今回の結果を見て、「アビガンに効果はない」と勘違いしている人がいるので、解説する。
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今回の結果を見て、「アビガンに効果はない」と勘違いしている人がいる。
数十人を対象として比較試験で有意差が出ないのですから、アビガンに効果があるとしてもその効果は大きくなく、これらのアビガンの効果を謳う声は誤認に基づくものである可能性が高いです。
— 名取宏(なとろむ) (@NATROM) July 11, 2020
こういう意見が出ることは予想されていた。治験内容を医学的に理解しないで、治験を統計数値だけで考えると、こういう誤認が出る。
数字を見ると、こうだ。(前項による)
・ 標本数は、A群は 36人、B群は 33人。
・ ウイルス消失率は、A群は約67%、B群は約56%。
A群の方が優れていると認識できそうだが、その差は 11% だけだ。あまり大きくない。標本数が 36人と 33人 であることから、効果に大きな差があれば、11% よりも大きな差が認められるはずだ。なのに、そうなっていないから、A群 と B群には統計的な差が認められない。……これが、今回の報告だ。
以上のことから、今回の報告は、次のように結論した。
「アビガンに効果があるとは認められなかった」
これは別に問題ない。治験が不備であったことを意味するだけだからだ。(前項で述べたとおり。)
一方、上記のツイートは、「アビガンには効果がない」というふうに、論理を飛躍させている。再掲すれば、こうだ。
アビガンに効果があるとしてもその効果は大きくなく、これらのアビガンの効果を謳う声は誤認に基づくものである可能性が高いです。
対比しよう。
・ 今回報告 …… 治験では効果は認められなかった。
・ ツイート …… アビガンには効果がない。
この二つはまったく別のことだ。比喩的に言えば、次のことに似ている。
・ 錬金術によって元素を変えることはできなかった。
・ 元素を変えることは不可能である。
前者から得られるのは「錬金術」という方法の限界であるにすぎない。
後者では、そのことを理解できないまま、話を一般原理に飛躍させている。(もちろん、誤りだ。原子爆弾で元素を変えることはできるからだ。)
このように、ツイートの話は間違っている。「今回の治験では証明できなかった」という事例から、「アビガンの効用を証明することは(どうしても)不可能である」というふうに話を飛躍させている。
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では、どうしてか? なぜ上記の人は、話を飛躍させているのか?
それは簡単だ。彼が「ランダム試験」や「コホート研究」というものを考えていないからだ。
一般に、医薬品の試験では、「ランダム試験」や「コホート研究」で効能を調べるのが常道だ。だから、「ランダム試験」や「コホート研究」をすれば、医薬品の効能をきちんと判定できる。だから、本サイトでもそれを推奨してきた。
・ 日本で 2000例以上の投与の例をコホート研究する。
・ 外国でランダム試験をする。
この二つを推奨してきた。そうすればアビガンの効果がはっきりとわかるはずだ、と。
ところが、上記の人は、この二つの方法で効能を調べるということが、頭に思い浮かばないようだ。そのせいで、ごく限定的な試験の結果で、物事を判定してしまう。というか、今回の試験が「限定的な試験であった」ということを理解できていない。
そこで、わからない人向けに、以下で説明しよう。
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今回の試験は、次のようなものであった。( 別項 から再掲)
入院している軽症や無症状の患者86人を対象に入院初日から最長で10日間アビガンを投与する人たちと入院6日目以降に投与する人たちに分けて、ウイルスが6日目の時点で減っているかどうか比較する
( → アビガン「有効性判断には時期尚早 臨床研究継続」新型コロナ | NHKニュース )
図で示すと、こうだ。
12345678910 (日目)
A群 ■■■■■■■■■■
B群 □□□□□■■■■■
A群では、1日目から 10日目まで投与する。
B群では、5日間は投与せず、6日目から投与する。(15日目まで)
このあと、ウイルス量を調べる。
6日目の朝の時点では、A群は5日間の投与を受けたが、B群はまったく投与を受けていない。
そこで、「A群の方がウイルス量が少なければ、A群についてはアビガンの効果があったと判定する」というわけだ。
( ※ ここまで再掲)
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では、この治験から、何がわかるか? 「アビガンに効果があるかどうか」ということか? 違う。
「アビガンに効果があるかどうか」ならば、アビガンを投与した群と投与しない群とに分けて、対比する必要がある。しかし今回は、両者にアビガンが投与されているのだから、「アビガンに効果があるかどうか」を調べたわけではない。
では何を調べたか?
