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政府はコロナ対策で 32兆円もの補正予算を組んだ。詳細は、下記に記してある。
→ 新型コロナ対策の第2次補正予算 その内容は | NHK
超巨額の支出をしているが、電通に莫大な手数料を払うこと以外にも、馬鹿げた施策がいくつかある。それを考えよう。
(1) 家賃支援
家賃支援に2兆円を支出する。
事業者の賃料の負担を軽減するため、「家賃支援給付金」の創設に2兆242億円を盛り込みました。
対象となるのは、売り上げが去年より、ひと月で50%以上減少した事業者や、3か月で30%以上減少した事業者で、
▽中堅・中小企業は月に50万円、
▽個人事業主は25万円
を上限に、原則、賃料の3分の2を半年間給付します。
50万円を6カ月なら、計 300万円。
25万円を6カ月なら、計 150万円。
この額は、あまりにも巨額だ。個人がもらえる額が1人 10万円であるのに比べると、比較にならないほどの巨額となる。バランスを失する形で、特定の人々ばかりが利益を得る。
また、賃貸の会社・事業者ばかりが多額の金をもらえて、自己保有(ローンで購入)の場合には1円ももらえない。これではあまりにも不公平だ。
また、これで利益を得るのは、店を借りている店子だけでない。家賃の取りはぐれがなくて済む大家も、利益を得る。(空き家にならずに済むので。)……しかし、大家を救うというのは、趣旨がおかしい。(不労所得を得る金持ちの資産家ばかりが莫大な金をもらって、汗水垂らして働く貧困労働者は1円ももらえない。)
また、休業補償ならば、これまで保険料を払ってきた失業保険で給付を受けるのと同様だから、理屈が通らなくもないが、企業や事業主は失業保険料を払っていたわけではないのだから、保険料を払わずに保険金を受けというというようなものであって、理屈が通らない。
以上の諸点から言って、「家賃支援」というのは、まったく筋が通らない。特に、300万円、150万円という巨額の金を与えるのは、額が大きすぎる。(せめて一般個人と同じく、10万円ぐらいにするべきだった。)
(2) 事業者支援
第2次補正予算ではないが、売上げの激減した事業者を支援する……という政策もある。
これは第1次補正予算に組み込まれたもので、2兆円以上の規模となる。
中小企業などへの「持続化給付金」は、これまでの支給額が合わせて2兆円を超えました。
続化給付金は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが50%以上減った中小企業や個人事業主に対して最大200万円を支給するものです。
持続化給付金は第1次補正予算で委託費を除いておよそ2兆2000億円が計上されていましたが、支給開始から1か月余りで予算枠を使い切る見通しとなりました。
このため政府は、先週成立したばかりの第2次補正予算で計上した1兆9400億円の追加の予算枠を使って早期の支給を目指すとしています。
( → 持続化給付金 2兆円超支給 1次補正予算枠 まもなく使い切る | NHKニュース )
1次、2次、あわせて4兆円以上の給付をすることになりそうだ。
しかしこれも額が巨額すぎる。個人には 10万円なのに、事業者には 200万円というのは、バランスがよくない。
そもそも、個人は「死なせてはならない」が、企業は「死なせてもいい」「倒産させてもいい」のである。こんなものを救うために巨額の金を支出するべきではあるまい。
どうしてもやるというのなら、前々項でも述べたような、「過去の納税額の還付」にするべきだと思う。たとえば、過去3年間にに払った「法人税、固定資産税、消費税」などの分(ただし 70%程度)を還付する、という形にすればいい。
これだと、高額の納税をしている企業ほど、優遇されることになる。一方、納税をしなかった赤字企業は、補償金を受けられない。……こういうのが、あるべき姿だろう。
※ これまでずっと納税してこなかったくせに、国から金をもらうだけ……という赤字企業は、さっさと潰れた方がいいだろう。
(3) 三方一両損
国が支援するばかりだと、大家が儲かる結果になるので、好ましくない。そこで、「大家が家賃減免をした場合に限って、国が支援金を出す」というような制度を用意してもいい。
このことは、前に別項で述べた。そちらを参照。
