2020年06月24日

◆ 重症者の治療選別(コロナ)

 医療逼迫のときには、人工呼吸器の数が限られているので、重症者の治療に選別が必要だ、という意見がある。

 ──

 冬になると、感染者が急増して、(コロナに関して)医療逼迫・医療崩壊が起こりかねない。だから、その時に備えて、今のうちに「誰に人工呼吸器を与えるか」という選別の基準をつくっておくべきだ……という見解がある。一種のトリアージだ。
  → 医療のルール、事前に議論を ベッド不足、誰を優先するか:朝日新聞

 朝日新聞の記事で、インタビューの形で、医師の意見を聞いている。
 話の趣旨(基本方向)は、「ごもっとも」というふうに感じられる。だが、問題は「いかにして基準を定めるか」だ。
 記事では「若い人を優先して、高齢者を後回しにする」というふうな方向性が示されていたが、それで済むのだろうか? いやいや。話はそんなに単純なものではない。
 以下では、込み入った事情を示そう。

 ──

 (1) 若い人優先? 
 朝日の記事では、「若い人を優先して、高齢者を後回しにする」というふうな方向性が示されていた。これは一応、合理的に思える。
  ・ 高齢者は致死率が高い。
  ・ 高齢者は余命が短い。
  ・ 高齢者はすでに十分に生きてきた。
  ・ 高齢者は治るのが遅くて、機械を長期間占有する。

 こういう問題があるので、高齢者よりも若い人が優先されるのは、自然なことである。だから、基本的な方向性としては、これでいいだろう。

 ただし、話はそう単純ではない。患者の属性は、年齢だけではないからだ。それらの要素(年齢以外の要素)を考えると、年齢だけでは片付かない、とわかる。以下で述べよう。


 (2) ECMO は使用するな
 記事では、人工呼吸器と ECMO と ICU を、あまり区別しないで論じている。だが、これらについては区別が必要だ。特に、ECMO については、はっきりと区別が必要だ。その上で、次のように結論するべきだ。
 「医療体制に余裕があるときはともかく、医療逼迫の事態になったら、ECMO は使うべきではない。ECMO を必要とする患者については、人工呼吸器だけで済ませるか、見殺しにするか、どちらかにするべきだ」

 その理由は、前に述べたとおり。再掲しよう。
 ECMO は……
 医師のほか、看護師や技術士などを含めて、1人の患者に約30人のスタッフがかかる。( ECMO だけでなく他の治療も含めてだが。)

 とにかく、このくらいの重篤な患者を扱うのは、非常に負担が大きいとわかる。患者数が少ないときには、それでもいいが、冬になって感染爆発が起こると、こういうことは続けられないだろう。無理に続ければ、医療崩壊となって、「1人の重篤患者を救うために、多数の中等症や重症者を死なせる」という結果になりがちだ。それではまずい。
( → ECMO の話題: Open ブログ

 医療資源(特に人員)は限られているのだから、医療逼迫のときには、ECMO の利用を止めるべきだ。
 ここでは、「若い人/高齢者」というような選別基準は働かない。「重症/重篤」という選別基準だけがある。そして、後者が切り捨てられる。


 (3) 人工呼吸器の台数
 では、ECMO でなく、人工呼吸器ではどうか? 人工呼吸器では、「若い人/高齢者」というような選別基準を用いればいいか?
 私も以前は「そうだ」と考えていたのだが、その後、方針を撤回した。理由は二つある。

 第1に、人工呼吸器は大量に生産されて、余っている。アメリカで大量に生産されたあとで、生産能力をもてあましつつある。そこで購入できるのだ。
  大量の人工呼吸器は必要か?: Open ブログ(前半)
 だから、「人工呼吸器が足りなくなったら」という質問に対する回答は、「患者の側をトリアージする」ではなく、「人工呼吸器を大量に購入する」である。つまり、需要を(強引に)縮小させるのでなく、供給を拡大すればいい。それは「アメリカから人工呼吸器を購入する」ということだけで済むのだ。

 第2に、アビガンの一般利用がなされるようになってからは、重症者の発生が激減している。つまり、人工呼吸器を必要とする患者が激減している。
  → 大量の人工呼吸器は必要か?: Open ブログ(後半)
 「大量の需要には大量の供給があればいい」……と思っていたら、実は、需要がいつのまにか大幅に縮小していたのである。こうなると、「多大な需要に対して選別を働かせる」ということ自体がなくなる。
 なるほど、3月下旬から4月上旬においては、患者が急増して、重症者も急増して、人工呼吸器が足りなくなりそうになった。しかしそれは、アビガンの早期投与がなされていない時期のことだったのだ。(このころは、アビガンの投与は、中等症以上の患者に限られていた。)
 その後、4月下旬以後は、アビガンの早期投与が一般化して、それとともに、重症者の発生が激減した。つまり、人工呼吸器を必要とする新規患者の発生が激減した。( → 上記記事 )
 こういう事情があるのだから、人工呼吸器をことさら大量に購入する必要はないのだ。大量に購入しても、そのほとんどは1回も使われないまま眠っているだけになりそうだ。(たとえ冬の大感染が起こっても、だ。なぜなら、大部分はアビガンの早期投与で、重症化しないで退院するからだ。)
 
