2020年10月09日

◆ 核のゴミの最終処分場

 核のゴミの最終処分場に応募した自治体が二つ現れた。これを考察する。

 ──

 記事を読んでも情報が不足して、どういうことかはっきりしないので、情報を調べて考察しよう。

 記事の趣旨はこうだ。
 「核のゴミの最終処分場に応募した自治体が二つ現れた」

 この趣旨で、次の記事がある。
  → 核のごみ処分場、道内2町村名のり 建設までは長い道 :日本経済新聞
  → 「手際良すぎる」 核のごみ応募、ひそかに動いたのは…:朝日新聞
  → 「核のごみ」処分場 北海道寿都町が第1段階の調査に応募決定 | NHK


kakushobun.jpg
時事ドットコム


 二つの自治体は、北海道の寿都町と神恵内(かもえない)村だ。



寿都町



神恵内村


 いずれもほとんどが山地であって、人の住む領域は小さい。特に、(寿都町はともかく)神恵内村には平地がほとんどないと言っていいぐらいだ。
 こんなところに人がどれだけ住んでいるのか疑わしい気もしたが、Wikipedia で調べたら、人口は 825人。けっこう多くの人がいるようだ。

 で、核の処分場を作るとしたら、どこに作るつもりなのだろう?
  ・ 平地部ならば、領域が狭いので、人家と近接する。
  ・ 山地部ならば、通る道路もない。

 ということなので、どこにも適地はないように見える。

 これが本州の奥地ならば、「人のほとんどいない限界集落」というのがあるので、そこにいる数人の人に退去してもらえば、跡地を処分場にすることもできるだろう。
 というか、すでに人のいなくなった「村の残骸」みたいな場所もある。そういうところならば、許可を得ることもなく、処分場にできそうだが。

 この二つの自治体が名乗り上げたということだが、どっちにしても不適であるように思える。

 ただ、「最初に文献調査を受けるだけで、20億円をもらえる」(NHK)とのことなので、これを狙いにしているのかもしれない。
 「調査しましたが、適地はありませんでした。この場所は不適格です」
 ということになれば、何もしないで 20億円をもらえる。そういう魂胆なのかも。

 ──

 NHK の記事には、「科学的特性マップ」という地図が出てくる。これは下記にある。
  → 地域ブロック図|科学的特性マップ公表用サイト

 ここから北海道の PDF を得ることができる。一部を画像にすると、こうなる。


hokkaido20.jpg
クリックして拡大


 これを見ると、寿都町は緑の領域にあるので問題ないが、神恵内村は黄色の領域にあるので好ましくないとわかる。こんなところが選ばれるはずがないのだが、それがわかっていて、あえて応募しているのかもしれない。

 状況としては、いずれも、本気で立候補しているとは思えない。落選覚悟の応募だと思える。(落選目当てというべきか。)
 私としては、「この二つの自治体は、考慮する必要もない」と判断する。
( ※ ただし断言はしない。推定のみ。)

 ──

 一方、本気で決めるなら、どこに決めるべきか? 
 この件では、前に私の考えを述べたことがある。
  → 原発の最終処分場は 釧路に: Open ブログ

 釧路の海底炭鉱の跡地にすればいい、という案だ。ここなら、次のメリットがある。
  ・ すでに海底の地下に、坑道がある。
  ・ 場所は、陸地でなく海中なので、近辺に人がいない。

 念のために科学的特性マップを見ると、該当部分はこうだ。


hokkaido220.jpg


 普通は陸地だけが着色されるのだが、海の部分で灰色に着色されている箇所がある。ここが、該当の箇所だ。
 つまり、ここは海の中であるにもかかわらず、すでに候補地として検討されている。
 その上で、灰色領域となっている。つまり、こうだ。
 「好ましくない特性があると推定される地域
  (将来の掘削可能性の観点)」


 これを見て、「なあんだ、好ましくないのか」と思うかもしれないが、さにあらず。黄色の場所は「好ましくない」理由が、「地下深部の長期安定政党の観点」であるので、どうしようもない。しかし灰色の場所は「好ましくない」理由が、「将来の掘削可能性の観点」であるから、特に危険性があるわけではない。「将来はふたたび炭鉱として利用するかもしれないから、その権利を留保しておきましょう」という程度のことであるにすぎない。
 一方、地球温暖化の観点から、「石炭の掘削は将来的にはもはやありえない」と言えるので、「将来の掘削可能性の観点」というものはまるきり無視していいはずだ。
 となると、この「海底炭鉱の跡地」(海中部の領域)は、有力な候補地となる。

 ──

 近くに人家はないか? 





