──
「第二波では弱毒化している」という説は前からあったが、根拠が不十分だと思えたので、信頼しがたかった。
ところが、最近になると、死者数や重症者数の増加が予想以上に少ない。「弱毒化しているのでは?」という思いを抱かせる。
たとえば、東京都の死者数はこうだ。
5月01日 126人
5月13日 203人
5月25日 288人
6月10日 311人
6月20日 320人
7月20日 327人
7月29日 329人
8月06日 333人
8月11日 334人
増加のペースが急激に低下している。
東京都の重症者数も同様だ。7月23日までは増加したが、以後は頭打ちであり、ほとんど増えていない。

東京でなく全国データでも、似た状況にある。

出典:中日新聞Web
いくらかは増えているのだが、新規感染者数の増加に比べると、その増加倍率はかなり小さい。
しかも、これは、日本だけに見られる現象だと言える。他の国では、次のいずれかだ。
・ 新規感染者数も死者数も、どちらも増えない。
・ 新規感染者数も死者数も、どちらも増える。
これらの場合には、どちらも同じ傾向なので、「弱毒化している」とは言えないことになる。
しかるに日本だけは、「新規感染者数は急増しているのに、死亡者数・重症者数はあまり増えない」という状況になっているのだ。
とすると、日本だけで、ウイルスの弱毒化が起こっているのだろうか?
──
ここで参考になるのが、2009年の豚インフルエンザだ。あの年も、夏にはかなりの感染者数が出たのだが、重症者数や死者数はあまり増えなかった。そして冬になると、死者数は例年のインフルエンザ死者数をかなり下回ることになった。(過剰なほど警戒していたせいもあるが。)
これと似た事情で、「豚インフルエンザも、2019新型コロナも、どちらも弱毒化していった」という説は、妥当性がありそうだ。
──
ただし、さらに調べると、否定的なデータも見つかる。
全国データで感染者数と死者数を見る。
新規感染者数

