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与党の方針はこうだ。
自民、公明両党は8日、新型コロナウイルスの影響で経営に窮する事業者への家賃支援策を決め、政府に提言した。
( → 家賃支援策を決定 自民案と公明案 )
これに対して、本項の要点はこうだ。
特定の人々に超巨額の金を集中して与えるよりは、国民全員にまんべんなく配った方がいい。2兆円なら、大人の全員に2万円ずつだ。その額を配る方がいい。
逆に言えば、今回の施策は、「国民全員から2万円ずつを奪って、特定の人々に集中的に贈与する」という格差拡大策であるにすぎない。馬鹿げているのでやめた方がいい。
だが、「家賃の援助をやめた方がいい」という見解には、不平を唱える人が出てくるだろう。
「家賃を払えないで困窮している店主などを、どうするんだ?」
なるほど。あちらが立てば、こちらが立たず。国の金を無駄にするのを防げば、困窮している店主が救われない。困った。
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
「借り手(店子)が家賃の減免を家主に申し出る。その条件は、休業中は8割減免だが、開業したら全額を払う」
つまり、コロナの被害がある間は休業しながら2割払うが、その後は全額を払う、というものだ。
さらに、ここが大事なことだが、次のことを同時に実施する。
「上記の方針を国が示して、全国規模で実施する。同時に、この方針に従った家主に対しては、固定資産税を減免する」
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この方針を「三方一両損」と名付けよう。これは、次の三者が損失を分かちあう。
・ 店子 …… 家賃の2割を負担する
・ 大家 …… 家賃の8割を失うが、固定資産税が減免
・ 国 …… 固定資産税の減収
この場合は、安定的に運用できる。
一方、これを拒否した場合には、店子は閉業するといい。すると、こうなる。
・ 店子 …… 店の設備を売却する。再開は困難。
・ 大家 …… 家賃の 10割を失う。
・ 国 …… 法人税の減収
この場合は、三社がいずれも大損する。経済規模も縮小して、国家的には大損害だ。ただし、店子だけは、自己の被害を最小化することができる。将来は再開できないが、現時点での被害を最小化できるので、大出血を免れる。
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現状では、店子にとって最善の策は「閉業」である。そうすれば、家賃や人件費などの固定費の支払いを免れるので、赤字の拡大を防げる。この先、コロナが収束するとしても、外出自粛は続くので、飲食店の売上げは半額以下に留まるだろう。(テイクアウトを主体にすることになるが、その売上げは多額にはなるまい。)
このあと、1〜2年はコロナが続くことを考えると、現時点で最善の策は「閉業」なのである。そして、2年後に、コロナが収束したら、その時になって開業すればいい。とにかく、その時までは、閉業を続けるのが最善だ。(さもなくば、大赤字で倒産する危険が高まる。)
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「でも、国が補助してくれるんだろ?」
と思うかもしれないが、そこはあまり甘くない。
・ 補助は3分2だけだ。
・ 額は上限がある。(企業 50万円、個人 25万円)
・ 期限は半年だけ。
・ もらえるまでには莫大な手続きが必要。(数カ月)
現時点でも、雇用調整助成金や、企業向けの補助金など、二つの制度があるが、希望者が殺到して、実際にもらえるには数カ月がかかるということだ。本当にもらえるかも、おぼつかない。(それまでに倒産してしまうかもしれない。)
家賃を補助してもらえるとしても、そういう無駄手間と時間がかかる。
さらに、額も十分ではない。2年も減収が続くとしたら、そのうちの半年分だけでは、とても足りない。
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というわけで、現状では「閉業」がベストとなるのだが、そうなったら、国中で最悪の道をたどることになる。
それだったら、「三方一両損」で、三方が少しずつ負担するのが、ずっと賢明だろう。これならば安定的に運用できる。
