2020年09月08日

◆ 原発ゼロはなぜダメか?

 「原発ゼロ」という政策は、なぜダメか? 経済性と安全性を考慮した上での話か? いや、違う。

 ──

 旧・民主党の合流政党が、新党の綱領案で「原発ゼロ」を掲げた。このことで、電力系の労連の反発を招いて、統合が不完全になった。これは、戦術的な失敗だと見なせる。この件は、先に論述した。
  → 民主党政権の失敗の理由: Open ブログ

 ただ、戦術的な問題とは別に、根源的・原理的な問題がある。このような政策は本質的にやってはいけないことなのだ。

 なぜか? それは、同じような目標を掲げている SDGs という運動と比べるとはっきりする。SDGs もまた、同じように環境重視(再生エネ重視)の方針を取り、世界的にも一大潮流となっている。しかしそれは、過激な環境重視の運動とはきっぱりと異なっている点がある。それは、何か? 
 それは、行動が自発的だということだ。一方、新党の綱領案のようなものは、自発的であるどころか強制的だ。なぜなら「国全体として一丸となってその方針を取る」というふうにしているからだ。そこでは、反対者が反対する権利は無視される。

 具体的に例示すると、こうだ。
  ・《 任意 》 太陽光発電を購入したい会社が購入する。
  ・《 強制 》 太陽光発電を購入したくない会社にも購入させる。

 前者は《 任意 》であり、購入するか否かは、それぞれの会社が決める。
 後者は《 強制 》であり、購入するか否かは、それぞれの会社が決めることはできない。政府の方針で一律に強制される。

 実際、現在あちこちで、SDGs を推進している会社があるが、いずれも任意の行動でやっている。たとえば、これだ。
  → 「SDGs列車」東西で始まる 最新の省エネ車両で運行:朝日新聞

 一方、菅直人首相の肝いりで実現した、太陽光発電の推進策( FIT )は、強制である。国民の全員が、課徴金みたいな余計な金を、否応なしに強制的に聴取される。電気料金に上乗せされる形で。
 その額は、標準家庭では、2019年には月額 767円 である。
  → 「FIT(固定価格買取制度)」とは?私たちの生活への影響
 年間1万円ほどの金を強制的に徴収しているわけだ。のみならず、産業界からも同程度の金額を徴収しているので、物価が値上げされた分も合わせて、年間で2万円ぐらいを徴収されていることになる。

 ──

 では、正しくは、どうするべきか? それは、前に別項で示した。
  → 電力購入を自由化せよ(グリーン電力制度): Open ブログ

 ここでは「グリーン電力制度」というものが紹介されている。太陽光でも水力でも原子力でも、購入者が自分の好きな種類の電力を購入できるのだ。
 たとえば、
 「価格は1割高くても、太陽光や風力の方がいい」
 と思う人は、そういう電力を購入すればいい。そう思わない人は、別の種類の電力を購入すればいい。こうすれば、各人が SDGs をやったのと同じ結果になる。

 ここで、国民全員が「原発ゼロ」を望むのならば、原発電力を購入する人がいなくなるので、自動的に原発は稼働しなくなって、原発ゼロが達成される。
 逆に、「原発ゼロ」を望まない国民が多ければ、原発ゼロは達成されない。
 こういうふうにして、原発ゼロが達成されるかどうかは、あくまで国民の意思によって自動的に決まる。これは最も「民主的な」方法である。

 ひるがえって、政府が一方的に「原発を稼働させる」または「原発を稼働させない」と決定するのは、「民主的」とは正反対の方針である。それは「独裁的」とも「専制的」とも言える。
 上の新党の綱領案は、方向性こそ自民党とは正反対だが、「民主的ではなく、独裁的・専制的」という点では、自民党と同様なのだ。それは、国民の意思を尊重する民主的な考え方とは異なるし、SDGs の考え方とも異なる。あまりにも押しつけがましいのである。

 ──

 この押しつけがましさは、新党の綱領案 にはっきりと見て取れる。
私たちは、一人ひとりが個人として尊重され、多様な価値観や生き方を認め、互いに支え合いつつ、すべての人に居場所と出番のある共生社会を構築します。
私たちは、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します。
( → 新党の綱領(案)

 話の後半では、「原発ゼロ」の実現を公約している。それへの反対は一切、許容されない。FIT と同じく、全員がその方針への賛同を強制される。……これはもはや「民主的」な政治とは相容れないものだ。

 それでいて、話の前半では、その逆のことを書く。「一人ひとりが個人として尊重され、多様な価値観や生き方を認め」と。しかし、原発の(部分的)維持を主張する人々の意見を弾圧しておきながら、そんなふうに書くのは自己矛盾もはなはだしい。これじゃ、香港市民を弾圧する中国政府が、「自由と民主主義を尊重しています」と自画自賛するようなものだ。言行不一致も甚だしい。