「アビガンの初期投与(1〜5日目)に、格別な効果があるか」
である。
詳しく言おう。
A群も B群も、ともに6日目以後にはアビガンを投与されていた。この点では共通する。だから、この点で効果があってもなくても、そのことは調べられていない。(アビガンの効能の有無は調べられていない。)
一方、初期(1〜5日目)には、アビガンの投与の有無があった。A群には「あり」で、B群には「なし」だった。
その結果、A群の方には「効果あり」という傾向が少し見られたが、その幅は大きくなかった。B群に比べてはっきりと「効果あり」とは言えないとわかった。
以上からわかることはこうだ。
「アビガンの初期投与(1〜5日目)には、格別な効果があるとは認められない」
換言すれば、こうだ。
「初期(1〜5日目)には、アビガンを投与してもしなくても、結果にはほとんど差がない」
換言すれば、こうだ。
「アビガンを投与するならば、初期(1〜5日目)に投与しても効果は見込めないので、それ以後(6日目以後)に投与すれば十分である」
これが今回の治験で判明したことだ。このことを正しく理解しよう。
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しかも、である。この結果は、本サイトでもともと予想していたことだ。
その結果は、最初から予想されている。こうだ。(★)
「発症の1〜5日目に投与しても、時期尚早であって、効果はあまりない。
発症の 6〜7日目に投与すると、最適の時期なので、効果はある。
発症の 12日目以後に投与しても、症状の悪化を防げない。(もはや手遅れだ。)」
こういう結果が予想されている。だから、その予想が当たっているかどうかを調べるために、今回のような臨床研究をするといいだろう。
( → アビガンの早期投与の時期は?: Open ブログ )
この項目は、5月20日の記述だ。この時点ですでに、今回の治験の結果は予想されていた。そして、その予想がまさしくドンピシャリで的中した、ということが判明したわけだ。それが今回の報告の意義だ。
なお、私が上記のように予想したことの根拠は、上記項目似記してある。再掲しよう。
(1) 発症してすぐにアビガンを投与しても、ウイルスの増殖を時間的に遅らせるだけであって、病気の程度には影響しない。本来ならば、発症して8日目に症状の悪化が起こるはずだが、それが、10日目〜13日目ぐらいに遅れるだけであって、症状の悪化そのものを防ぐことはできない。(なぜなら、初期にはまだ体内の免疫機構が十分に作動していないからだ。ウイルスの量が少ないので、免疫機構はアイドリング状態であって、フル作動していない。ここでアビガンを与えても、免疫機構はあまり作動していないから、ウイルスを根絶することはできない。)
(2) 発症から6〜7日目にアビガンを投与すると、効果がとても大きい。ウイルスはすでに十分に増殖しており、免疫機構も十分に作動している。この状況でアビガンを投与すると、弱まったウイルスに、強力な免疫機構が襲いかかるので、ウイルスは減退していく。
( → アビガンの早期投与の時期は?: Open ブログ )
こういう理由で、先の結果を予想した。
そしてその予想がまさしく的中した、ということが、今回の報告で判明したのである。
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まとめ。
・ 今回の治験は、アビガンの効果を調べるものではない。
・ かわりに、アビガンの初期投与の効果を調べるものだ。
・ アビガンの初期投与には、効果がないと判明した。
・ アビガンを投与するなら、6日目以後に投与するべきだ。
・ それは本サイトが以前から主張していたことだ。
・ 本サイトの主張の正しさが、今回の治験で証明された。
[ 補足1 ]
藤田医大の治験のような方式は、次のような薬剤については意味を持つ。
「その薬剤が病気の原因を直接攻撃して、病気の原因を縮小する」
一方、アビガンは、そういう薬剤ではない。以下のようなものだ。
「アビガンはウイルスそのものを殺さない。ウイルスの増殖を抑制するだけだ。ウイルスの力を弱めるだけだ。ウイルスを攻撃する主体は、人間の免疫力である」
つまりアビガンは、ウイルス攻撃の主役でなく脇役となるものだ。こういう薬に対して、「ウイルスを攻撃する能力を調べる」というような調査をしても、ろくに意義がわからないわけだ。
この意味で、藤田医大の研究は、アビガンの能力の有無を測るには、もともと適していない手法だったと言える。「この方法では効果はわかるはずがない」という手法を採用したから、予想通り、効果はわからなかったのである。
そして、それを見た半可通の人々が、「効果はわからなかった」と正しく認識するかわりに、「効果はなかったとわかった」というふうに誤認するわけだ。ああ、勘違い。
※ この [ 補足1 ] は、前項から移転しました。
[ 補足2 ]
なぜそうなるか? 免疫力が発揮されるのは、6日目以後であるからだ。
その時までは、高熱にならない(≒ 免疫力がフル活動しない)のだから、それ以前にアビガンを投与しても、たいして効果があるはずがないのだ。
普通の薬剤ならば、免疫力に関係なく、初期からいきなり効果が出るだろうが、アビガンはそういう薬ではない。ウイルスを殺すのではなく、ウイルスの増殖を止めるだけだ。
このようなアビガンの特性を理解しないまま、「初期におけるウイルス撃退力」を調べようとしたのが、藤田医大の研究だ。
だが、「初期にはそんな撃退力はない」と私は予想した。そして、私の予想通り、「初期にはそんな撃退力はない」と判明したのである。