しかも、これなら、国民は2万円ずつをもらうことができる。国民にとっては、ずっとありがたいことだ。
[ 付記1 ]
「閉業がベストだ」と言うと、「そんな馬鹿な」と反発する人もいそうだ。しかし、そういう人は、経営者には向いていない。経営者としては、かけた費用に見合う利益を上げる必要がある。それができない状況では、事業をたたむしかないのである。
これを正しく実行できた事例もある。
→ 全店舗閉店して会社を清算することに決めました|福井寿和
ここには正しい判断が書いてある。
融資や助成金で当面のキャッシュを確保することも可能でしたが(実際に政策金融公庫から提案もありました)、返済が始まった後のキャッシュフローをどうするのか?ウィズコロナ・アフターコロナに則した収益モデルへの転換、そのための資金と労力なども考えると来年以降も非常に厳しい状況が続くと考えました。
コロナ以前の飲食店運営とは明らかに状況が変わることは容易に想像できます。
テイクアウトやネット通販を強化してもう少しできることもあったのでは?と思わないわけではありません。
しかし、コロナの傷が浅いからこそ早期の事業整理を決断しました。
今はまだ取引先へのご迷惑も最小限に抑えることができます。従業員にもしっかり手当を出せます。
会社の状況を考えれば、守るべき人たちを最低限守れるのは今のタイミングしかないと考えました。
無理に事業を続けて、他人に迷惑を変えて赤字倒産するよりは、誰にも迷惑をかけずに閉業する方が、ずっと賢明なのだ。これぞ良心というものだろう。
半年間だけ家賃減免を受けて、無理に事業を存続させても、赤字の被害が拡大するだけだ。撤退できないまま無駄に戦争を続けた旧日本軍のようなものだ。半年後は、惨憺たるありさまとなるだろう。
政府の馬鹿げた施策に従って、先の見えない赤字事業を続けるよりは、さっさと閉業した方が、ずっと利口なのである。少なくとも当事者にとっては。(……国全体にとっては困ったことではあるが。)
※ だから「三方一両損にすればいい」ということ。これなら何とかなる。
[ 付記2 ]
修正案として、次の案もある。
「コロナ不況が続く間は、開業しても、3割減の家賃を払うだけにする。その後、コロナ不況が終わったら、正規の家賃を払う」
開業後、いきなり全額を払うのではなく、当面は3割減の額を払うだけにするわけだ。この方が効果は高そうだ。
一方で、国の固定資産税の減免は、かなり長期にわたって続けてもいい。このことで、大家は長期的には収益をかなり改善できる。(コロナ不況時の損失を取り返せる。長期的に。)
[ 付記3 ]
「家賃の国費負担」というのは、公平性の面でも、問題がある。なぜなら、部屋を借りている店ばかりが莫大な援助を得る一方で、ローンで自社購入した店はまったく援助を得られないからだ。店の困窮度は、部屋を借りようが、ローンで購入しようが、どちらも同様である。月 50万円の家賃を払うのも、月 50万円のローンを払うのも、どちらも同じである。なのに、前者ばかりが莫大な金をもらって、後者は1円ももらえないというのは、あまりにも不公平すぎる。
その点、本項の方針なら、問題がない。なぜなら、「店子が家賃の減額をして、大家が損をする」というのは、全体としてみれば損得なしなので、ローンで購入するのと同じだからである。換言すれば、自社所有であれば、自社が店子と大家を兼ねているから、家賃の減額というのはあってもなくても同じなのである。
自社所有の場合には、固定資産税の減免だけを受けることができる。これだけが純然たる利得となる。
[ 参考 ]
「家賃減免」に反対する大家の意見もある。
→ こういう難局のために、現預金はある (やまもといちろう)
これは、大家の立場からなので、「家賃減免には絶対反対だ」(オレが損する)という意見だ。
しかし、その論拠には無理がある。
私の身の回りの不動産オーナーは概ね7月を超えて客足が戻らないテナントさんには、減賃交渉ではなく退店を促す方向であるところがほとんどです。まずは出て行ってもらって空きにして、今後多少賃料が下がっても景気の良いところに入ってもらいたいと思うからです。
これは、普通の景気のときには成立するだろうが、コロナ不況の時期には無理だ。「別の事業者に借りてもらいたい」と思っても、コロナ不況のさなかには、新たに借りてくれる事業者などが出てくるはずがない。一般の賃貸住居ならば、人が生きている限りは需要は減らないだろうが、企業向けの貸し店舗であれば、コロナ不況の間には新たな店子などは出てくるはずがないのだ。
