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「河井夫妻の買収は合法だ」と前に述べた。
国会議員の河井夫妻が、選挙の買収の容疑で、逮捕された。しかしながら、買収は合法だと見なせる。
そんな馬鹿な! と思う人が多いだろうが、同時に、その理屈を知りたがる人が多いだろう。そこで、説明しよう。
今回の買収は、一般人を対象とした買収ではなく、政治家を対象とした買収だ。そして、政治家を対象として金を与えることは、「政治献金だ」と言い逃れをする余地があるのだ。
責められるべきは、「政治家個人から政治家個人への献金を容認する」という現行制度そのものだ。
要するに、買収の大好きな自民党が、「買収してもいい」という法制度を作ったのが、諸悪の根源である。ここでは、河井夫妻を責めるよりは、こんな馬鹿げた法律を制定している自民党を批判するべきなのだ。
( → 選挙の買収は合法だ: Open ブログ )
合法かどうかは、物事の善悪によるのではなく、法制度による。どんな悪であっても、それを合法とする法制度があれば、合法となる。
この点については、新たに次の記事が出た。
選挙違反事件で買収に問われるのは、選挙期間の前後数週間以内というケースが多い。だが、今回起訴の対象となった買収行為は案里議員が立候補を表明した昨年3月からのものが含まれる。公示日は7月4日。公示から何カ月も離れた行為は政治活動との見分けがつきにくく、元検事の弁護士は「これまであまり立件してこなかった」と話す。
昨年3、4月は広島県内で県議選や市町議の統一地方選があり、克行議員は「陣中見舞い」や「当選祝い」の名目で現金を渡していたケースがあった。自民党のベテラン議員は「選挙から1カ月以上前なら買収には当たらないというのが我々の感覚。3、4カ月も前の話はこじつけに映る。検察の線引きに危うさも感じる」と疑問を投げかける。
( → 地盤固めvs総合的に買収 河井夫妻事件、趣旨が争点 [河井夫妻の公選法違反事件]:朝日新聞 )
買収事件では、汚職事件と同じように、現金を渡す側、受け取る側という2人以上の行為が罪の成立に必要で、受け取った側も立件するのが一般的だ。
あるベテラン検察官は「現金買収事件では、受け取った側は5万円までが罰金、それ以上は公判請求するのが相場観だ」と明かす。別の検察官も「これまで警察が事件化し、検察が処分してきた事件と整合性がとれない」と指摘。
( → 現金受領100人立件せず 検察内でも「整合性とれぬ」 [河井夫妻の公選法違反事件]:朝日新聞 )
「法の恣意的な運用」を避けるのであれば、前例にならって、今回の買収については「合法」と見なすのが妥当だろう。
先の話を再掲しよう。
要するに、買収の大好きな自民党が、「買収してもいい」という法制度を作ったのが、諸悪の根源である。ここでは、河井夫妻を責めるよりは、こんな馬鹿げた法律を制定している自民党を批判するべきなのだ。
これが実状だ。どんな悪であっても、それを合法とする法制度があれば、合法となる。
では、どうすればいいか? 悪が合法化されているのだから、悪を非合法にするように、法制度を改正するべきだ。
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では、法を改正するとしたら、どう改正するべきか? それが本項のテーマとなる。このテーマで考えると、対策はいろいろと考えられるのだが、とりあえず、次の案を提示しよう。
・ 党本部から議員への資金配分は、全員同額とする。
・ 重点地域への特別待遇は、党本部の資金支出のみとする。
前者は、「公平性」を目的としたものだ。きちんと資金の流れを公開することを前提として、許容していい。(河井夫妻の 1.5億円のような特別注入は非合法となる。)
後者は、「重点地域の特別な活動は、候補者自身がやるのでなく、党本部がやる。そのための資金支出も、党本部がやる。会計は完全に公開する」ということだ。
今回の選挙活動では、(議員の買収でなく)チラシの投入に最大の費用がかかったそうだ。
陣営関係者によると、公示前から安倍晋三首相と案里議員が一緒に写ったポスターなどを大量に印刷し、党広報紙のポスティング(配布)や電話での呼びかけも積極的に展開。取材に対し、「党から寄付された1億5千万円の大半をこうした政治活動に投入した」と話す。選挙費用にも含まれないとの立場だ。
関係者によると、克行議員も周囲に「ポスティングなどに1億円以上かかった」と説明。
( → 自民からの1.5億円支援 河井夫妻の買収罪と関連は [河井夫妻の公選法違反事件]:朝日新聞 )
このような活動は、候補者自身がやるのでなく、党本部自体が組織的活動としてやるべきだ。「重点地域投入部隊」みたいな感じで。もちろん、その支出の明細は公開される。
こういう形であれば、合法であっていい。
一方、それ以外はすべて非合法とするべきだ。今回の河井夫妻の場合は、党本部でなく議員自身がやったので、非合法となる。
このような形で、法改正をするといいだろう。これによって、何が合法で何が非合法となるかが、法的に明示される。きちんとした法治国家となる。
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結局、本項で言いたいことは、「罪刑法定主義をきちんとやれ」ということだ。
法で規定しないまま、何となく、「悪いことは罰しよう」というような曖昧な方針をやめよ、ということだ。
それが近代的な国家というものである。(前近代的な中国じゃあるまいし。)
※ この点では、自民党は前近代的で、ひどい。悪だ。
※ 野党は、悪の問題はないが、解決する能力がない。無能。
※ マスコミも、事実報道ばかりで、改革の提案がない。間抜け。
【 関連項目 】
→ 選挙の買収は合法だ: Open ブログ
※ 政治家個人から政治家個人への献金を禁じるべし、という趣旨。これはこれで、本項とは別に成立する。
※ ただし、その方針は、本項の方針を取れば、自動的に推進される。政治家個人(河井夫妻)には、党本部から1億5千万円が提供されることはないからだ。