2020年09月03日

◆ 燃料電池バスで電力供給

 停電時の避難所で、燃料電池バスが小口で電力供給する。そのためにトヨタとホンダが協力する。
 
 ──
 
 環境保護と災害救助の一石二鳥。そのために、二社が協力するわけだ。
 ホンダの本田技術研究所とトヨタ自動車は8月31日、大容量の発電が可能な燃料電池バス(FCバス)と可搬型バッテリーなどを組み合わせた移動式発電・給電システムを共同開発したと発表した。
 システムは、大容量の水素が搭載できるように改良したトヨタのFCバス(チャージングステーション)、電力を直流から交流に変換するホンダの「パワーエクスポーター9000」、ホンダの可搬型バッテリーおよび充電・給電器で構成される。
 バスには可搬型バッテリー(100V)を、定格出力1500Wの大容量タイプを36個、同300Wの小容量タイプを20個搭載できる。
 また、トヨタのFC事業領域統括部長の濱村芳彦氏は「今年1月に両社で、『やりましょう』となったが、双方のエンジニアの意気込みが強く、開発は短期間で進んだ」と経緯を紹介した。9月の本格的な台風シーズンに間に合わせようと、両社暗黙のうちにスピーディな取り組みになったという。
( → ホンダとトヨタ、FCバスによる移動式発・給電システム開発し実証実験へ | レスポンス(Response.jp)

 社会に役立つ技術開発のために、ライバル同士の二社が協力する。燃料電池車の普及にも役立てる。いいことずくめの素晴らしいアイデア……という触れ込みだ。
 置いてけぼりにされた EV 優先の日産は顔真っ青だろう……と思っているのかもしれない。

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 しかし、ちょっと待った。ちゃんと計算しよう。
 可搬型バッテリー(100V)を、定格出力1500Wの大容量タイプを36個、同300Wの小容量タイプを20個搭載できる。
 
 というが、それでいったい、どれだけの電力が供給されるのか? 大きなバス2台分(通常の倍増)だから、大量の電力があるか? 計算すると、こうだ。
  1.5×36+0.3×20= 60

 つまり、 60kw だ。

 一方、日産リーフには、充電池を家庭用電源として使う仕組みがあって、その出力は6kW だ。
  → 日産、電気自動車リーフを大容量バッテリーとして使える充電・給電システム

 このシステムは、価格は 48万円と高額になるが、「夜間電力充電システム」も併用されていて、それによって夜間電力充電をすると、電気代が大幅に浮くという。公称では「6年間で約31.6万円」も浮くとのことだ。他に、公的な補助金が 15万円ぐらい出るとのことなので、実質的にはほとんどコストゼロで家庭用充電装置が使えることになる。

 だったら、トヨタとホンダのシステムに莫大な金をかけるよりは、ほとんどコストゼロで日産リーフを 10台設置した方が利口だろう。

 ──

 ちなみに、燃料電池バスは、コストが数千万円にもなる。(下手をすると1億円近くになるかも。)
 ホンダの移動式充電池は、1台 120万円である。(カタログ価格)。これの電池容量は書いてないが、テスラの家庭用充電池との比較で考えると、容量はかなり小さいと思える。私の予想では日産リーフ1台(40kWh)の 4分の1ぐらいだと思える。
 ※ 定格出力が 1.5kW でリーフの4分の1。容量も同様だろう。
 ※ テスラ家庭用充電池は、容量 13.5kWh で、 99万円。

 いずれにせよ、コスト的に言って、冒頭の方式は、日産リーフにはとうてい太刀打ちできない。トヨタとホンダが宣伝でこれをやるのは勝手だが、実用上では意味がないと思った方がいい。どうせバス1台のデモンストレーションだろうし、使える場所は1箇所だけだ。
 一方、日本には(大地震では)百以上の避難所が開設されるはずで、そこに漏れなく臨時発電設備を設置するとしたら、そのためには、上記の日産リーフを使うのが現実的だろう。すでにある民間用のリーフを借り上げてもいいが、どうせなら、公務用のリーフを大量に買い上げて、それを災害時には避難所に送り出せばいいだろう。

