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新型コロナに感染しても無症状や軽症の人が多い。それは、なぜか? これについて考えると、「旧型コロナにすでに感染して、免疫を得ていたからだ」という推定を得た。
以下、理由を示す。
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そもそも、免疫というものは、生涯備わるものだ。天然痘が有名だが、天然痘に限らず、どのような病気でも、免疫というものは、生涯備わるものだ。
インフルエンザも同様で、インフルエンザ B型や、インフルエンザ C型は、免疫は生涯備わる。つまり、一度感染したら、二度と感染しない。
ただし、インフルエンザ A型は例外だ。一度感染しても、あとでまた何度も感染する。
では、どうしてか? それは、インフルエンザ A型というのが、同一のものではないからだ。A香港型とか、Aロシア型とか、豚インフルエンザ( 2009 H1N1 )とか、いろいろある。これはどうしてかというと、A型のインフルエンザには、(遺伝子の)変異が多様にあるからだ。(一方で、B型や C型は、変異がほとんどない。)
インフルエンザにかかった人は、感染したインフルエンザウイルスに対する免疫を獲得して抵抗力をつけます。予防接種もこの仕組みを利用したものです。
それでも毎年、インフルエンザが流行するのは、インフルエンザウイルスが変異しやすく、毎年のように少しずつ抗原性が変化するために、獲得した抵抗力で防げない場合があることも原因の一つです。
この変異は「連続抗原変異」または「小変異」と呼ばれ、この変異の幅が大きいほど免疫の効果は低くなり、感染して発症した場合の症状も強くなるとされています。
( → 変異するインフルエンザウイルス|インフルエンザについて|ウイルス・菌対策研究所 )
これはインフルエンザの場合の話。
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そこで、これと同様のことはコロナウイルスについても当てはまるはずだ、と考えることができる。
コロナウイルスにも、今回の新型コロナのほかに、多様なコロナウイルスがある。特に有名なのは、多くの死者を出した SARS、MERS という二種類のコロナウイルスだ。
→ 歴史でみる感染症(SARS、MERS、新型コロナウイルス)
この二種類が有名なので、これだけだと思われがちだが、実は、これ以外にも多様なコロナウイルスがある。
特に感染者数が多いのは、単に「ヒトコロナウイルス」と総称される、一群のコロナウイルスだ。これらの起こす病気は、通常、「風邪」と呼ばれるだけだ。
→ ヒトコロナウイルス - Wikipedia
実を言うと、われわれが通常、「風邪」と呼んでいる病気のうち、かなり多くの部分( 15%ほど)は、コロナウイルスの感染症なのである。
コロナウイルス (15%)
( → 風邪 - Wikipedia )
つまり、われわれはそうとは知らないうちに、すでにコロナウイルスに感染していたはずなのだ。換言すれば、それに対する免疫を得ていたはずなのだ。
ただし、その免疫の程度は、人によって異なる。なぜなら、コロナウイルスは、インフルエンザ A型ウイルスと同様に、きわめて変異しやすいからだ。それらの変異に対する免疫力の強さは、人によって異なる。通常、若い人は強く、高齢者は弱い。(若い人ならば、変異が多めにあっても免疫力を保てるが、高齢者だと、そうではない。)
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以上のことから、結論ふうに、次のように推定できる。
・ 人類の大半は、すでに旧型コロナウイルスに感染したことがある。
・ 同時に、旧型コロナウイルスに対する免疫もある。
・ 新型コロナウイルス( covid-19 )は、旧型コロナウイルスに似ている。
・ 新型コロナウイルスに対する免疫は、人それぞれだ。
(高い免疫力を持つ人もいるし、そうでない人もいる。)
・ 若い人では、(変異の差を超えて)、高い免疫力を持つ人が多い。
・ だから、若い人は無症状者や軽症者が多いが、高齢者はそうではない。
こうして、冒頭の疑問に対する回答を得た。