 話の前半と後半とで、これほどにも正反対で自己矛盾を書くというのは、頭がおかしいと言うしかない。
 新党は、今すぐ綱領案を書き換えるべきだ。次のいずれかにするべきだ。
  ・ 党の方針を国民に強制して、個人の自由を否定します。反対者がいても、党の方針を否応なしに推進して、原発ゼロを実現します。
  ・ 個人の自由を尊重します。原発を減らすかどうかは、強制しないで、各人の選択に任せます。結果がどうなるかは、国民の意思しだいです。

 このどちらでもいい。それなら、矛盾は起こらない。
 一方、現状のように、「一人ひとりが個人として尊重され、多様な価値観や生き方を認め」と書きながら、「原発ゼロを否応なしに強制する」というのでは、自己矛盾そのものだ。頭がおかしいというしかない。



 [ 付記 ]
 このような「独裁的・専制的」な傾向は、旧・民主党の行った「消費税増税」の方針とも共通する。国民の大多数が反対しているのにもかかわらず、否応なしに消費税増税を導入しようとした。これはまさしく「民主主義」に反するもので、「独裁的・専制的」だと言える。
 そして、このような傾向こそ、旧・民主党が国民から総スカンを食った原因だった。前に述べたとおり。
  → 民主党政権の失敗の理由: Open ブログ
 なのに、彼ら議員たちには、その自覚がない。だからこそ、今また同じように、押しつけがましい政策を取り、それに反する仲間を排除する。
 この「排除の原理」は、希望の党とも似ている。こういう政党は、将来的には(希望の党のように)崩壊が不可避だろう。
 


 【 関連項目 】
 各人が自由に購入できるグリーン電力制度がどういうものであるかについては、下記項目にある。
  → 電力購入を自由化せよ(グリーン電力制度)



 [ 余談 ]
 原発では、テロ対策のために、やたらと巨額の安全対策費を投入している。しかし、これはテロ対策としては無駄な費用だ。
 おそらくは、テロ対策と称して、本心では「北朝鮮のミサイルへの対策」をしているつもりなのだろう。だから馬鹿みたいな巨額の金をかけるわけだ。(陸上イージスみたいに。)
 しかし「北朝鮮のミサイルへの対策」ならば、原発に巨額の安全対策費をかけるよりも、もっとうまい方法がある。原発よりももっと重要な攻撃目標を、日本国内に設置することだ。そうすれば、北朝鮮のミサイルは(原発よりも)そっちに向かっていく。
  → 原発のコストアップの無駄: Open ブログ

 この方法を取れば、原発の安全対策として、莫大な「テロ対策費」(実はミサイル対策費)を投じる必要はなくなる。
posted by 管理人 at 22:09| Comment(5) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後のあたりに [ 付記 ] を加筆しました。
 このような「独裁的・専制的」な傾向は、旧・民主党の行った「消費税増税」の方針とも共通する……という話。
Posted by 管理人 at 2020年09月09日 07:58
原発電力を購入したい人だけ購入というのはいい話だと思う。原発電力の購入価格は廃炉費用まで含めて算出すれば、結局化石燃料発電よりも自然エネルギー発電よりもだいぶお高くなるでしょうから、原発電力を買う動機もなくなり、廃炉も進む。
Posted by まち at 2020年09月09日 08:51
> 廃炉費用まで含めて算出すれば

 廃炉費用まで含めて算出すると、価格が高騰するせいで、誰も原発の電力を買わなくなります。すると、廃炉費用を負担する人がいなくなるので、費用が出なくなり、廃炉は進まなくなります。原発は、ボロボロになったまま放置され、荒廃して、放射線を撒き散らします。
 廃炉費用は、全国民で負担するしかないでしょう。これまで全国民で使ってきたんだから。
 ただし新規原発の分は、受益者負担でいい。すると、廃炉費用をまかなえないから、新規原発は建設不可能となる。……これが妥当でしょう。
Posted by 管理人 at 2020年09月09日 10:27
核燃料サイクルコスト、廃棄コスト、原発村への補助金まで含めて試算し、電力を選べば、原子力は採算性が悪いです。
Posted by g at 2020年09月09日 22:06
 採算性が悪いのはそうなんだけど、今さら過去に遡って、原発の建設停止をするわけには行かない。タイムマシンがあるわけじゃないんだから。

 また、現時点で「稼働停止」を決めたとしても、廃炉のための費用が浮くわけじゃない。そのための費用はどっちみち必要だ。

 どうも、原発否定論の人の多くは、「稼働停止を決めれば、あらゆるコストが一挙に浮く。廃炉費用もゼロになる。過去に払った補助金も戻ってくる」と思い込んでいるようだ。
Posted by 管理人 at 2020年09月09日 22:15
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