当然、店は開いたままとなるので、大家は物件が「空き室」状態となって、全収入を失う。これが当然だ。上記の筆者は、そのことを理解できていない。「かわりの借り手が出てくるから大丈夫」と思っている。楽観のしすぎ。
また、次の話もある。
賃料・家賃保証会社を入れている限り、景気が悪くなったからと言って、じゃあ減賃交渉ができるかというと、基本的には応じられません。
金融庁や国土交通省経由で「減賃交渉に応じるように」と言われても、交渉には応じても減賃はできないオーナーのほうが多いでしょう。ほとんどにおいて、家賃保証会社が入っているからです。
これはそうだろう。一般的には成立する。だから、個別の減免交渉は無理だ。
だからこそ国が音頭を取って、「全国規模で8割減免」を推奨すればいいのだ。こうすれば、「イヤだ」と言った大家だけが損をするだけだ。8割減免を拒否して、10割減収となるだけだ。
──
原理的に言えば、今回の与党の「家賃の国費負担」は、借り手を助けているように見栄ながら、実質的には大家を助けているだけだ。国民全体が大幅減収で苦しんでいるときに、富裕な資産家である大家のために、国民全体の2兆円を渡すだけだ。
非常に筋が悪い政策だと言えるだろう。
どうせなら、困窮している大学生を救うために金を使う方がいい。
ちなみに、公明党は「困窮している大学生を救うために金を使う」という案を出しているが、その支給対象はきわめて限定されているので、費用はたったの 500億円だけだ。2兆円の 2.5% である。あまりにもしみったれた額だ。
富裕な老人資産家のためには2兆円を出すくせに、最も困窮した若い大学生のためにはその 2.5% しか出さない。これでは国が滅びる。
[ 余談 ]
直接の関係はないが、大学生の賃貸住宅に関する話題。
次の情報がある。大学生の賃貸住宅について、2015年のデータ。
自宅外通学の私大生の仕送り額
首都圏周辺の私立大学に昨春入学した学生のうち、自宅外通学生(下宿生や寮生など)への仕送りは月額8万6700円で、15年連続で減った。東京私大教連が6日、発表した。家賃を除いた1日当たりの生活費は850円で、いずれも比較できる1986年度以降で過去最低を更新した。
調査は2015年5〜7月、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城の16私大(短大を含む)の新入生の保護者に実施。4577人から回答を得た。出費が落ち着く6月以降の仕送りの平均月額は、前年度から1800円の減。ピークだった1994年度に対し3割減となった。家賃に充てられるのは6万1200円で、仕送り全体に占める割合が初めて7割を超えた。
仕送りから家賃分を除いた生活費は2万5500円で、1日当たり850円。アルバイトをしないと通信費や食費などが支払えないのが現状だ。年収別では、500万円未満の世帯の仕送り月額は7万1700円だった。記者会見した中央執行委員長の大野裕之・東洋大経済学部教授は「景気が実際には回復していないということではないか」と話した。
( → 自宅外通学の私大生、仕送り額が最低 月8万6700円:朝日新聞 )
「家賃に充てられるのは6万1200円で、仕送り全体に占める割合が初めて7割を超えた」とのことだ。大変ですね。
ただしこれは、「若者が歩かなくなっただけだ」とも言える。つまり、駅のそばの物件ばかりを狙うから、こういう高額になる。
東京近郊で家賃の物件を見ると、駅から徒歩6〜8分だと、6〜7万円だが、駅から 15〜20分だと、3〜4万円だ。歩く時間が 10分違うだけで、家賃は大幅に下がる。走ればすぐの距離だが、足腰が軟弱なので、わずかな時間を節約するために、3万円も高い物件を選ぶようだ。
3万円は、時給 1000円だと 30時間にあたる。一方、駅から歩けば、往復 20分 を 20日で、400分。つまり、7時間弱。7時間弱の徒歩を節約するために、30時間も多く働く必要がある。これでは、駅に近い物件を選んでも、かえって大幅に時間が無駄になる。おまけに、歩く運動を避けた分、余計なスポーツをする必要があるから、さらに時間を失う。
こういうふうに馬鹿げたこと(大損してまで駅のそばの物件を選ぶこと)は、足腰低下が理由かもしれない。地方の若者は、自動車に乗ってばかりいて、ちっとも歩かない。徒歩 10分ぐらいの距離でも、歩かないで、自動車に乗る。だから、都会の人々がやたらと歩くことに、驚くそうだ。
