2020年09月04日

◆ デコイ・ミサイル

 敵の対空ミサイルからの攻撃を逃れるために、戦闘機はデコイ(おとり)を使うといい。特に、自走式のもの。

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 敵の対空ミサイルからの攻撃を逃れるために、戦闘機はチャフ(金属薄片)や、デコイ(おとり)を使うことがある。
  → アメリカ海軍 次世代レーダー誘導ミサイル用デコイの開発を発注

 ここでは、ただのデコイではなく、最新式のハイテク・デコイが考案されている。敵の対空ミサイルからのレーダーを受けて、そっくりの模擬反射波を返すことにより、目標が二つあるように見せかけて、敵の対空ミサイルを混乱させる、というもの。

 しかしこれは、あまりよろしくないと思う。二つのうちの一つは本物なのだから、どちらか一つを選べば、確率 50%で目標にぶつかる。こんなことでは、十分な回避策にはならない。
 仮にうまく回避しても、2発目が来たら、またしても確率 50% でぶつかる。こんなことを繰り返していたら、いつかはきっと撃墜されてしまう。非常にまずい。困った。

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「ただのデコイではなく、自走するミサイルとしてのデコイを戦闘機の後方に発射する。敵のミサイルは、そのデコイ・ミサイルを本体だと思い込んで、デコイ・ミサイルを破壊する。と同時に、自分も破壊される。かくて、戦闘機本体は、敵ミサイルの攻撃を免れる」


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 まず、原理から考え直そう。
 現代のステルス戦闘機の戦闘では、ドッグファイト(接近戦)は起こらない。なるべく遠くから、敵の戦闘機を発見する。
 たとえば、F-15 と F-35 なら、こうだ。F-15 が「 F-35 はいつ来るかな」と思って、キョロキョロ探しているが、 F-35 はステルスなので、なかなか見えない。そこへ F-35 がこっそり近づいて、相手に気づかれないまま、対空ミサイルを発射する。その対空ミサイルが F-15 に接近して、撃墜する。
 これが基本だ。相手が F-15 でなくて他のステルス機であっても同様だ。
 こうなると、少しでも早く発見して、少しでも早く対空ミサイルを発射するといい。それができた方が勝つ。
 ただし、いくら早く相手を見つけても、ミサイルがその長い距離を飛ばないと、相手に届かない。だから、ミサイルの射程は長くする必要がある。すると、射程を長くするために、ミサイルは大型化する。すると、大型化したミサイルは、戦闘機には搭載しにくいので、搭載できる本数が少なくなる。搭載されたミサイルの本数が少ないと、実戦では弾切れになりやすい。そして、弾切れになると、あっさりと攻撃を受けて撃墜されてしまう。
 結局、現代の戦闘機の対戦では、相手を弾切れにさせた方が勝つのである。そして、そのためには、相手にミサイルを「無駄打ち」させればいい。そのための道具が、デコイだ。
 デコイは、対空ミサイルよりも小さくて軽くて済む。1基のデコイで、敵の対空ミサイル1基を無力化できれば、10円玉と 100円玉を交換するようなものだから、こちらが有利となる。かくて、デコイを使うと、有利になる。

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 ここで、本項で提案するのは、自走式のデコイ・ミサイルだ。従前のように、戦闘機本体に引っ張られるタイプではない。ちゃんとしたミサイルとして空を飛ぶ。(ただし飛行距離はごく短くていい。大きさもごく小さくていい。)
 使い方は、次のようにする。

  ・ 敵が対空ミサイルを発射する。
  ・ その対空ミサイルがどんどん近づいてくる。
  ・ 自機はステルス性能をわざと弱める。(尾翼に電波反射板を立てる。)
  ・ 敵の対空ミサイルは、自機にどんどん近づいてくる。
  ・ 自機から後方へ、デコイ・ミサイルを発射する。
  ・ 同時に、ステルス性能を復活させる。(反射を止める。)
  ・ 敵の対空ミサイルは、目標をデコイミサイルへと変更する。(対象が切り替わる。区別できないので。)
  ・ デコイ・ミサイルは、自走して、自機の後方を飛ぶ。
  ・ そこに、敵の対空ミサイルが衝突する。
  ・ デコイ・ミサイルと、敵の対空ミサイルは、ともに破壊される。
  ・ 自機はゆうゆうとステルス状態で飛び続ける。


 以上のようにして、敵の対空ミサイルを回避できる。

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 ここで、矛と盾の関係が生じる。
 こっちはデコイ・ミサイルを盾として使うことで、敵の矛を無効化することができた。
 では、敵が同じようにデコイ・ミサイルを使ったら? デコイ・ミサイルを使うような敵を攻撃するには、どうすればいいか? 

 その場合には、2段式の対空ミサイルを使うといいだろう。
 2段式のうち、2段目を、小型の第2ミサイルとする。敵のデコイミサイルに近づいたら、この第2ミサイルが発射されて、ブーストして、高速でデコイを破壊する。
 そのあと、敵のステルス機本体はゆうゆうと飛んでいるが、2段式の対空ミサイルの1段目はまだ残っている。この1段目が強力な電波を発して、敵のステルス機に近づいて、敵のステルス機を破壊する。(2段式の1段目で破壊する。)
 これなら、2段式の一方がデコイ・ミサイルで無効化されても、残り一方があるから、それが敵のステルス機本体を破壊できる。
 つまり、敵が新たな盾を用意したら、こちらは二重の矛を用意することで、敵の盾を無効化できる。

 ──

 ここでまた矛と縦の関係が生じる。
 こっちは2段式の対空ミサイルを盾として使うことで、敵のデコイ・ミサイルを無効化することができた。
 では、敵が同じように2段式の対空ミサイルを使ったら? 2段式の対空ミサイルを使うような敵の攻撃から逃れるには、どうすればいいか? 
 
