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敵基地攻撃能力を備えるには、ステルス爆撃機が必要か? 軍事オタクならば、「イエス」と答えるだろうが、実は「ノー」である。
なぜか? ステルス爆撃機は、あまりにも高価だからだ。
→ B-2 (航空機) - Wikipedia
これほど高額では、コスパが非常に悪い。金ばかりやたらと食う割には、軍事的な効果が少ない。陸上イージスと同様で、馬鹿げている。
では、どうしてこういうことが起こるのか? よく考えたら、ステルス爆撃機には根源的な矛盾があるとわかった。こうだ。
「(小型の)戦闘爆撃機でなく(大型の)爆撃機を製造するのは、爆弾搭載量あたりのコスパが優れているからである。(小型の)戦闘爆撃機をたくさん製造して、そこに少しずつ爆弾を搭載するよりも、(大型の)爆撃機を製造して、そこに大量の爆弾を搭載する方が、効率がいい。
その一方で、ステルス性は、小型であるほど優れている。ステルス性の良さは、レーダーの電波に対して、(相対的な)反射率で決まるのではなく、(絶対的な)反射量で決まる。通常、小鳥ぐらいとか、虫ぐらいとか、反射量の大きさが示される。……とすれば、大型であればあるほど、反射量が大きくなるので、不利になる」
つまり、こうだ。
・ 爆弾搭載量 …… 大型機ほど有利
・ ステルス性 …… 大型機ほど不利
こういう対立がある。
とすれば、「爆撃機」という概念と「ステルス性」という概念とは、たがいに矛盾すると言っていい。
つまり、「ステルス爆撃機」という概念そのものが、根本的に矛盾した概念なのである。
それゆえに、(ステルス性を超高度に高めるという)無駄が増えてしまって、コストがやたらと高くなる。かくて、「価格が高すぎて、配備できない」という自己矛盾に陥る。
ここで、軍事オタクならば、「いくら高額でも配備するべきだ」と思うだろうが、まともな頭があれば、「コスパの悪い兵器は最終的に軍事力を落とす」と気づくので、「配備しない」と結論する。
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では、どうすればいいか? ステルス爆撃機という概念がダメなら、かわりにどうすればいいか?
代案としては、次のようなものがある。
・ ミサイル (使い捨て。ただし1発あたりは高額)
・ 小型のステルス爆撃機( ≒ 戦闘爆撃機 ≒ F-35 )
・ 無人の爆撃機 (撃墜されてもいい。安価。)
現状で取られているのは、「ミサイル」と「小型のステルス爆撃機」( F-35 )だ。
しかし私としては、「無人の爆撃機」を推奨したい。これは、撃墜される可能性が大きいが、次のようにすれば大丈夫。
「戦いの当初は、ミサイルと F-35 で、敵基地をたたく。特に、レーダーと対空ミサイルをたたく。こうして敵の防空性能を壊滅させたあとで、無人の爆撃機を飛ばして、爆弾を大量に落とす」
これならば、特にステルス性は必要としないので、安価な爆撃機を製造できる。旅客機をちょっと改造したレベルでも済むかもしれない。
※ 旅客機を爆撃機にするという事例は見当たらないようだが、爆撃機を旅客機にするという事例はある。第二次大戦中の B-29 を改造してできたのが、ボーイング 377 だ。
→ 軍用機ベースの旅客機6選 | 乗りものニュース
旅客機の自動操縦技術も進んでいる。
→ エアバス、自動運転技術と画像認識で航空機の自動離陸に成功 ?