→ 家賃の国費負担をやめよ: Open ブログ
※ 店子、大家、政府の三社がともに損失を分かちあう……という形だ。「三方一両損」と名付けられる政策だ。
(4) 閉店を増やせ
大家に「家賃を下げろ」と言っても、素直に従わない大家が多いだろう。「家賃を下げるぐらいなら、別の店子に貸す。どうせ店子はいくらでもいる」と思っている大家が多いからだ。
そこで、「店子はいくらでもいる」という状況を成立させなくするために、あちこちで閉店を大幅に推進するといい。将来はともかく、あと2年間ぐらいは休んでもらうことにして、「2年間の閉店」を推進するわけだ。
こうすれば、世の中の店の1〜2割ぐらいは閉店となる。あちこちで「空き店舗」がいっぱい目立つようになる。こうなれば、大家が「店子はいくらでもいる」と思うこともなくなるので、大家は家賃の引き下げに応じるだろう。
※ ここでは、「供給過剰・需要不足なのに、価格が下がらない」という問題、つまり、「市場原理が働かない」という問題がある。経済学用語では「価格の硬直性」という。本来ならば価格が下がるべきなのに、価格が下がらないまま高止まりしているせいで、「供給過剰・需要不足」という状況が続くことになる。
実際、家賃に関係なく、現状では休業・閉店が増えている。
→ 新型コロナ:「あきらめ時だ…」 休廃業・解散、今年5万件ペース :日本経済新聞
こういう状況では、「家賃の引き下げ」というのが、市場原理では正解なのだ。
ひるがえって、「価格を維持するために、政府が莫大な国家資金を投入する」というのは、あまりにも馬鹿げた浪費だと言える。それは、貧者を助けているよに見えるが、その半分ぐらいは、貧者でなく大家を助けているのである。
( ※ 価格の引き下げを阻止する、という形で。)
(5) 半年後よりも後
政府は半年間の家賃補助をすることで、企業の倒産を防ぐことができる……と見込んでいるようだ。しかしそれはあまりにも楽観的すぎる。
次の冬には、大量の感染爆発が見込まれる。また、たとえそうでなくとも、外出自粛が強力に推進されるのは間違いない。とすれば、今は飲食店に客が半分ぐらいは戻ったとしても、半年後にはまた客が激減してしまうのだ。
とすれば、今は倒産を防いだとしても、半年後にはまた、休業・閉店が続出するのは目に見えている。とすれば、政府が巨額の金を出したのは、半年後になって見れば、「何の効果もなかった」という結果になりそうだ。
つまり、「休業・閉店を半年間だけ先延ばしにした」だけであって、「休業・閉店を阻止した」ことにはならないのだ。
政府はいつも、目先のことしか考えていない。安倍首相も2月ごろから、「ここ1〜2週間が正念場」というようなことをずっと言い続けた。で、その期限が来ると、「また次の1〜2週間が正念場」というふうに延長する。そういうことを繰り返した。
→ Google 検索
これじゃ、正念場の大バーゲンだ。馬鹿げている。
ひょっとしたら、その調子で、半年でコロナが収束するつもりでいるのかもしれない。しかしそれはあまりにも落下的すぎて、馬鹿げている。
まともな頭があるのなら、「休業・閉店を半年間だけ先延ばしにする」ことのために4兆円を投入するのは馬鹿げている、とわかるはずだ。そんな馬鹿げたことをするより、休業・閉店を推進する方がいい。そうなると、店舗が開いてガラガラになるので、大家は大打撃だろう。たとえ店子が逃げ出さなくても、店子から家賃の切り下げを要請されて、応じざるを得なくなるだろう。(拒否すると逃げられる。)
かくて、大家は莫大な損失が生じるが、仕方ない。もともと企業のほとんどが損失を受けているのだ。大家だけが安泰でいられるはずがない。
なのに、今の政府の政策は、「大家ばかりをことさら優遇しよう。売上げを 100% 保証しよう」というものだ。あまりにも公平性を欠いており、馬鹿げている。
(6) 閉業支援金
閉業して、店の賃貸契約を解除した場合には、そのための補償金を出してもいい。ここでは、「事業の継続のため」よりは、「事業の休止・廃止」のために国の金を出すわけだ。
で、そうすれば、国の金は4兆円も出す必要はなくなり、 (1割の)4000億円ぐらいで済むようになるだろう。
その一方で、大家は家賃の引き下げを迫られるので、大家は大幅に損害が発生する。で、その損害の発生額を4兆円と見込めば、その4兆円が店子の側に移る。
