2020年09月23日

◆ 川辺川ダムは必要か?

 熊本の水害のあった地域の上流に、川辺川ダムを建設しよう、という動きがある。

 ──

 朝日新聞の記事から。
 記録的豪雨に見舞われた熊本県で、国が11年前に中止した川辺川ダムの建設計画がにわかに息を吹き返しつつある。国は、ダムがあれば浸水した地域の最大水量を約4割減らせたとする試算を発表。推進派の流域首長らが勢いづくなか、国に先んじて「白紙撤回」を打ち出した知事も軌道修正した。止まったはずの巨大公共工事が、再び動き出す可能性が出てきた。
( → 息吹き返したダム計画 11年前「白紙」→今「選択肢」:朝日新聞

 もともとダム計画があったのだが、「ダムなんか不要だ」とう反対派の声が強かったので、ダム建設は中止になった。ところが、昨年に大きな水害があったことで、ふたたびダム建設の声が高まっているそうだ。
 これを後押しするように、「川辺川ダムには効果がある」という試算が出た。
 国土交通省九州地方整備局(九地整)と熊本県は25日、7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川流域の治水対策を検証する合同委員会を初めて開いた。九地整はこの日、計画が中止された川辺川ダムが完成していた場合、人吉市街を流れた最大水量を約4割削減できたとする試算を示した。
 九地整によると、球磨川が流れる人吉市中心部の観測所の流量として、おおむね氾濫を防げるのは毎秒約5千トン。今回は7500トンの水が流れたと推定した。市街地では最大約5メートル浸水した。
 一方、球磨川上流の川辺川に計画されていた川辺川ダムがあった場合、ダムへの貯水で人吉市で流れた水量を最大37%減の毎秒4700トンに抑えられたと推定した。
 川辺川ダムへの貯水は計画されていた容量の8400万トンを下回る約6300万トンと推定され、緊急放流の必要もなかったとした。
( → 川辺川ダムあれば「水量4割減」 7月豪雨で国交省試算 [九州豪雨]:朝日新聞

 では、これをどう評価するか? 

 ──

 別に頭ごなしに否定するつもりはないが、現地の状況を見ると、ちょっと見ただけで、「これは筋が悪い」と評価できる。
 なぜか? 川辺川ダムは、支流のひとつ(川辺川)にかかるものであるにすぎないからだ。


kawabegawa.jpg


 もともと二つの流れがある。その二つのうちの一つにダムを作るわけだ。だが、ダムを一つ作っても、二つのうちの一つの分だけだから、水量削減の効果は半分でしかない。(もう一つの方の水量には影響しない。)
  ※ 半分というより、半分以下である。本流(球磨川)の方が水は多いからだ。

 また、ダムで水を止めるのは、ダムよりも上流の水だけだ。ダムよりも下流に降った雨水の分には、どうしようもない。(当り前だ。)

 結局、このダムで止められる分の水は、せいぜい全体の3分の1程度でしかない。他の3分の2については効果がない。その意味で、ダムを建設しても、コスパは悪い。その意味で、筋が悪いのだ。
 ダムへの貯水で人吉市で流れた水量を最大37%減の毎秒4700トンに抑えられたと推定した。

 上の記事の話を再掲したが、ここの試算でも、「最大37%減」の効果であるにすぎない。たいして効果はないのだ。「労多くして、益少なし」という感じで、「金をかけても、たいして効果はない」というふうになる。

 ──

 では、代わりにどうすればいいか? 
 反対派は、「堤防のかさ上げや浚渫(しゅんせつ)」を提案している。しかし、これらもコスパが悪い。堤防の全体をかさ上げしたり、護岸をコンクリにしたりするのには、莫大な費用がかかる。浚渫も、数年おきに繰り返すことを考えると、未来永劫にとんでもない費用がかかる。
 これらの案では、代案にならない。

 ──

 そこで困ったときの Openブログ。うまい案を出すというよりは、当り前の案を出そう。それは、前にも何度も言ったように、遊水地だ。
 幸い、そのための場所はある。住宅地だらけの都会とは違って、田舎は田畑だらけだ。





 この地図(航空写真)を拡大すればわかるが、地域の 95% ぐらいは田畑である。どこもかしこも、田畑だらけ。となれば、遊水地を作るための場所は、いくらでもある。選り取り見取りだ。

 たとえば、こんな感じ。





 遊水地を作るときは、それとセットで、越流堤を作る。つまり、堤防の一部に「切り欠き」を入れて、そこの箇所だけ、堤防を低くする。そこから溢れ出た水が、遊水地に流れ込むわけだ。
 詳しくは下記。
  → 洪水対策の越流堤: Open ブログ
  → 堤防の決壊の対策(2019): Open ブログ

 越流堤の部分には、コンクリ護岸がある。ただし 20メートルほどだけであるから、費用の点では格安で済む。(川の全体をコンクリ護岸にすると、とんでもない費用がかかるが。)

