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欧米のマスク事情については、これまで何度か述べた。
→ 欧米の感染状況(5月まで) 2: Open ブログ
→ マスクの話題 11 (ドイツ・米国・韓国): Open ブログ
イタリア・スペインは、感染が早く始まったこともあって、マスク義務化を早めに実施してきた。それに次ぐのがフランスで、さらにドイツも続く。
米国は州ごとに差が大きい。ニューヨーク市では早めにマスク義務化がなされたが、他の州や都市は遅めであることが多い。特に南部ではマスクが普及していないようだ。
以上は、これまでの記述だが、新たにいくつか判明したので、列挙しよう
(1) 英国でマスク義務化
英国でもようやくマスクの義務化が始まった。6月15日から。
→ 英国、公共交通機関でマスクなどフェイスカバー着用義務化−15日から - Bloomberg
一歩前進のようだが、実は、公共交通機関だけであって、店舗が対象となっていない。
それでもともかくマスクが普及しているかというと、全然、普及していない。マスク義務化の5日後の6月20日、次の証言がある。
→ クロップ監督、英国の新型コロナ対応を批判。「私しかマスクをしていない」
その結果はどうかというと、英国の死亡率は世界でも屈指のレベルとなっている。
→ 各国の死亡率 (コロナ): Open ブログ
上位3国は小国なので無視すると、4位の英国( UK )は先進国中でトップの死亡率だ。感染の開始時期が欧州各国よりも大幅に遅れたのに、死亡率はトップだ。いかに状況がひどいかわかる。
今なお収束しておらず、感染者も死亡者もどんどん増えている状況だ。
→ United Kingdom - Worldometer
なだらかに減少しているのは、ロックダウンの効果だが、収束まで長い時間がかかりそうなのは、マスクをしていないせいだろう。
※ ロックダウンの時期は、3月下旬であり、欧州諸国と同様だ。なのに、英国だけは収束の見込みがない。マスク義務化をしているイタリア、スペイン、フランス、ドイツとは事情が異なる。
※ 現時点でも「公共交通機関だけ」のマスク義務化なので、効果は たかがしれている。
ついでだが、日本はどうかというと、民衆レベルではほぼ 100%に近いマスクの着用率があるが、日本政府や専門家会議は、いまだにマスク義務化をしない。英国政府よりも、もっとひどい。
(2) スウェーデン
スウェーデンでは、マスクをしていないだけでなく、ロックダウンもしていない。
結果的に、死亡率は欧州でも最悪レベルだ。( → 前項 )
また、英国と同様で、収束の見込みが立っていない。この点では、ロックダウンをしている英国よりももっとひどくて、なだらかな減少の傾向すらもない。感染者も死者も、今後どんどん増えていく見込みだ。
→ Sweden - Worldometer
※ スウェーデンの事情については、本項末で別途、解説しておいた。
(3) 米国のマスク
米国では州ごとに違うが、南部では、トランプ大統領の支援の集会で、マスクなしの人々がほとんどであるそうだ。
→ 集会、マスク姿まばら トランプ氏強行、支持者熱い応援:朝日新聞
このことは、動画でも確認できる。
A fuller view of stadium as program begins pic.twitter.com/xGdqTpwi1L
— Steadman? (@AsteadWesley) June 20, 2020
(4) 欧米のマスク嫌い
欧米のマスク嫌いの理由は、彼らが口元を重視するからだ、と前に記した。
→ マスクの話題 9: Open ブログ の (8) / 元記事は6月9日の朝日新聞
その時は、内容紹介はしたものの、記事本文はネット上で読めなかった。だが、新たに同趣旨の記事を読めるようになった。
→ マスク苦手な欧米、心理学に答えあり 日本人との違いは :朝日新聞
内容は、私が紹介したとおりなので、特に新たな情報はない。
ただ、はてなブックマークで、面白いコメントがあった。
wsskho_m 顔文字も違いあるよね。欧米は:-)とか:Pとか:'-( みたいに主に口で感情表現してて、日本だと (´-`)(*_*)(^^)と口はなんでもよくて目の表現になる
rider250 昔から「日本の変身ヒーロー=みな全面マスク」「米国のヒーロー=なぜかどいつもこいつも口だけ露出のマスク」ってのが不思議で、なぜこんなに口にこだわるんだろ?と謎だったがなるほどねえ、と。口が大事なのね。
( → はてなブックマーク )
そこで私も考えた。欧米人は、目よりも口元を重視するが、それはなぜか? どうしてそういう文化的な違いが生じるのか?