 それでも心配症の人はいるだろう。
 「アビガンの早期投与がなされればいいが、もしかしたら、なされないかもしれない。慎重派の人々が多くなったせいで、アビガンの早期投与は一般化しないかもしれない。そうなったら、あちこちで大量の重症者が発生するので、人工呼吸器が必要となる。だから、そのときのために、人工呼吸器を大量購入しておくべきだ。また、人工呼吸器の大量購入ができなかったときのために、治療選別の基準を策定しておくべきだ」

 まあ、心配症なのもわかるが、「転んだときのための対策」を考えるよりは、「転ばないための対策」を念入りにしておくべきだろう。「失敗したときのための対処」を用意するよりは、「失敗しないための対処」するべきだろう。
 それがつまり、「アビガンの早期投与」だ。これを実現するのが最優先となる。これのために全力を尽くすべきだ。
 ひるがえって、「大量の死者を出すことを前提に、治療選別の準備をする」というのは、あまりにも敗北主義だ。勝てる戦いではきちんと勝つことが大切だ。なのに、勝手にわざと失敗して、そのあとで、「失敗したときの対策を取る」というのは、あまりにも間違った方針だと言える。(馬鹿丸出し。)


 (4) 三つの選別基準
 それでも、万が一のために、「転ばぬ先の杖」とばかり、治療選別の基準を示しておこう。三つある。
 一つ目は、年齢である。(よく言われているとおり。)
 90歳以上の高齢者は、外されても仕方ないだろう。(治療対象から)
 85歳以上も、それに次いで、外されても仕方ないだろう。
 65〜75歳だと、特に外される理由にならない。これらの年齢は、若い人と同様に、治療対象に含めていいだろう。(よほどの医療崩壊時でなければ。)
 75歳以下の感染者に対しては、年齢よりも別の基準を優先するべきだ。具体的には、以下の二つの基準 (5)(6) だ。


 (5) 治療期間(20日)
 人工呼吸器を使える日数は、20日間を限度とするといい。その日数に達した患者は、強制的に人工呼吸器を外す。
 そのあとは、生きるか死ぬかだ。
 「 20日間の人工呼吸器治療」の効果があって、回復してきた患者は、人工呼吸器を外されても、自力呼吸で生きながらえるだろう。(酸素吸入器 = 鼻チューブは使ってもいい。)
 「 20日間の人工呼吸器治療」の効果がなくて、回復してこなかった患者は、人工呼吸器を外されると、自力呼吸で生きながらえることができなくなるだろう。これはこれで、やむを得ない。治療しても効果が上がらない患者は、このまま治療を続けても、ただの延命治療になるだけで、回復の見込みは薄いからだ。医療資源を有効利用するためであれば、死ぬのも仕方ないと言える。(たとえ若者であっても、だ。)


 (6) アビガンの使用歴
 重症化した患者は、アビガンの投与があったかなかったかで、区別するべきだ。
  ・ アビガン投与なし …… 回復の見込みが高いので、治療する。
  ・ アビガン投与あり …… 回復の見込みが低いので、治療しない


 「アビガン投与なし」の患者は、今後、アビガンを投与することで、大幅な回復が見込める。(全員がそうだとは言えないが、確率的にはそう言える。) ⇒ ゆえに、この手の患者には、「アビガン投与 + 人工呼吸器」という治療を施すといい。この手の患者は、最優先で治療を受けられる。(たとえ 70歳以上の高齢者であっても、だ。)
 「アビガン投与あり」の患者は、すでにアビガンを投与されたのに重症化してしまった患者だ。とすれば、今後は、回復はあまり見込めない。ひょっとしたらオルベスコなどのステロイド剤を併用することで、重症からの回復も起こるかもしれないが、基本的には、回復の見込みが薄いだろう。 ⇒ ゆえに、この手の患者には、人工呼吸器の割り当てはあまり優先されない。設備に余裕があればともかく、余裕がなければ、20日間の治療期間の後では、外されてしかるべきだ。(たとえ若者であっても、だ。)

 かくて、アビガン投与の有無が、最も重要な選別基準となりそうだ。年齢よりももっと重要な選別基準となりそうだ。(90歳以上は別だが。)



 [ 付記 ]
 「アビガン投与あり」だと優先されないのか。だったら、アビガンの投与を受けるのはやめよう……と思う人も出そうだ。しかし、それは勘違いだ。
 アビガンの早期投与を受ければ、ほとんどの人は重症化しないで回復する。もともと9割ぐらいの人は軽症で済むのだし、アビガンの早期投与を受ければ、重症化する人はごく少数となる。たぶん3%以下だ。そのような例外的な人だけが、上記のような心配をすればいいのであって、他の人はそんな心配をする必要はない。

 一般的には、基礎疾患があるとか、超高齢とか、何らかの「特別に不利な状況」にある人だけが例外となる。普通の人(大部分の人)は、アビガンの早期投与を受けることで、重症化しないで回復する。
 だから、「アビガン投与ありだと不利だ」というようなことはないのだ。余計な心配をしなくていい。

 
posted by 管理人 at 23:46| Comment(0) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
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