 その場合には、デコイ・ミサイルをまた発射すればいいだろう。2段式ミサイルの2段目は、すでにデコイミサイルで破壊された。次に1段目がやって来るが、それにはまた別のデコイ・ミサイルを発射して、そちらに敵ミサイルを衝突させる。こうして、敵の2段式ミサイルの攻撃から逃れることができる。

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 ここでまた矛と縦の関係が生じる。
 こちらと同じ方法を取って、敵がデコイ・ミサイルを二つ発射するとしたら、こちらはどうするべきか? なすすべはないのか? 
 いや、そのときには、こちらは2段式ミサイルをもう1基、発射すればいいだろう。そうすれば、うまく行く。

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 以上のようなことを、何度も何度も繰り返せば、結局は、対空ミサイルやデコイをたくさん積んでいる方が勝つことになる。
 それは何か? 運動性能を優先した戦闘爆撃機ではなくて、爆弾搭載量を優先した小型爆撃機である。ステルス機同士の戦いにおいては、運動性能よりも、攻撃用・防衛用の兵器の搭載量が、戦いの勝敗を決めるのだ。

 これが将来の航空戦の情景(想像図)となりそうだ。



 【 関連サイト 】






 【 追記 】
 デコイにレーダー発信器を搭載すると、後方から接近してくる敵ミサイルを検知することができる。
 この場合、デコイにはレーダー発信器だけがあって、レーダー受信機はない。受診は、ステルス機の本体に搭載しているレーダー受信機で行う。

 なお、レーダー・デコイの電波を発信する方向は、後方と前方を切り替えることができるようにするといい。敵から逃げるときは後方に電波を発信し、敵を追い詰めるときは前方に電波を発信する。

 敵の戦闘機は、そのレーダー・デコイの発信する電波を検知することができるので、そのレーダー・デコイを破壊することもできる。しかし、レーダー受信機を搭載しているステルス機本体は、敵には見えないので、敵から攻撃されない。

posted by 管理人 at 23:58 | Comment(5) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
赤外線誘導ミサイルには無効ですね。

>>・ 敵が対空ミサイルを発射する。
  ・ その対空ミサイルがどんどん近づいてくる。

現代のミサイルはゲームや映画みたいなレーダー照射やミサイルの接近の探知がそもそも難しくなっています。
またチャフフレアに対する対策もっていされており、妨害工作も通用しない。
相手に補足されミサイル発射された時点で、もうあとは外れること神に祈るしかないレベルだそうですよ。
だからこそ、地上配備の大型レーダーやAWACSとのデータリンクを導入したステルス機をどこも欲しがるのです。
Posted by 細波 at 2020年09月05日 10:34
> 赤外線誘導ミサイル

 ステルス機がエンジン出力を切って、かわりにデコイがエンジン出力を出せば、赤外線センサーはデコイの方を目標物として追いかけるようになる。
 デコイを自走式にする目的は、デコイ自身が熱源となって、赤外線方式のミサイルを引きつけるためです。
 赤外線対策をするのでなければ、デコイをわざわざ自走式にする必要はない。自走式にするのは、赤外線対策のため。

> もうあとは外れること神に祈るしかない

 だからこそ、ステルス機同士の戦いでは、デコイを使う方が圧勝できる。敵のミサイルは無効化され、こちらのミサイルは的中する。100対0 の比率で、圧勝できる。
 神頼みなんかより、ずっと利口だ。

Posted by 管理人 at 2020年09月05日 11:25
>>ステルス機がエンジン出力を切って

エンジンの排熱だけで判定していたのはベトナム戦争ごろですね。
形状や温度まで含めて判定しているので、ごまかせないんですよ。

>>ステルス機同士の戦いでは、デコイを使う方が圧勝できる

そもそも相手にミサイルを発射されたことが検出が困難になっているので、デコイを出すタイミングがありません。
またレーダー誘導式のミサイルも相手の形状大きさを見ているので、話はそんなに単純ではありません。


>>敵のミサイルは無効化され、こちらのミサイルは的中する。100対0 の比率で、圧勝できる。

そのすごいデコイは相手も使ってくるので、どの沼ですね。
Posted by 細波 at 2020年09月05日 14:39
> 形状や温度まで含めて判定しているので、ごまかせないんですよ。

 ちゃんと読みましょう。エンジンを切ってしまうのだから、元の本体は検出できません。ミサイルは、迷走するか、デコイにぶつかるか、二者択一。ステルス機本体は見えない。

> デコイを出すタイミングがありません。

 そんなことはないです。実際、米軍はデコイを研究しているんだし。米軍の最先端技術よりも細波さんの方が技術が上だとでも言いたいの?

> 相手の形状大きさを見ている

 だから、反射板などを使ってステルス状態を切り替える、と書いてあるでしょ。ちゃんと読みましょう。めくらましをするですよ。
 
> 相手も使ってくる

 本文中に書いてあるでしょ。ちゃんと読みましょう。

 ──

 ※ どれもこれも、本文中で説明済みのことばかり。あなたは人の話を読まないで(理解しないで)、自己流解釈ばかりしているから、話が通じない。コミュ障がひどすぎるね。
Posted by 管理人 at 2020年09月05日 15:44
なんか、昔アメリカで使っていたAD-20 「クウェイル」(ウズラ)みたいですね。もっともあれは核爆撃機や攻撃機をSAMから守るための空中発射式デコイでしたが。 だから結構大型でレーダー反射面積を大きく持つようにしてあったようです。
Posted by 旋盤工 at 2020年09月11日 05:46
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