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「アビガンの効果は不明だ」と唱える人が多かったが、バングラデシュの二重盲検試験では、アビガンの効果がはっきりと判明した。
また、ロシアでも同様な結果が得られた。
いずれも、下記項目で記したとおり。
→ アビガンの有効性が証明: Open ブログ
これらはいずれも、軽症者における結果だった。そこでは、次の二点で「不十分さ」があった。
・ プラセボでも治癒する人がいるので、効果が鮮明ではない。
・ もともと軽症だったので、改善の幅が大きくない。
統計的には「有効である」と判明しているのだが、アビガンを使わない場合と比べて、「黒と白」というほどには、はっきりとはしていなかったわけだ。
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ところがこのたび、新たな治験では、「黒と白」というほど、はっきりとした効果が判明した。
要点は次の通り。
・ アビガンとフサンを併用する。
・ 対象は、ICU に入った重症者のみ。
・ 薬剤なしの場合には、死亡率が 8割ほど。(海外で)
・ 治験では、11例中、10例が軽快し、9例が退室できた。
つまり、この治療(アビガンとフサンの投与)において、
・ 投与しない場合には、8割ほどが死亡する
・ 投与した 場合には、9割ほどが回復する
という正反対の結果になったわけだ。ほとんど「黒と白」というぐらいの圧倒的な差である。
以上のことから、次のように結論できる。
「アビガンとフサンの併用療法は、重症者には明白に有効である」
これは統計的にも十分に明らかだ。仮にこれが治験であるとすれば、中間報告の段階で、「治験中止」を決定できるレベルにある。その意味はこうだ。
「治療方法の有効性がはっきりとしているので、もはや対比実験をするのは非人道的である。ゆえに、対比する治験を中止するべきだ。かわりに、全員にこの治療法を実施するべきだ」
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なお、「アビガンとフサンの併用療法」と述べたが、「フサンだけ」というのは、あまり効果がないらしい。一方で、「アビガンだけ」というのは、軽症者には効果があるのだが、重症者には効果が弱いようだ。
併用療法がどうして効果的なのか、機序は はっきりしないが、後述の論文では、いくらか推察されている。
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以上は要旨だ。
具体的な詳しい話は、下記記事にある。一部抜粋しよう。
集中治療室(ICU)での治療を必要とする重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に、膵炎治療薬の「フサン」(一般名:ナファモスタットメシル酸塩)と、抗インフルエンザ薬の「アビガン」(一般名:ファビピラビル)を併用投与したところ、11例中9例(82%)がICUを退室することができたと、東京大学病院救急科教授の森村尚登氏らの研究グループが発表した。研究成果は、医学誌「Critical Care」のオンライン版に発表された。
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フサンとアビガンはウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、両剤を併用することで相加的な効果が期待される。
重症患者11例(2020年4月6日〜21日に入院)に投与し、臨床経過を観察した。11例のうち8例が人工呼吸器を必要とし、このうち3例でECMOを使用した。
フサンとアビガンの併用患者11例について、10例で臨床症状の軽快がみられた。軽快した症例は、人工呼吸器使用が7例、うち3例がECMOを必要としたが、平均16日で人工呼吸器が不要となった。
海外の論文では、ICUでの治療が必要となったCOVID-19の症例では70〜90%の患者が人工呼吸器を必要とし、死亡率は30〜50%とされている。
今回の観察研究の結果から、SARS-CoV-2抑制に対するフサンとアビガンの異なる作用機序と同時に、フサンの抗凝固作用の有効性が示唆される。
( → 重症COVID-19患者に対する「フサン」と「アビガン」の併用療法 8割以上が軽快しICU退室という結果に )
英語論文は下記にある。
→ Nafamostat mesylate treatment in combination with favipiravir for patients critically ill with Covid-19: a case series | Critical Care
機械翻訳の一部抜粋を示す。
ICU入院時の人口統計学的および臨床的特徴と検査室および放射線所見を表1に示します。すべての患者は酸素療法を必要としていました。8人の患者(73%)は侵襲的人工換気(MV)を必要とし、3人の患者(27%)は静脈性体外膜酸素化(VV-ECMO)を必要としました。 5月22日の時点で、1人の患者が死亡し、7人の患者が抜管されました。
重度のCovid-19の患者は、微小血管血栓症および肺の広範な肺胞間質性炎症を伴う出血に悩まされることが多い。ナファモスタットメシル酸塩は、宿主の上皮細胞へのウイルス侵入を直接標的とすることに加えて、血管内凝固障害を阻害するため、このように効果的かもしれません。
結論として、ファビピラビルと組み合わせたナファモスタットメシル酸塩療法は、ウイルスの侵入と複製の遮断、ならびに病原性宿主応答、すなわち、超凝固障害の阻害を可能にする可能性があります。この一連の症例の患者数は非常に少なかったものの、この低い死亡率は、ファビピラビルとメシル酸ナファモスタットの併用治療が重症のCovid-19患者に有効である可能性を示唆しています。Covid-19に対するナファモスタットメシレートとファビピラビルの併用治療の臨床試験が日本で開始されます。
( → Google 翻訳 )
[ 付記 ]
フサンを使う治療法については、下記で前述した。
→ その他の薬(新型コロナ): Open ブログ の (1)
ここでは、フサンの働きを説明する文書として、次のリンクを示していた。
→ 新型コロナ肺炎発症患者対象、アビガンとフサン併用療法の特定臨床研究開始−東大病院ほか
もう一つ、フサンに似たモスタットというものについても、リンクを示した。
→ 東京大がカモスタットの新型コロナに対する臨床研究を計画:日経
※ いずれも専門的な文書。薬剤の専門用語が出てくる。
【 追記 】
「死者は激減しそうだ」
と述べたが、アビガンはすでに投与されているので、現実に死者は激減している。
→ Japan Coronavirus: 21,868 Cases and 982 Deaths - Worldometer
最近になって、感染者は急増しているのだが、死者は激減した状態だ。
これを見て、
「死ぬまでには時間がかかるから統計データには出ないだけだ」
と思う人もいるかもしれない。
だが、東京都のデータを見ると、重症者もまた、どんどん減っていることがわかる。
→ 都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
これは、アビガンの早期投与の効果が出たことと、アビガンとフサンの治療効果が出たこととの、双方だろう。
前者は、重症者の発生を減らし、後者は、重症者の回復を増やす。どちらも、重症者の数を減らす。
後者が一般化すれば、さらに死者数は減少するだろう。
【 関連項目 】
アビガンと重症者の関係については、前にも論じたことがある。アビガンは重症者にはあまり聞かないとされているが、統計を見ると、そうではない。
・ 人工呼吸器を使う重症者
・ ECMO を使う重篤者
そのいずれも、アビガンを投与するようになった時期以後では、回復者がかなり増えている。
つまり、重症者と重篤者のいずれにおいても、アビガンは(それ単独でも)有効であると推定される。(コホート研究で)
詳細は下記。
→ 人工呼吸器と ECMO: Open ブログ