──
熊本の特養で多数の死者が出た。
熊本県は6日、今回の豪雨災害により、午後7時現在で計49人の死亡が確認されたと発表した。特別養護老人ホーム「千寿園」(熊本県球磨(くま)村)で被災し、心肺停止で見つかっていた14人の死亡も確認された。
49人の内訳は人吉市17人、球磨村17人、芦北(あしきた)町10人、八代市3人、津奈木(つなぎ)町1人、住所不明が1人。
( → 熊本豪雨、「千寿園」の14人死亡確認 死者49人に:朝日新聞 )
人吉市で 17人の死者が出たが、そのうち 14人は特養の一軒だけで大量に生じたものだ。ではなぜ、この特養でばかり、大量の死者が出たのか?
それは記事を読むとわかる。
千寿園は、隣接する道路から5メートルほど低い場所に立っていた。国土地理院が航空写真などから作製した浸水推定図では地面から3〜4メートル浸水したとされ、1階がほぼ水没する結果になった。
こうした川の本流と支流が合流する場所での水害は、これまでも繰り返されてきた
( → 千寿園、津波のように水位上昇 バックウォーター現象も:朝日新聞 )
ここでは三つの特徴が掲げられている。
・ 隣接する道路から5メートルほど低い場所
・ 浸水推定図では地面から3〜4メートル浸水した
・ 川の本流と支流が合流する場所
水害の危険状態のオンパレードだ。ここは本来、人が住んではならない場所だ。「洪水になれば死ぬに決まっている場所」だからだ。
実際、ここはずっと未利用地だったらしい。
近年は駐車場つきの広い土地が必要な施設が、川の近くの低い土地に建てられる例が増えている。国が最近更新した浸水想定区域図でも、最大で10メートル以上の浸水が想定されていた。
( → 千寿園、津波のように水位上昇 バックウォーター現象も:朝日新聞デジタル )
もともと危険で利用されていなかったので、大量の土地が余っていた。そこに着目して、こう思ったのだろう。
「駐車場つきの広い土地があるぞ。しかも、危険な土地なので、誰も買わないから、格安だ。しめしめ。これでボロ儲け」
かくて、金儲けを目的として、超危険な土地を購入した。そして、その危険性にふさわしく、まさしく大量の死者を出した。
つまり、ここでは、最初から次の二つが狙いだった。
・ 格安の土地で金儲け
・ 死者を大量に出す危険を覚悟
そして、予定通り、その二つはまさしく達成された。
「多大な人命を犠牲にして、自分だけは金儲け」
つまり、
「他人はいっぱい死んで大損するが、自分だけは得をする」
ということだ。
これは悪魔の発想とも言えるが、まさしくそれが狙い通りに達成されたわけだ。(しかも完全に合法である。どれほど多数を死なせたとしても、殺人罪になることはありえない。水害なのだから。)
──
結果はどうなったか? こうだ。
千寿園がある球磨村渡地区の水位観測所のデータでは、球磨川の水位は4日午前0時に3.16メートルだったのが、7時半には12.88メートルと10メートル近く上昇した。その後もさらに上がり、水位計は記録できなくなった。最も急激な時間帯には1時間に2メートル超も上がっていた。
( → 千寿園、津波のように水位上昇 バックウォーター現象も:朝日新聞 )
現場はここだ。1枚目は下から見たもので、2枚目は上から見下ろしたもの。
記事にある通り、周囲の道路よりも5メートルも低い。
しかもここは、川のすぐそばだ。
手前の建物が千寿園
( → 熊本豪雨、「千寿園」の14人死亡確認 死者49人に:朝日新聞 )
こういう危険な土地に、あえて特養を建設したわけだ。
その結果は、どうなったか? もちろん、すべては水没した。
( → 特養被災、津波のような水 狭く曲がる球磨川/滞る流れ/一気に押し寄せる 熊本豪雨:朝日新聞 )
水の引いたあとで現場を訪れた救助担当者は、おぞましい情景を見るハメになった。
千寿園に向かったのは同日午後。施設の1階は浸水し、自動ドアを手でこじ開けて中に入ると、浮いたテーブルの上に横たわる入所者と職員の2人を発見。ボートに乗せ外に出した。一方、毛布にくるまれた泥まみれの6人も目撃したといい、「一目で亡くなっていると思った。恐ろしい光景だった」と話した。
( → 浮いたテーブルに生存者 14人死亡の特養―熊本・球磨村:時事 )
施設内に留まり、逃げることもできずに、溺死したと思える。普通ならば「2階に逃げれば助かる」というふうになるはずだが、逃げ遅れて1階にいる人々は、とんでもないことになっていただろう。
かくて阿鼻叫喚の地獄となった。被害者多数。
しかしながら、特養の経営者だけは、「しめしめ。すべては計算通り」とニンマリしながら、私腹を肥やして、札束を勘定し続けるのである。
【 関連項目 】
前にも似た話題があった。
→ 川沿いの危険地は居住制限せよ: Open ブログ
→ 2016年 台風 10号の被害: Open ブログ
本項の続編もある。
→ 水害の死者は金儲けのため 2: Open ブログ
なぜ赤の他人の老人を、生きていくのに精一杯の若者が養わなければならないのか?自分で生きていく力のない人は安楽死をしてもらう。つまり国は支援や保証を一切止める。それが世のためだ!
そういう意見が間も無く出てくるだろう。そう主張する政党が出てくると思う。それが感じられます。
平均的には、自分の親を養うのと同じです。制度をなくすと、負担がなくなるのではなく、自分の親を自分で全額養うことになる。
社会全体で分担する方が、親の生死による運命のバラツキをなくせるので、安心できます。
養うのは、逆に言えば、養ってもらえるということだ。これもまた安心できる。
うまい案はあるか? ある。海外に介護施設を作って、そこに老人を送り出すことだ。格安の人件費で済む。温暖な気候なので、冬に風邪で死ぬこともない。
自治体でハザードマップを作って配布しているけれど、危険地域に住み続けあるいは土地建物を買う人が引きも切らず居るのは、目先の価格の安さに釣られるんでしょうね。なぜ安いかなんてどうでも良くて「ラッキー!」くらいの感じで。
──
60人以上が入所する施設内は、断続的に停電が続いていた。午前5時ごろ、隣を流れる球磨川の支流を見ると、堤防付近まで水かさが上がっていた。
「ごめん、朝早いけど雨が危ないけん。起きよう」。他の職員と共に入所者全員を起こし、1階の畳部屋や、会議室がある2階に避難させた。
https://www.asahi.com/articles/ASN755TK0N75PTIL00R.html
駐車場はすでに冠水していた。当時施設内には65人がいた。近くの住民ら数人に声をかけ、職員と一緒に入所者40人ほどを2階へ避難させた。1階には20人ほどが残っていたという。
水かさが上がり、窓ガラスが割れた。津波のような濁流が流れ込んだ瞬間、とっさにそばにいた入所者をつかんだ。水はすぐに顔辺りまで達し、浮かんでいる物にしがみついた。「頑張れ」。声を出し、励まし合った。「そのまま3、4時間たったろうか。地獄を見ているようだった」
激しい濁流のなか、入所者2人の体をつかんで支えていた、特別養護老人ホーム「千寿園」(熊本県球磨〈くま〉村)の男性職員。「助けたかったのに、だめだった。どうしても力が入らなかった」。2人がどうなったのか、見る余裕はなかった。
「ごめんなさい」。救助された後、職員は当時の様子を振り返り、何度もそう繰り返した。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14538170.html
──
経営者はひどくとも、職員やボランティアの人は全力を尽くして救おうとした。