2020年09月16日

◆ 印刷すると間違いに気づく

 画面で見ても間違いに気づきにくいが、紙に印刷すると間違いに気づきやすい。そのわけは? 

 ──

 これについて論じた記事がある。
  → 「紙」に印刷すると間違いに気づく理由 | リコー
「あれっ!こんなところを間違えてるよ」―。パソコン画面上で何回も確認して間違いがなかったのに、紙に印刷すると原稿のミスが...。こんな経験はだれにでもあるが、その理由がよく分からない。

 こう説明したあとで、次の説を紹介する。
 カナダのマーシャル・マクルーハン(1911〜1980年)は紙のほうが間違いに気づきやすい理由について、「反射光」と「透過光」の性質の違いを指摘した。前者は本を読むとき、いったん紙に反射してから目に入る光。一方、後者はパソコンやテレビの画面を見る際、直接目に入る光を指す。
 紙に印刷して読むとき、すなわち反射光で文字を読む際には、人間の脳は「分析モード」に切り替わる。目に入る情報を一つひとつ集中してチェックできるため、間違いを発見しやすくなるのだ。
 これに対し、画面から発せられる透過光を見る際、脳は「パターン認識モード」になる。送られてくる映像情報などをそのまま受け止めるため、脳は細かい部分を多少無視しながら、全体を把握しようとする。細部に注意をあまり向けられないので、間違いがあっても見逃してしまう確率が高くなる。

 しかし、「反射光」と「透過光」の違いなんて、見た感じでわかるわけがない。上の説は信頼性が低い。

 ──

 では、正しくは? 
 私の説明は、こうだ。
 「単に解像度の違いがあるだけだ。画面では解像度が低いが、紙は解像度が高い。その差だ」

 では、解像度が違うと、どうして冒頭の差が生じるのか? こうだ。
 「解像度が低いと、文字は字画が粗くて、形状が不正確である。(画面に近づいて虫眼鏡で見るとわかる。)……このような不正確な形状を見て、正しい形状に認識するように、脳内で自動補正をかけている。このとき、脳が自動補正モードになってしまうので、小さなエラーを無視するようなモードになってしまう。だから、エラーが見つかりにくいのだ」


  → 粗くて不正確な文字の拡大図出典)(

 上の画像を見ればわかるように、液晶の画面の字画というのは、もともと粗くて不正確なものだ。それを見て正確な文字として認識するためには、脳は自動補正をかけている。脳がそういうモードになっている。このとき、小さなエラーは無視するモードになっているから、文章に小さなエラーがあっても気づきにくいのだ。

 正確に言えば、前者は「形状」のエラーの補正であり、後者は「意味」のエラーの補正だが、両者は脳のレベルでは区別されがたい。脳がいったん「小さなエラーを無視して補正する」というモードになってしまうと、形状でも意味でも、どちらも同じように、小さなエラーが無視されるようになってしまうのだ。

 ……というのが、私の仮説である。実験的に証明されたわけではないのだが、かなり納得性のある説明だろう。



 [ 付記 ]
 ついでだが、アップルのフォントは「字画がなめらかで、見やすい」という評価だが、拡大すればわかるように、字画が大幅ににじんでしまっている。
 これを見て、目の悪い人ならば、自動補正がかかるので、きちんと正しい文字で読めるのだろう。
 しかし、目の良い人が見ると、にじんだ字画がそっくりそのまま見えてしまう。こうなると、かえって文字が判読しがたい。

 この件は、前に言及したことがある。
  → iPad,iPhone でゴシック体: Open ブログ
   ※ 最後に灰色の小さな文字で記してある。

 どうしてこうなるか? Windows では、横方向のスムージングがあるだけだが、アップルでは、縦方向のスムージングもあるからだ。このスムージング機能のせいで、文字がにじむ。(ギザギザはなくなるが、ぼやけて、にじむ。)
 
 なお、文字の にじみの画像は、下記で見られる。
  → macOS Catalinaで非Retinaディスプレイのフォント表示が汚くなった問題を解決する

  ※ この問題は、高解像度の Retina ディスプレイでは、余り感じられない。やはり「高解像度は有利」なのである。
posted by 管理人 at 23:41| Comment(3) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 筆者の主張する仮説のうち、「脳内自動補正モード」に、私も一票です。ただし、私がその仮説を補完するならば、「解像度」よりも「時間」がトリガーとして重要としたいところです。自分で文章をタイピングした直後は、「脳内補正モード」が働きやすい。これに対して、時間が経ってから、投稿された文章を読んだり紙に印刷されたものを読むと、「脳内補正モード」が働きにくい。よって、間違いや不自然さ(形状・意味の)に気付きやすい、ということかと考えています。

 例えば、このコメントでも他のSNSの投稿でも、書いているときや「確認する」ボタンで確認したときは間違いに気づかずに、「書き込む」ボタンで投稿してからあらためて読むと間違いに気づくことがあります(同じディスプレイ、同じフォント、同じサイズの表示でも)。
Posted by かわっこだっこ at 2020年09月17日 14:28
> 時間が経ってから、投稿された文章を読んだり紙に印刷されたものを読むと、「脳内補正モード」が働きにくい。

 時間がたつと……働きにくい、というのは、おかしいです。このモードは、時間に関係なく働きます。

 この件は、正しくは、「記憶に引きつけられる」ということでしょう。
 たとえば、「山田」と書いたはずだという記憶があるから、「天田」という文字を見ても、(記憶に引きずられて)「山田」と読んでしまう。しかし時間がたつと、記憶が薄らぐから、過去の記憶に頼らずに読むことで、「天田」と正しく読める。
 こう理解すれば、「時間がたつと正しく読める」ということが説明されます。なぜなら「時間がたつと記憶が薄らぐ」ということは、すでに判明しているからです。

 また、時間がたつ前と後とでは、どちらも同じ画面で見ているはずなので、脳内補正モードの違いはなさそうです。
Posted by 管理人 at 2020年09月17日 15:54
 コメントでの追加の論考、ありがとうございました。

 ところで、本稿で紹介されたマクルーハンの説について、「これは都市伝説のようなものである」という旨の論考記事を Hatena Blog に見付けましたので、ご参考までに紹介します。ファクトチェックのようなもの。

 https://www.netlorechase.net/entry/2020/09/19/070000?fbclid=IwAR0sd__atG2z5VWxmmlWOZTha1w0QcLh0G36GOoH3lEe4CYDNKkjXt0KJmc
Posted by かわっこだっこ at 2020年09月20日 10:59
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