2020年07月21日

◆ コロナ死亡の記事の難点

 新型コロナの感染者の死亡事例を詳しく報じた記事が、朝日新聞に掲載されたが、難点もある。

 ──

 感染から死亡に至った詳細を調べた……という記事の基本はいい。細かな感染状況が知られていない状況で、細かな感染状況を調べて、情報を提供するのは、有意義なことだ。
 だが、その姿勢がよくない。「コロナは死者が出る怖い病気だ」ということを訴えるばかりで、「どうすれば対処できるか」という話が抜けている。

 つまり、この記事では、「この患者はこうして死にました」という前半部分があるだけで、「この患者はこうすれば助かりました」という後半部分が抜けている。推理小説で言えば、問題編だけがあって、解答編がない。こんなことでは、一番肝心のものが抜けていることになる。「画竜点睛を欠く」どころか、「羊頭狗肉」というありさまだ。
 要するに、一番大切な「医学情報」が抜けている。患者の遺族が悲しんだというような話があるばかりで、医学的にはどう考えるべきかという話が抜けている。抜けているどころか、間違った医学情報を記していることもある。ほとんど有害な記事だ。

 そこで、本項では正しい医学情報を記す。朝日の記事には抜けている話を記す。これはつまり、「名探偵による、推理小説の解答編」だ。(いかにも本サイトらしいね。)

 アビガンの後期投与


 アビガンを投与されたのに患者が死亡してしまった、という例が報道されている。4月の話。
 弟と同居する母と父(69)にも、37度台の発熱やせきなどの症状が出始めた。母は気管支が弱く、父は糖尿病の持病がある。
 13日に電話し……
 翌日、母は肺の酸素量が少ないとして、集中治療室(ICU)に運ばれた。
 母にはアビガンが使われたが容体は変わらず、21日からECMO(エクモ)を使った。向かいのICUに入った父も鎮静剤によって昏睡状態となり、人工呼吸器を着けた。
 5月7日……の夕方に逝った。
( → 突然、看取ることもできず 新型コロナ、死者1000人超:朝日新聞

 「アビガンが使われたが容体は変わらず」とのことなので、「アビガンは効果がないのだな」と思う人もいそうだ。しかし、違う。
 アビガンは重症化してからでは効果が薄いのだ。どうせ投与するならば、早期に投与するべきだった。特に、「母は気管支が弱く」ということであれば、気管支喘息が疑われるので、感染のしやすさが高そうだ。ならばいっそう早めにアビガンを投与するべきだった。
 なのに現実には、「酸素量の低下」が判明して、集中治療室(ICU)に運ばれた(重症化した)あとで、アビガンを投与した。これでは手遅れになるのは当然だ。

 ここでは、問題点が二つある。
 第1に、アビガンの投与が遅れたことだ。そのまた理由は、感染者をすばやく入院させなかったことだ。第1感染者(弟)は4月10日に PCR 検査を受け、感染が判明していた。ならば、同居する父母も「濃厚接触者」として扱うべきだった。特に、この時点で発熱していて、基礎疾患があるのだから、ただちに入院させるべきだった。同時に、アビガンを投与するべきだった。それなら、重症化することもなかっただろう。なのに、何もしないでほったらかしておいた。13日にはまだ大丈夫だったのに、14日には一挙に悪化して、重症化した。その間、ずっと無為無策だったのである。
 この患者が陽性だと判明したのは、16日以後のことだったそうだ。それまでの間、陽性だと判明しなかったので、11日から13日まではアビガンを投与されなかったわけだ。この間にアビガンを投与されてれば、命は助かった可能性が高い。なのに、無為無策だったから、患者は死んでしまったのだ。
 ここでは「感染者にはアビガンを早期投与する」という処置がなされなかったことが最大の死亡原因なのだ。記事はそのことを記すべきだった。なのに、「コロナは怖い」というふうに恐怖をあおるばかりで、「正しい処置がなされなかった」ということを記していない。これでは真相を記していないことになる。
 ※ 「正しい処置がなされなかったから患者は死にました」というのは、当たり前のことだ。それは病気の恐ろしさとは別のことである。

 なお、感染の時期は4月中旬なので、アビガンの早期投与が一般化していた時期ではない。だから、アビガンの早期投与がなされなかったことをもって、病院を批判することはできない。(医療過誤ではない。)
 が、だとしても、今では「アビガンの早期投与で死を避けることができる」と判明しているのだ。ならば、その真実を記して、今後の死を避けることが最も大事なのだ。
 朝日の記事には、その大事なことが抜けている。
 
 さらに、問題点は、もう一つある。
 朝日の記事には、「いったん重症化したら、そのあとはどうするべきか」という話が抜けている。
 この件については、以下の話で詳しく説明しよう。(別の患者の事例。)

 免疫弱者の死亡


 基礎疾患患者や高齢者は、免疫力が低くて、感染した場合の死亡率が高い。今回の記事でも、闘病虚しく死に至ったという、基礎疾患患者の例が掲載された。
 入院3日目の80代男性。
 男性は新型コロナウイルスに感染し、入院当初は発熱ぐらいで会話もできた。だが、翌日から血液中の酸素濃度が下がり、鼻に管をあて酸素吸入を始めたが、酸素濃度は上がらない。3日目には、普通なら息苦しさを感じるぐらいのレベルまで悪化したものの、苦しさは訴えずに翌日、意識を失い亡くなった。
 別の80代男性も同じ頃に似た経過をたどり、入院7日目に亡くなった。どちらの男性も新型インフルエンザの薬アビガンを入院直後から使ったが、効果はみられなかった。
 「最終的には本人に体力がないと治らない。悪化すれば酸素を投与するしかないが、人工呼吸器を望んでいなければ、申し訳ないぐらいできることは少ない」と長谷川さんは話す。
( → コロナ治療法「申し訳ないぐらい少ない」 急な重篤化も :朝日新聞

