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すでに他の病気で使われている薬剤が、新型コロナにもいくらか効果があるらしいということで、研究対象となっている。以下の通り。
(1) ナファモスタット/カモスタット
膵炎用の薬剤が新型コロナにも効果があるということで、アビガンとの併用療法が試みられている。
一つは、薬剤名ナファモスタット(商品名フサン)というものだ。詳しい話は下記。
→ 新型コロナ肺炎発症患者対象、アビガンとフサン併用療法の特定臨床研究開始−東大病院ほか
もう一つは、薬剤名カモスタットというものだ。詳しい話は下記。
→ 東京大がカモスタットの新型コロナに対する臨床研究を計画:日経
いずれも膵炎用の薬を転用するわけだが、新型コロナウイルスに対する効果があるだけでなく、補助的な効果もあわせもつということで、期待されている。ただし、アビガンほど大きな効果を持つわけではないらしいので、アビガンとの併用が基本であるらしい。
薬の効果や原理などは、細かな専門用語を使うことになるので、ここでは記さない。興味があれば、上記のリンク先を読むといいだろう。
(2) FX06
FX06 という薬も研究中らしい。
毛細血管漏出を防ぐ効果があるのではと期待されている未承認薬がある。オーストリアのベンチャー企業が開発した「FX06」だ。
FX06は、血液の凝固にかかわるたんぱく質「フィブリン」に由来しており、天然に存在するアミノ酸が鎖状につながった分子(ペプチド)だ。血管内皮細胞に作用して、毛細血管から血液成分が漏れるのを防ぐ作用がある。
( → 新型コロナ 新たな戦略で「死なない病気」に :朝日新聞 )
補助的な効果があるだけらしい。まだまだ不明なことだらけだし、情報も少ない。可能性がいくらかあるという程度だろう。
(3) ヒドロキシクロロキン
ヒドロキシクロロキンという抗マラリア薬も、新型コロナへの効果が期待された。
→ 海外ニュース:米FDAはコロナウイルス治療に抗マラリア薬の使用を許可
→ CNN.co.jp : 新型コロナ患者への抗マラリア薬投与、「致死率高く効果なし」の研究報告
→ 硫酸亜鉛併用でコロナ患者に効果、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン:AFPBB News
当初、有望と見られたので、使用を許可したのだが、実際に治験をすると、無効と判明したようだ。ただし、硫酸亜鉛と併用することで、いくらかの効果が見られたようだ。いくらかなので、その効果の幅は大きくない。
この薬は、「大量の備蓄がある」という点で、「効果があったらめっけもの」というつもりで研究を始めたようだ。しかし、試してみた結果は、期待を持てないと判明したようだ。
「何もないよりはマシかも」という程度かもしれない。途上国で、この薬しかない場合には、この薬を使うかも、というぐらいだろう。先進国では、使う意味がない。
(4) カレトラ
抗HIV薬のカレトラ(薬剤名:ロピナビル/リトナビル)も、「抗ウイルス剤だから新型コロナにも効くかも」と当初期待されたのだが、実際に試してみたら、効果がないと判明したようだ。かなり早い時点で、見捨てられたようだ。
→ カレトラ(抗HIV薬)に治療効果は証明されず 新型コロナ治療薬 候補薬(2020年3月20日時点)(忽那賢志)
(5) 血漿療法
コロナから回復した患者の血液を使う「血漿療法」・「回復者血漿治療」という治療法もある。
→ コロナから回復した患者の血液を使う「血漿療法」という治療法
→ 「回復者血しょう治療」臨床研究開始へ 新型コロナウイルス | NHKニュース
コロナに感染してから回復した人の血漿には、コロナへの抗体がたっぷりと含まれている。だから、その血漿を患者に注入することで、抗体による治療効果を得られるはずだ……という理屈だ。
実際に試してみたら、かなり好成績を上げたそうだ。
回復者から結晶を取り出すというのは、量的に制限がある。だから、軽症者に使うわけには行かないだろう。
一方、重症者には使うとよさそうだ。なぜなら、重症者は、他の薬剤では効果が上がらないままでいるからだ。(他の薬剤で効果があるなら重症化していない。)
ECMO を使っても回復が遅いような患者には、最後の手として、血漿を使うとよさそうだ。