 これと同様の方針は、すでにできている。
 《 日産や三菱自 自治体と防災協定 EVなど電源に活用 》
 日産自動車は30日、2019年度内に自治体などと結ぶ防災協定を現在の3倍となる30件に増やすと発表した。電気自動車(EV)を公用車などに使ってもらい、災害時には電源として役立てる。
 リーフは7月までに国内で累計13万台弱を販売した。内蔵する蓄電池は一般家庭では3〜4日、避難所に使われる公民館でも1日分の電力を賄える。価格も最新モデルで400万円ほどで、定置型の蓄電池の半分以下だ。
( → 日本経済新聞

 私がいちいち提案するまでもなく、日産はすでに現実的な方策を実行中なのだ。あとはこの件数を、30から 300ぐらいに増やすといい。できれば、避難所1箇所に EV 10台 ぐらいを設置するようにするといい。そこまでやれば、冒頭の記事の方法など、消し飛んでしまうだろう。(金ばかり食う無駄な方法として。)

 というわけで、現実的には、すでにまともな方法が進行中であるわけだ。トヨタやホンダの出る幕ではない、というふうに結論してよさそうだ。



 【 補説 】
 あとは、補足的な話。
 基本的な話はすでに済んだが、このあといくらか問題も残る。それは、EV に充電する方法だ。
 冒頭の記事では、「燃料電池バスから給電する」という方法が取られたが、いかにも高コストで馬鹿馬鹿しい。EV ならば、もっといい方法がある。

 (1) 内燃式の発電機

 ガソリンまたは LPガスの発電機がある。安い物では 10万円以下からある。これで EV に充電することができる。
 ガソリンだと、長期保管ができないので、ガソリンスタンドからもってくる必要がある。
 LP ガスだと、長期保管ができるが、管理はちょっと面倒かもしれない。(どうせ普段は使わないのであれば。)

 ガソリンでも LPガスでも、これで発電機を動かすことができても、そのメンテナンスが大変そうに思える。しかし、そこは大丈夫。家庭用ではなく、公的用途向けなのだから、専門の業者にメンテを任せれば済む。ガソリンスタンドや、LPガス会社にメンテを任せるのが最善だろう。
 自治体としては、契約だけしておいて、いざというときには、業者に全部やってもらえばいい。あとは、年に1回ぐらい、実際に試してみる「非常時訓練」みたいなのをやるだけでいい。

 (2) 太陽光発電

 発電機のかわりに太陽光発電を使う、という手もある。
 たとえば、家庭の屋根に太陽光発電を付けておいて、そこから家庭の電力使用に回したり、EV の充電に回したりする。
 いざとなったら、太陽光発電から EV に充電したり、EV から家庭用の電力使用に回したりする。
 日産の「 EV と家庭用電源」の相互融通に比べると、太陽光発電が加わる分、構成が複雑化している。ただ、電力の回路としては、たぶん、単に並列に結ぶだけで済みそうだ。(詳細は不明だが。)
 
posted by 管理人 at 22:36| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> (2) 太陽光発電
> 発電機のかわりに太陽光発電を使う、という手もある。

⇒ 以下、ご参考になるかもしれない記事(ビジネスモデル)です。

 https://solarjournal.jp/smarttechnology/33186/
Posted by かわっこだっこ at 2020年09月03日 23:43
> 500Wの大容量タイプを36個、同300Wの小容量タイプを20個

 というのは、避難所1箇所にしては、多すぎるように思える。利用するのはせいぜい、夜間照明、スマホ充電、共用のテレビとパソコンぐらいだろう。1500W ぐらいの出力で足りそうだ。
 なのに、上記のように大量にあっても、使い切れそうにない。かといって、エアコンに使うには、全然足りない。帯に短し、襷に流し。

 1箇所に大量の電池を配備するよりは、リーフぐらいの電力を避難所1箇所ずつに配備する方がずっとよさそうだ。1箇所に 50個よりは、50箇所に1個ずつ。その方が有益だ。
 
Posted by 管理人 at 2020年09月04日 12:05
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