2020年07月29日

◆ 自殺未遂者を死刑にするべきか?

 自殺が悪であるとするならば、自殺に失敗した未遂者を処罰するべきだ、となる。たとえば、死刑にする。

 ──

 しかし、自殺未遂者を死刑にしたら、自殺を完遂させることになる。これでは、懲罰ではなく、ご褒美だ。

 では、死刑ではなく、懲役や禁固にすればいいか? いや、そんなことをすれば、ますます自殺の意思が高まる。普通の市民生活に戻れば生きていけそうだとしても、刑務所に入れられたら死にたくなるだろう。これでは国が自殺を推奨するようなものだ。だったら、国の方を「自殺幇助」で罰するべきだ。

 というふうに矛盾が生じるので、自殺未遂者を罰するべきではない、という結論になる。

 ──

 しかし、それならそれで、「自殺することは悪ではない」と言えることになる。倫理的な意味では不道徳だとしても、法律で罰するほどの悪ではない、というわけだ。

 そのことからすると、「人が安楽死を望む」ということ自体を、法律で厳しく罰する(制限する)べきではない、と言える。それはあくまで道徳の問題であって、法で制度化するようなことではないのだ。

 だから、まとめると、こうなる。
  ・ 自殺をすること自体は、法的な悪ではない。(罰されない)
  ・ 自殺をする人を幇助することは、法的な悪だ。(罰される)


 ──

 ここで、「自殺をしたがるが、自殺する能力がない」という人が出てくる。(難病の患者)
 これを扱ったのが、前出項目だ。
  → 安楽死・嘱託殺人・高瀬舟: Open ブログ

 ここでは、「自殺をしたくてもできない難病患者のために、公的な制度を導入する」ということを考察した。(推進はしない。)

 これを見て、「自殺を容認するのはけしからん」という立場の人もいるようだ。
 だが、「自殺を容認するのはけしからん」ということは、必ずしも成立しないのである。自殺をするかどうかは、あくまで当人の問題であって、他人が「けしからん」と言うべきことではなさそうだ。
 さもないと、「自殺未遂者を死刑にする」というような矛盾した結果に陥る。……そういうことを、本項では説明した。



 【 関連項目 】

 「自殺未遂者を死刑にする」ということは、冗談のように見えるが、歴史的には現実化したことがある。中世(千年前)のイギリスがそうだ。
  → イギリスでは自殺未遂をすると死刑になっていた!

posted by 管理人 at 21:27| Comment(4) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自殺未遂はある意味、殺人未遂みたいなものだから違法と考えてもよさそう。
だけど自殺する人たちの多くは心神喪失だろうし責任能力なしになるのかな。
Posted by 高田 at 2020年07月29日 23:27
 心神耗弱ではあっても、心神喪失にはならないでしょう。(精神医学者の判定で。)

 心神耗弱では刑を減軽すると規定されている。で、どっちみち懲役または禁固になったら、また自殺したがるに決まっている。
Posted by 管理人 at 2020年07月30日 00:28
いつも興味深い話題を取り上げていただきありがとうございます。
死刑に関しては、これは国家の自殺行為であるという認識です。サンデル教授風に究極の状況を想定すると、人口減少が進み、国民が3人になったとします。
仮に1人が死刑を宣告されたら、それは国家の終焉を意味します。では、死刑を継続するか、廃止するかの判断基準はなにか。
一般に刑事罰の目的は、犯罪の抑制にありますが、米国には死刑制度を採用することで殺人事件が減るかどうかを検討できるデータがある。Wikiのサイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%AD%BB%E5%88%91
によれば、
死刑制度のある28州と死刑制度をなくした22州では人口当たりの殺人事件発生数に有意差はないとされている。(試算では、統計ソフトRにて定量的に確認した結果でも、ポアソン分布を仮定したp値で死刑制度有無に対する比例係数は0.27なので、死刑制度との関連があるということはできない、ないとも言えないが、ということとなった。)
従って、死刑制度が人口減少下の日本に存在する理由としてもっともらしい理由は、被害者感情への配慮ということになります。しかし、人口が減ってきたらそうもいっていられない。即ち、死刑により、確実に人口は減少し、一方、死刑制度の保有によって殺人件数が減少するとは言えないのが統計的な結果です。人口が減少していくことは、国の消滅につながり、法律の目的である国家の存続に反する制度を、被害者感情を優先して国が保有しているのであるから、これは死刑制度により国家が緩慢に自殺している状況であるというのが論理的帰結になります。

Posted by 新道 at 2020年07月31日 17:44
 死刑の実施で殺人の率が減れば、人口はかえって増える……という説も成立しそうです。

 また、死刑を実施してもしなくても、どっちみちその人は寿命で死ぬので、人口の増減には影響しない……という説も成立しそうです。

 まあ、本当を言えば、あまりにも数が少ないので誤差レベルにすぎない……というのが真相でしょう。

 あと、死刑囚を無期懲役にしても、子供を産むこともないし、納税することもないし、生産活動をすることもない。ただの負担物であって、ない方がマシだとも言える。人口の観点で言うなら、死刑囚を無罪釈放して、普通に市民生活をさせるのが最善でしょう。(また複数殺人事件を起こすかもしれないが。)
Posted by 管理人 at 2020年07月31日 19:16
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