※ 掲載の日付を 12日 から変更しました。
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(1) 入国規制の遅れの理由
日本では諸外国に比べて、入国規制が著しく遅れた。それはなぜか? 実状を調べる調査報道が、朝日新聞に掲載された。
要旨は次の通り。
(i) 武漢で流行が始まったあとで、百田尚樹が(反中の立場で)中国からの入国制限を主張した。しかし中国要人の訪日を控えていたので、首相は及び腰だった。入国制限が実施されたのは、中国要人の訪日延期が決まったあとだった。
(ii) 入国制限を決める前後(3月7日ごろ)では、厚労省が入国制限の実施に強く反対した。なぜか? 入国制限は、法的に禁止するものではなく、さまざまな措置を組み合わせて実質的に入国者を減らそうというもの、でイヤガラセのようなものだった。そのイヤガラセのようなことを実施するには、多大な人員が必要だったので、厚労省としては「実現が無理だ」と大反対した。
(iii)ともかく忠告への入国制限が実施されたが、すでに意味がなくなっていた。このころには中国自身が出国制限をしていたし、中国からの渡航者(入国者)は減っていた。
(iv)以後、3月中に増えたのは、欧米からの渡航者による感染だった。これが感染急増をもたらした。政府は3月19日と26日に入国規制をして、「2週間の自宅待機」を要請したが、その措置では効果はほとんどなく、感染者は急増した。
(v)「入国者全員の PCR 検査と、陽性者の隔離」が実現したのは、4月3日になってからだった。これでようやくまともな入国制限が実現した。
以上は、朝日新聞の記事による。
→ (コロナの時代 官邸、非常事態:1)出入国、台湾先行目立たせず 緩和巡り、保守派・中韓に配慮:朝日新聞
→ (コロナの時代 官邸、非常事態:1)入国制限、習氏訪日が「足かせ」:朝日新聞
さらに私が独自に加えれば、次のことがある。
(vi)4月3日に実施しても、時期的にはもはや遅すぎた。なぜなら、欧米からの入国者は、3月26〜28日ごろにはすでに激減していたからだ。理由は、欧米で入国規制がなされて、航空便が激減したからだ。欧米へ向かう航空便が途絶えたので、欧米から来る航空便も途絶えた。航空便が途絶えることで、実質敵意は入国制限がなされたのと同じことになった。
(2) 自治体の貯蓄の枯渇
コロナの蔓延のあと、休業対策で巨額の金を大盤振る舞いした自治体が、貯蓄の枯渇に瀕している。(貯蓄の名称は、財政調整基金)
東京都は、9000億円のうち 8500億円を使い果たして、残りは 500億円になった。
→ コロナ対策1兆円超、 底つく貯金懸念 不透明な財政見通し
→ 東京都 新型コロナ対策で「財政調整基金」95%近く取り崩し | NHK
東京都ほどひどくはないにしても、他の自治体も似たような状況にあるそうだ。朝日新聞の独自調査。
42都道府県が総額1兆852億円の財政調整基金を取り崩した。19年度末の総残高は47都道府県で計1兆8868億円あったが、コロナ対策だけで6割近く減った。
最も多く取り崩したのは東京都で8521億円。休業要請に応じた事業者への最大100万円の協力金などに充てた。大阪府の796億円、神奈川県の167億円が続き、感染者が多い都市部が目立った。
( → コロナで都道府県の「貯金」激減 「次の波が来たら…」 [新型コロナウイルス]:朝日新聞 )
記事にもあるが、「貯蓄が枯渇しているので、第二波が来たら、手の打ちようがない」と困っているそうだ。
景気悪化で今後の税収減も見込まれる中、財政調整基金は自然災害への備えでもあり、各自治体は危機感を募らせている。
後先のことを考えずに金を使い果たすなんて、どこのドラ息子だよ。ごくつぶしか。中でも、小池都知事は最悪だね。
(3) 医療予算不足
コロナで病院に来る患者が激減しているので、病院経営が圧迫されており、病院では医師・看護師への給料カットやボーナスカットが続出している。それに対して、看護師の一斉退職やストライキが起こっている。
→ 東京女子医大が危機的状況、看護師ボーナスゼロで400人が退職意志
→ 千葉県内の病院労組がストライキ
これは、病院経営者が悪いとは一概には言えない。そもそもコロナの蔓延以後、病院が慢性的に赤字になっているという状況があるからだ。「ない袖は振れない」というわけだ。
これへの対策は、次のいずれかだ。
・ 赤字の病院を閉鎖・倒産させる。
・ 政府や自治体が病院の赤字を補填する。
当然、後者をやるべきだ。ところが、できない。
・ 自治体は、不要な休業補償で、貯金を使い果たした。
・ 政府は、不要な GoToキャンペーン に金を使うだけ。
いずれにしても、肝心の医療のためには、金を使おうとしない。愚の骨頂。
(4) 休業補償の狭間
被雇用者には(企業を通じて)休業補償が出る。企業やフリーランスには、持続化給付金が出る。
だが、被雇用者とフリーランスとの中間的な雇用形態(企業に所属しながら非常勤ふうの扱い)だと、どちらの所得補償も得られないので、国からは一円ももらえない、というふうになっているそうだ。
