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新型コロナの患者が減りつつある。なかなか減らなかった東京都も減ってきて、9日は 36人だ。減少の予想の線上を順調にたどってきている。
参考のため、前日に掲載した予想図を再掲しよう。
東京都の新規感染者数

新規感染者数は減少していく一方で、検査能力は増えつつある。保険の適用によって、保健所以外の検査数が増えた影響であるようだ。保険適用の2週間後ぐらいから、検査数が増えている。

出典:朝日新聞
こうして需給の逼迫は緩和されてきたようだ。(需要は減って、供給は増えた。)
そこで政府は、PCR検査を受けるときの基準を緩和することにした。これまでは「 37.5 度以上が4日間」という条件があったのだが、この条件で検査を受けられずに死亡した人が増えてきたことから、この条件を外して、もっと検査を受けやすくした。
《 PCR、すぐ相談を 息苦しさ・強いだるさ・高熱 厚労省、目安変更「37.5度以上」削除 》
厚生労働省は8日、新型コロナウイルスへの感染を調べる PCR検査をめぐり、疑いのある人が保健所などの相談センターに相談する際の目安を改めた。37.5度以上の発熱などを削除し、息苦しさや強いだるさ、高熱などの強い症状がある場合はすぐに相談するよう求めた。高齢者や糖尿病など基礎疾患がある重症化しやすい人は、軽い風邪症状でもすぐに相談するとしている。
新たな目安によると、息苦しさ(呼吸困難)や強いだるさ(倦怠感)、高熱など強い症状のいずれかがある場合や、重症化しやすい人で発熱やせきなど比較的軽い風邪症状がある場合は、いずれもすぐに帰国者・接触者相談センターに相談する。また、これらに当てはまらない人でも比較的軽い風邪症状が続く場合にはすぐに相談する。特に症状が4日以上続く場合は必ずするよう強調した。味覚や嗅覚の異常など、目安に書かれていない場合も相談は可能だと記した。
相談を踏まえて、検査するかどうかは引き続き医師が判断する。
( → 朝日新聞 )
ここまでは、妥当であろう。問題は、このあとだ。
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こういう情勢の変化を受けて、「PCR検査をもっと受けられるようにせよ」という声がマスコミに出てきた。朝日の記事もそうだ。次のように書く。
保健所を介さずに、かかりつけ医が必要かどうかを判断し、検査を受けられる体制の整備も進みつつある。だが受診の目安の変更で、検査を希望する人は増えることが予想される。東京都内の保健所の担当者は「十分な受け入れ態勢を整えなければならない。病床や療養施設も必要で、国は全体のバランスを考えるべきだ」と訴える。
感染症に詳しい水野泰孝・グローバルヘルスケアクリニック院長も、「対象が広がっても速やかに受診できる環境が整っていなければ患者の不安は高まる。地域の医療機関全体で充実させる必要がある」と話す。
( → PCR、不安高まるなか目安緩和 希望者増へ体制整備は:朝日新聞 )
何のことか明示されていないので、ちょっとわかりにくいが、これは PCR検査のことだ。その希望者を「十分な受け入れ態勢」で受け入れ、検査を「充実させる」必要があると報じる。(専門家の意見を紹介するという形で。)
ここでは明らかに「 PCR検査をもっと増やせ」という方向で報じられている。
似た例がある。テレビ朝日が「 PCR検査をもっと増やせ」という方向で報じた.だが、そこで報じられた専門家当人は「自分の意見と反対のことを報じられた」と批判した。
→ テレビ朝日に出演しました | 澁谷泰介(心臓外科医)
これが「意図的な誤報だ」「捏造みたいなものだ」というふうにネットで話題となって、テレビ朝日は釈明した。
→ テレ朝「お考えを十分に紹介しきれなかった」 「グッド!モーニング」医師取材で「内容を真逆に編集」指摘受け