すぐに思いつくのは、次のことだ。
「欧米人はやたらとキスをするので、キスをするための唇をよく見る」
これは、もっともらしいが、キスをしない同性であっても、やはり口元をよく見るようだ。
もっと合理的な理由も思いつく。
「欧米の印欧語は、子音の比重が大きいので、人々は口元を見て子音の発音を理解する。だからいつも口元を注視するのだ。
一方、日本語は、母音の比重が大きいので、もともと口元をあまり動かさないで発音する。ゆえに口元を注視するということがない。そこで、口元よりも目を重要視する」
たぶんこれが真実だろう。
※ 印欧語では子音の比重が大きいということは、言語学的な常識であるが、それを紹介するのは、本稿の目的ではない。知りたい人は、自分で調べてほしい。
※ 子音は、喉でなく唇で発音することが多い。周波数は高めの周波数である。母音は逆で、唇よりも喉で発音することが多い。周波数は低めの周波数である。
※ 「子音 + 母音」 という形で発音すると、小さな子音でも聞き取りやすくなる。日本語はそうだ。一方、印欧語では、子音が単独だと、聞き取りにくくなることがある。特に、無声音ではそうだ。
日本語は基本的に有声音だらけの発声ですが、英語は有声音と無声音を交えます。この違いは大きいです。
たとえば、日本の民謡歌手が日本語の歌をロウソクの前で歌ってもロウソクは大して揺らめきません。日本語は空気をはかず声帯を鳴らして発音するからです。
しかし、英語圏の歌手が英語の歌を歌うとロウソクは大きく揺らめきます。英語は無声音が多く、それは空気を利用した音だからです。
( → 日本語と英語の違い | 通勤コンパス )
上の点からすると、「印欧語では飛沫を飛ばすことが多い」と認定できそうだ。
(5) 航空便のマスク義務化
日本でも航空便に限っては、マスク義務化がほぼ実施されているようだ。6月1日から実施済み。
JAL は、マスク義務化を原則としているそうだ。
《 JALグループ、6月1日から空港・機内でのマスク着用を原則義務化 中央列の使用中止措置は6月末で終了 》
JALグループは、空港や機内でのマスク着用を原則義務化とするなど、新型コロナウイルス拡大防止のための取り組みを実施する。
6月1日より、空港および機内においてはマスクを着用することを乗客に求める。幼児や着用が難しい理由のある乗客は対象外。マスクを着用しない乗客や、体調が優れない乗客の搭乗は拒否することがある。
( → TRAICY(トライシー) )
ANAも、それに近い取り組みをする。
《 ANA、乗客のマスク着用を強く要請へ 空港や機内 》
全日空は21日、乗客に必ずマスクを着用することなどを求める新型コロナウイルスの感染予防対策をまとめた。空港や機内のすべての場所が対象で、特別な理由なくマスクを着けていない場合は搭乗を断ることもあるという。持っていない人には空港で渡す予定で、6月1日から運用を始める。
幼児や特別な理由のある場合を除いて「マスクを着用しない人や発熱など体調がすぐれない人は搭乗を断る場合がある」ことも明示する。
( → 朝日新聞 )
どっちも「マスクを着用しない乗客の搭乗は拒否することがある」であって、拒否するとは限らないらしい。
ただしこれは日本流で、「きつい言葉を使わないだけ」かもしれない。「拒否することがある」と書いていても、実際には「ほぼ必ず拒否する」ということになりそうだ。実質的には義務化と言っていいだろう。
ちなみに、以前は三井住友銀行がマスク義務化をしたが、すぐにクレーマー客の文句に負けて、マスク義務化を撤回してしまったことがあった。JAL と ANA は、それほど軟弱ではなさそうだ。