アメリカの研究所や、ドイツの大学病院の論文の紹介はこちら(↓)。
https://wired.jp/2020/05/31/cross-reactive-t-cells/
上記の米 La Jolla (ラホヤ?)研究所の論文内容をもう少し詳しく紹介した記事はこちら(↓)。
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/06/18/07102/
情報ありがとうございました。
すでに同じ説があって、説には名前まで付いていたんですね。ちょっとびっくり。
種痘(=天然痘ワクチン)は
「牛の乳しぼりをしている女性は軽い天然痘的症状をよくしめすが、ほぼ回復し、その人々は天然痘にかかることはない」
といういいつたえをもとに開発されたものです。
これは牛が牛痘ウイルス(近年では馬痘ウイルスだったという説が有力です)という天然痘ウイルスと類縁のウイルスに感染していることが多かったため、牛を取り扱う女性も感染し、交差免疫を獲得していたためと考えられます。
種痘開発当時の医学界でもすでに素朴な免疫学のアイデア(「二度目に感染すると症状が軽い」とか「似た病気に感染していると症状が軽い)はすでにあったために、ジェンナーは種痘を開発することができたと考えられます。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/784229/
〇 風邪コロナ(4種類)以外にも、新型コロナ(SARS-CoV2)に近いRNA配列で未知のコロナ(SARS-Xと仮称)が既に(日本を含む東アジアで)流行したことがあり、これに罹患した人たちの「獲得免疫」が今回の新型コロナ感染でも「交差反応」となって現れ、重症化率が低く抑えられているのではないか(集団免疫に近い現象が起こっている)。
〇 この仮説の傍証は次のとおり。通常はIgG抗体よりもIgM抗体のほうが早く産生し(立ち上がり)、初期の抗体価もIgMのほうが高い。ところが、日本人×新型コロナの例では、PCR陽性者でも、半数程度の人のIgM抗体価は早期に高値にならず(立ち上がりが遅くかつ鈍い)、逆にIgG抗体価のほうが早期に高値となった。これは、既感染の場合によくみられる現象で、新型コロナにも既に部分的な免疫記憶(交差免疫)があったから、と考えれば説明しやすい。
〇 なお、新型コロナの重症例では、通常どおりにIgMが早期から顕著に上昇するという特徴も見られたため、このような人は過去に「SARS-X」に感染しておらず、免疫記憶がないため交差反応が起こらなかったと考えることができる。
「日本人はコロナには感染しない」という説は、第二波が起こる前なら信じた人もいるかもしれませんね。
こんなに大感染が起こっているので、本人は撤回したがっているでしょう。
さて上久保靖彦特定教授の説を聞いて不自然に思いましたので、査読前の状態である論文と、関連のデータを精査しました(ゲノム解析は私の研究の専門分野です)。氏の主張されるS型、K型は遺伝的な型ではなく、想定された仮説としての仮想のタイプのようです。その後の強毒型として、Sタンパク質のD614G型変異(以前から注目されている変異で、すでにトップジャーナルに論文が出ています)をG型と名付けているようです。
ところが、D614G型変異前(アミノ酸がDのタイプ)のウィルスは武漢やアメリカでの初期の大流行の中心的な遺伝子型であり、その後に現れたG型はヨーロッパでの流行の中心の型であり、その後世界中に広がっています。D614G変異前のタイプですでに大流行や重症化などが起きています。日本に入ったのがD614G変異前のウィルスだったので、これが日本で(潜伏的に)大流行し免疫を獲得した、という上久保氏の主張は非常に妙なものに思えます。この説を裏付けるには、日本でだけ重症化しないウィルス配列変異が起きて、その変異が日本に蔓延したことが必要ですが、これまでのゲノム配列解析ではそのような現象は見られていません。もし氏の主張する大流行があれば対応する配列が必ず発見されているはずです。
上久保靖彦特定教授の説には現時点で遺伝学的に根拠があるとは考えられません。nextstrain.orgという国際的なデータベースを用いた可視化ツールで図を作成しているのですが、このことはデータを正しく解釈しているかとは別の問題であり信憑性を与えるものではありません。
