2020年08月10日

◆ セミはなぜ鳴くのか?

 セミの鳴き声は大きい。鳥に見つかって、あっさり捕食されてしまいそうだが、生存に不利ではないのか?

 ──

 セミはなぜ鳴くのか?
 この問いに、「目的論」で答える見解が多い。「セミが鳴くのは、オスが鳴いて、メスに求愛するためだ。求愛行動だ」と。
 しかしそれは「何のため?」という目的に答えるだけだ。

 一方、次の疑問がある。 
 「セミが大きな声で鳴くと、鳥に見つかって、あっさり捕食されてしまいそうだが、生存に不利ではないのか?」
 
 これについて調べてみた。

 (1) 鳥類の聴覚

 鳥類に聴覚はあるのか? 空を飛ぶ鳥には聴覚は不要だとも思えるが、聴覚はあるのか?
 調べたら、鳥類にも聴覚はあると判明した。哺乳類ほどには発達していないが、不十分ながらも聴覚はある。(外耳はないが。)
  → 鳥の耳ってどうなってるの?カラスに耳を見せてもらったら、想像を超えるレベルの耳だった。

( ※ 特に、フクロウやミミズクは、聴覚で捕食する能力が発達している。構造的には、特に特別な構造ではないようだが。)

 (2) 鳥類の補食

 鳥類はセミを補食するのか? 
 あまり見かけないように見えるが、実は、鳥類はセミをしばしば補食するそうだ。そのせいで、セミは十分に寿命をまっとうできないそうだ。寿命の途中で、鳥類やトカゲなどに捕食されてしまう。
蝉をたべる鳥っているのでしょうか? あまり聞いたことがありません。

セミは、地上へ出てから鳥に食べられることが多く、
中でもスズメ、シジュウカラ、オナガ、モズ、ヒヨドリに
狙われるそうです。
( → Yahoo!知恵袋

セミを食べる鳥はけっこういるようです。
スズメもヒヨドリもシジュウカラも。。。みんなセミを食べるようです。
( → セミを食べる鳥 | 鳥になれ!

 セミの寿命は短いと言われています。親(成虫)を基準に考えれば確かにその通りで、1か月も生きられません。それどころか、実際には1か月ほどの成虫寿命を全うすることすら稀で、大半の個体は鳥などに食べられてしまいます。
 筆者は仕事柄、セミの鳴き声を録音しながら撮影することがありますが、その最中にやってきたトカゲや鳥に食べられてしまった、という場面に一度ならず遭遇しています。それらの例から考えると(きちんと調べたわけではないので、推測ですが)、成虫寿命はせいぜい1週間ほどというところでしょう。
( → 子供に必ず一度は「セミが羽化する瞬間」を見せたほうがいい理由(青山 潤三)

 (3) セミの寿命

 セミは大きな声で鳴くが、そのせいで捕食されてしまう。鳴けば鳴くほど、鳥に見つかって、あっさり捕食されてしまう。それでも鳴くのは、どうしてか?
 そのことは、セミの寿命の短さを知ればわかる。セミの寿命は、幼虫の期間(7年はざらだ)は長いのに、成虫になったあとでは1カ月しかない。かくも短い。
 なぜか? それは、もともと「成虫として長生きすること」は目的となっていないからである。長生きする必要もない。セミの成虫は1週間も生きれば十分なのである。その間に交尾をすることができれば。
 そして、そのために、セミは二つの戦略を取った。
  ・ 捕食される危険を冒しても、鳴いて、メスを誘う。
  ・ 多くのセミがいっせいに登場するので、鳥は補食しきれない。


 後者が重要だ。
 鳥や草食動物は、集団行動(群れ行動)を取ることが多い。そうすれば、一つぐらいの個体が(肉食動物に)捕食されても、そいつを犠牲にして、他の個体は生き延びられる。
 セミも同様だ。多くのセミがいっせいに鳴けば、そのうちのいくつかが捕食されても、他のセミは生き残る。
 また、セミの寿命が短ければ、鳥は「セミだけを補食して生活する」ということはできない。鳥がセミを補食できる期間は、(セミの寿命である)1カ月ぐらいだけだ。となると、他の期間ではセミを補食して生きることはできないから、「セミを補食することを主体として生きる鳥」というものは存在し得ないことになる。セミの寿命の短さゆえに、天敵である鳥の数には制限がかかっているのだ。