 越流堤があれば、その部分だけをコンクリ護岸にすることで、流域の全体をコンクリ護岸にしたのと同様の効果が生じる。なぜなら、この場所以外では、水があふれることはないからだ。

 逆に、越流堤がないと、どこかわからないところで、水があふれる。すると、そこはコンクリ護岸がないので、あふれた水のせいで、土の堤防が決壊する。次の動画のように。





 ──

 結論。

 球磨川に川辺川ダムを建設するというのは、巨額の金がかかる割に、効果はたいしたことがない。コスパが悪い。
 かわりに、遊水地と越流堤をつくればいい。それならば、少なめの費用で、多大な治水効果が出る。



 [ 付記 ]
 遊水地となる田畑は、買収してもいいが、買収だと地主の反対にあうかもしれない。その場合には、次の方法を取るといい。
  ・ 土地は、買収でなく、貸与。
  ・ 土地は、そのまま、農地として利用可能。現状通り。
  ・ 洪水のときには、農地が水没する予定。
  ・ 農地が水没したら、農産物への被害補償をする。


 最後の「農産物への被害補償」というのは、たいした額にはならない。農家の収入は年間 1000万円に満たないのが普通だから、被害補償もそのくらいの額で済む。非常に少額だ。

 一方、住宅地に水害が出れば、損害の額はこの程度ではとうてい納まらない。1軒に 1000万円以上で、100軒ならばその 100倍となる。圧倒的に多額となる。

 なお、貸与の場合には、土地の買収費が浮くので、その点でも費用が小額で済む。
 堤防の建設は必要だが、遊水地の堤防は、川の堤防と同じぐらいの高さで済むので、たいして高くはない土堤で済む。(もともとの標高が高い場所では、その分、土堤の高さも低くて済む。)

 というわけで、遊水地の建設は、かなり少ない額で済む。ダムに比べれば、コスパは圧倒的にいいはずだ。

 ※ さらに、「現地を湿地にして、環境保全に役立てる」という案も可能だ。
 ※ ちなみに、渡良瀬遊水地は、豊かな自然が観光名所となっており、旅館やホテルができて、観光客を引き寄せている。
  → 渡良瀬遊水地の見所5選



 【 追記 】
 Google マップで現地 の 3D写真を見たら、もっとうまい案が見つかった。
 川から少し慣れたところに、丘陵があり、その奥の台地に人家が多い。だから、この台地に人家を移転してもらえばいい。一方、川のそばの広大な低地は、すべて水没させてしまえばいい。

 こうすれば、「天然の遊水地」を作るのと同じことになる。しかも、費用は格安だ。
  ・ 越流堤の工事(数カ所)に数億円。
  ・ 水没予定地に住んでいる人には、高台への引っ越しの補助金。

 以上のすべてで、百億円でお釣りが来る。
 引っ越ししない人は、水没してしまえばいい。自分でそれを選んだのだから、それでいい。(ただし水没したら、見舞金を少し上げる。)

 結局、百億円で問題を解決できる。
 そもそも、水害の損失 100億円を避けるために、工事費に 1000億円以上もかけるというのが、根本的に狂っている。

 なお、この土地よりも下流の側への水没対策は、この土地を(部分的に)「天然の遊水地」にすることで、(部分的に)解決可能だ。

 より完璧な対策を望むのならば、この地域を「広大な遊水地」にすればいい。その場合には、工費が数百億円になる。
 ただし、天然の丘陵を堤防の代わりに使うことで、工費は大幅に削減できる。

 ※ 詳しくは 3Dマップを参照。
    → https://j.mp/364w2EF

 (手前に川があり、その奥に広大な田畑があり、その奥に丘陵部があり、その奥に人家がある。丘陵が洪水を防ぐので、丘陵の向こう側に人家が移転すればいい。丘陵の手前は、天然の遊水地にすればいい。こんなところに人が住むことの方がおかしい。危険な土地に人を住まわせるために数千億円も費やすというのは、根本的に狂っている。)
 
 
posted by 管理人 at 22:07| Comment(3) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
http://suigenren.jp/news/2019/06/10/11708/

費用
遊水地 1兆2000億
ダム建設  1200億 (7割がすでに完成しているため)

費用のみ観点でいうと、コストパフォマンス
悪くないですか?
Posted by 通りすがり at 2020年09月24日 16:09
> 遊水地 1兆2000億

 リンク先を見ましたが、
 「完成までの費用が最も高いのは遊水地(17カ所)を中心に、人吉地区と川辺川筋の直轄管理区間で引堤(両岸)などを組み合わせる案で1兆2000億円」

 とのことなので、
  ・ 遊水地は 17箇所もある。
  ・ 引堤(堤防解体と再建設)
 という、べらぼうな無駄工事をすることになる。これじゃ、莫大なコストがかかるのは必然だ。
 特に、引堤というのが、わけがわからん。遊水地をつくるなら、引堤は必要ないのだが。
 
Posted by 管理人 at 2020年09月24日 19:16
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。

 3Dマップの解説も付け加えました。
Posted by 管理人 at 2020年09月25日 07:41
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