苦しい言い訳であるが、その根本は、「 PCR検査をもっと増やせ」という基本方針にある。そこで、この基本方針に反することを述べた専門家の意見を勝手に編集して、自分たちの報道に都合のいいように報道したわけだ。
とすれば、「 PCR検査をもっと増やせ」という基本方針で報じている朝日新聞も、同様のことをしている疑いがある。
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では、この話題について、私はどう考えるか? そのことは、ここで述べるまでもなく、すでに別項で論じている。
→ 罹患者に PCR 検査は不要だ: Open ブログ
その趣旨は、こうだ。
・ 大事なのは、検査でなく、治療だ。
・ 早期の検査よりも、早期の治療体制こそ、重要だ。
・ 早期の検査は、感度が低い。(偽陰性になりがちだ。)
・ 早期には、検査よりも、症状で判断するべきだ。
・ 早期には、検査をしなくてもいい。
・ 発熱が5日も続いたら、コロナと見なしすべきだ。
・ 6日目から、施設(ホテルなど)に収容するべきだ。
・ そこではパルスオキシメーターで常時監視する。
上記の諸点のうち、特に重要なのは、次の2点だ。
・ 大事なのは、検査でなく、治療だ。
・ 早期の検査は、感度が低い。(偽陰性になりがちだ。)
後者のことゆえに、PCR検査を大幅に増やすことはお勧めできない。
特に、「検査が陽性ならば治療する」という方針は、絶対にお勧めできない。なぜならこれは、「検査が陰性(偽陰性)ならば治療しない」ということにつながるからだ。そうなると、治療しないことによる死者発生が起こりがちだ。
岡江久美子さんや、埼玉県の 50代の男性などは、いずれも、こういう形で死に至った。
ここで、「だから早期に PCR 検査すればいいんだ」というのが、マスコミの論調だ。だが、それは違う。早期に検査しても、検査は偽陰性になりがちなのだ。だとすれば、検査したあとで、「陰性なので自宅療養してください」という結果につながりやすい。それでは駄目なのだ。
PCR検査の感度は低くて、早期には偽陰性になりがちだ。つまり、PCR検査には限界がある。── このことを強く意識するべきだ。そうすれば、「 PCR検査を増やすべきだ」というマスコミの論調が、いかに見当違いであるか、理解できるだろう。
彼らは PCR検査というものを、あまりにも過信しているのである。「科学音痴ほど、科学を盲信して、科学の限界を理解できない」というのに似ている。
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なお、念のために言っておくと、
「6日から施設に収容」
というのは、「遅くとも6日目に」という意味だ。患者がハイリスクの人(基礎疾患があったり・手術後だったり・高血圧だったり)については、早めに収容して監視するべきだろう。岡江久美子さんの場合には、これに該当する。
[ 付記1 ]
新たに悲しい死亡の事例が出た。
泣きながらPCR検査頼むも断られ発熱から6日後やっと検査陽性で即入院も呼吸困難に陥り3日後死亡。ご遺族「私達はコロナの犠牲者でない。どこかの偉い人たちが考えた基準によって父は犠牲になった」。加藤大臣に37,5度4日自宅ルール変更前に過ち認め謝罪が筋と問うも、保健所や国民が悪いかの答弁。 pic.twitter.com/iWjMpCIUOK
— 柚木みちよし (@yunoki_m) May 8, 2020
これを見て、「 PCR検査を増やせ」と唱える人が多いが、やはり、見当違いである。
この患者については、PCR検査を受けさせれば良かったのではない。施設に収容して、パルスオキシメーターで監視すれば良かったのだ。場合によっては CT 検査も必要だろう。そういう対処を取れば、死なずに済んだ。(アビガン投与もできるので。)
ここでは特に PCR検査は必要ないのである。大切なのは、検査ではなく、治療なのだ。
[ 付記2 ]
「検査もしないでやたらと施設に収容すると、医療リソースを食われてしまう」
