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ECMO の早期実施
ECMO を使うなら、早期に使うべきだ、という報告が出た。
→ 新型コロナウイルス感染症、高齢者やLDH高値者で生存率低く、出血合併症に留意したECMO早期実施が重要
ECMO は早期実施が重要だそうだ。使う遅れると、手遅れになる。
また、76歳以上では効果が低いそうだ。どうせ使うなら、76歳よりも若い患者を対象とするべきであるようだ。(選別すべきだ、ということ。特に、医療リソースが限られている場合には。……これは、トリアージの発想だ。)
平均で 12日程度で回復するそうだ。これ以上の長期は、やっても無駄になるらしい。やっている病院は多いが、いくらやっても、最終的には死んでしまうので、無駄に延命しているだけだ、とも言える。
→ 新型コロナ:新型コロナ治療に「人工肺」 経験豊富な人材少なく :日本経済新聞
この記事では、境界となる年齢が、先の記事よりも少し若い。76歳でなく、65〜70歳が境界となる。それ以上は効果が薄くて、それ以下では効果が高い。
※ まあ、どっちにしても、大差はないが。
なお、似た話は、下記にもある。
→ 新型コロナ:ECMOの数より、扱える専門医が足りないという日本の現実
ECMO の人材不足
上の記事(日経)では、「 ECMO の人材不足」ということも話題となっている。
ECMO は、操作が難しいので、熟練した医師ならば上手に使いこなせるが、あまり使用経験の多くない(下手な)医師だと、上手に使いこなせないので、患者を救えない結果になることが多いらしい。……つまり、人材不足だ。
ECMO は、機械がいくらあっても、それを操作する熟練した人材が足りないので、機械だけ増やしても仕方ないようだ。
この件は、実は、2012年にも言及したことがある。
→ インフルエンザと Ecmo: Open ブログ
せっかくの機械が「宝の持ち腐れ」になる、というふうに述べている。
あのころから、人材不足という問題は、ずっと続いているようだ。
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さて。では、どうするべきか?
もちろん、人材不足という問題を解決するには、人材を養成すればいい。とはいえ、人材の要請は、一朝一夕にはできない。
そこで、一つ提案しよう。こうだ。
「今は、コロナの治療をする医師が不足している。そこで、ECMO を操作するような医学生や研修医を招いて、実地教育するといい。今なら、大量の人材を教育するチャンスだ。
そして、今後は数カ月をかけて教育すれば、若い医学生や研修医も、立派な使い物になるだろう。当初の1カ月はともかく、2カ月、3カ月、と ECMO を使い続ければ、かなり熟練していくはずだ。そうして若手の医師を育てれば、今は ECMO を使って疲労困憊している医師も、労働条件が改善するようになる。
特に、今後に予定される冬の大感染の前に、ECMO を使う若手医師を養成するといいだろう」
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「医学生を研修する」
という点については、新たに次の制度が導入されるようになった。
免許をもたない医学部や歯学部の学生も、患者に医療行為をできるようにする――。厚生労働省は、医師や歯科医師の養成に向けた新たな仕組みを整える方針を固めた。今後、医師法と歯科医師法の改正に向けた準備を進める。
医師法と歯科医師法では、無免許での医療行為は違法になるが、実習として医師らの指導のもとでする場合は違法性がないと解釈されている。
( → 医学・歯学部生も医療行為OKに 厚労省が法改正へ:朝日新聞 )
記事によると、今すぐ可能になるわけではないようだ。いくつかの段階を踏んだあとのことになるらしい。
とすると、医学生が ECMO を直接操作することまでは、無理であるようだ。とはいえ、ECMO を直接操作するかわりに、ECMO のデータを見て解釈することぐらいならば、できるだろう。データの変化を見て、異常を検知することも、また、対処の仕方を理解することも、現場で学べるだろう。
実際に手を下さなくても、学ぶことは多いのだ。そして、データを付けに観察していること(異常があれば報告すること)ができれば、立派な補助戦力となるのである。
※ 看護師と主任医師との中間的な位置づけ。手術における第1助手や第2助手のような位置づけ。
※ こういう経験を積ませて、ECMO を使える医師を養成することは、とても大切だ。
※ 教育すると同時に、給与を払ってもいいだろう。たとえば、
「1週目は無給、2週間目は時給 1000円、3週間目は時給 1500円で……」
というような形で昇給する。戦力化にともなって順次昇給。
( どうせ今は、医学生は休学だ。学徒動員みたいにすると、貧しい学生がバイト代を稼ぐチャンスにもなる。)
( 逆に、ECMO 特別講習料として、1時間 2000円ぐらいの料金を徴収してもいいかも。高額の機械を使わせてもらえるための料金だ。)
※ ECMO のある場所は、レッドゾーンであることが多いので、レッドゾーンに入る若者がいると、病院では喜ばれるだろう。(若者は感染しにくいので。高齢の医師に危険なことをやらせるよりは、倫理的でもある。)
ECMO は非効率
ECMO は、それなりに効果があるし、人命を救えるのだが、操作するには非常に多数の人材(30人)を必要とするそうだ。
杏林大の皿谷健准教授は「他の治療を含めて1人の患者に約30人のスタッフを集めた。負担は大きかった」という。
( → 肺炎治療の切り札「ECMO」って? 使用のリスクも :朝日新聞 )
医師のほか、看護師や技術士などを含めて、1人の患者に約30人のスタッフがかかる。( ECMO だけでなく他の治療も含めてだが。)
とにかく、このくらいの重篤な患者を扱うのは、非常に負担が大きいとわかる。患者数が少ないときには、それでもいいが、冬になって感染爆発が起こると、こういうことは続けられないだろう。無理に続ければ、医療崩壊となって、「1人の重篤患者を救うために、多数の中等症や重症者を死なせる」という結果になりがちだ。それではまずい。
ECMO は、通常時には、癌の手術などに使う。そういう使い方であれば、1日に1回の手術で、1日に1人を救うことができる。
一方、コロナだと、1カ月近く使い続けたすえに、最後には死んでしまう、という例がかなりある。また、回復するにしても、30人もかけるのは、大変だ。治療の効率がよくない。
トリアージが必要な状況では、ECMO はあまり使うべきではないようだ。むしろ、重篤者のための人材を、中等症や重症者に向けるべきであるようだ。