2020年08月30日

◆ 安倍政権の本質

 安倍政権を回顧して、その本質を探り出そう。

 ──

 評価


 安倍政権の評価については、マスコミやネットなどにいくつかの意見が見出される。
  → 安倍晋三氏とそのレガシーとは ナショナリストか現実主義者か - BBC
  → 社説:「安倍政治」の弊害 民主主義ゆがめた深い罪 - 毎日新聞
  → (社説)最長政権 突然の幕へ 「安倍政治」の弊害 清算の時:朝日新聞
  → 【1】安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である - 白井聡|論座
  → 改憲機運、自ら潰した安倍政権 傲慢が招いた世論の反発:朝日新聞

 いろいろあるが、似たり寄ったりの内容だ。右翼的な政策を実施したことや、世論無視の方針を強行したことなどが列挙されている。

 ──

 私なりにまとめると、こうだ。

 (1) 右翼的な政策を実施した。この面では、ずいぶんいろいろと業績を上げた。決して無為無策ではない。
  ・ 共謀罪の法制化(強行採決)
  ・ 秘密保護法の法制化(強行採決)
  ・ 辺野古の埋め立て

 「国民弾圧・体制強化」というようは政策だ。リベラル派から見ればとんでもない政策ばかりだ。だが、保守的な人々からは喝采を浴びたようだ。
 一方で、無党派層からは、あまり関心を引かなかったようだ。支持率にもあまり影響しなかったようだ。

 (2) 明らかな悪事をいろいろとなした。
  ・ 集団的自衛権(憲法違反の解釈改憲)
  ・ 森友・加計学園
  ・ 公文書の抹消、非公開
  ・ 河井夫妻の賄賂の資金の支出(1.5億円)

 このうち、「集団的自衛権」は、(憲法違反なので)法的に悪事であるということが問題となるが、右翼からは喝采を浴びたようなので、(1) の面もある。
 他の点は、右翼的であるかどうかには関係なく、単に「倫理的に悪である」と言える。これらの問題は、世論からはひどく批判されたが、「喉元過ぎれば」という感じで、時間がたつと忘れられてしまったようだ。支持率には、一過性の影響だけがあったようだ。

 (3) ただの愚策もあった。善悪には関係がないまま、頭の悪さゆえにひどい政策を実施した。
  ・ コロナの愚策( GoTo やアベノマスク)
  ・ 経済政策 (金融緩和以外は無策)
  ・ その他たくさんの無為無策

 これらは「無為無策」なので、普通はあまり目立たない。「ないこと」は目には見えないからだ。しかしながら、コロナに限っては、無為無策ぶりがはっきりと目に見えた。国民は愛想を尽かしたようだ。これで支持率もはっきりと低下した。このことが致命傷となって、辞任に結びついたようだ。
  → 安倍首相が会見で語った「病状」が矛盾だらけ!「潰瘍性大腸炎の兆候」「体調異変」と説明した時期に連日会食、しかも仏料理にステーキ|LITERA/リテラ
   ※ 病気が辞任理由だというのは嘘だ、という指摘。

 ともあれ、安倍首相の業績(など)の評価は、以上のように言える。
 ざっと言えば、あれこれと列挙できるのだが、ただの歴史的回顧みたいになっているだけだ。百科事典的な事実列挙のみ。
 ここでは、特に新たに考慮するべきようなことはない。「ああ、そうだったな」と思い出すだけで十分だ。

 本質


 事実の列挙のあとで、本質を考えよう。安倍政権で最も重要だったことは何か?
 核心を言えば、次のことだ。
 「当初はともかく、途中からはさんざん批判された。はてなブックマークでは、けちょんけちょんに批判する人が多くなった。それにもかかわらず、選挙では勝ち続けた。自民党の議席は3分の2を越える状態が長く続いた。圧勝だった」

 つまり、次の二点が同時に起こった。
  ・ 識者から見れば、圧倒的な不評。
  ・ 選挙では、国民から圧倒的な支持。

 こういう矛盾が起こったのだ。ここに本質がある。

 しかも、である。これは「識者と国民との乖離」という問題ではない。安倍政権の個々の政策は、たいていが国民から不支持だった。
 冒頭に掲げた右翼的な政策は、いずれも国民の支持を得なかった。(不支持のまま強行採決された。)
 同様に、次のような政策も、国民の支持を得なかった。
  ・ 夫婦別姓の不採用
  ・ 女性天皇、女系天皇の容認

 これらはいずれも、国民からは「やれ」と言われたのに、自民党の保守的体質ゆえに、国民の意見は拒否された。
 森友・加計学園の問題も同様だ。公文書の文書抹消や証拠隠しも同様だ。佐川・国税庁長官の偽証も同様だ。いずれもとんでもないことだとして、国民からは大批判を浴びたし、一時的には支持率の低下も見られた。
 だが、それにもかかわらず、時期が過ぎれば、選挙では自民党が圧勝した。つまり、それらは一過性の影響しかもたらさなかった。すべては短期間のうちに忘れ去られた。

 ──

 つまり、どれほどひどい悪事をしようが、ひどい批判を浴びようが、それらはすべて国民に許されたのである。(一定期間を経たあとで、だが。)
 換言すれば、国民は安倍政権の悪事をことごとく許したのである。「けしからん」といくら批判しても、喉元過ぎればという感じで、国民は批判をあっさりと忘れてしまったのだ。かくて選挙では安倍政権は勝ち続けた。
 ここにこそ安倍政権の特質がある。