という意見がコメント欄に寄せられた。それに答えておこう。
施設に収容するというが、病院に入院させるのではなく、軽症者向け施設に収容する。(入院させるのではなく、収容する。お間違えなく。)
施設には、医者が1名と、看護師1〜2人と、看護補助をする人(学徒動員による看護学校生・医学生)が多数いるだけだ。……これならば、医療リソースを食うことはない。
施設における主役は、パルスオキシメーターだ。あと、体温計と目視も大切だ。これらによって監視することで、異常を検知して、異常があればただちに治療に移る。(アビガンの投与など。)
また、呼吸困難を検知したら、CT の検査も受けられる。
これらの途中では、PCR検査はまだ必要ない。どうせ初期には偽陰性になりがちだからだ。
ここでは、検査よりも監視が大事なのである。そして、そのためには、医療リソースを食うことはないのだ。
※ ただし、学徒動員は必要になりそうだ。
(といっても、現時点では、その必要もなさそうだ。)
※ 現時点での施設の状況は、下記。
→ コロナ患者、自宅療養が2割 厚労相「宿泊施設利用を」 :朝日新聞
最近では軽症者向け施設に入っている人も少ない。
当面は、学徒動員なしでも、済みそうだ。
※ 上の記事によると、医師と看護師が1名、駐在するそうだ。
軽症者向けは処置室や診察室など最低限の設備を設け、患者が医師に連絡できるようにする。医師は日中1人以上、看護師は常時1人以上いることを条件とした。
看護師は2名いた方がいい、と思うんですけどね。同時に複数の患者が異変を起こすことは十分に考えられるので。
【 関連サイト 】
政府は PCR検査を受ける基準を緩和したが、これで片付くわけではない。ところによっては、PCR検査の能力が逼迫しているところもあるからだ。特に、大阪がそうだ。
新型コロナウイルスの感染者数が1600人に達した大阪府で、保健所がPCR検査が必要と判断してから実際に検査するまで、最長で10日程度かかっていたことが3日、大阪市保健所への取材で分かった。患者の急増に検査態勢が追い付いておらず、検査を待つ間に容体が悪化して入院したケースもあった。
府内では、大阪健康安全基盤研究所(大阪市)や医療機関などで1日当たり計約420件の検査能力がある。府は検体採取場所を増やし、民間検査機関にも委託することで、約890件に拡充する見込みだ。
しかし、感染者の4割が集中する大阪市では4月中旬、相談から検査までに最長10日間かかっていた。重症者やクラスター(感染者集団)の検査を優先したが、待機中に容体が急変して入院した人もいたという。
( → PCR検査、大阪で最長10日待ち 医師「保健所受け付けず」―民間委託で拡充急ぐ:時事ドットコム )
これが5月4日の記事だ。現状ではそう簡単に解決するとは思えない。
やはり、「検査を増やせ」ではなく、「検査なしで(症状だけで)施設に収容する」という方針を立てるべきだ。
【 関連項目 】
「 PCR検査の感度が低くて問題なら、どうすればいいんだ?」
という声もあるだろう。それについては、次項で回答する。(予定)
【 追記 】
今回の新方針の良し悪しは、即日、結果が判明した。発熱外来では、相談者が大挙襲来して、受付が破綻したのだ。
今日の発熱外来。電話パンク、外来数およそ10倍(150人超え)、発熱なしでなんとなくだるいからPCR希望、一ヶ月前の熱がコロナだったか調べてほしい、平熱低めなのでCTだけ撮って欲しくて受診。
— Dr.mako (@GZF3SVOKw8i9keA) May 9, 2020
これが、なんと90%。完全に今日は破綻しました。ちょっとだけ休憩です。
これでは、まともな感染者が治療を受けることもできなくなる。案の定というべきか。
検査ばかりを重視するから、こういうことになる。
正解は? 「検査よりも治療」を重視すればいい。軽い症状ならば、様子見か、会社を休んで医者に行くか、どちらかだ。
治療を受けるために検査が必要なんですが......
