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世界のコロナ死者数。累計死者の多い順で並べる。(感染者の順ではない。)

出典: Worldometer
米国、ブラジル、インド、メキシコの4カ国が特に多い。この4カ国の比率は
3:2:1:1
なので、米国の累計死者が圧倒的に多い。
人口あたりの死者数で言えば、米国は 10位であり、特別に多いというほどではないし、もっと多い欧州の国もある。だが、新規死者の数を見ると、欧州の国ではすでに死者の増加はなかば収束しかかっているのに対して、米国はいまだに死者の増加が止まらず、収束の気配もない。「今まさしく死者が続出している」という点で、米国は先進国の中では際立って特異である。(途上国並みだ。)
まさしくとんでもない状況だと言える。

出典: Worldometer
上記は新規死者数の推移だ。(米国)
米国では、死者数は多数である上、減るどころか増えつつあるとわかる。
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死者数 17万人は原爆級だ。
ちなみに、「広島市の人口35万人のうち14万人が、長崎では少なくとも7万4000人が亡くなったとみられている」とのことだ。
→ 広島と長崎で被爆した女性たちの物語 原爆投下から75年 - BBCニュース
この意味で、コロナはまさしく原爆が投下されたぐらいの被害を米国にもたらしているのだ。
これほどひどい状況なのに、よくもまあ、米国人は平然としていられるものだ、と思うね。中国なんかと喧嘩している場合ではないはずだが。(というより、コロナについての無為無策のことを、トランプ流でゴマ化しているのかも。論点逸らし。)
08日の New York Times は、トップ記事がコロナで、「感染者が 500万人を越えた」と報じているが、淡々と述べるばかりだ。
→ Coronavirus Live Updates: Latest News and Analysis - The New York Times
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では、どうして米国は特異な状況にあるのか?
理由として推測できるのは、「マスクをしないこと」である。1番目の図表では、マスクをしない国が上位に並んでいる。米国、ブラジルなど。
米国ではマスクをしない人が多いのは、どうしてか? 孤立主義や保守主義の共和党支持者が、「西部開拓者ふうの個人の自由」を守ろうとして、「政府の命令する規制に反対する」という風潮があるからだ。
この件については、朝日新聞が報道している。「アメリカではマスク無しは熱烈なトランプ支持者のシンボルだ」という趣旨で。
→ 拳銃つるしマスク反対デモ 米国で広がる科学への懐疑論:朝日新聞
→ 不都合な科学、拒絶の動き 対コロナの最前線、脅迫メール:朝日新聞
他にも同種の情報がある。
→ Google 検索
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本日の NY Times の記事には、面白い話がある。アメリカの北東部では、大感染が起こったあとで収束しつつあるのだが、中部では増えもせず減りもせず、南部では急増している。

なお、この数字は、死者数ではなく、超過死者数である。記事には、こうある。
Nationwide, 200,000 more people have died than usual since March. This number is about 60,000 higher than the number of deaths that have been directly linked to the coronavirus.
全国では3月以降、例年よりも20万人も多くの人が亡くなっています。この数は、コロナウイルスと直接関係のある死亡者数よりも約6万人多い。
( → The True Coronavirus Toll in the U.S. Has Already Surpassed 200,000 - The New York Times )
※ この図では、期間は March 1 to July 25 だ。
※ Worldometer では、Feb 15 to July 25 の死者数が 15万人。8月12日までが 17万人弱。
ともあれ、「北東部では収束しつつあるのに、南部では拡大の一途だ」ということからして、感染拡大の度合いが地域差に依存しているとわかる。そのまた理由は、地域差による文化・風習の違いだろう。(北東部には進歩的な人が多いが、南部には保守的な人が多い、ということ。これがマスク使用の有無に結びつく。)
ついでに、参考となる話を記しておこう。
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ニューヨーク市では、コロナを収束させた。そのことは、グラフで示されている。
→ New York City Coronavirus Map and Case Count - The New York Times
ニューヨーク州。
→ New York Coronavirus Map and Case Count - The New York Times
どちらも同様で、夏になっても収束状態が続いている。その点では、(夏の急増がある)日本とは大きく異なる。
なぜそうなのかと言えば、「マスク義務化と、店内飲食の規制」の効果だろう。
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北東部のニューヨーク市では、マスク義務化を実施していたが、店内飲食も禁止していた。それを解禁する予定もあったが、延期したそうだ。
ニューヨーク市のデブラシオ市長は1日、全米で新型コロナウイルスの感染が拡大していることを受け、来週月曜日より再開予定のレストランでの店内飲食を延期すると発表した。
ニューヨーク州では3月下旬、必須事業以外の閉鎖などを求める「Pause」の規定により、レストランでの店内飲食は禁止された。
( → NY市、レストランでの店内飲食を延期。新型コロナ拡大で - mashup NY )
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なお、マスク義務化と飲食制限は、一人一人が個人的に善意でやっているだけではダメだ。なぜなら、その善意のない少数の例外者が、スーパースプレッダーとなって、ウイルスを拡散するからだ。(現在の日本の急拡大は、まさしくそれだ。)
これを解決するには、一人一人の個人的な善意に任せずに、政府が強制する必要がある。「マスク義務化と飲食制限」という形で。
で、それができているニューヨーク市では収束に成功したが、それができていない全米や日本では急拡大の真っ最中というわけだ。
[ 付記1 ]
ニューヨークでは、新規感染者数が収束している。このことは、上のグラフで示したとおり。
ただし、増減でなく、(感染者の)絶対数で見ると、ニューヨークが特に優れているとも思えないだろう。ニューヨーク市の新規感染者は、最近では 1日 300人ぐらいなので、東京と同程度だ。人口は 840万人ぐらいなので、人口比では、東京よりも悪いかもしれない。
この数値だけを見て、「ニューヨーク市では収束していない」と思う人もいそうだ。だが、違う。
実は、ニューヨーク市は「ほぼ全員検査」であるのに対し、東京都は「濃厚接触者でさえ、十分には検査し切れていない」(無症状の濃厚接触者は検査対象外となっている)というありさまだ。検査状況がまったく違う。
このことゆえに、絶対数だけを見て、両者を比較しても、無意味なのだ。
むしろ、増減の程度を見た方がいい。東京都は急上昇中だが、ニューヨーク市では低迷状態であり、拡大は起こっていない。これをもって、「ほぼ収束」と見なせるだろう。
※ ただし、今は収束しても、将来になってまた拡大する可能性は、十分にある。
[ 付記2 ]
New York Times には、他にも面白い記事がある。
→ Why the Coronavirus Is More Likely to ‘Superspread’ Than the Flu - The New York Times
→ U.S. Coronavirus Death Toll Reflects Sun Belt Outbreaks - The New York Times
→ Even Asymptomatic People Carry the Coronavirus in High Amounts - The New York Times