2020年10月11日

◆ 燃料電池の死 6

 燃料電池車の補助金の不正が発覚した。これは燃料電池車が技術的に「死んでいる」ことを、改めて教える。

 ──

 燃料電池車の補助金の不正が発覚した。水素ステーションで水素ガスを製造するときの電力に、再生エネ電力でなく、石油電力を使用していたのだ。これで(エコのための)補助金をもらっていたので、不正となる。
 燃料電池車のガソリンスタンドにあたる「水素ステーション」について、会計検査院が、国の補助金で設置された約20カ所を調べたところ、「再生可能エネルギーだけで電力をまかなう」という補助要件が守られていなかったことが関係者への取材でわかった。ほぼ全てで一般の商用電力が使われていたという。
 環境省は「低炭素社会の実現につながる」として、二酸化炭素を排出しない再エネ電力だけで水素を作る「再エネ水素ステーション」への補助事業を2015年度に開始。18年度までに計27の自治体や企業に交付した。補助率は4分の3。設置費用は1億3千万円程度のため、1カ所あたりの補助金は約1億円だという。
 関係者によると、検査院は1年以上の稼働実績がある約20カ所のステーションについて、水素を作るために使われた電力を調査。太陽光などの再エネ電力だけではなく、ほぼ全てのステーションで、家庭などでも使われる一般電力が含まれていた。再エネ発電の割合は様々だが、全体の3割程度や、ほとんどゼロのケースもあったという。
( → 水素ステーション約20カ所、補助金要件に違反 検査院:朝日新聞

 環境省は事業の継続は困難と判断し、廃止を決めたということです。
( → 東京五輪・パラ関連施策「水素ステーション」補助事業廃止へ| NHKニュース

 「補助率は4分の3。設置費用は1億3千万円程度のため、1カ所あたりの補助金は約1億円だという」
 補助金とは言うが、補助的に出したというよりは、ほとんど丸抱えである。
 一方で、電気自動車への補助金は、はるかに少ない。
 電気自動車の充電設備に対する補助金は、たったの5% であるようだ。
  → 補助金情報 | [EV・PHEV 充電用]充電設備(ELSEEVなど) | Panasonic

 また、車両本体については、国の補助金が 10%弱。これに自治体の補助金が(最大で) 5% + 5% の上乗せがされることもあるが、通常はそんなに出ない。
  → 利用できる補助金制度等 | クリーンエネルギー自動車AtoZ

 テスラ車に至っては、米国の販売台数が枠の上限に達したので、もはや補助金をもらえない。
 自動車メーカー各社の税控除対象車の上限は 20万台に設定されており、販売台数がこの水準に達したら税控除は段階的に廃止される。GMは年内にこの水準に到達するとの見通しを示している。テスラは7月にこの水準に到達したという。他のメーカーは、数年間はこの水準に達しない見通しという。
( → 米政府、電気自動車などの補助金廃止を希望=NEC委員長 | Reuters


 テスラ車は、補助金をもらえなくても、もはや競争力が抜群に強い。肝心の電池については、稀少元素を使わずに大幅にコストダウンして、自動車の販売価格を下げる見込み。
 テスラのパワートレイン、エネルギー設計を担当するシニアバイスプレジデントのアンドリュー・バグリーノ氏によると、計画する技術革新の成果が出ると、走行距離は 54%伸びてコストが 56%減少し、ギガファクトリーへの投資は 69%下がる可能性があるという。
( → テスラが低価格EV計画、3年以内目標 完全自律走行も - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 非公開情報だとして匿名を条件に話した関係者によれば、テスラの新パワートレインには中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が製造する高価な金属のコバルトを含まないリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池が使われる見通し。
( → テスラが中国製「モデル3」値下げ、CATL電池でコスト低減(Bloomberg) - Yahoo!ニュース

 こうなると、テスラの一人勝ちとなりそうだが、テスラがどうのこうのというより、電気自動車が圧勝する時代が来る。これまではバッテリーが壁となって、ガソリン車に勝ちにくかったが、バッテリーの壁が(コスト的に)打破されれば、もはや「ガソリン車よりも高コスト」ということはなくなるのだから、ガソリン車を圧倒できるようになる。

