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この問題は、環境保全の点から重要なので、私も前にざっと考えたことがあったのだが、「森林や自然を保全すればいいんじゃないの?」と漠然と感じていただけだった。
そして歳月は流れ、先日、次の記事が出た。
空を自在に舞うオオタカに魅せられた10歳の少年が「猛禽(もうきん)新聞」を作り続け、公益財団法人・日本自然保護協会による「日本自然保護大賞2020」で選考委員特別賞を受賞した。
……
釧路湿原には、宮部君の自宅近くにある上高(かみたか)湿地とは違い、猛禽類がたくさんいる。どちらも「ラムサール条約」で保護される貴重な湿地なのになぜだろう――
( → 小5男児、猛禽類に魅せられて 湿地を守る発信に特別賞:朝日新聞 )
猛禽類は釧路湿原にはたくさんいるのに、上高湿地にはほとんどいない。なぜだろう?
彼にはわからないようだが、私にはおよそ見当が付いた。面積の差だ。
上高湿地は豊田市中心部から北東に約8キロの同市上高町にあり、広さ5.45ヘクタール。
これではあまりにも狭すぎる。ひるがえって、釧路湿地は、1〜2万ヘクタールもある。ざっと 200〜400倍だ。
実を言うと、上高湿地を調べると、そのほとんどは山地と池であって、まともな湿地はごくわずかだ。湿地だけを見れば、千倍か数千倍ぐらいの差がありそうだ。
これほどにも面積に大きな差がある。そして、面積の差は、獲物となる動物の差につながるから、猛禽類がどちらの土地を選ぶかは、言わずもがなだろう。
※ 猛禽類にとって、湿地とは、餌場である。
※ 一方、ねぐらは、森林の高い樹木のてっぺんのあたり(樹頂や樹幹)にある。そんなに高いところまで上ってくる哺乳類はいないからだ。安全対策。逆に言えば、猛禽類がねぐらを構えるには、特別に高い樹木が必要となる。低い樹木しかないような地域は、不適だ。
記事にはこうある。
宮部君は「釧路湿原で学んだことを生かせば、上高湿地でも猛禽類が安心してすめるかもしれない」と考え、3年生の終わりごろから湿地の保全活動に参加するようになった。保全活動は月1回あり、宮部君も落ち葉集めや草刈りなどをする。
残念。いくら上高湿地でで保全活動をしても、そこは狭すぎるがゆえに、(獲物となる動物が不足するので、)猛禽類はやってこないのである。
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では、猛禽類を招くには、どうすればいいか? やはり、広い湿原が必要だ。念のために、面積と生息動物の一覧を調べると、そのことは裏付けられた。
→ 環境省_ラムサール条約と条約湿地_日本の条約湿地
これを見てもわかるように、猛禽類の生息が可能になるには、かなりの大面積が必要だ。小さな面積の湿地には、猛禽類はやってきそうにないのだ。
湿地の上をざっと飛行するだけでも、相当の大面積が必要となる。5ヘクタールぐらいでは、ちょっと飛んだだけで、すぐに領域をはみ出してしまうだろう。そんな狭いところには、猛禽類は来ない。
ちなみに、関東では、渡良瀬遊水地という広い湿地があって、ここにはちゃんとオオタカがやって来る。
→ 渡良瀬遊水地 オオタカ - Google 検索
では、上記の少年の住んでいる名古屋市では、どうか?
そんな広大な遊水地はあるか? ない。
だが、ないのならば、作ってしまえばいいのだ。
幸い、適地はある。愛知県西部と岐阜県との県境のあたりだ。このへんは、長良川・木曽川の下流域であり、洪水の氾濫地域でもある。しかも一帯には多大な田畑があって、遊水地にするための適地となっている。このあたりに、渡良瀬遊水地のような広大な遊水地を作って、湿原にしてしまえばいいのだ。
そうすれば、渡良瀬遊水地と同様に、猛禽類がやってくるようになるだろう。
[ 付記 ]
回答は、上記で与えられた。
ただし、実現性はあるかというと、あまりない。なぜか? 洪水対策・氾濫対策としては、浚渫(しゅんせつ)や堤防のような巨大な土木工事ばかりが提唱されているからである。
なぜかといえば、巨大な土木工事ならば、土建会社がボロ儲けできて、そこから巨額の賄賂が自民党に流れ込むからだ。安倍首相のあとで、菅首相になれば、なおさらだ。
渡良瀬遊水地のような遊水地は、巨大な面積を必要とするので、多大な土地買収費がかかるが、工事の費用は、土堤を作るぐらいで、非常にコストが低い。コスパがとてもいいので、少ない税金で多大な効果が得られる。……しかしそれでは、自民党が困るのだ。賄賂を取れないから。
自民党にとって大切なのは、治水ではなく、賄賂なのである。だからこそ、八ツ場ダムのような無駄の極致ばかりが実施される。その一方で、遊水地のような効率のいいものは実施されない。
Openブログがいくら賢いアイデアを出しても、賢いアイデアであるがゆえに、自民党は無駄の多いアイデアを採択するのである。
【 追記 】
猛禽類が森林で餌(となる小動物)を捕りやすくするために、「列状伐採」という手法がある。森林を虎刈りみたいに列状に伐採することで、細長い空間を提供し、そこでは猛禽類が滑空しながら、小動物を捕獲できる。
この件は、前に下記項目で論じた。
→ 杉林の転換(列状伐採): Open ブログ
下記ページにも説明がある。
→ 猛禽類の餌場に配慮した森林施業(PDF)
※ ここには「餌場」(えさば)という用語がある。この用語は、普通は「人工的な給餌の場所」という意味で使われるが、本項のように「小動物のいる場所」という意味で使われることもあるわけだ。その用例が、上記ページに見出される。
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上のことから、「列状伐採をすると、森林における猛禽類を増やす効果がある」とわかる。これは、イヌワシ・オオタカなどに有効だろう。
一方、湿原に住むことの多いハヤブサなどに対しては、本項で述べたように「湿原を増やす」という対策のほか、次のことが参考になる。
(ハヤブサは)現代の都市部は彼らが営巣する断崖絶壁に類似した高層ビルが多く、また獲物の小鳥やネズミなども確保できることから高層ビルに生活圏を移して個体数を増加させつつあるとの指摘もなされている。
( → ハヤブサ - Wikipedia )
とすると、高層ビルに「ハヤブサの営巣しやすい場所」を提供することが、ハヤブサの繁殖には有効だろう。
主な餌はキジバトなど野鳥やノウサギなどですから。
https://www.env.go.jp/nature/kisho/guideline/pdf/guide_h2412.pdf
https://www.env.go.jp/nature/kisho/guideline/pdf/guide_h2412.pdf
>>山岳森林地帯ではイヌワシ、クマタカ、ハチクマ、オオタカ、ハイタカなどが、里山地帯では
サシバ、オオタカ、ツミ、ノスリ、ハチクマなどが、海岸・湿地地帯ではハヤブサ、ミサゴ、チュウヒな
どが生息している。逆にいえば、豊かな猛禽類相が維持されている地域は、環境が多様で、保全
状態が良好であることを意味し、生態系の多様性を示す 1 つの証になるものと考えられる。こ
それは、そこに、ねぐらがあるということ。
ねぐらのある場所と、エサのある場所は、区別される。本文中で記述したとおり。