 (4) 結論

 セミは鳴くことで捕食されやすくなるが、だとしても、すべてが捕食されるわけではない。「鳥に捕食されること」をあらかじめ組み込んでおいて、「捕食されなかった残りが交尾すればいい」という戦略を立てている。たとえば、
 「半分のセミは交尾前に補食されてしまうが、半分のセミは捕食される前に交尾を済ませている」
 というふうに。これだったら、たとえ半分が捕食されてしまうとしても、種全体としては、「補食によって滅亡すること」をうまく免れているのだ。

 結局、「ある程度のデメリットを甘受しながらも、交尾というメリットを得る」という形で、デメリットとメリットが両立(併存)している。
 それがつまり、「生存に不利であってもセミが鳴くこと」の理由である。

 (5) オマケ

 ついでにもう一つ。
 セミで鳴くのは、オスだけだ。つまり、鳥に食われやすいのはオスだけだ。オスの場合は、いくら食われても、残りのオスがメスと交尾すれば、それで十分に子孫を残せる。
 メスが食われると、子孫を残す率そのものが減るが、オスが食われるのは、子孫を残す率には影響しないのだ。メスは「かけがえのない存在」だが、オスは「かけがえのある存在」なのだ。

 実は、これと似たことを説明したことがある。鳥のオスはなぜ派手なのか、という理由の説明。
 オスはメスの身代わりになるためにいるのだ。(身代わり説)
  ・ オスが派手なのは、有利だからではなく、不利だからである。
  ・ オスが派手なのは、自分を犠牲にして、妻と子を守るためである。
( → クジャクの羽はなぜ華美か?: Open ブログ

 オスは(メスに比べて)不利であればあるほど、多くの子孫を残すことができるのだ。自分が犠牲になって、メスを残すからだ。
 これは、「個体は(他の個体に比べて)不利であればあるほど、少ししか子孫を残せない」というダーウィン説とは、別の発想となる。

  ※ ダーウィン説 = 個体淘汰論



 【 関連サイト 】

 → 17年周期、13年周期で大発生!! 「素数ゼミ」の謎を日本の研究者が解明した - 日本気象協会 tenki.jp

  ※ ちょっと似た話。
 
posted by 管理人 at 20:15| Comment(4) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近では、目立つというのは健康で生命力のある遺伝子をもっていることを示しており、雌にもてるという説が有力である。セミの場合は、音で目立ち雌を引き付け、姿で目立たず鳥の捕食を避ける戦略か?
Posted by df at 2020年08月11日 10:03
> 健康で生命力のある遺伝子をもっていることを示しており、雌にもてる

 いかにももっともらしいけれど、それだと、あらゆる生物種でそれが必要になる。
 しかも、クジャクみたいに、生存に不利になるほど余計なものがいっぱいくっついて、天敵にあっさりつかまって滅びるようになる。
 「健康で生命力のある」はいいとしても、「生存に不利な形質を備えるようになる」まで説明しないと、正解にならない。

 ※ 鳥類の派手なオスは、みんな生存に不利だ。
 ※ 特に鳥類に限る必要もある。哺乳類ではそんな現象は見られない。オスだけが派手にカラー化した哺乳類なんかいない。

 ──

 ちなみに、人類を含めて、あらゆる生物種では、非モテでもちゃんと子を残せます。モテモテのイケメンだけが子を残しているわけじゃありません。

 あと、前に見た動物番組では、猫で、メスに受け入れられたオスは、喧嘩に強くて体力のあるオスではなく、弱いけれど優しくて育児を手伝ってくれるオスでした。仲睦まじく。
Posted by 管理人 at 2020年08月11日 17:19
メスのセミには発音器がなくメスのセミが鳴かないってことも意味があると思う
つまらないこと
ヒグラシなんて名前付けられているが
空が明るくなりはじめると泣き出す「メザマシ」くんです
4時前だが何処かで早泣きしています
セミを食す人たちもいます
その人たちが住んでる場所ではセミが少ないって噂です
Posted by 老人 at 2020年08月12日 03:49
喧嘩に強くて体力があり、優しくて育児を手伝ってくれるオスならもっともてる。
不利な特徴に対してそれでも生き残っているのも、魅力的らしい。
クジャクは絶滅していない。成功者だ。ただし、人類の影響は別として。
哺乳類は鳥とは別の魅力があるのだろう。大きいとか、けんかに強いとか、角が大きいとか。
Posted by df at 2020年08月12日 10:24
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