──
体験記の分析
新型コロナの体験記がチラホラと見つかるようになった。そこで、ざっと見てみると、患者の状況は一様ではないとわかる。
症状のレベルはどちらも同程度(軽症)であっても、病状(苦しみ方)に大きな差があるのだ。「ひどく苦しんだ」という事例と、「苦しまなかった」という事例だ。
その差は、「アビガンなし」と「アビガンあり」によるようだ。
つまり、次のように大差がある。
・ アビガンなし …… 病状は重く、後遺症もあり。
・ アビガンあり …… 病状は軽く、後遺症もなし。
(統計的に)治療効果だけを見れば、どちらも「助かった・生存」という範疇に含まれるのだが、その内実は大差があるわけだ。
それは、自分の肉体や人生を大きく傷つけられたか否か、という差だ。
時期的には、4月上旬の感染急増期に感染した患者が多い。このころの患者は、病院に入るのも難儀した。また、病院に入ったあとも症状に苦しんだ。アビガンを投与されることはなかったようだ。
一方、4月下旬ごろ以後の患者は、「アビガンを投与された」という人が増えている。これらの人々の体験記には、「症状で苦しんだ」という話は出てこないようだ。ただの発熱ぐらいで済んだらしい。
というわけで、感染した時期の違いによって、「前半はアビガンなし/後半はアビガンあり」というふうになりがちだった。それにともなって、「前半の患者は苦しんだが、後半の患者は苦しまなかった」というふうになったようだ。そういう傾向がある。
※ ただし、おおまかな傾向であるから、個別の例では、当てはまらない人も多い。話はあくまで、傾向だ。
※ 例外となる典型的な例は、若くて回復しやすい人々だ。若い人々だと、「症状が軽いまま、どんどん軽快する」ということも多いようだ。そういう人は、アビガンを投与されることもなく、自然免疫だけで回復しているようだ。だから、「アビガンなし」で苦しむとは言えないようだ。
※ 一方、本項で紹介するのは、それほど幸運ではなかった人だ。つまり、前半に感染したが、若者ではないので、自然に軽快することもなく、重い病状に苦しんだ、というような人だ。
以下では、体験記を個別に見ていこう。
「アビガンなし」の例
4月上旬・中旬に感染した人は、
「アビガンなし。その結果、病状は重く、後遺症もあり」
というふうになっている人が多いようだ。
その体験記が、最近(この一週間)になって、急にあちこちで出てきているようだ。治療が終わったのは4月末〜5月上旬ごろだったようだが、それから1カ月あまりを経て、ようやく体験記が出てくる。退院した直後には、体験記を書くだけの気力・体力もなかったようだが、1カ月ほどすると、ようやく体験記を書けるだけの体力が付いてきたかららしい。
下記で個別に紹介しよう。
(1) 朝日新聞記者
最近、朝日新聞に「記者の体験記」が掲載された。
→ 現場から ママが感染した:3 テレビ電話越し、子どもに無言で笑顔:朝日新聞
この人は、37歳の女性で、4月6日に入院した。
アビガンを投与されたという記述はない。病状はかなり厳しかったようだ。
後遺症については、次の話もある。
退院から1週間は頭痛とだるさが続いたが、コーヒーの味は分かるようになった。2週間たち、エッセンシャルオイルの香りも分かった。
だが、退院から5週間がすぎても、分からないにおいがある。子どものウンチだ。次男が泣く意味がわからず、オムツからはみ出た排泄(はいせつ)物を見た時「私は、本当に陰性なのか」と、背筋が凍った。この病との闘いは、まだ続くのだろう。
( → 現場から ママが感染した:4 「偽陰性」経て退院、何度も抱きしめた:朝日新聞 )
健康は取り戻しても、嗅覚障害という後遺症は残ったようだ。ちょっとした副作用どころではなく、かなりひどい後遺症だと言える。
(2) NY感染体験記
NYにいた人の体験記がある。3月中のことだ。
私の場合は匂いの改善と同時くらいのタイミングで呼吸のしづらさを感じるようになっていた。
この呼吸困難の感覚を文章で表現するのがかなり難しい。まず、普通に息を吸っていても、酸素が行き渡った感じがしない。酸素量が足りてない感じがする。酸素をちゃんと取り込もうと思って思いっきり息を吸うと、肺の奥が「ウッ」となる。プレッシャーを感じる。妻が「プールで長時間泳いだ後みたいな感じ」と表現していたが、そういうことなのかもしれない。息を吸うと「オエッ」と吐きそうになり、同時に咳が出る感じ。
