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セミはなぜ鳴くのか?
この問いに、「目的論」で答える見解が多い。「セミが鳴くのは、オスが鳴いて、メスに求愛するためだ。求愛行動だ」と。
しかしそれは「何のため?」という目的に答えるだけだ。
一方、次の疑問がある。
「セミが大きな声で鳴くと、鳥に見つかって、あっさり捕食されてしまいそうだが、生存に不利ではないのか?」
これについて調べてみた。
(1) 鳥類の聴覚
鳥類に聴覚はあるのか? 空を飛ぶ鳥には聴覚は不要だとも思えるが、聴覚はあるのか?
調べたら、鳥類にも聴覚はあると判明した。哺乳類ほどには発達していないが、不十分ながらも聴覚はある。(外耳はないが。)
→ 鳥の耳ってどうなってるの?カラスに耳を見せてもらったら、想像を超えるレベルの耳だった。
( ※ 特に、フクロウやミミズクは、聴覚で捕食する能力が発達している。構造的には、特に特別な構造ではないようだが。)
(2) 鳥類の補食
鳥類はセミを補食するのか?
あまり見かけないように見えるが、実は、鳥類はセミをしばしば補食するそうだ。そのせいで、セミは十分に寿命をまっとうできないそうだ。寿命の途中で、鳥類やトカゲなどに捕食されてしまう。
蝉をたべる鳥っているのでしょうか? あまり聞いたことがありません。
セミは、地上へ出てから鳥に食べられることが多く、
中でもスズメ、シジュウカラ、オナガ、モズ、ヒヨドリに
狙われるそうです。
( → Yahoo!知恵袋 )
セミを食べる鳥はけっこういるようです。
スズメもヒヨドリもシジュウカラも。。。みんなセミを食べるようです。
( → セミを食べる鳥 | 鳥になれ! )
セミの寿命は短いと言われています。親(成虫)を基準に考えれば確かにその通りで、1か月も生きられません。それどころか、実際には1か月ほどの成虫寿命を全うすることすら稀で、大半の個体は鳥などに食べられてしまいます。
筆者は仕事柄、セミの鳴き声を録音しながら撮影することがありますが、その最中にやってきたトカゲや鳥に食べられてしまった、という場面に一度ならず遭遇しています。それらの例から考えると(きちんと調べたわけではないので、推測ですが)、成虫寿命はせいぜい1週間ほどというところでしょう。
( → 子供に必ず一度は「セミが羽化する瞬間」を見せたほうがいい理由(青山 潤三) )
(3) セミの寿命
セミは大きな声で鳴くが、そのせいで捕食されてしまう。鳴けば鳴くほど、鳥に見つかって、あっさり捕食されてしまう。それでも鳴くのは、どうしてか?
そのことは、セミの寿命の短さを知ればわかる。セミの寿命は、幼虫の期間(7年はざらだ)は長いのに、成虫になったあとでは1カ月しかない。かくも短い。
なぜか? それは、もともと「成虫として長生きすること」は目的となっていないからである。長生きする必要もない。セミの成虫は1週間も生きれば十分なのである。その間に交尾をすることができれば。
そして、そのために、セミは二つの戦略を取った。
・ 捕食される危険を冒しても、鳴いて、メスを誘う。
・ 多くのセミがいっせいに登場するので、鳥は補食しきれない。
後者が重要だ。
鳥や草食動物は、集団行動(群れ行動)を取ることが多い。そうすれば、一つぐらいの個体が(肉食動物に)捕食されても、そいつを犠牲にして、他の個体は生き延びられる。
セミも同様だ。多くのセミがいっせいに鳴けば、そのうちのいくつかが捕食されても、他のセミは生き残る。
また、セミの寿命が短ければ、鳥は「セミだけを補食して生活する」ということはできない。鳥がセミを補食できる期間は、(セミの寿命である)1カ月ぐらいだけだ。となると、他の期間ではセミを補食して生きることはできないから、「セミを補食することを主体として生きる鳥」というものは存在し得ないことになる。セミの寿命の短さゆえに、天敵である鳥の数には制限がかかっているのだ。
(4) 結論
セミは鳴くことで捕食されやすくなるが、だとしても、すべてが捕食されるわけではない。「鳥に捕食されること」をあらかじめ組み込んでおいて、「捕食されなかった残りが交尾すればいい」という戦略を立てている。たとえば、
「半分のセミは交尾前に補食されてしまうが、半分のセミは捕食される前に交尾を済ませている」
というふうに。これだったら、たとえ半分が捕食されてしまうとしても、種全体としては、「補食によって滅亡すること」をうまく免れているのだ。
結局、「ある程度のデメリットを甘受しながらも、交尾というメリットを得る」という形で、デメリットとメリットが両立(併存)している。
それがつまり、「生存に不利であってもセミが鳴くこと」の理由である。
(5) オマケ
ついでにもう一つ。
セミで鳴くのは、オスだけだ。つまり、鳥に食われやすいのはオスだけだ。オスの場合は、いくら食われても、残りのオスがメスと交尾すれば、それで十分に子孫を残せる。
メスが食われると、子孫を残す率そのものが減るが、オスが食われるのは、子孫を残す率には影響しないのだ。メスは「かけがえのない存在」だが、オスは「かけがえのある存在」なのだ。
実は、これと似たことを説明したことがある。鳥のオスはなぜ派手なのか、という理由の説明。
オスはメスの身代わりになるためにいるのだ。(身代わり説)
・ オスが派手なのは、有利だからではなく、不利だからである。
・ オスが派手なのは、自分を犠牲にして、妻と子を守るためである。
( → クジャクの羽はなぜ華美か?: Open ブログ )
オスは(メスに比べて)不利であればあるほど、多くの子孫を残すことができるのだ。自分が犠牲になって、メスを残すからだ。
これは、「個体は(他の個体に比べて)不利であればあるほど、少ししか子孫を残せない」というダーウィン説とは、別の発想となる。
※ ダーウィン説 = 個体淘汰論
【 関連サイト 】
→ 17年周期、13年周期で大発生!! 「素数ゼミ」の謎を日本の研究者が解明した - 日本気象協会 tenki.jp
※ ちょっと似た話。
いかにももっともらしいけれど、それだと、あらゆる生物種でそれが必要になる。
しかも、クジャクみたいに、生存に不利になるほど余計なものがいっぱいくっついて、天敵にあっさりつかまって滅びるようになる。
「健康で生命力のある」はいいとしても、「生存に不利な形質を備えるようになる」まで説明しないと、正解にならない。
※ 鳥類の派手なオスは、みんな生存に不利だ。
※ 特に鳥類に限る必要もある。哺乳類ではそんな現象は見られない。オスだけが派手にカラー化した哺乳類なんかいない。
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ちなみに、人類を含めて、あらゆる生物種では、非モテでもちゃんと子を残せます。モテモテのイケメンだけが子を残しているわけじゃありません。
あと、前に見た動物番組では、猫で、メスに受け入れられたオスは、喧嘩に強くて体力のあるオスではなく、弱いけれど優しくて育児を手伝ってくれるオスでした。仲睦まじく。
つまらないこと
ヒグラシなんて名前付けられているが
空が明るくなりはじめると泣き出す「メザマシ」くんです
4時前だが何処かで早泣きしています
セミを食す人たちもいます
その人たちが住んでる場所ではセミが少ないって噂です
不利な特徴に対してそれでも生き残っているのも、魅力的らしい。
クジャクは絶滅していない。成功者だ。ただし、人類の影響は別として。
哺乳類は鳥とは別の魅力があるのだろう。大きいとか、けんかに強いとか、角が大きいとか。