こうして足腰が弱まったので、駅のそばの物件にこだわるのかもね。呆れた話だが。
地方勤務してみて思ったのは、『都会っ子は軟弱』はウソで、都会人は平気で10分以上歩くけど地方民は車に慣れすぎてて10分歩くのですら嫌がるってこと。
15分歩いて駅に行ってると言うと、ビックリされる。
( → 地方勤務してみて思った、「都会っ子は軟弱」はウソであると「地方民は10分歩くのさえ嫌がる」 - Togetter )
似た話題の記事。
→ 地方では300メートル先のコンビニに車移動が当たり前? 夏休みの帰省で驚いたこと | ニコニコニュース
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で、以上から得られる教訓は何か? こうだ。
「金がなくて困っているという大学生は、駅に近い高額物件の部屋を引き払え。駅から 10分以上かかる物件(マンションよりもアパートがいいかも)に移れ」
ということだ。これなら、退学する必要もなくなるだろう。
東京の大学に通うならば、埼玉県の東武沿線が(家賃的に)お勧めだ。交通の便がいいのに、かなり安い。駅から 15分で、月3万円だ。
→ 【SUUMO】朝霞市の賃貸(賃貸マンション・アパート)住宅のお部屋探し物件情報
埼玉県ではコロナ対策が心配だというのなら、コロナ対策が進んでいる神奈川県がお勧めだ。東横線で、3.5万円ぐらいのマンションが見つかる。
→ 【SUUMO】大倉山駅の賃貸(賃貸マンション・アパート)住宅のお部屋探し物件情報(神奈川県)
駅から離れた物件を選べば、安い住宅はいくらでも見つかるのだ。家賃の減免なんかに頼るより、ずっと安上がりになる。
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ちなみに、昔の人は、こうだった。
あのころ二人のアパートは 裸電球まぶしくて
貨物列車が通ると揺れた
二人に似合いの 部屋でした。
(赤ちょうちん by かぐや姫)
三畳一間の小さな下宿
二人で行った横町の風呂屋
(神田川 by かぐや姫)
大家=(老人)資産家という前提に立てば、大変良い案だと思います。
但し、実際は自己資金のみでの不動産オーナーは意外と少なく、不動産ローン(つまり借金)で運用しているオーナーも多いのでは?と思います。
その場合、店子と同じく自転車操業に近い状態(家賃収入ありきの運用)なので、家賃の大幅減免は事実上不可能と言う問題も出てくるはずです。
あと、代わりの借り手は出てこないとの事ですが、立地によりけりですが、皆無と言う訳では無いでしょう。(ここは見解の相違ですね)
例えば100万円の家賃のだったのを、そのままで後の借り手が現れれば、めっけものだし、仮に三割引きにして70万でも、大幅値引き(記事の案では20万)よりはマシでしょう。
だからといって、確かに一律の家賃補助というのは私もどうかと思います。
何か良い方法があると良いのですが…。
家賃減免ができなければ、店子を追い出して、そのあとは空き家を覚悟するか、家賃減免して新しい店子を招くか、でしょう。どっちでも好きなようにすればいい。
それだと困るというのなら、全部清算して、資産を一挙に売却すればいい。そのとき莫大な赤字が発生するとしても、全損ではないので、9割ぐらいは回収できるでしょう。残りの1割ぐらいは我慢してもらうしかない。何しろ店子だって大損しているんだから。三方一両損になるしかない。損をまったく免れることはできない。(国がお金をくれるのでなければ。)
自社保有物件の場合の話。
そもそも地主はインサイダー情報が好きな
公明か自民の支持ですから。
韓国のような労働党的な政権なら何が正か。
家賃補助は必要ですが全額は不要。
ただ家賃の2割へ減免はやりすぎ。
借主はリスクを覚悟で借りたわけで、
それが実は地価の押上を招いています。
半分程度が妥当。
それがリスクを負う、ということかと。
ただ、
今回機会に家賃収入そのものへのリスクは、
増大させるべき。
土地面積に対して家賃の累進税を設けるとか、
地価抑制に繋がり、且つ商売繁盛に繋がる施策。
赤字経営になる場合に、
家賃減免を法律的に定めるような借主保護など。
そもそも明治に入って地主解体を行った。
のなら、中国とまでも言いませんが、
土地所有に対しての税は年々強めるべき。
ただ、ほっといても70超えた地主は
コロナで自動的にじわじわと減るでしょうけど。
相続価値を減らすコロナ、ある意味優秀な兵器かも。