 ──

 で、そうなったら、もはや燃料電池車(水素自動車)の出番はまったくない。
 そもそも燃料電池車では、

   発電所 → 水素ステーション → 燃料電池車
   (電力)  (水素に変換)    (電力に変換)


 というふうに、無駄な変換操作が2回もある。その変換の操作で、無駄なエネルギーロスが発生する。
 それだったら、最初から最後まで「電力」のまま扱う電気自動車の方がずっと無駄がない。

 つまり、燃料電池車は、原理的にも無駄の多いもので、馬鹿げた技術なのである。

 ──

 だからこそ、私は前からずっと言っていた。「燃料電池車は死んだ」と。
 燃料電池車将来には見込みがない、ということについては、2004年ごろから私はずっと指摘してきた。たとえば、下記だ。
  → 泉の波立ちの「燃料電池」記事・一覧 (2004年以後)

 また本サイトでも、サイトを開設した 2005年以後、しばしば述べてきた。
  → 燃料電池車の休眠
  → 燃料電池の死
  → 燃料電池の死2
  → 燃料電池の死 3
  → 燃料電池の死 4

( → 燃料電池の死 5: Open ブログ

 
 そして、このたび、あらためて「燃料電池車は死んだ」と宣言しておこう。「おまえはもう死んでいる」と言ってもいい。
 そのことが、今回の不正な補助金取得という事件からも、明らかだろう。
 国はそろそろ、馬鹿げた補助金政策(それも超高額)をやめる方がいい。どうしても補助金を出すのなら、電気自動車と同水準にするべきだ。つまり、5〜10%程度にするべきだ。現状のように 75% もの補助金を出すべきではない。
 そして、そうすれば、燃料電池車ははっきりと「ご臨終」になるので、メーカーとしても迷わずに済むだろう。



 [ 付記 ]
 トヨタとホンダは、燃料電池車の開発に専念して、多額の資金と技術を投入してきた。そのせいで、電気自動車のレースでは大きく出遅れてしまった。政府が馬鹿げた補助金を出したせいで、かえって開発競争で負けてしまったのである。
 数年前なら、電気自動車の分野で、トヨタやホンダは、ベンツ・BMW・フォルクスワーゲンと同レベルだった。なのに、その後が違った。ベンツ・BMW・フォルクスワーゲンは、「電気自動車への大規模な転換」を表明したのに、トヨタやホンダは、そうしなかった。むしろ、燃料電池車にこだわった。そのせいで、ベンツ・BMW・フォルクスワーゲンに大差を付けられてしまった。
 マツダとスバルは、「トヨタとの共同開発」という方針を取ったので、いっしょに道連れとなって、ともに水に溺れる結果となった。(足を引っ張られるようなものだ。)
 日産だけは、まともな方針を取っていたが、ゴーンが「コストダウン」という方針にこだわっていたため、手抜きして、「電池の冷却装置を省く」という方針を取ったせいで、「電池の寿命が著しく短い」という欠陥車を売ることになり、大きく評価を下げた。その方針を改めたのが「アリア」だが、こいつが発売されるのは1年後だ。
 結局、日本にはまともな電気自動車をつくる会社が一つもないことになる。ひどいものだ。



 【 関連サイト 】

 トヨタ・ミライ(次期型)のコンセプトカー。




 参考記事。
  → トヨタ ミライ 次期型コンセプト、航続30%延長…北京モーターショー2020出展へ

 
posted by 管理人 at 19:26| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水素ステーションにつながっている、ぶっとい電力ケーブルを見ると、萎えます。
シート下の高圧水素ガスボンベも、あんまり気持ちいいものではありません。
Posted by けろ at 2020年10月14日 09:18
これに関しては、本当に残念です。
日本は世界最高の自動車産業を全く活かせませんでした。
私個人はテスラ車でも構いませんが、ぜひ今からでも全力で追いかけていただきたいものです。
Posted by との at 2020年10月16日 10:42
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