2020年09月28日

◆ 災害危険地域に居住禁止

 災害の危険のある地域には居住を禁止する、という制度が法的に施行された。

 ──

 災害の危険のある地域には居住禁止にするべきだ、と私は前に何度か述べた。2015〜16年ごろ。
  → 居住禁止 : サイト内 検索

 それから4〜5年たって、ほぼ同趣旨の法律が施行されることとなった。
 「災害の危険のある地域には、居住禁止にするか(レッドゾーン)、居住規制する(イエローゾーン)」
 という方針。詳しくは下記。
 相次ぐ自然災害による被害を減らすため、危険度が高い場所での暮らしは避ける――。国がめざしているのが、そんなまちづくりだ。危険区域では新しい建物の建設を規制し、すでに住んでいる人には移転を促すことで、災害時の被害を最小限に抑える狙いだ。
 国は自然災害に強いまちづくりを進める「都市再生特別措置法」などを改正し、今月施行した。崖崩れや津波などの危険がある「災害レッドゾーン」に自社ビルや病院、ホテルなど自らが運営する施設を建てることを禁止した。これまでも貸店舗や分譲住宅などの建設を禁じていたが原則まちとしての開発を禁止した。
 洪水などの危険がある「災害イエローゾーン」での開発も厳しくした。イエローゾーン内の「市街化調整区域」では今後、住宅などを建てる場合、安全対策や避難対策をとることが条件になる。さらにこうした危険な場所に住む人たちに移転を促すため、自治体が移転を支援する制度も導入した。
( → 広範囲が「災害イエローゾーン」に…法改正で悩む自治体:朝日新聞

 おおむね、私の提案したことと同趣旨であり、歓迎できる。法律の施行まで4〜5年もかかったのが残念だが、ともあれ、私の提案通りになったことは、歓迎したい。
( ※ ダムの事前放流の実施に続いて、歓迎すべきことだ。)

 ──

 ただし、この法律の実効性を高めるためには、金銭的な誘導が必要だろう。そこで私としては、次のことを提案したい。
 「イエローゾーンおよびレッドゾーンでは、固定資産税を大幅に引き上げる。その一方で、他地域に退出する場合には、引っ越しのために補助金を出す」
 これはつまり、「アメとムチ」だ。補助金を出すだけなら、「アメ」だけとなり、ありがちな政策となる。一方で、増税を課すれば「ムチ」になるので、ありがちではない政策となる。
 実は、「アメ」に比べて、「ムチ」はずっと効果が高い。たとえば、レジ袋有料化だ。「レジ袋を不要な人には2円引き」と言っていたころには、たいして効果はなかったが、「レジ袋を求める人には3円で販売」というふうにしたら、レジ袋を求める人が激減した。……これは、2円と3円の差のせいではないようだ。人は金を取られることを極端にいやがるのだ。
 このことからして、「引っ越し費用に 300万円を補助する」と言っても、たいして効果はないだろうが、「現地に留まると、毎年 30万円の増税」と言えば、大きな効果が出るだろう。だから、その両者を、組み合わせるといいだろう。
 これぞ、うまい案だ。

 ──

 ただし、これには、批判が出るだろう。
 「そんなことをしたら、30万円の2年分と、300万円の差額として、240万円の持ち出しになる。自治体は大赤字になるぞ」
 と。

 しかし、ご心配なく。240万円の持ち出しになっても、大丈夫なのだ。なぜなら、その分、治水対策の費用が浮くからだ。
 現実には、ほんのわずかな人家のために治水対策をすることで、ものすごく巨額の金が支出される。たとえば、「 200戸の水害を防ぐために、1000億円のダムを建設する」というふうな。(これだと1戸あたり5億円も費用をかけることになる。)
 こういう馬鹿げたことをするくらいなら、被災地にある人家を引っ越しさせた方が、はるかに低コストで済むのだ。
  → 川辺川ダムは必要か?: Open ブログ の 【 追記 】
 
 現実には、引っ越しだけで治水が片付くわけではなく、遊水地の建設なども必要だろう。
 だが、遊水地の建設ならば、丘陵部などを利用して、「自然の堤防」とすることで、建設費用を大幅に引き下げることができる。(具体例は、すぐ上のリンクを参照。)

 というわけで、自民党の大好きな、「やたらと超高額のダム建設」なんかよりは、はるかに安上がりで効果的な方法があるのである。
 そして、その方法の一部が、「危険地域への居住禁止」なのだ。



 [ 付記1 ]
 この方針は、土木工事の利権とは対立するので、自民党政権で実現するとは思わなかった。不思議ですね。 自民党の議員も、そこまで思いが及ばなかったのだろうか?

 ひょっとして、「事前放流」を推進したのと同様に、菅官房長が推進したのかな……と思ったが、調べたところ、そんな気配はなかった。
 この件は、政治家は何も関与しないで、国交省が独自に方向を決めて推進したようだ。
 名目上は、誰も反対するようなことではないので、自民党の議員も反対しなかったようだ。

 本来ならば、「巨大ダムや巨大建設には反する方針なので、何としてもこの法律を阻止せねば」と思うはずなのだが、他の騒動にまぎれて、目が向かなかったのかも。

 時期を調べてみたら、今年の1月に法案が出ている。
  → 防災・減災等のための都市計画法・都市再生特別措置法等の改正内容(案)について
  → 都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案
 時期的に言って、法案が成立したのは3月の、コロナ騒動のころだ。誰もがそっちに目を向けていたせいで、この法律については自民党議員が目を向けなかったのだろう。
 自民党の利権に阻まれなかったのは、ケガの功名ふうだ。
 
 [ 付記2 ]
 これとは正反対なのが、「超巨額の土木工事をして、超巨大な自然災害に対抗する」という方針だ。

 例の一つは、田老地区の巨大堤防だ。この巨大堤防の効果を信じた人々は、すっかり安心していたが、そこに津波が襲いかかって、安心していた人々を呑み込んで、多大な生命を奪った。
  → 田老地区の防潮堤と津波: Open ブログ

 別の例は、陸前高田の盛り土工事だ。
  → 陸前高田の盛り土: Open ブログ
  → 数千億円の盛り土が無駄に: Open ブログ
  → 陸前高田の現在: Open ブログ
 数千億円もの金を掛けて、巨大土木工事をして、「安全な土地を構築する」という方針を取った。その結果、広大な土地ができた。だが、そこに住む人はほとんどいない。ただの空地を造成しただけだった。(下の動画でわかる。)
  




 それでも土木会社と自民党だけは、大いに潤った。国民には数千億円の赤字が発生したが、自民党だけはボロ儲け。……これこそ、自民党の本来の方針というものだ。(電通の件もまた同じ。)
posted by 管理人 at 22:00 | Comment(0) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
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