 この記事を読むと、「アビガンを使っても死亡した」ということで、「アビガンには効果がないのだろう」と思う人もいるかもしれない。特に、「入院直後から使ったが、効果はみられなかった」ということで、「アビガンを早期投与しても有効ではないのだな」と思う人もいるかもしれない。
 しかしそうではない。アビガンは決して特効薬ではない。アビガンは、新型コロナのウイルスを殺すのではなく、増殖を抑制するだけだ。ウイルスを殺すのはあくまで患者の免疫力である。その免疫力が弱まっている基礎疾患者だと、アビガンでは力不足になることがある、ということだ。(特に 80代の超高齢者では。)

 では、どうすればよかったか? 記事には、「悪化すれば酸素を投与するしかないが、人工呼吸器を望んでいなければ、申し訳ないぐらいできることは少ない」と記されているが、本当に、なすすべはないのか? 手をこまぬいていることしかできないのか? 
 いや、違う。患者を救うすべはある。その正解を示そう。こうだ。
 「重症化した基礎疾患患者では、アビガンだけでは回復を見込めないことが多い。だから、これらの患者には、フサンやステロイド剤を併用するべきだ。そうすれば、命を救うことができる」


 これが一番大事な医学情報なので、この医学情報を記すべきだった。
 ただし、この知見が得られたのは、7月09日になってからのことだ。一方、記事の患者は、3月上旬に感染した。だから、当時としては、最新の治療法を使うことはできなかった。当時の病院の処置を批判することはできない。
 しかし今では、「重症者に対する正しい治療法」が知られているのだ。この正しい治療法を記事は報道するべきだった。
  → アビガンが重症者に有効: Open ブログ (フサン)

 ついでだが、重症者にはステロイド薬が有効だ、という情報もある。
  → 新型コロナウイルスの話題 23: Open ブログ (デキサメタゾン)
  → 新型コロナの薬(免疫系): Open ブログ (オルベスコ)

 ──

 結局、今回の朝日の記事には、事実報道や問題提起はあったが、正解となる医学情報が抜けていた。
 そこで、本サイトでは正解となる医学情報を記したわけだ。「推理小説の解答編」のように。


 ※ 「そんなことはどうでもいいよ」と思う人もいるかもしれない。しかし、正しい医療情報を普及させることは大切だ。さもないと、あなた自身が、この問題のせいで死ぬかもしれない。本項の話は、あなたの生死を左右するかもしれないのだ。要するに、コロナで死ぬのは、記事の人だけでなく、あなた自身かもしれないのだ。
 ※ あなたはいつか、「コロナの犠牲者」という形で、新聞で報道されるかもしれない。しかし、死んだあとになって新聞で報道されても、あなたはすでに死んでいるので、そのことを理解できない。



 [ 付記 ]
 本文中では書き足りなかったことがあるので、細かい話を補筆しよう。
 1番目の事例では、死亡の原因を、「感染者にはアビガンを早期投与する」という処置がなされなかったことだ、と述べた。
 では、アビガンを早期投与するには、どうすればよかったか? 単に医者が早めに処方箋を書けばよかったか? いや、そのときはまだ患者は入院していなかった。陽性も判明していなかったし、高熱も出していなかった。単に発熱していただけだった。

 この場合には、医療措置の前に、行政措置として、次の措置を取る必要があった。
  ・ 最初の感染者を知る。
  ・ その濃厚接触者(特に家族)をリストアップする。
  ・ そのうち、免疫弱者と発熱者を調べる。
  ・ 発熱者を全員、隔離する。
  ・ 発熱した免疫弱者は、入院させて、アビガンを投与する。


  ※ 以上は、PCR検査 の判明を待たずに実施する。
    判明には3日ほどかかることが多いので。(混雑期)

 こういう行政措置を取っていれば、1番目の事例の患者は死なずに済んだはずだ。逆に言えば、これらの措置を取るように、現状の制度を改善するべきだ。
 朝日の記事には、そういう「正解」が記してない。いわば、解答編のない推理小説のように。



 【 関連情報 】
 ついでのオマケ情報。
 今回の記事では、有益な情報も記されている。死亡者について、「陽性判明から死亡までに日数の統計分布」という情報だ。
 下記にグラフがある。
  → コロナ治療法「申し訳ないぐらい少ない」 急な重篤化も:朝日新聞

 感染から陽性判明までには、3日ぐらいの日数がかかっている。
 感染から 10日目(陽性判明から7日目)に死亡のピークがあるようだ。感染から 20日目までに、大部分の死者が収まっている。およそ8割程度。
 残りの2割は、20日目以後の広い範囲に分散している。
 
posted by 管理人 at 23:00| Comment(1) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
方向違いの治験の記事を書いてしまったがために
自分らを正当化したいがための追い記事なのでは?
Posted by 老人 at 2020年07月22日 04:31
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