一番ひどかったのが3/26の夜で、ベッドから立ち上がることができない。トイレに立っても、何かに捕まっていないと座り込んでしまう。息が苦しいのと、自分はこのまま命を落とすのではないかという「情報的な不安」が相まって全然眠れなくなってしまう。
( → 0403「NY感染体験記(確定)」|qanta|note )
けっこうひどい病状だ。ただし、この人は後遺症はなく、感染中の呼吸困難ぐらいで済んだようだ。
(3) 29歳女性の例
29歳女性の例。4月1日に発症して、4月17日に(退院後の)体験記を書いている。下記の病状がある。
症状として一番辛かったのは発熱が長期間続くこと。熱に伴って悪寒と頭痛が酷かったのも辛かった。
1週間以上、38℃以上の熱が続くのは人生で初めてで、ジリジリ体力が削られていくような辛さと恐怖があった。
途中から現れた息苦しさも辛かった。「ずっと息苦しい」というのは人生で初めての経験だった。常に軽く走った後のような、呼気が熱く、深く息を吸い込めない感じが続いた。息を吸い込めないことがこんなにストレスと不安に繋がると思わなかった。症状が悪化してからは、寝る前にこのまま呼吸が止まったらどうしようかと考えたし、毎朝、よかった今日も息してる、と思いながら起きた。
( → 一人暮らしで新型コロナウイルスにかかった話|RO|note )
新型コロナは、軽症でもこんなにひどいわけだ。(あちこちで話題になっているが。)
(4) 40歳の経営者
40歳の経営者の体験記がある。やはり病状がひどい。
3月22日に発熱。
これ、うつしたら、間違いなく恨まれるであろうほど辛いです。インフルエンザのが30倍くらいマシです。
昨晩、2度の投薬後も39.8℃。 もう、がくがく震えるわ、頭は熱いわ、なんのこっちゃかわからず、「もういい加減にしてくれよ」と、声に出てしまいました。
発症して、8日目。事態は辛くなる一方です。 問題とされている咳ですが、昨日は咳で眠れないほどになってきました。
9日目。今は咳が非常に辛いです。ずっと出ているわけではないのですが、出始めると堰を切ったように続きます。
( → 渡辺一誠 )
(5) 37歳の会社経営者の例
IT系の会社の経営者(37歳)の例がある。これも病状がひどい。
3月27日急な熱が出る。38.1度。
3日目になっても熱は下がらない。インフルだったら、もう下がって来ますよね。それに加えて腰痛。腰が洋服に触れるだけで痛むのです。千本の針でちくちく刺されるような感じでした。こんな経験は今までになかった。
3月29日。(熱は)昼間からどんどん上がっていく。一時期は鏡見たら本当に顔が真っ赤で、怖かったのが目まで真っ赤。
「頭は沸騰したお湯をかけられたように熱く、頭から下は寒気がしました。目も真っ赤です。あまりに頭が痛く破裂しそうだったので、風呂に水を張って頭だけ突っ込みました。地獄でした。本当に死ぬかと思いました」
( → 頭は熱湯をかけられたように熱く、腰にも激痛…37歳男性が綴った”新型コロナ闘病記“ | デイリー新潮 )
(6) はてな匿名ダイアリー
はてな匿名ダイアリーに、30歳前の男の例がある。これも、ひどい病状が続いたそうだ。
《 死なないけど死ぬほど苦しいのが新型コロナ 》
高熱は出た。喉の痛みも出た。呼吸も苦しくなった。熱は薬で下がったが息苦しさは改善されなかったしダルさも残った。
死なないけど死ぬほど苦しい。眠れない。2週間は地獄だ。アビガン飲んでも熱下がるだけ。
( → はてな匿名ダイアリー 2020-06-02 )
「呼吸が苦しくなった」ということから、中等症に近い状態だと言えそうだ。けっこう病状が重くなってからアビガンを投与したわけだ。
これは、アビガンを早期投与したのではなく、かなり病状が重くなってからアビガンを投与したので、アビガンの効果があまりなかったのだ、と思える。
ともあれ、「アビガンを投与すれば大丈夫」ほど楽観はできないようだ。アビガンを投与するのなら、病状が軽いうちに投与するべきだ。病状が重くなってから投与しても、「アビガンなし」の場合と同様の病状になりがちだ。
というは、もともと「アビガンなし」の状況が続いていたのだから、そこでは病状が「アビガンなし」になるのは当然だろう。