ただ、どうしても心配ならば、JALは「マスク着用を原則義務化する」とのことなので、ANA よりも JAL の方が厳しそうだ。完全が心配な人は、JAL を選ぶといいだろう。
ANA は「マスク着用を原則義務化する」と言っていないので、マスクをしない客を搭乗させることもあるかもしれない。その分、マスクなしの乗客が紛れ込んでいる可能性もある。少なくとも会社側の公式発表では、名目上、「マスクなしの客を拒否することもある」だけだって、原則は拒否しないことになっている。それが建前だ。その建前を信じるのであれば、ANA は「マスクなしでも搭乗できる」というのが原則なので、ANA は危険な航空会社だと言える。なるべく搭乗しない方がいいだろう。君子危うきには近づかず。コロナに感染しやすい ANA には搭乗しない方が賢明だ。
「ANA に乗るとコロナに感染するぞ」という風評被害が出たとしても、それは自業自得というしかない。コロナ対策の方針が甘すぎるのが原因だ。
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一方、欧米の航空会社はどうかというと、席を空けることばかりを優先している模様だ。
→ 苦肉の「ヤヌス席」も 新しい座り方、航空会社が模索 [新型コロナウイルス]:朝日新聞
ただし英文記事を検索すると、欧米の航空会社も、5月からは「マスク必須」を推進しているようだ。
→ Google 検索
【 関連サイト 】
Wikipedia 英語版の記事。(マスク)
→ Face masks during the COVID-19 pandemic - Wikipedia
→ その機械翻訳
[ 参考 ]
スウェーデンの状況については、次に参考記事がある。
→ 新型コロナに集団免疫は期待できない? 罹患後数ヶ月で抗体が陰性になるという報告をどう解釈すべきか(忽那賢志)
この記事には有益な情報も多いが、決定的な難点がある。それは、「集団免疫」という用語の意味を混同していることだ。
「集団免疫」の概念は、「感染すれば免疫ができる(=一度罹れば二度と感染しない)」という意味ではない。その意味をもつのは、「集団免疫で感染阻止」という発想だ。それは「集団免疫」という概念そのものとは違う。
「集団免疫」という概念そのものは、記事本文で説明されている。つまり、
・ 短期的な流行の上限
・ 二回目の流行の縮小
という二点だ。
前者については、スペイン風邪の事例で判明している。スペイン風邪では、大流行のあと、ロックダウンで収束した……というのが定説だが、これは誤りだ。ロックダウンをしなかった日本でも、大流行のあとで収束したからだ。その収束の速さは、欧米と同様だった。つまり、ロックダウンは無効だった。
結局、欧米でも日本でも、スペイン風邪が急激に収束したのは、大流行のあとで集団免疫に達したからだ、と推定できる。(1年目)
後者についても、スペイン風邪の例からわかる。2年目には大流行の規模は大幅減になったし、死者数も半減した。これはつまり、2年目には(完全ではないが)免疫効果があったということだ。(詳細は上記記事を参照。)
【 関連サイト 】
マスクの有効性を示す報告が、ドイツで出た。
→ Scientists prove efficacy of face masks in preventing virus transmission in Germany
→ 科学者たちはドイツでのウイルス感染防止におけるフェイスマスクの有効性を証明(上記英文の機械翻訳)
内容は、タイトルの通り。詳しくは、そのページを読めばいい。
「経済が大事だ、だからマスクはしない!」みたいなね。
実際は逆で、経済が大事だからこそマスクをしてほしいんですが、、、。
マスクの有効性を示す報告が、ドイツで出た …… という話。