 ──

 では、どうしてそういうことが起こったのか? なぜ人々は、安倍政権の政策を批判しながらも、安倍政権に投票し続けたのか? 
 理由はいくつか考えられる。(仮説)
 第1に、国民の知的能力が低すぎたこと。
 第2に、野党が対抗勢力として弱すぎたこと。
 第3に、安倍首相の選挙対策が上手すぎたこと。宣伝上手だったこと。


 これらは仮説だ。あちこちで唱えられていることでもある。ただ、私としては、これらの仮説はあまり支持できない。

 ──

 私としては、本項では、次の二点を理由として掲げたい。

 (i) 日本人はもともと「長いものに巻かれろ」という形で、「お上に従う」という性質があった。だから自民党政権にべったりとなる。いくら悪質な政権であろうと、お上には逆らえないわけだ。むしろ「寄らば大樹」という形で、悪い大樹に寄り添おうとする。
 この件は、前にも述べた。
 自民党支持の人が多いのは、どうしてか? いくら政府に虐げられても、それでも自民党を支持する人が多いのはなぜか?
 それは、長い間ずっと、自民党が政権に就いていたからだ。そのせいで、
   お上 = 政府 = 自民党

 という意識が、国民に刷り込まれてしまったのだ。
( → 日本人は人権意識が弱い。なぜか?: Open ブログ


 (ii)安倍首相は、若くて、イケメンだった。今では白髪が多くて老人ぽいのだが、首相第1期の就任時は 52歳で、戦後最年少だった。若々しさが残っていて、かなりのイケメンだった。だからこそ、国民受けが良かった。


abe-1.jpg
出典:朝日新聞社


 また、かなりの長身だった。その点では、海外の首脳と並んでも見劣りしなかった。「一人だけチビだ」という従来の首相とは違っていた。
( ※ 実際の身長は 175cm であり、特に長身ではない。たぶん、上げ底靴を履いていたのだろう。トランプ大統領との身長差は、15cm 近くあるはずなのだが、もっと少ないように見える。 → 並んだ写真

 というわけで、いろいろと見栄えが良かったので、人気投票みたいな感じで、国民受けが良かったのだろう。
  → 人は見た目が9割 (新潮新書)

 かくて、AKB が受けたように、ABE が受けたわけだ。見かけ(見映え)による人気投票みたいな形で。
 これこそが、「政策は不人気だが、なぜか選挙では勝つ」という、安倍政権の本質なのだろう。

( ※ 民主主義の最悪の形で、ポピュリズムが成立していたわけだ。昔、ヒトラーが大人気だったのに、ちょっと似ている。)
posted by 管理人 at 14:46| Comment(6) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 安倍政権の悪事の列挙は、本項の (2) にあるが、より詳しい話は下記。

 → 安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である
  https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020082800004.html
Posted by 管理人 at 2020年08月31日 16:33
管理人さんの卓見を読ませていただいて、ふっと思ったのですが...安倍首相辞任の効果...

今後仮に、アメリカが民主党政権となった場合、共和党トランプ大統領ベッタリの安倍前政権よりは、(まだ)米民主党政権とやりやすいような?

日米がほぼ同時にトップ交代となると、なんか怖いですが...
庶民には予測不能なので、とりあえず株式はほぼ全額現金ポジションに変更しました。
Posted by petrichor at 2020年08月31日 17:46
 Posted by 管理人 at 2020年08月31日 16:33

 より詳しい話は下記。
 → 安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である

 ⇒ 管理人さんが紹介されている『論座』の記事は【1】ですが、続きの【2】が公開されました。安倍政権のメディア戦略の話。これも安倍政権の「本質」のひとつでしょうか。

 https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020083100002.html?page=1

 
Posted by かわっこだっこ at 2020年09月01日 10:11
 すぐ上で紹介されたページと似た趣旨のページ。
  → https://note.com/maedayuichi/n/n51c4010fa8b5

 ともに、「メディアが政府に対して萎縮してて、提灯持ちばかりをしていて、まともに公正な報道をしていない」という趣旨。

 だが、これは、メディアが勝手に臆しているのではなく、安倍首相が強引に強圧的な方針で言論機関を統制しているからだ。
 その意味では、独裁的であり、プーチンふうだ。民主主義を殺しているとも言える。戦前の日本みたい。

 民主党時代のメディアが盛んに政権批判していたのとはまったく逆だ。
 
Posted by 管理人 at 2020年09月01日 19:51
 上の管理人さんの主張を補足する記事。
 → https://tanakaryusaku.jp/2020/08/00023538

 菅官房長官が、マスコミ、なかでもテレビ局に対して陰に陽に圧力をかけていた。よって記者たちの萎縮や忖度が常態化した。次期政権では情報統制にますます拍車がかかるだろう、という現場のフリージャーナリストからの実感です。
Posted by かわっこだっこ at 2020年09月04日 00:09
世論調査の記事:

安倍政権を「評価する」が71% 朝日新聞世論調査 [自民党総裁選2020]:朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASN937F3RN92UZPS005.html

朝日新聞世論調査―質問と回答〈9月2、3日実施〉 [自民党総裁選2020]:朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASN937CXXN93UZPS001.html

 ──

 本項の趣旨に合致する。
Posted by 管理人 at 2020年09月04日 06:46
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