そして、そのあとで半可通の人が、「アビガンはどの時期でも効果はない」というふうに勘違いした。ここでは、次の二点を理解できていない。
・ アビガンはウイルスの増殖を止めるだけだ。
(ウィルスを殺すのは免疫力だ。)
・ 免疫力が発揮されるのは、6日目以後だ。
この二点を理解しないと、とんでもない間違った結論に至るわけだ。
[ 補足3 ]
「アビガンの初期投与(1〜5日目)には、格別な効果があるとは認められない」
と述べたが、これは、あらゆる人に当てはまるわけではない。免疫力の弱い人ならば、初期から高熱になる可能性があるので、早めにアビガンを投与した方がいいだろう。
たとえば、岡江久美子さんは、免疫抑制剤を使用していたので、免疫力が弱かった。こういう人には、初期からアビガンを投与する方がいいだろう。(実際には、初期のうちは何も治療を受けなかったので、すぐに症状が悪化して、死亡してしまった。アビガンの初期投与をしていれば、たぶん助かっただろうに。)
[ 補足4 ]
「アビガンの初期投与は効果がない」
と述べたが、これは、抗インフルエンザ薬とは異なる。
「抗インフルエンザ薬の初期投与は効果がある」
と言えるからだ。むしろ、途中投与よりも、初期投与の方が効果的だ。
なぜか? インフルエンザでは、次の事情があるからだ。( → 出典 )
・ 初期から高熱になる。(免疫力がフル発揮する)
・ 初期にはウイルスが少ない。(簡易検査で陽性にならない)
この二点から、次のことが成立する。
「インフルエンザでは、初期に抗インフルエンザ薬を投与するといい。なぜなら初期には、免疫力がすでに発揮されている一方で、ウイルスがまだ増えていないからだ。少ないウイルスを、強い免疫力で撃破することができる」
なお、このことは、アビガンには成立しない。アビガンで高熱になるのは、発症後、6日目以後だからだ。
[ 補足5 ]
コホート研究は? まだやっていないか? 実は、おおざっぱには、私がすでに実施している。
・ 軽症者にはアビガンを投与しない時期
・ 軽症者にもアビガンを投与する時期
を比較して、次の結果を得た。
・ 前者の時期には、死亡率が 20%以上
・ 後者の時期には、死亡率が 6%以下
この二つを対比することで、次の結論を得る。
「アビガンを軽症者に投与すると、死亡率を大幅に引き下げることができる」
ここでは、ウイルスの削減については調べず、「死亡率の引き下げ」という効果だけを調べている。その結果、「大幅に効果あり」という結論を得たわけだ。詳しくは下記。
→ アビガンの早期投与の既存データ: Open ブログ
なお、今回の治験のデータを用いても、同様の結論を得られる。
→ アビガンの効果が判明: Open ブログ
[ 補足6 ]
NATROM 医師の3大主張(コロナ)。
・ PCR 検査はなるべく実施しない方がいい。
・ 布マスクは効果がない。着けても無意味。
・ アビガンは効果がない。投与しても無意味。
※ たぶん、コロナの患者を増やそうと狙っている。病院の患者が激減しているので、患者を増やして、医者の収入を増やしたいのだろう。
以後、番号繰り下げ。
ここで「勝利宣言」して、それで世界が少しでも動くのでしょうか。
それとも、ブログ主さんは現実ではそれなりに影響力のあるお医者さんで、実際に改善に向けて何か動かれている…?と良いのですが。
まったくの無力なので、「負け犬の遠吠え」という敗北宣言です。
日本はコロナの前に無為無策のまま敗北しつつある、という意味の敗北宣言。
勝利する方法は示しているのだが、誰もやる気にならないから、勝利できない……という宣言です。
ついでだが、私は世間と戦っているわけじゃない。私は世間を守るために、コロナと戦おうとしているんです。お間違えなく。
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ただ、あなたが本項を理解できたということは、誇っていいことでしょう。日本人のほとんどすべては本項を理解できず、逆に、間違ったこと(アビガンは無効だということ)を信じている。
本項の話を理解できている人は、日本全体の 0.01% もいない。あなたはその限られた少数の人間です。
まわりが無知な人間だらけの中で、真実を知っている 0.01% 以下の少数者。そこにあなたは含まれます。
スーパーエリートの悲しみを体験してください。
出てこないのか
だれかが抑えているのか
もっと危険なウィルスが潜んでいるんだろうな
ランダム試験をすると、「アビガンなし」になる人がいて、その人は「アビガンなしのせいで死ぬ」という結果になりがちなので、そういう治験は「非人道的だ」ということになって、国内では不可能なんです。前に述べたとおり。
→ http://openblog.seesaa.net/article/474778460.html
忽那賢志医師は、そういうランダム試験をやれといっていて、患者を大量に殺す気が満々だ。
必要なデータは過去にアビガンを処方しなかった多くの患者のデータ。過去には重症者が多く出たので、このデータとアビガン投与患者データとの比較検定をやれは、有意差が出るのでは?
確かにそうですが、それは「治験」とは言われず、「コホート研究」と言われるんです。
日本の薬事承認には、前者が必要で、後者は不十分だとされます。法律がそうなっている。まあ、普通はそれでいいんですけどね。今は「人類存亡の危機」みたいな状態になっている。そんな緊急時に、悠長な方法を取っていてもいいのか、という問題。
この件は、前に論じた。
> しかし今は非常時だ。新型コロナのせいで、とてつもなく多大な被害がもたらされている。
http://openblog.seesaa.net/article/475179154.html