この事例は、「アビガンなし」のあとで、最後にちょっとアビガンを使っただけ、というふうに見なせそうだ。
( ※ ただし、詳細データはないので、以上は推察である。)
「アビガンあり」の例
「アビガンあり」の場合には、病状がずっと軽く済むようだ。
特に、病状が「すごく苦しい」となった直後にアビガンを飲めば、「すごく苦しい」という事態を短期間で終了させることができるようだ。
(7) 女性アイドル
女性アイドルの例を、前に記したことがある。
→ アビガンを早期投与せよ(少量で): Open ブログ の (3)
その体験談を引用すると、こうだ。
呼吸もすごく痛くて、気管をむしり取りたくなる感覚。
わらにもすがる思いで、この状況をどうにかしたい、もうこれ以上耐えられないと思って。
呼吸もすごく痛くて、気管をむしり取りたくなる感覚。
医師の先生からは『軽症患者』だということで。『こんなに苦しいのに軽症なんだ』と。
( → 「気管むしり取りたいのに“軽症”」コロナ感染アイドル『モーニングショー』でアビガンで症状改善を激白 (水島宏明) - 個人 - Yahoo!ニュース )
その後、アビガンを飲んだら、5時間ほどして、熱も症状も治まっていったそうだ。
病状が苦しくなった直後にアビガンを飲めば、それでも間に合うようだ。特に後遺症もなかったらしい。(詳細不明だが。)
(8) 中年男性の例
ブログを書いている中年男性の例がある。
4/19 朝方ひどい寝汗で起きました。体温は37.5℃。その後36.4℃に下がるも、昼頃38.8℃に。
4/22 (CT検査・採血即入院となりました/血中酸素数値があと1下がれば呼吸器要)
(解熱剤2回、アビガン夜9錠服用)
( → 新型コロナウイルス闘病記 | 台北ナビ )
アビガンを使用したとのことだが、病状については何も書いてない。特にひどい病状はなかったらしい。たぶん発熱だけで済んだのだろう。
この人は、38.8℃という高熱になった直後に、アビガンを投与された。時期的には、アビガンを投与するのに最適の時期だと言える。(高熱で免疫力が高まった時点でのアビガン投与。)
そのおかげで、苦しむこともなく、何もかもうまく行ったようだ。(後遺症もなかったようだ。)
(9) 赤江アナの例
アナウンサーの赤江珠緒(45)
4月18日に感染を発表、29日に入院を発表、5月6日には退院を発表、とのことだ。つまり、入院して1週間もたたずに退院できたわけだ。
私の場合は中等症でしたので、アビガン、プラケニルを使用しました。
元々は軽症で自宅療養していましたが、中等症に進んで肺炎を起こしていましたので、入院して、投薬と抗生剤の点滴を行い、症状がおさまりました。1か月近く、部屋に閉じこもっていましたので、体力は落ちていますが、今はほぼ日常が戻ってきています。今しばらく病後の療養をする予定です。
( → 新型コロナで自宅療養中の赤江珠緒アナ、ラジオに長文レポート 医療従事者の声と体験記つづる【全文掲載】|オリコンニュース|上毛新聞ニュース )
アビガンを使用したとのことだが、症状については何も書いてない。特にひどい症状はなかったのだろう。発熱だけで済んだのだろう。後遺症もなかったのだろう。
それにしても、入院して1週間もたたずに退院できたのだから、かなりラッキーな部類である。アビガンがよく効いたのかもしれない。
まとめ
冒頭で述べたように、
・ アビガンなし …… 病状は重く、後遺症もあり。
・ アビガンあり …… 病状は軽く、後遺症もなし。
という傾向が見て取れる。ただしこれは、あくまで傾向だ。
アビガンを飲んで、病状が軽かった人は、「アビガンのおかげで、病状が軽かった」とは限らない。若さなどが理由で、「もともと病状が軽くなるはずだった人」である可能性もある。
この場合には、上の二項目の対比には当てはまらないことになる。
冒頭で述べたこと(2項目の対比)は、必ずしも明確に分類・断定できるわけではない。あくまで、おおまかな傾向であるにすぎない。
それでも、おおまかな傾向がつかめるので、若者以外であれば、
「苦しみたくなければ、アビガンを飲め」
と推奨していいだろう。
※ もともと軽快する人ならば、アビガンを飲んでも飲まなくても、どっちみち軽快するので、アビガンを飲む必要はない。ただし、飲んだからといって、損をするわけでもない。
