2020年10月04日

◆ 無用の巨大防潮堤(三陸)

 三陸では巨大防潮堤が次々と建設されているが、完成したものも出てきて、その巨大なものの無用ぶりが露見しつつある。

 ──

 先に、「災害危険地域に居住禁止」という話を書いた。
  → 災害危険地域に居住禁止: Open ブログ

 これは基本原則だが、逆に、これに反する例として、巨大な盛り土工事の事例を示した。(その項目の最後に。)

 また、同様にダメな例として、「熊本の水害の地域では特養が危険な土地に建設された」という話も前項で述べた。
  → 熊本の水害死は人災か?: Open ブログ

 さて。同じようにダメな例として、三陸の巨大防潮堤がある。巨大防潮堤については、本サイトは前にも何度か批判してきた。ここで、最近、新たな報道が出た。
 巨大堤防が完成して、その威容を見せているが、建築物として立派であればあるほど、その無用ぶりが際立つそうだ。宮城県石巻市雄勝(おがつ)町の事例。


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 大きな画像はこちら。(他の画像もある。)
  → (SCENE)そびえる壁、泣きたくなる 宮城・雄勝町:朝日新聞

 巨大な防潮堤ができたせいで、陸地と海とが分断されてしまった。今では陸地から岸辺にたどり着くことも容易ではない。こんなことでは非常に困るので、地元民は反対していたのだが、地元民の反対を押し切って、政府が強引に建設したそうだ。

 「それでも防潮堤があれば、津波から守られるので、ありがたいだろう」
 と思う人もいそうだが、さにあらず。防潮堤はもともと不要なのだ。なぜなら、防潮堤の先には高台があり、その高台に住居は移設しているからだ。防潮堤などは、あってもなくても関係ないのだ。
 「住宅は高台移転するのに、いったい何を守るために造るのか」。自宅を流されたすずり職人、高橋頼雄さん(49)は憤る。「地域性や住民の意見を考慮せずにやってしまった。海が見えなくなったら、もう古里ではなくなっちゃう」。
( → 東日本大震災6年・復興の検証:高い防潮堤「良かったか」 行政に不満の住民も 宮城・雄勝 - 毎日新聞

 しかも、無駄は防潮堤だけではない。この高台そのものも無駄だという。実際に住んでいるのは、1軒だけだそうだ。
 石巻市雄勝町分浜(わけはま)の木村勝雄さん(59)の一家は、そんな高台にポツンと一軒、暮らしている。
 2011年3月、43世帯が暮らしていた集落は、そのほぼすべてが津波に襲われた。奥まった一軒が残ったほか、高台に戻ったのは木村家だけ。
 事業を担当する国土交通省の鈴木徹・都市安全課長は「被災者に寄り添って事業を進めた結果。限界集落を我々が作ったわけではない」と説明する。
( → 津波移転、高台に一軒 「限界集落を作ったわけでは…」:朝日新聞

 「限界集落を我々が作ったわけではない」だって。
 いやいや。限界集落を作ったのは、あなた方でしょう。何で責任回避をしているんだ。無責任にもほどがある。「意図したわけではない」ということかもしれないが、それは「殺人を意図したわけではない」と弁解する殺人犯みたいなもので、殺人の行為自体まで否定されるわけではない。自分のやったことの責任を回避しないでもらいたいものだ。

 ──

 なお、現場である高台の写真は、すぐ上の記事にある。
 それを航空写真で示すと、下記になる。





 この地域の右上に、海岸があるが、Google の画像では、まだ防潮堤はできていない。

    *   *   *   *   *   *

 なお、もっと詳しい話を探すと、下記記事がある。(2014年)
「高台移転の住民合意はとれています。でも、合意した住民のほとんどは戻りません。私の住んでいた雄勝町の中心地では、およそ630世帯が被災した中、この地区に戻りたいと申請をだしているのは53世帯です。現状において1割以下。しかも完成するのはこれから3年後とか4年後なので 別の生活再建を目指す人も出てくるでしょう」

 「雄勝の復興政策は高台移転と防潮堤建設がセットになっています。水の被った浸水地域は災害危険区域と指定して二度と住宅が建てられない規制をすること。その代わりに住んでいた住民のために山を切り開いて高台を造成して、住宅再建する場合はそこにしてくださいという高台移転事業。そして災害危険区域には住宅はできないけど、商業施設は作れるのでそこを守るための防潮堤建設というわけです」
 『宮城県震災復興計画』では、災害に強いまちづくり宮城モデルの構築が掲げられ、具体的な取り組みとして「高台移転、職住分離」「多重防御による大津波対策」が上位に挙げられています。宮城県の復興政策は高台移転と防潮堤建設が二本柱といえるでしょう。雄勝地区はその政策がそのまま当てはまった形になります。
 この、ほとんど人が戻らない地域に6.4メートルの防潮堤建設が予定されています。
 「住民の9割が出て行かざるを得なくなる復興政策は、復興政策といえるんでしょうか。しかも高台に造成された土地に移転できるのは、震災時に住んでいた被災者だけとなっています。外から新しい人が移住してきたり、震災時に出稼ぎに東京に行って東京に籍があったけど、3年経ってやはり故郷に戻りたいという人は住めない。つまり、雄勝の人口がこれから増えるということも不可能。つまり、被災地としても復興できないというのがいまの雄勝町の現状なのです」
( → 戻らない住民「高台移転」のいま 石巻市雄勝地区(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

 2014年にはすでに懸念されていたのに、強引に巨大防潮堤が建設されて、地域は分断されて崩壊してしまった……ということのようだ。
 数百億円(?)をかけた巨大防潮堤は、地域を破壊するためにしか役立たなかった、というわけだ。



 [ 付記 ]
 朝日新聞の参考記事もある。(2016年1月)
  → 巨大防潮堤、何守る? 地元離れる住民たち 宮城・雄勝:朝日新聞

 これと関連するブログ記事もある。
  → 雄勝(宮城県石巻市)の巨大防潮堤 : 松阪市議会議員 海住恒幸 ブログ



 【 関連サイト 】

 研究報告もある。
  → 高台移転計画における官学連携の取り組みとその課題

 小さな高台の地域の整備の計画。
  → 土地利用計画図・雄勝
  → 一覧

 なお、雄勝の市街地(中心部)の整備計画も探そうとしたのだが、見つからなかった。場所はここだが。




 
posted by 管理人 at 12:46| Comment(0) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
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