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緊急事態宣言が解除されたあとでも、感染の発生が止まらない。特に北九州市と東京都では、多めの発生が続いている。
→ 北九州で21人感染 東京、解除後初のクラスターか―新型コロナ:時事
→ 北九州市で新たに21人感染確認 6日で計43人 新型コロナ | NHK
上は昨日の記事だが、本日もまた、新たに感染が増えている。
→ 北九州、新たに26人感染 「第2波と認識」―新型コロナ:時事
→ 東京都 新たに22人感染確認 20人超は15日ぶり 新型コロナ | NHK
ただし、市中で感染爆発が起こりかけているというわけではない。これらの感染急増は、「院内感染」という形で、病院内での集団発生で数が増えているのだ。( → 上記記事)
場所的な発生件数は1件でも、クラスターとしての集団発生となるので、感染者が増えてしまう。
要するに、「市中感染が止まらない」のではなく、「院内感染が止まらない」のだ。それが真相だ。
では、その理由は?
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これについては、先に「掃除が不十分だからだ」というふうに推理した。
→ 院内感染の原因は?: Open ブログ
なるほど、それも理由としては十分に考えられる。まったくの誤りということはあるまい。
とはいえ、それよりももっと有力な候補を思いついた。次のことだ。
「病院は、ゾーニングがなされていて、レッドゾーンとグリーンゾーンが区別されている。前者は危険な領域で、後者は安全な領域だ。ただし、その境界が問題だ。その境界で、両区間を出入りするときに、ウイルスが混入する危険がある」
具体的には、次のことだ。
・ グリーンゾーンからレッドゾーンに移るときには、グリーンゾーン内で防護服を着てから入るので、特に問題ない。
・ レッドゾーンからグリーンゾーンに移るときには、防護服の着脱の際に、ウイルスが混入する危険がある」
後者は、次のことを意味する。 …… ★
・ レッドゾーンで服を脱ぐと、本人が感染する危険があるので、不可。
・ レッドゾーンを出てから、グリーンゾーンで服を脱ぐと、本人は安全だが、グリーンゾーンにウイルスを拡散する危険がある。 (#)
この後者(#)の問題を解決するには、次の方法が推奨されている。
・ ゾーンの出入口には、中間的なイエローゾーンを儲けて、その狭い室内で着脱する。
なるほど、緩衝地帯としてのイエローゾーンがあるので、これならグリーンゾーン内にウイルスを拡散する危険性は低くなる。
しかしながら、イエローゾーン内での消毒が不十分であれば、イエローゾーンで汚染されたまま、グリーンゾーンに出るので、そこからウイルスが拡散する危険がある。そういう問題は残る。
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以上をまとめると、ウイルスが拡散する危険性は、次の二点だ。
・ イエローゾーンが設置されていない場合には、レッドゾーンの出口からグリーンゾーンへとウイルスが拡散する。
・ イエローゾーン内の消毒が不十分な場合には、イエローゾーンからグリーンゾーンへとウイルスが拡散する。
では、どうすればいい?
この問題への解決策は、次の二つだ。
・ イエローゾーンが設置されていない場合には、イエローゾーンを設置する。
・ イエローゾーン内の消毒が不十分な場合には、イエローゾーン内の消毒を十分にやる。
後者(イエローゾーン内の消毒)は、次の3点などだ。
・ 紫外線ランプで全体を消毒する。防護服の外側や、室内の壁など。( ON-OFF 切替をする。目の防護もする。)
・ アルコール消毒薬または他の消毒薬を、短時間だけ使う。(その後はすぐに換気で排気する。)
・ 換気(排気)を常に十分に行う。
これで対策となるだろう。
【 補説 】
「そんなことは、やっているに決まっている」と思う人もいるだろうが、現実には、やっていない。
(1) 千葉県の例
イエローゾーンがないので、レッドゾーンからグリーンゾーンへ直接、ウイルスが拡散して、集団感染が発生した例がある。
ウイルスが飛散しやすい居住スペースは「レッドゾーン」に設定。防護服を着た職員や医療チーム以外は出入りできない。対策本部は、消毒を施した「クリーンゾーン」の体育館に設置。居住スペースと体育館を結ぶ廊下や防護服の着脱場所を「セミクリーンゾーン」にして、感染者と濃厚接触した職員は、クリーンゾーンには入らないよう動線を分けている。
( → 118人集団感染し「病院化」した障害者施設 汗だくで支えた職員の苦悩 - 毎日新聞 )
この例では、壁で隔離されたイエローゾーンは設置されておらず、セミクリーンゾーンの一角が便宜的に「着脱場所」というふうに指定されているだけであるようだ。
そこは壁で隔離されていないのだから、当然、ウイルスは周囲に拡散するだろう。
(2) 大阪府の例
イエローゾーンが設置してあっても、その内部では、消毒が不十分であるようだ。
→ イエローゾーンの実例(画像あり)
画像を見ればわかるように、単に小部屋が設置されているだけであって、特段の消毒設備(紫外線ランプなど)は用意されていないようだ。また、換気については不明だが、「この病院は築47年の古い建物です」とのことなので、特に有利にはなっていないと思える。
(3) 京都府の例
そもそも、イエローゾーンの設置基準において、消毒や換気はことさら留意事項に入っていないようだ。

出典:市立福知山市民病院の文書
消毒については、個人レベルでの対処として、次の記述がある。
@キャップ,サージカルマスク,手袋(内),手術用ガウンを着用.
