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朝日新聞の記事から。
《 コロナ治療薬候補のアビガン、承認申請へ 有効性確認か 》
富士フイルム富山化学が近く国に製造販売の承認を申請することがわかった。9月中旬まで実施した臨床試験(治験)のデータを20日に精査し、一定の有効性が確認できたもようだ。
申請後は、厚生労働省が有効性や安全性などを審査し、承認するか決める。
アビガンはこれまで一部の病院で、患者の希望と医師らの判断で使える「観察研究」という枠組みで使用されてきた。正式に承認されれば、従来よりも多くの病院、患者に使用できる可能性がある。感染初期の軽症の段階で使うことが想定されている。
( → 朝日新聞 )
現段階では、承認の申請をするだけだが、通常、申請通りに承認されるはずだ。承認に向かって大きく前進したと言えるだろう。
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なお、富士フイルム(富山化学)の治験は、藤田医大の治験とは違って、単盲検ランダム試験だ。
単盲検ランダム化多施設共同比較試験。対象は、非重篤な肺炎を合併したCOVID-19の患者。20歳から74歳で、RT-PCR検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性となり、胸部画像での肺病変、37.5℃以上の発熱、治験薬投与開始前の妊娠検査で陰性を認める入院患者を組み入れる。酸素吸入が必要な患者は組み入れず、労作時のみ呼吸困難を呈する肺炎の患者のみを対象とする。
被験者を、抗菌薬や輸液などの標準治療にファビピラビルを上乗せする群または標準療法にプラセボ(偽薬)を上乗せする群に割り付け(割り付け割合は非公表)、観察期間である28日間、ファビピラビルの有効性、安全性を評価する。目標症例数は96例。
( → 富士フイルム、新型コロナに対する「アビガン」の治験の詳細が明らかに:日経バイオテクONLINE )
ここでは、プラセボを与えられた患者は、アビガンの治療を受けられない。それも、軽症ではなく、かなり症状が重い(肺炎になっている)のにも関わらず、だ。
これは、私の批判した「人体実験」を、まさしくやる形だ。ひどいものだ。プラセボをもらったせいで死んでしまった患者もいるかもしれない。ま、人体実験なのだから、犠牲になって死者が出るのも当然だが。(人類への貢献のためには、犠牲になる死者が出るのも仕方ない、という立場かも。……ああ、可哀想に。)
それでもともかく、ランダム試験だから、「アビガンは有効だ」という結果は、ちゃんと得られるのだろう。
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とはいえ、「肺炎になった患者を対象とする試験」なんて、よくもまあ、こんなに非人道的な試験をやったものだ。
どうせなら、「肺炎になっていない患者を対象として、肺炎になったら、治験を途中で打ち切り」(プラセボ患者には、肺炎発症以後はアビガンを投与する)というふうにすれば、まだしも人道的だったのだが。
※ プラセボ患者が肺炎を発症したら、その時点で結果は判明しているのだから、さらにそれ以上もプラセボを投与し続ける意義がない。必要なデータはすでに得られている。
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なお、今回の試験は、「陰性化までの期間を知る」という試験だ。
第3相臨床試験の主要評価項目は、体温、酸素飽和度、胸部画像所見の軽快、SARS-CoV-2が陰性化するまでの期間。具体的には、症状軽快後、48時間後に一定の間隔で2回のRT-PCR検査を実施し、2回とも陰性だった患者を抽出して、投与開始から1回目のRT-PCR検査で陰性が出るまでの期間をファビピラビル群とプラセボ群で比較する。
これは、すでに肺炎になった患者だから、こういう試験を必要とする。
しかし、まだ肺炎になっていない軽症者ならば、「陰性化までの期間を知る」という試験は必要ない。特に、プラセボ群では、その必要はない。(悪化したのならば、改善[ = 陰性化 ]の効果などはないからだ。)
ただ、富士フイルムの試験は、「すでに軽度の肺炎になった患者」への効果を見るには適している。
一方、私の提唱するのは、「まだ肺炎になっていない軽症者」への効果を見るには適している。
両者は、試験対象が異なるので、意味の異なるものだとは言える。
ただし、単に「アビガンの有効性」を知るためであれば、どちらにしても、あまり違いはないだろう。特に、「感染初期に投与することの是非」と問うのであれば、私の提唱する方式の方が優れているだろう。
[ 付記 ]
ともあれ、アビガンが承認されると、多くの病院で処方が可能となる。たとえば、指定病院にまで行けない介護施設の滞在者が、アビガンの処方を受けることができる。
現状では、介護施設の滞在者は、指定病院にまで行けないせいで、アビガンの処方を受けられない。そのせいで、死亡してしまった、という事例もあった。
→ アビガン未承認で大量死 : Open ブログ
今後は、こういう悲劇は起こりにくくなるだろう。それが、アビガン承認の効果だ。
【 補説 】
アビガンを投与するのは、「感染初期(高熱発症以前)よりも、感染の途中(高熱発症の直後)の方がいい、と私は考えてきた。理由は、「その方が、体内の免疫力が振る発揮しているから」というものだった。
ところが、前項の仮説によると、「感染の初期からでもウイルスの数は少ない方が重症化しない」ということなのだから、「感染の初期からアビガンを投与した方がいい」ということになりそうだ。
どうも、こちらの方が正しいらしい。
となると、アビガンの正しい処方は、「感染が PCR 検査で判明したら、すぐにアビガンを投与する」というふうにするべきだろう。
ただし、標準療法では「最初の日に倍量を投与する」ことになっているが、そうしない方がいいだろう。「最初からずっと標準量を投与して、途中で高熱を発したら、その時点で倍量を投与する」というふうにすれば十分だろう。
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50錠、約1万8000円で、購入には医師の処方箋(せん)が必要となります。
ロシアの製造元は「投与した患者の半数以上に1週間以内に症状の改善がみられた」とコメントしています。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000193741.html
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なお、50錠は1回分には足りない。フルコースでは 122錠だ。(1回9錠×2が1日間と、1回4錠×2が9〜13日間)
ただしフルコースは重症者向けの場合。初期の軽症者向けには、少量・短期間で足りるだろうから、50錠でも足りそうだ。1回3錠×2 が8日間なら 48錠。もし途中で症状が悪化したら、増量して、買い増せばいいだろう。
でも、買い増すと、3.6万円になる。高いね。
ちなみに、インフルエンザ用としては、1回8錠×2 が8日間と、1回3錠×2 が4日間で、合計 40錠。コロナ用には、倍ぐらいの総量が必要だとも言われている。1回4錠の期間が長引くらしい。
日本での価格は、40錠で 8000円ぐらいらしい。これは過去の大量生産の備蓄の分。政府負担があるので、患者負担はゼロ。
最初に効果なしと報道された藤田の研究者が、報道の誤りを指摘してますね
→ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64233890V20C20A9EA1000/?n_cid=SNSTW001