緊急事態宣言の解除後に感染者数が増えている。してみると、緊急事態宣言は有効だったのか?
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上のような疑問が生じるだろう。そして、それは、私が前に言ったことと矛盾するように見える。そこで、説明しておこう。
(1)
「緊急事態宣言は無効だった」
という結論自体は変わらない。実際、次のことがあるからだ。
・ 緊急事態宣言の前から、感染者数は減少していた。
・ 緊急事態宣言の2週間後に、感染者数の急減はなかった。
以上の二点から、「緊急事態宣言は無効だった」(やってもやらなくても結果は同じだった)という結論には変わらない。
(2)
一方で、最近では、次のことが成立する。
「緊急事態宣言の解除後には、感染者が増えた」
これはこれで成立する。別に間違いではない。
(3)
では、(1)と(2) は矛盾するだろうか? 一見、矛盾するように見えるだろう。しかし、よく考えればそうではないとわかる。論理的に、両者がともに成立するということは、十分に考えられる。それは、こうだ。
「緊急事態宣言とは関係なく、人々の意識が変わったから」
要するに、社会を動かすのは人々の意識なのであって、それは政府の方針(宣言)と一致するとは限らないのだ。
具体的には、こうだ。
(i)緊急事態宣言の前から、人々は外出制限(特に会食の制限)を実施していたので、宣言をしてもしなくても、会食による感染の増減はなかった。
(ii)緊急事態宣言を解除すると、人々は会食をしはじめたので、ここで感染の急増が起こった。
以上からわかることは、こうだ。
「6月中に感染の急増があったのは、ホストクラブ(水商売)で会食の感染があったからだ。7月中に感染の急増があったのは、飲食店全般で会食の感染があったからだ。そのいずれも、会食の制限がなかったことが感染急増の理由である」
「会食の制限があれば、感染の急増は防げただろう。また、緊急事態宣言があれば、そこには会食の制限も含まれるので、感染の急増は防げただろう。とはいえ、緊急事態宣言による全産業の活動縮小は必要ない。飲食業の一部だけに当てはまる形で、会食の制限があるだけで足りた」
──
結局、見かけ上は、緊急事態宣言の有無が大きな理由であるように見えるのだが、実は、会食の制限の有無が決定的な理由だったのだ。これが守られていれば(実施されていれば)、ホストクラブにおける感染急増もなかっただろうし、現在の飲食店における感染の急増もなかっただろう。
その意味で、会食の制限こそがキモなのであって、緊急事態宣言は特に必要ない。(牛刀をもって鶏を割く、という感じで、いかにも手段が過剰だ。)
ただし、今後については、予断を許さない。現状のように感染の急増を放置し、さらには GoTo で感染を拡大するという方針を続けていれば、社会的にはとんでもない大感染状態になりかねない。
そうなったら、もはや「会食の制限」ぐらいでは済まなくなり、全産業の休止を含むロックダウンが必要になるかもしれない。
ロックダウンは、それ単独(マスク義務化なし)では、たいした効果は得られない。そのことは事実だ。
しかしながら、ロックダウンとマスク義務化を組み合わせれば、かなりの効果は得られるのだ。そのことはイタリアの状況を見ればわかる。(欧州では最も、感染削減に成功している。)
※ いずれにせよ、いったん収束した状態のあとで、感染の急増が起こっているのは、日本だけだろう。他国はこれほどにも極端な反動は起こっていない。その意味でも、日本の状況のヤバさは、ひとしおだ。
※ 特に、政府に危機感がまったくなくて、感染縮小どころか、感染拡大を狙っている( GoTo をやる)のだから、ほとんど狂気の沙汰だ。
[ 付記1 ]
マスクについても同様だ。
以前は黙っていても、皆がマスクをしていたが、今では(暑さのせいか)マスクをしない人がかなり増えている。
このような状況では、マスク義務化が必要だ。何度も述べた通り。
マスク義務化をしないから、最近では感染の急増が起こっている、とも言える。
[ 付記2 ]
「4月の時点で緊急事態宣言は必要なかった」
というのは、「自由に外出して会食していい」という意味ではない。お間違えなく。
「すでに国民が自発的に、マスクをして外出自粛をしているから、政府が特に命令をする必要はなかった」
ということだ。
また、会食制限こそが重要なのだって、一般の外出禁止(旅行やイベントの休止)は必要なかった、ということだ。
7月中でも同様である。会食制限こそが重要なのだって、一般の外出禁止(旅行やイベントの休止)は必要なかった。つまり、緊急事態宣言の必要はなかった。
ただし今後については、予断を許さない。近いうちに、医療崩壊が起こりかねない。と同時に、アビガンなしのせいで、重症化して死ぬ人が多発しそうだ。そうなったら、全面的なロックダウンが必要となるかもしれない。
[ 付記3 ]
ロックダウンを実施するとしたら、どうやって?
