も多そう。
https://www.subaru.jp/levorg/levorg/design/interior
まあ、これに魅力があるのはわかる。だったら朝日は「手放し運転ができるから」と書くより、「大きな液晶パネルがあるから」と書くべきだったね。
35万円をかけずに手放し運転を実現する方法