※ 本項は日付を変更しました。
──
( ※ 本項の実際の掲載日は 2020-07-28 です。)
(1) 世界のコロナ事情
世界のコロナ感染者数は、急増している。

出典:Worldometer
4月下旬に比べて、7月下旬では、3倍増になっている。指数的な急増と言える。
ただし、増加のペースは2段階になっている。
・ 3月中には、超急増だった。
・ 4月中は停滞して、以後は指数的な増加。
──
その一方で、死者数は、感染者数ほど急増していない。

出典:Worldometer
4月中に多数の死者が出たが、5月には減り、以後は微増だ。
感染者数が急激に拡大しているのに比べると、これは不自然だとも言える。
(2) 気温のせい?
感染者数の増加に比べて死者数が増えないのは、なぜか? その理由として、次のことが考えられる。
「気温が暖かくなったからだ。それにともなって呼吸器の免疫力が高まったので、感染しにくくなり、症状の悪化も抑止された」
これは仮説だ。これが正しいとしたら、次のことが成立するはずだ。
「夏の北半球では致死率が低いが、冬の南半球では致死率が高い」
そこで致死率を国別に調べてみる。
→ 各国の致死率(コロナ): Open ブログ
これを見ると、上の仮説は成立していそうにない。対策をしないブラジルは別として、南アフリカ、ペルー、チリ、アルゼンチンという国では、致死率は特に高くはない。
(3) 弱毒化?
そこで考えられるのは、「ウイルスが弱毒化した」ということだ。
これについては、池田信夫の説と忽那賢志の説がある。前に紹介した。
→ 池田信夫と忽那賢志の認識ミス: Open ブログ
池田信夫は、「コロナは風邪(インフルエンザ並みの軽い病気になった)」と言っているが、これは極端すぎる説であって、まったく成立しない。現在でも致死率は(減ったとはいえ)2〜5%ぐらいある国が普通であるが、これはインフルエンザより2桁ほど致死率が高い。
※ ちなみに米国のインフルエンザの年間超過死者は1万数千人ぐらいで、感染者は数千万人になる。コロナは死者が 15万人で、感染者は 400万人だ。 死者は1桁多く、感染者は1桁少ない。
というわけで、コロナを「インフルエンザ並みの軽い病気だ」と見なすのは大ハズレだ。
とはいえ、忽那賢志の言うように「弱毒化は起こっていない」と断定するのも、話が不自然だ。彼の主張は、「弱毒化が起こったという証拠はない」というものであって、「弱毒化が起こっていない」と証明しているわけではないからだ。
どちらかというと、(1) の事実ゆえに、「弱毒化は起こっている」というふうに考える方が妥当だろう。もっと正確に言えば、こうだ。
「ウイルスの変異により、致死率は低いが感染力は高いというタイプの新タイプが生じており、そういう新タイプの方が最近では流行している。特に、5月以後ではそうだ」
具体的に言うと、こうだ。
欧州で感染者と死者が急増した4月のころまでは、旧タイプのウイルスが蔓延した。
その後、各国でロックダウンがなされると、旧タイプのウイルスは減少して、かわりに新タイプのウイルスが蔓延するようになった。これらはもともと4月のころのウイルスの中でいっしょに混ざっていたのだが、ロックダウンがなされると、感染力の強い新タイプの方ばかりが蔓延するようになった。一方で、致死率は低下していった。このことが世界的に同時に成立していった。(各国でそれぞれ独自に旧タイプから新タイプに進化したわけではない。両者はもともと混在していたが、片方だけが勢力を増した。)
以上のように考えると、最近の致死率の低下を説明できる。(世界各国で同時に致死率の低下が進行した。)
(4) 日本の特殊事情
日本は、上記の説明では、すべてうまく説明できるわけではない。
第1に、日本の感染者数は、最近、急激に増えている。新規感染者数は、今では欧州諸国の数値を上回るほどだ。( 28日の数値は、英・独・仏と同じぐらいで、伊を大幅に上回る。)
増加のペースも、指数的な増加だ。こんなのは日本だけだろう。(欧州諸国は、逆に低下傾向にある。)