現時点では、ロックダウンを実施する法律はないし、ロックダウンを合法的に実施する方法はない。とすると、実施する方法はただ一つ。戒厳令の実施だ。憲法を停止して、あらゆる活動を政府の統制下に置いて、国民の活動を停止するしかない。
そして、そうなる状況はただ一つ。コロナの蔓延である。とすれば、戒厳令を実施するには、コロナを蔓延させればいいわけだ。……これこそ安倍首相が狙っていることかもしれない。だからこそ、あえて無為無策にして、感染者を急増させているのだろう。「しめしめ。これでチャンスだ」という感じで。
※ なお、憲法を停止することは、合法的にはできない。そこで、非合法で、軍事独裁体制を確立する必要がある。つまり「軍事独裁体制」を構築することが、安倍首相の本心なのだろう。
実は、憲法無視という状況は、すでに成立している。下記記事を参照。憲法53条の規定を、安倍政権はホゴにしている。
→ 野党、臨時国会召集要求へ 憲法53条に基づき 与党は消極的:朝日新聞
→ (社説)国会召集要求 首相は速やかに応じよ:朝日新聞
[ 付記4 ]
なお、「軍事独裁政権による憲法停止」という自体を、私は必ずしも否定しない。コロナが蔓延して、日本という国が存亡の危機に瀕したら、そうなることもやむを得まい。10万人以上の死者が出て、ロックダウンもできず、アビガンの使用もできないとしたら、軍事独裁政権を構築して、ロックダウンを実施して、アビガンの使用を認める方が、マシである。それで大量の人命は救われるからだ。
( ※ ただし、マスク義務化や会食制限ぐらいだったら、戒厳令は必要ない。……しかしながら、マスク義務化と会食制限を唱えている人は、日本ではほとんどいない感じだ。)
2020年08月01日
過去ログ
『国としてマスクの重要性を国民に明確に伝えているか否か(=国の重要な施策として位置付けているか)』
が最重要なのだと思います。
例えば、台湾や韓国などは、これをやったので、感染者の激減につながった。
反対に米国は、部分的に(特定の州のみで)やっているだけなので、国全体としては感染者が万単位で増え続けている。そもそも、つい最近までトランプ大統領がマスクをつけていなかったことは、米国として、マスクの重要性を軽視していたことを象徴するものです。
日本の場合は、国民個々の意識は高いですが、国としては、米国と同様、マスクの重要性を軽視しています。
新宿歌舞伎町に始まり、全国いろんな飲食店などでクラスターが発生していますが、これは、(マスクを付けるべきという)国民の意識の高さだけでは感染拡大を防ぎきれないことを示唆しているのではないかと考えます。
なので、国や東京都が動かないといけないのですか、皆さまご承知のとおり、効果的な施策は実行されていません。このことが、特に台湾との明確な差となって現れています。
「路上を歩くときにマスクをすること」
ではなくて、
「店内や駅内に入るときにはマスクが必要なこと」
つまり
「マスクをしていないと店外や駅外に追い出されること」
を意味します。
罰金は関係ない。追い出されるだけです。
そもそも民間人には、罰金を取る権限がない。追い出す権限はある。
画像:
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200620000444.html
これは特に間違っていない。次の意味で。
「緊急事態宣言を続けていることは、(その内部にマスク義務化と会食制限を含むので)感染の急増を防ぐ効果はある」
この意味でなら、成立します。
※ これは、5〜7月中の感染者数の話。
しかし、この意味でやるなら、今後2年間ぐらいずっと緊急事態宣言を続ける必要があるので、経済は破綻します。
──
私が前に述べたのは、次のことだ。
「第一波の収束には、緊急事態宣言は必要ない。入国制限を実施したことだけで、第一波は収束する」
これは、4月中の感染者数の話。実際にそうであることは、数字で証明されている。本項で述べたのは、その話。
一方、6月以後にどうかという話は、関係ない。
※ そもそも6月以後は、緊急事態宣言を実施していない。だから、必要であるかどうかもわからないし、効果があったかどうかは無意味だ。存在しないものの効果などは無意味だ。