2020年08月23日

◆ 一時逆行型の思考法

 問題を解決するとき、一時的に後退してから、一挙に大幅に前進する、という方法がある。

 ──

 通常、前に進もうとするときは、一歩ずつ着実に進むのが常道だ。勉強であれ、仕事であれ、スポーツの練習であれ、そういうふうに「一歩ずつ」というのが常道だ。
 普通はそういう常道の方法でいい。だが、稀に、その方法では解決できない難問にぶつかることがある。一歩ずつ最短距離で解決に向かうのだが、どうしても目標点に到達しない。
 そういう場合には、別の方法で解決することがある。それは、こうだ。
 「一時的に後退してから、一挙に大幅に前進する」

 比喩的に言えば、こうだ。
 目の前に、幅3メートルの川がある。そこを渡ろうとするのだが、橋がないので、水中を歩くしかない。しかし、水深は2メートル以上あり、川の流れは速い。渡ろうとして飛び込んだ人は、次々と川に流されてしまって、一人も川を渡れない。
 そこで、別の方法を取った人がいた。いったん 10メートルほど後退したあとで、助走を付けてから、ジャンプしたのである。すると、川を飛び越えることができた。ここでは、次の方法が取られた。
 「一時的に後退してから、一挙に大幅に前進する」

 ──

 似たことは、思考法でも得られる。その具体的な例を、前々項と前項で示した。(それぞれ項末で示している。)
  → 王位戦・第4局(2020年): Open ブログ
  → モーリシャスの油汚染: Open ブログ

 事例を見ればわかるように、そのいずれも、
 「一時的に後退してから、一挙に大幅に前進する」
 という発想法が取られている。

 そこで、このような方法を一括して、「一時逆行型の思考法」と命名しよう。あるいは、単に「一時逆行型」と呼んでもいい。

 同様の事例は、世の中に多く見出されるはずだ。そして、それらはたいてい、「難問」に分類されるはずだ。なぜなら、「一歩ずつ着実に前進する」という普通の方法では、解決できないことが多いからである。

( ※ ついでだが、「三歩進んで 二歩下がる」というのは、また別の話である。つまり、関係ない。)



 [ 付記 ]
 実は、進化論においても、同様の対比が成立する。
  ・ ダーウィン説 …… 「一歩ずつ着実に前進する」という発想
  ・ クラス進化論 …… 一時逆行型の発想


 前者では、「小進化が蓄積して大進化になる」というふうに発想する。ここで、小進化はいずれも「小さなプラス」をもたらすような進化だ。

 後者では、「不利な変異が、淘汰されないままいくつか残っていて、それらが蓄積して組み合わさると、例外的に、大進化になることもある」というふうに発想する。ここで、不利な変異はいずれも「小さなマイナス」をもたらすような変異だ。そして、それらがいくつか組み合わさると、たまたま有利になることがある。
(ポーカーで弱いカードの組み合わせが強い力をもつようなもの。フォーカードとかフラッシュとかストレートとか。)

posted by 管理人 at 22:49 | Comment(1) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
折り鶴の折り方に二通りある感じですね。

@一折りずつ順を追って形を作っていく折り方。
Aあらかじめ全ての折り目をつけておいて、最後に一気に形を作る折り方。

@の折り方しか知らない人から見たら、Aは最後までしわのついた一枚の色紙にしか見えなくて、仕事が全然進んでいないように見える。けれども、全ての折り目がついた後は数秒で鶴の形に組み上がって、折り目がずれにくい分、@よりも早くきれいに完成する。

しかし現実の社会では、@の人がAの仕事の進め方を理解できずに(進捗が滞っているように見えて)、低く評価したり、自分の流儀に変えさせたりすることが多々あるんですよね〜
Posted by kuro* at 2020年08月24日 12:08
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