→ ボーイング、完全自動運転のジェット機を開発へ | WIRED.jp
技術的には難しくないので、自動操縦技術はすでに実現していると言っていい。特に、旅客機よりも条件が甘い軍用機では、実現が容易だろう。
( ※ 旅客機では、人間を乗せるので、安全条件が非常に厳しくなる。無人の軍用機では、そこまで厳しい安全条件は求められない。たとえば、滑走路でそばにいる飛行機との衝突回避能力などは、特に必要ない。)
以上のことから、「無人の爆撃機」が好ましい。
ステルス爆撃機に対する代案としては、「無人の爆撃機」を推奨しよう。……ただし、戦略的な投入時期は、「敵基地を壊滅させたあとで」となる。
※ 「敵基地を壊滅させる」という目的のためには、ミサイルと F-35 が有効となる。無人ドローンも有効だ。
[ 付記1 ]
日本が今から何かを開発するのなら、無人ドローンがいいだろう。
一方、無人の爆撃機は、開発するのではなく、将来的に米国から買えばいい。というか、もともと日本には必要ないね。憲法で禁じられているので。(敵国への大量爆撃は、日本がやるよりも、米国にお任せだ。)
[ 付記2 ]
小型のステルス爆撃機を日本が独自に開発する、という手もある。防衛省は、心神の続きとなるようなステルス戦闘機を開発したいようだが、小型のステルス爆撃機の方が効果的かもしれない。戦闘機でなく爆撃機ならば、高い運動性能を必要としないからだ。むしろ、ステルス性を徹底的に高める方がいい。
概念的には、初代ステルス爆撃機の F-117 だ。湾岸戦争のときには、大活躍したらしい。
湾岸戦争では44機が参加。42日間、合計1,271ソーティの爆撃を遂行し、1機も被害を出さなかった。
( → F-117 (航空機) - Wikipedia )
「 F-35 でいいだろ」という声も上がりそうだが、F-35 は、多目的戦闘爆撃機として、戦闘能力も爆撃能力も、あれもこれもと詰め込んだせいで、やたらと高価格になってしまった。
爆撃専用で設計し直せば、 F-35 と同程度の爆撃能力を安価に実現できるかもしれない。少なくとも、戦闘爆撃機よりは、安価になるはずだ。日本独自で開発するなら、その線が好ましい。どうせまともな戦闘機を作れるはずがないんだから。(小型旅客機もまともに独自開発できない三菱が、高度なステルス戦闘機を独自開発? ぷっ。ヘソが茶を沸かす。)
[ 付記3 ]
「陸上イージスがなくなったあとで、敵基地攻撃能力を備えるには、どうすればいいか?」
「国産戦闘機の開発をどうすればいいか?」
という二つの問題が示されている。
この二つの問題をいっぺんに解決する案を提示しよう。こうだ。
「国産の小型ステルス爆撃機を開発する。これで、敵基地攻撃能力と、国産機開発という、二つを同時になし遂げることができる。さらに、コスト低下も可能になりそうだ。F-35 よりも安くできそうなので」
これで解決。場合によっては、輸出も可能だ。
※ ステルス戦闘機の F-35 は、F-16 よりも戦闘能力が低い。それでも採用されるのは、「ステルス性で相手に見えなければ、遠くから対空ミサイルで先制攻撃できるからだ」と言われる。しかし、それだったら、もともと戦闘機としての能力は必要ない。ただの平凡な飛行機に対空ミサイルを搭載するだけで足りる。……そういう平凡な飛行機であれば、お馬鹿な三菱にだって作れるはずだ。(ホンダジェットでもいいけどね。)
そこまでいったらもう高価な無人爆撃機なんて必要ないですね。
あと、私の言う無人爆撃機は安価ですよ。旅客機をちょっと改造した程度。激安だ。といっても、F-35 の3倍ぐらいかな。
>>それでも降伏しなかったんです。最後の一兵がいなくなるまで。
それは地上部隊の話でしょ。
敵の防空能力を壊滅させたあとなんだから、制空権は取れてる前提なので、あとは無人機みたいな特別な戦力はいらないです。
特別じゃないですよ。航空機の自動操縦技術はすでに確立していて、ほとんどの航空機に標準装備です。ただし離陸時だけは、有人にしている。そこをちょっと直せば、完全自動操縦になる。
日産のプロパイロットみたいなものだ。オプション価格 100万円だったら、パイロットの人件費よりも安上がりになる。
ただし、無人爆撃機は提案の一例であって、必須ではありません。ご指摘の趣旨に従って、有人爆撃機でも構いません。(無人か有人かは、論点ではない。どっちでもいい。)