上久保氏はD614G変異(これが標準的な変異の記載です:614番目のポジションのアミノ酸がDからGに変わったという意味です)のことを、S614Gと表記しています。おそらくSタンパク質の表記であるSがnextstrain.orgの表示では614, Gの前にリストされていますので(Amino Acid at S site 614: G と表記されています)、そのままつなげて論文に書いているのだとも推定されますが、これでは紛らわしく誤解を招くので専門家はこのような表記はしません。このような点からもゲノム解析にはあまり詳しくない方が論文を書かれたのかなと思います。私の誤解かもしれませんが。
素人としましては、みむさんには、是非とも上久保靖彦特定教授と議論をして頂けたらと思います。
https://president.jp/articles/-/35711
上久保説は、5月に発表されたものなので、第一波の説明をするだけです。第二波で感染の急拡大があることを説明できていません。
欧州各国では、スペインだけが急拡大中で、他の国はもっと緩い感染拡大です。日本はそれらのいずれをも上回る、特別な急拡大がある。
ここから結論するなら、むしろこうなります。
「欧州はスペインを除いて、集団免疫があるので、感染が急拡大しない。日本は集団免疫がないので、現在、感染が急拡大中である」
統計的に結論するなら、これが妥当でしょう。
急拡大の速度で言うと、日本は世界最悪とも言えます。これまでは感染者数が非常に少なかったので、「集団免疫がなかったから、急拡大が起こっている」という発想は成立します。
現在起きている急拡大は、児玉教授により説明されているのではないでしょうか。私にとって、管理人様、児玉教授、上久保教授のお三方のご意見が極めて有益で、世の中でもっと広められることを期待します。
> 交差免疫もある東アジアの日本
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/276135
交差免疫で言えるのは、「症状が弱まる」ということであって、「感染しない」ということではない。「交差免疫もある東アジアの日本は感染しない」というのは、第一波と第二波で否定されている。どちらも急拡大した。
第一波が収束したのは、日本などがマスクを着用したから。(欧州は違った。)
第二波が拡大したのは、会食制限をしなかったから。(拡大は、最初はホストクラブ。次は居酒屋など。)
マスクと飲食という核心を見失っているが、その点で、真犯人を見逃している。
「警官(PCR)の数を増やせば、どんなに泥棒(患者)が増えても大丈夫」という発想だが、泥棒の数が極端に増えたら、その発想は成立しない。
物事の核心を見失うという見本。
「 PCR の大幅な拡充で隔離の徹底」
で、それについて、
> 全力で食い止めないと、ミラノやニューヨークの二の舞いになる
というふうに言っています。
方針は、悪くはない(私も言っている)のですが、それだけというのが弱い。マスク義務化と会食制限が抜けている。
ニューヨークはマスク義務化と飲食制限でコロナを収束させています。ニューヨークの二の舞になるなら、歓迎するべきことで、是非ともそうするべきでしょう。
現実には、ニューヨークとは正反対で、収束どころか急拡大の真っ最中。
児玉教授は、現状認識がまったくできていないと言える。正しいことを一つだけ言って、他については盲目だ。専門バカというか。タコツボというか。視野があまりにも狭すぎて、総合的な視野がない。
学者としてはそれでもいいが、こういう人が行政に関与すると、ろくなことはない。
なのに国民民主党は児玉教授を重視している。ダメだね。
https://www.dpfp.or.jp/article/203187
児玉教授は最悪の事態に備えて政府として取り組むべきこと。
上久保教授はもっとも楽観的な見通しと、それでも秋以降に備えなければいけないこと。
管理人様は、我々が具体的に取るべき行動。常々、有益な情報提供に感謝しております。
これを解決するには、政府がマスク義務化と飲食制限を強制する必要がある。それができているニューヨーク市では収束に成功したが、それができていない全米では急拡大の真っ最中。
この件、大事なことなので、明日あたり、新たな項目で論述します。