検査を受けずに施設収容などの処置をすることこそ
医療リソースの無駄遣いでしょ
その件は、 [ 付記2 ] で説明しました。(加筆しました。)
つまり、マスコミも含めて国民全体が、何が最も大事なのかをわかってないのかなと思われます。
オリンピックが延期になった時点で、選手村の宿泊施設を隔離施設にすれば良かったのに、マスコミは全く主張しませんでした。
加えて、韓国と言うだけで全否定したり怒り出したりする人たちが一定数いますし。。。
あと、隔離施設としてのホテル部屋確保もスピードが遅かったと思います。(○○室確保する方針、と発表されてから実際に確保するまでに時間がかかっていた)
13日から抗原検査も承認されるとの事。感度はPCRより劣ると言われていますが抗原検査を利用すればその点も緩和出来そうですね
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202005/CK2020050902000257.html
http://openblog.seesaa.net/article/474950914.html
で説明済み。
> 国民全員マスク義務化でしょうか?
それが望ましいが、現状でもすでに95%以上がマスクを付けているので、すでに感染倍率が 0.5 にまで下がっています。最善ではなくとも、次善にはなっています。
> 自粛を撤廃した場合、再拡大する可能性があります
自粛はたいして効果がないので、撤廃しても、たいして拡大しないでしょう。1.3倍ぐらいの拡大効果しかない。感染倍率が 0.7 以下なら、自粛を撤廃しても、まだ大丈夫。
新方針は即日、破綻した、という話。
2)初期の段階で検査無き診断を下すことにも無理があります。
> 初期の段階で検査無き診断を下す
やることは次の二者択一です。
・ 様子見で何もしない。
・ とりあえず軽症者施設に移して、そこで監視を受ける。パルスオキシメーターと看護師の監視。
現状では前者に限られています。そこで、医者の診断によって一部を後者に移す、というのが提案です。
「パルスオキシメーターによる監視(検査の一種)」を受けることになります。呼吸状態の人的監視もある。
初期では偽陰性になりがちな PCR よりも、ずっと高精度のチェックが可能です。
以上、本文に書いてある通り。あなたは本文をまったく理解できないで、「治療」という言葉にばかりこだわっている。長い説明を「治療」という一語で要約しただけだと理解できていない。文章をまったく読めていない。だから、本文とは関係のない話ばかりをしている。
1)偽陰性になりがちな PCR
2)パルスオキシメーターによる監視
3)経験と勘に基づく医師の診断
の3つの手段があると思われますが、2)にさほど感度があるようには思われません。
3)と1)に基ずくのが本筋と思われますが・・・
このあと、異常が見つかったら、CT の検査をします。この段階で初めて、監視から検査に移行します。
初期には何もしません。PCR 検査をして陽性が判明すれば、それに越したことはないが、陽性でも陰性でも、初期の対処は単に「施設の監視」だけです。その意味で、検査はしてもしなくても同じです。
3)は、どの場合でも必ずやるので、選択肢には含まれません。 3)だけがあればよく、 1) は不要です。むしろ、判断を迷わせるだけ、邪魔です。 1) の感度は 3) よりもずっと低いので。(いろいろ症状が出ても、陰性になるので。)
ここがボトルネックになっている限り、検査を増やしても減らしても関係ないですね。
このままいけば、今冬は大混乱必至。
〜コロナ病床、想定の半分以下 確保済み12県、東京、石川逼迫 厚労省〜
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6359437
https://www.yushoukai.org/blog/pcr?fbclid=IwAR1IFiFpe8g-BfDRazQVngCgyhnlUtT11esPstvgoFAumIVsQuBLH2rhLXQ
PCRは、ドライブスルーとオートマチックの韓国方式で検査をやれば、個人の技術的習熟度によらない安定した精度でかつ大量の検査ができます。例えば5人家族を検査した結果、父と子ども一人が陽性、母と子ども二人が陰性になったらどうするのでしょうか?
父と子ども一人は隔離、母と子ども二人だけで生活・・、そんなバラバラに引き裂かれた家族が日本中で大量発生するでしょう。そんな状況にどう対処するのか、それが考えられているのか、と思いました。
さらに、陰性は検体を採取した時点でのことです。一度陰性であればその後もずっと陰性であるはずはありません。それなら新患者が出るはずがありません。感染は一瞬で、その翌日に感染したかもわかりません。陰性の方は、毎日毎日陽性になるまでPCRを続けねば正確ではありません。
私はPCRはあまり意味がないと思うようになりました。