つまり、こうすれば、政府が4兆円を払わなくても、店子には4兆円分の利益が入るのである。めでたし、めでたし。
※ ただし4兆円を払わされる大家は、大憤慨だろうが。
※ なお、「閉業支援金」をオーナーに出してもいいが、これには、年齢制限を付けるべきだ。たとえば、65歳まで。それより高い年齢層では、引退したからといって、補償金を出す必要はあるまい。(どうせ年金をもらえるのだし。)
【 追記 】
※ 補正予算の話ではないが、似た話題。
(7) 東京都の財政破綻
東京都は独自の休業補償をした。他県にはない多額の補償で、都民には受けがよかったようだ。しかし、その費用は何と1兆円。これによって都財政にあった貯金の 9000億円を使い果たしてしまった。
この貯金は、将来の財政赤字に備えた貯金だった。なのに、ころ貯金がなくなると、どうなるか? 今後、コロナ不況のせいで、年1〜2兆円の減収が2年ぐらい続きそうだ。そうなると、2〜4兆円の大幅赤字だ。となると、財政危機となり、保育や教育に皺寄せが来る懸念もある。
下記に参考記事がある。
→ 国にも強気だった東京都 でもついに「貯金」枯渇の危機:朝日新聞
→ 都知事、国と競える影響力 コロナ禍で際立つ小池氏、陰りも:朝日新聞デジタル
(8) 都民へ10万円給付
都知事選に立候補した、れいわ山本が、全都民への10万円給付を公約した。
→ れいわ山本氏、全都民への10万円給付公約 | 共同通信
いかにも馬鹿げているように見えるが、小池都知事は1兆円で店に休業補償した。その1兆円を全員にばらまけば、1人 10万円になる。
小池都知事の休業補償がいかに不公平で馬鹿げているか、よくわかる。
それと同様なのが、国の休業補償だ。4兆円もばらまくぐらいなら、1人4万円を配る方がずっといい。つまり、れいわ山本の方針の方がずっといい。
特定の人々に超多額を給付するよりは、全員にまんべんなく配る方がずっといいのだ。
困った業者には、せいぜい、無利子貸与と税額還付をするぐらいでいい。
(9) 病院に金を出せ
全員に高額を給付するのも一案だが、もっと重要なことがある。病院に給付することだ。というのは、コロナ対策をした病院は、大幅赤字となって、閉鎖される懸念があるからだ。
今回の医療崩壊が深刻なのは、患者の受け入れ態勢だけでなく、病院経営にも及んでいる点だ。患者が受診を控え、医療機関も院内感染防止の観点から診療を縮小している。ひとたび院内感染が発生したら、最低2週間はすべての新規患者の診療が休止となるからだ。収益を自費診療である健診部門の収入で補填(ほてん)している病院も多いが、健診を休止せざるを得ない病院も多く、収益悪化が加速している。
緊急事態宣言後、各都道府県は緊急事態措置を出し、休業した企業には「協力金」という名目で補償金を給付する。病院に対しても、何らかの支援金が必要ではないか。そうしないと、流行が1年も2年も続いた場合、日本の多くの民間病院が倒産してしまう。
( → (私の視点)新型コロナ 医療崩壊、国策が元凶 病院の倒産危機、国支援を 加藤奨一:朝日新聞 )
一般の企業の休業や減収には補填するくせに、病院の減収には補填しない。(減収幅が少ないせいだが。)
もともと高収益の企業と違って、もともと赤字体質の病院が多いのに、こんな状態を放置すると、冬の大感染のときまでに病院が倒産しかねない。
で、政府は何をしているか? 第2次補正予算では、「医療機関の従業員に5〜20万円の慰労金」という措置を取った。
→ 新型コロナ対策の第2次補正予算 その内容は | NHK政治
しかしこれだと、従業員に金が出るだけだ。それも、たったの 5〜20万円 だけだ。命の危機に瀕して、完全防護服で対処してくれていた医療従事者に対して、あまりにも額が少ない。
聞くところでは、「夏のボーナスは半減」という病院がかなりあるようだ。「さらに一部解雇」という病院もありそうだ。
こんな状況では、「家賃補助」なんかに莫大な金を投じるよりも、病院に金を出すべきだろう。
参考:
→ 妻の病院では冬のボーナス半額が提示され、冬までに呼吸器・救急から人がいなくなる心配。 / はてなブックマーク
> 新型コロナ影響で患者激減の医療機関 経営面の影響深刻に
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200622/k10012479111000.html
中身なんて、そして効果なんて、どうでも良いのかも。