死者数

出典:Japan - Worldometer
感染から死亡まで2〜3週間のタイムラグがあることを考えると、死者数は最近では1日5人程度で、その2〜3週間前の感染者数は1日300〜600人程度。両者を割り算して、致死率はおよそ1%ぐらいだと推定される。この数字は、外国に比べると低い方だが、極端に低いというわけでもない。
2週間ぐらい前ならば、「外国に比べて、極端に低い」と言えたのだが、今ではそうでもなくなってきている。そこそこの死者が出るようになってきている。
その意味では、「弱毒化している」とは言えそうにない。
────────────
以上のすべてをかんがみて、私としては、次のように判断したい。
・ ウイルスが弱毒化しているという見解がある。
・ それを肯定するための論拠は、妥当性がいくらかありそうだ。
・ 特に東京都の統計では、弱毒化の傾向が強い。
・ 一方で、全国の数値では、明白な弱毒化は認められない。
(致死率1%は、インフルエンザよりもずっと高い。)
・ 弱毒化の可能性はあるが、総合的には否定的に判断する。
(明白な弱毒化は認められない、と判断する。)
その上で、次のように結論する。
「弱毒化はしていないが、統計的には重症者や死者数が減っている。これはなぜか? おそらく、夏の暑さによる自然免疫力の向上だろう」
インフルエンザでも、夏には症状が軽くなる。自然免疫力の向上があるからだ。それと同様のことが、新型コロナでも成立する、と考えていいだろう。
ここから、次のように結論(推論)できる。
「新型コロナの感染者は、最近では軽症者や無症状者が圧倒的に多くなっているが、だからといって油断はできない。こういう現象は、おそらく夏だけの現象である。
将来、気温が低くなるにつれて、重症者や死者の比率は上昇していくだろう。真冬になると、重症者や死者は以前のように多発するだろう。そのときになってようやく人々は気づくだろう。ウイルスは実は弱毒化していなかった、と」
これが私の結論(推論)だ。
逆に、油断していると、大量の感染者があっという間に大量の重症者・死者に転じる。そうなってからでは遅いのだ。
ゆめゆめ油断するべからず、と言っておこう。
[ 付記1 ]
油断している事例として、「コロナは子供にとっては症状の軽い病気だ」と見なす小児科医の見解がある。
→ 新型コロナウイルス感染症について
確かに、子供についての現在データだけを見ればそう言えるのだが、冬季の高齢者のことまで考えると、とてもそうは言えないだろう……というのが私の見通しだ。
( ※ どちらが正しいかは現時点では判明していない。将来にならないと真相は判明しない。)
ただし、私の予想が当たれば、「コロナは弱毒化していない」ということになる。ならば、油断していると、冬には大量の死者が出ることになる。それはあまりにも危険度が高い。
「現在の状況が将来にそのまま当てはまるとは言えない」というのが、私の立場だ。現状が楽観的に見える状況だからといって、将来についてもそうなるとは限らないのだ。
その意味で、コロナが弱毒化していると見える状況でこそ、私としては警鐘を鳴らしておこう。
その一方で、過剰な悲観論に対しては、こう諭しておこう。
「新規感染者数が現状では急増しているからといって、特に恐れる必要はない。現状の新規感染者のほとんどは、無症状者や軽症者だ。現状ではむしろ、軽い感染者が増えることで、集団免疫を獲得しつつあると歓迎することもできる」
要するに、楽観するべきでもなく、悲観するべきでもない。「多くの感染者が出るが、そのほとんどが軽症者・無症状者だ」というのは、ひょっとしたら、最善の状況かも知れないのだ。
ただし、将来に備えて、今のうちにいろいろと準備を拡充していくことは大切だ。PCR検査機器や各種施設などを、どんどん増やしておくべきだろう。
[ 付記2 ]
ただし、もう少し細かく予想すると、
「弱毒化はいくらかは進んでいる」
と考えてよさそうだ。豚インフルエンザも、夏には軽症の患者が多かったし、冬の死者数は予想されたよりも圧倒的に少なかった。新型コロナも、これと似た経緯になりそうだ。
もちろん、もともとの危険度が(豚インフルエンザとは)大きく異なるので、決して楽観することはできない。ただ、現在の米国や往時の欧州のように、多大な死者数が出るかといえば、そうはならないだろう。
日本の現在の死者数は、約 1000人だが、そのほとんどは第一波で生じたものだ。第二波の死者数は、今後の分を含めても、非常に少なくて済みそうだ。
一方で、第三波(秋から冬にかけての大きな波)は、多大な感染者を出すだろうが、死者数は、欧米並みにはなるまい。
冬の死者数を正確に予想することはできないのだが、どうなるか? 楽観論者の言うように「第二波と同じ程度の少数」ということはありえないだろうし、第一波と同様に千人程度の死者が出る可能性もある。さらに1万人以上の死者が出る可能性もある。
ただ、アビガンをうまく使えば、千人以下の死者数で済むことは十分にありそうだ。そして、千人以下の死者数で済むとしたら、一応、「成功だ」と見なしてもいいだろう。現実には、200人内外で済むかもしれない。それなら「大成功だ」と言えるだろう。(インフルエンザの死者よりも少ないからだ。)
今後がどうなるかは、やはり、政府の対策しだいとなる。やるべきことをやればうまく阻止できるが、無能な政府のままだと、「苦しいときの神頼み」になるしかない。
[ 付記3 ]
なお、正しい策は、こうだ。
マスク義務化、会食制限、大量検査、隔離、アビガンの限定承認。
数が必要なものは、ホテル、病床、医療人員(医者・看護師・検査技師)、医療補助要員、運搬車、予算。
不要なものは、アベノマスクと GoTo だ。
[ 付記4 ]
「弱毒化」のかわりに、「弱体化」はあるかもしれない。毒性そのものが弱まったわけではないのだが、夏の暑さにやられて、ウイルスの能力が弱まってしまうのだ。
コロナウイルスが高温に弱い、ということは、すでに実験的に知られている。今は夏で、戸外では気温が 40度近くになることもある。室内を含めて、物体の温度が 35度ぐらいになることもある。こういう状況では、飛び散った飛沫に含まれるウイルスが弱体化することは、十分に考えられる。その分、感染力は弱まる。
夏だけの一時的な現象ではあるが、こういうふうにして、「弱毒化」と似た現象を引き起こすことは、十分にありそうだ。
【 追記 】
[ 付記1 ] の小児科医の意見では、
「高齢者を守ることにとらわれすぎで、子供の権利が損なわれている」
というふうに述べられている。これは、半分だけ当たっている、と思う。
「子供の権利が損なわれている」というのは、事実だ。過剰な休校や登校制限は必要ない、と私は思う。
ただし、自治体がそれを実施するのは、「高齢者を守るため」ではない。「感染対策の仕方を知らないから、ろくに効果のないことを無駄にやっている」のである。
その典型が「三密の禁止」を目的として、「定員の 50%配置」という市松模様の配置だ。これは無駄だ。マスクさえいしていれば、「定員の 50%配置」は必要ない。(換気が十分であることが前提。)
無意味な休校期間が長く続いたのも同様だ。
子供の権利が損なわれているのは、高齢者が重視されるからじゃない。自治体が馬鹿げた感染対策をするからだ。その点、勘違いするべからず。(世代間対立を煽るべからず。)
ウイルスが弱毒してると勘違いして油断してると秋冬に地獄を見るだろうね。