A病室で患者対応ができるよう,ゴーグル,N95 マスク,手袋(外),ビニール製長袖ガウンを着用.
B患者ごとに手袋(外)とビニール製長袖ガウンは取り換える.汚染した手袋(外)とビニール製長袖ガウンは病室内で脱衣,廃棄.
C全ての PPE を脱衣し,手洗い.最後に手指消毒用エタノールで手指消毒し,退室.
D終了.
( → 市立福知山市民病院の文書 )
手指消毒をするぐらいであって、防護服や室内がウイルスだらけであるという点については何も考慮されていないようだ。もちろん、紫外線ランプや換気扇の話はない。
※ ただし、一般的な場合として、「環境の消毒には次亜塩素酸を生成する環境除菌・洗浄剤を用いた」と記してある。これは、イエローゾーンに限った念入りの対処ではない。
上記の例は、ことさら念入りにやっているわけではないのだが、そこそこの対策にはなっている。この病院では、初期には院内感染が発生したが、上記の対策(一応のゾーニング)をしたあとでは、院内感染が発生していないそうだ。この程度のゾーニングであっても、やらないよりはずっといいらしい。
その意味で、まともなイエローゾーンを設置すらしていない (1) のような例があると、院内感染は起こりがちだと言える。
[ 補足1 ]
次亜塩素酸水を噴霧して消毒薬とすることは、良いことか悪いことか、判断を保留しておく。
次亜塩素酸水(低濃度)を噴霧して空間消毒するというのは、「よろしくない」と判定されている。
→ 「次亜塩素酸水」現時点では有効性は確認されず NITEが公表 | NHKニュース
一方、次亜塩素酸水(中濃度)を、物体に噴霧することについては、意義があるかもしれない。人間が直接吸い込むのは問題だが、防護服などに一瞬だけ吹きかけるぐらいならば問題ないかもしれない。……ただし、換気が十分であることが条件となる。
とはいえ、人体にとって危険性のある次亜塩素酸水(中濃度)よりは、もっと安全度の高いものがいろいろとある。アルコールもその一つだ。界面活性剤(台所用洗剤)にも効果があるものがすでにいくつか報道で列挙されている。
→ 経産省/新型コロナウイルスに有効な「家庭用洗剤リスト」公表
※ 本項でも、前に言及したことがある。
→ 消毒に精製水を使うな: Open ブログ (コメント欄)
[ 補足2 ]
「紫外線ランプは目に危険だ」
と懸念する人も多そうだが、紫外線ランプの紫外線量は、夏の直射日光に含まれる紫外線と同程度以下であるはずだ。
この程度の紫外線量でも、十分に消毒(滅菌)効果はあるのだ。
※ 菌じゃなくてウイルスだぞ、という半畳は不要。
なお現実には、紫外線を照射するのは「防護服を着た状態」でのことだから、人体への影響は特に考慮する必要はないだろう。
ただし防護服が透明である顔面部分には、紫外線が当たらないように、何らかのカバーを一時的に付ける必要がありそうだ。
仮設の病棟を建てて分離した千葉西総合病院
用地がある県では年末を見越してぜひやってほしい