次の報告が出た。フリーランスの予備校講師の事例。
→ 朝日新聞・投書欄 2020-07-12
前にどこかの派遣社員が、そういう話を言っていたような気がするが、新たに上の報告が出たわけだ。
ここでは、制度が「黒か白か」になっているので、「灰色」の状況にある人々は、制度から漏れてしまうわけだ。
(5) 持続化給付金
コロナの休業補償ではないが、売上げが大幅に減じた企業には、「持続化給付金」という所得補償の制度がある。
これは、営業していても受け取れる金なので、休業補償ではない。公衆衛生的なコロナ対策というよりは、所得補償のための福祉制度に近い。こんなことをいくらやっても、コロナ蔓延を阻止する効果はないのだが、政府はこういうバラマキに熱中している。
そもそも「人でなく企業に金を与える」というのが、馬鹿げている。(人が死ぬのは問題だが、企業が倒産するのは問題ではないからだ。)
それでも、このバラマキが公平であるならまだマシなのだが、現実には公平性も保たれていないようだ。下記の例がある。
レストラン兼こども食堂の経営者が、持続化給付金をもらえない、と訴えている。法人格を持っていないことが理由だそうだ。しかし、これまで 20年間も法人事業税を払ってきたという。
→ 出典:朝日新聞・声欄(投書欄) 2020-06-27
税金を取るときには「法人」と見なすくせに、持続化給付金を与えるときには「法人」と見なさない、というわけだ。呆れるばかり。
(6) 対策
上の (4)(5) では、制度がうまく機能していないことが判明した。では、どうすればいいか?
ここは、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「過去に払った、法人税や所得税の額を見る。それに応じた額を、還付または給付する」
給付を受ける側の資格は不問にする。フリーランスであろうが、法人であろうが、その資格はどうでもいい。実際に払った税額(法人税や所得税)の額を見る。その上で、払った額に応じた額を還付すればいい。
例1。払った所得税のうち、年に50万円以下の分は 100%、それ以上の分は 50%を算入する。その額を、過去の2年分、還付する。
例2。払った法人税のうち、年に50万円以下の分は 100%、それ以上の分は 50%を算入する。その額を、過去の2年分、還付する。
ついでに、次の形でもいい。
例3。「家賃の補助をする」のをやめて、かわりに、「家賃を下げた大家には、固定資産税を免除する」というふうにする。
(7) 10万円の給付
「10万円の給付がまだ届かない」と文句を言っている人が多いそうだ。自治体ごとに給付状況を公開しているところが多いが、7月いっぱいかかる自治体も多いようだ。
どうしてこうなったか? それは、「全員給付」というのをやめて、「辞退したい人は辞退できる」というようにしたからだ。そのせいで、「辞退したいかどうか」というのを個別に確認するという手間がかかるようになった。全員一律の機械的処理が不可能となり、人手による1件ずつのチェックが必要となった。そのために、数千億円の無駄な人件費がかかるようになった。
つまり、「辞退したい人の分の数十億円」を節約するために、「数千億円の手間」をかけたことになる。愚の骨頂。(私が当初から予想したとおりになった。)
その副産物として、時間もすごく長くかかるようになったわけだ。
では、どうするべきだったか? もちろん、「辞退を認めず、全員給付にする」ようにすればよかった。(辞退したい人は、コロナ対策をしている福祉団体に寄付すればいいだけだ。)
全員給付に決まったら、あとは機械的に処理をすればいい。次の順で。
・ 年金受給者には、年金に加算。
・ 児童手当の受給者には、児童手当に加算。
・ 固定資産税の口座振り込み者には、固定資産税の減額。
・ サラリーマンは、社会保障料の天引き額の減額。
・ 確定申告の希望者は、確定申告時に調整。
・ どれにも当てはまらない人は、現行方式で。
(送られてきた書類に記入して申し込む。)
最後の方式を取る人は、ごくわずかだと見込まれる。国民全体の1割以下だろう。たぶん3%ぐらいか。これくらいならば、処理は簡単に済むと思える。
なお、以上のようにすると、電通に払う無駄な経費がなくなる。大幅なコストカットになる。その分、支給額を上乗せしてもいい。次のように。
・ 現行方式で申し込む人には 10万円を支給。
・ 他の方式(自動方式)で申し込む人には 11万円を支給。
こうすれば、現行方式で申し込む人は、ほとんどいなくなるだろう。つまり、ほとんどを機械処理で済ませることができる。
※ 送られてきた用紙には、「あなたはこの自動方式で給付されます」と記入されている。たとえば、年金への加算。
※ その記入された方式を拒否するか、あるいは、その方式が未記入である場合には、現行方式(手動)で申し込むことになる。
※ 事務経費は 2〜3割なので、給付額を1割減らしても、自動処理によって支出総額は1〜2割を減額できる。