出典:Worldometer
第2に、感染者数も死者数も、日本は諸外国と比べて極端に少ない。先に示したグラフを再掲しよう。
コロナの死亡率は、高齢者ほど高いので、高齢者の多い先進国ほど、致死率が高いという傾向はある。
特に、下記のグラフで、4月ごろのデータを見ると、死亡者数と高齢化の程度が、きれいに正の相関をもつことがわかる。
→ 新型コロナウイルス死者数と高齢化率【国別】
※ 画像をクリックして拡大
( → 各国の致死率(コロナ): Open ブログ )
日本では感染者数が急増しつつあるとはいえ、現時点では累計で3万人であり、これは欧州諸国よりも1桁小さい。(最近の1日ありの新規発生者数では、欧州諸国を上回るが。)
死者数では、日本では1日1人程度で、欧州諸国は1日数人程度。日本の方が少ないとはいえ、大差はない。
欧州諸国は、ひところは大量の死者を出していたのだが、今では死者数が激減している。アビガンを使っているわけでもないのに。(アビガンを使っている日本の方がまだ少ないが、大差はない。)
ここまで見ると、「ウイルスが弱毒化している」という説は、かなり妥当性があると判定できそうだ。
その意味で、「忽那賢志の見解は間違いだ」と言えそうだ。
※ 池田信夫の言うように、「風並みの軽い病気だ」というのは間違いであるにしても、「以前に比べると大幅に弱毒化して、死者数が激減している」という事実は見出されるようだ。この意味では、忽那賢志は間違っていることになる。
※ ただし、いくらか弱毒化したとはいえ、まだまだ強い毒性はあるので、甘く見ることはできない。その意味では、忽那賢志もまるきりの間違いではない。
データ的には、以上のように判定できそうだ。
(4) 結論
結論は、うまく出せない。世界の傾向と日本の傾向が違いすぎていて、一律に論じることができない。
世界的には、「ある程度、弱毒化しつつある」という解釈が成立しているように見える。この意味で、ひところのように「ペスト並みの恐怖の疫病」というほどではなくなっている。
その一方で、感染の少なかった日本では、最近になって感染が急増している。先の見通しはしづらい。
アビガンがあれば死者数は少なめで済みそうだが、今後感染者が急増したら、超高齢化社会の日本では死者が急増する可能性もある。また、冬には死者が増える懸念もある。
良し悪しのいずれの面でも要因があるので、先の見通しはしづらい。結論らしい結論をまとめることはできない。
※ 歯切れが悪くて済みません。現状を正確に見ようとすると、どうしても一刀両断にはできない。
※ 以下はオマケの話。
[ 付記1 ]
時間がたつと、ウイルスは今後もっと弱毒化するかもしれない。もしそうなら、急いで感染しない方がいいかもしれない。
一方で、スペイン風邪のときには、1年目よりも2年目の方が致死率は高かった。つまり、どんどん弱毒化していくということはない。
→ スペイン風邪の教訓(コロナ): Open ブログ
今後の弱毒化については、あまり期待しない方がいいだろう。
[ 付記2 ]
仮に「夏には感染しても重症化しない」としたら、夏の間に感染者を増やすことは、有意義かもしれない。
特に、日本では感染者数が欧州に比べて1桁少ないので、今のうちに軽症の感染者を出しておくことは、有意義かもしれない。
そうとすると、Go To キャンペーンで感染者を増やすという「 Go To 感染会」みたいな政策は、あながち大失敗とも言えないことになる。皮肉っぽい話だが。
感染症の専門家でもないので、根拠なしに書きますが、3月末のピークは春節での中国人をはじめとする観光客から持ち込まれ、夜の街中心に感染が拡がり、その後の外出自粛によって、いったんは収まったように見えたが、夜の街を中心に対策していない区域では若者中心に無症状の感染を繰り返しウイルスは残存していたが、抗体が消える数か月後に、再度夜の街を震源に市中感染が拡大しているのが現在なのではないでしょうか。
夜の街の若者は、現在は初期感染ではなく、2度目、3度目の感染者であり、症状は軽いが、感染力は落ちてない気がします。
重症化しづらいからという理由で論じるのはよろしくないかもしれません。
後遺症の問題もありますし、秋冬に備える意味での免疫を獲得できるのかどうかもよくわかりませんので。
感染者数はどの程度正確に捉えているのか疑問ですので、人口当たり死者数に限定しますと、「日本は」でなく、「東アジア、東南アジア、大洋州諸国は」他の諸外国に比べて極端に少ないというのが妥当かと思います。そのなかでは日本はフィリピン、インドネシアと並んで人口当たり死者は高い方ではないでしょうか。
この理屈であれば、死亡するほどひどい症状の人間からは感染できず、無症状の人からの感染が継続する状況が続けば弱毒化していくといった論理になる。
しかし今回の新型コロナウイルスの特徴を見ると、症状が発症する前に感染力のピークがあるのだという。もちろん発症した後も感染力を維持しているのであろうが、あくまで感染拡大の最大の要因は無症状からの感染だ。
であるならば、本来成り立つ感染者を殺さない程度の症状のウイルスが生き残りに有利といった仮定は、コロナでは成立しにくいのではないか?
感染拡大に優位な変異は残りやすく、症状が軽くなる変異はたいして残らないのではないかと予測される。
他に、海外で感染が拡大しているウイルスと国内のものは遺伝的に相当の相違があって、世界全体の傾向といったものは国内では殆ど意味がない。入国規制がなされていて影響を受ける状況にないので、同じコロナといっても別の振舞いをしていると考える必要がある。
現在日本で感染拡大しているコロナ株は、中国から欧州で感染拡大したG型の亜種であって、国内でさらに感染力を強めたものであるという。
完全な薬ができてはいないが、
各段階の症状に対する治療方法が
確立してきているからではないか。
死亡する理由が分かってきた。
こういう対象療法の積み重ねで致死率落ちたんでないですかね。
軽症者にステロイド療法を使うと、免疫力低下で、かえって症状を悪化させる危険があります。つまり強大な副作用が発生する危険がある。下手をすると、死ぬ。
その点、アビガンならば、副作用の恐れも小さいので、軽症者にはこちらが第1選択です。
※ ただし、オルベスコというステロイド剤ならば、分量が少ないので、これは特に悪くはなさそうだ。中等症にも有効そうだ。
ステロイドは駄目なはず、と言われても結果が出てる治療法らしいのでアビガンよりは効果あったんでしょう、多分。
まぁこういう対象療法が蓄積されてきたんで死亡率が下がった、と言われればそうなんだろうな、と思っただけで。