※ もともと病状が重くなる人(中年以上)ならば、アビガンを飲むか飲まないかで、病状に大差が出る傾向がある。「苦しみたくなければ」( or 死にたくなければ)という条件で、アビガンを飲んだ方がいいと言えるだろう。……ま、死にたい人は別ですけど。
[ 付記 ]
「冬の大感染の前に、夏に感染しておいた方がいい」
と、私は2月ごろに書いていた。しかしこれは、早計だったようだ。
このときは、「致死率は高いが、病状はインフルエンザ程度だ」と見なしていた。
しかし実際には、とんでもなく病状が重い。ひどく苦しむハメになる。しかも、後遺症も出る。
新型コロナには、なるべく感染しない方がいいのかもしれない。
ただし、それは、日本がマスクをする国であって、感染者数が少ないからだ。
一方、欧米のように、マスクをしない国だと、冬には大感染が再発しそうだから、夏のうちに感染した方いいかもしれない。
ただし最近では、欧米でもマスクをする人が増えてきたそうだ。(着用率が 100% に近い日本ほどではないようだが。)
また、感染してもアビガンで治せるということが確定すれば( = アビガンが承認されれば )、夏のうちに感染してアビガンで治しておく、という方法が、ある程度、有効だと思える。
※ ただし「アビガンが承認される」という条件でのことだ。
早まって、アビガンを当てにして感染しないようにしよう。
(今はまだアビガンは承認されていないので。)
6月2日に、中等症入院患者を対象としたレムデシビルの第3相試験の結果を発表し、レムデシビルを5日間投与した患者は、レムデシビルを投与せずに標準的な治療を行った患者よりも症状の改善した患者の割合が65%高かったことを明らかにした。
一方、アビガンは新型コロナウイルス感染症の治療薬として2020年5月中の承認を目指していたが、有効性が確認できないとして承認が見送られた。但し、アビガンについては、備蓄量を200万人分にまで拡大するとの日本政府の決定を受け、富士フイルム富山化学が2020年7月に月間約10万人分、同年9月には同約30万人分の生産体制を構築する計画のようです。
アビガンは「有効性が確認できないとして承認が見送られた」のではなく、「投与ありと投与なしという形の比較試験をしなかった(全員に投与した)ので、投与なしと比べた場合の有効性を確認することはできなかった」だけです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikurafuminobu/20200531-00181210/
> 良く報道されているように約8割の方が特別な治療をすることなく改善するようです。8割の患者さんが無治療で改善する病気に対する薬の効果を判定するのはものすごく難しいことです。
88%が改善するとわかっているが、8割に対して88%の改善では、統計的に有意だとは証明しがたい。
しかも、アビガンを処方される人は、もともと軽症ではない人に限られる傾向があるので、もともとの自然治癒率が8割よりも大幅に低い可能性がある。たとえば、自然治癒率が5割であるような人々(やや症状が重い人々)に限って投与された可能性がある。この場合、5割から88%に改善率が向上しても、比較試験をしていないので、有効性が判明しがたい。
こういうことがあるので、メーカーは申請をしなかった。承認されなかったのではなく、承認の申請をしなかったのです。
今後は、どうか? 患者数が激減しているので、治験の必要数に達せず、承認申請は大幅に遅れる見込み。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60077910W0A600C2MM8000/
できれば比較試験するべきだが、日本国内では比較試験をすることは困難なので、外国で比較試験をするしかないのかも。
あるいは、本サイトで述べたように、「早く治るかどうか」をデータ解析するのでなく、「重症化するかどうか」をデータ解析するべき。そうすれば、「重症化を防げる」と判明するので、承認申請もできそうだが。
https://news.infoseek.co.jp/article/09reutersJAPAN_KBN23G1WU/