 西の方は、釧路平野(釧路市)なので、人家が多いが、東の方は、山地なので、人家がほとんどない。だから、そのあたりの沖合ならば、問題は少ないだろう。

 特に、釧路市の少し左側にある小さな平地部が適地だと思える。ここだ。





 ここならば人家が少ない。それでも人家は少しあるが、住んでいる人には金を払って移転してもらえばいいだろう。(買収費として、1軒2〜3億円を払えば、何とかなるだろう。)

 この場所が唯一絶対というわけではないのだが、とりあえずは、有力な候補地として紹介しておく。
 本来ならば、「困ったときの Openブログ。うまい案を出そう」と言いたいところだが、残念ながら、決定的にうまい案というのは、まだ出せない。
 上記の案は、難点がある可能性もあるので、とりあえずは、「有力な候補地」というのに留めておく。
 


 【 追記 】
 海底だと、地下水脈が汚染される危険がある、という指摘があった。コメント欄(2020年10月16日 00:12)を参照。
posted by 管理人 at 20:50 | Comment(5) |  放射線・原発 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
核廃棄物の最終処分場について、もうすこし勉強してください。
最終処分されるものが『高レベル放射性廃棄物』ですから。
40年で時効にはなりませんよ。
Posted by 塚本水樹 at 2020年10月09日 20:35
 原発を作ったのは自民党政権の権限でのこと。学術会議にはその権限はありません。文句を言う相手を間違えないように。
Posted by 管理人 at 2020年10月09日 21:03
最終処分場は地下水脈の無いところが候補地でした。そのため、ドイツでは岩塩鉱が調査されていました。岩塩鉱には地下水脈は無いからです。
しかし、処分場のために掘削すれば、そこから水が浸入し、前提条件が失われるとの批判で、岩塩鉱処分案は無くなりました。

つまり、地下水脈どころが、海水の侵入が否定できない海底や釧路湿原など論外です。
日本には適地が無いため、科学の衣をかぶったエセ科学が適地と言っているだけです。ゆえに、人口の少ない過疎地が、金の力で狙われています。

最終処分場の放射能量は膨大ですから、封じ込めに失敗すれば、あなたの言う人口が少ない適地などのエリアを簡単に超えて、広域汚染が発生します。

私な言わせれば、『適地は無いけど、処分場が必要だから、ベストは無いがベターでしかない』とはっきり言うべきです。

ベターな立地と言うなら、安定地盤で放射能汚染された阿武隈山系こそがベターな立地です。
Posted by 塚本水樹 at 2020年10月16日 00:12
 地下水脈ですか。それは考えてみなかった。たしかに次のページがありますね。

 https://rengetushin.at.webry.info/201111/article_5.html

 地下水脈のことまで考えると、なかなか適地は見つからないし、日本は地震国であることまで考えると、適地はないかもしれない。
 すると、残るは、1万メートルクラスの深海の底に落とし込むことかな。あるいは、海底が大陸移動でのめりこむ場所。数万年もたてば、どんどん地下に呑み込まれていく。しかも深い地底なので、人類は到達しない場所だから、汚染されても構わない。

 ──

 なお、「適地がない」とばかり言っていると、現状の一時保管がずっと続くことになり、危険度は最も高くなります。最善を望むと、結果は最悪となります。

 ──

> 放射能汚染された阿武隈山系

 そんなことを言うと、風評被害で訴えられるかも。
 私のお薦めは、人形峠です。もともと放射能だらけ。
 
Posted by 管理人 at 2020年10月16日 07:40
>>残るは、1万メートルクラスの深海の底に落とし込むことかな。

国際条約で、放射性廃棄物の海洋投棄は禁止されています。
かつては、各国が低レベル放射性廃棄物を海洋投棄していました。日本でも、日本海溝付近で海洋投棄していました。

しかし、海洋汚染になるということで国際条約で禁止され、発効していますました。
高レベル放射性廃棄物のガラス固化体は、低レベルの非ではありません。

地層処分を実施しているのはスウェーデンだけです。
 米国はガラス固化による地層処分案から撤退し、再処理せずに、使用済み核燃料をそのまま、陸上保管することを選択しています。

 ただ、米国は核兵器用のプルトニウム生産のための再処理工場があるので、ここで発生する高レベル廃棄物については別途、最終処分地があるようです。
Posted by 塚本水樹 at 2020年10月16日 19:29
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