2020年05月04日

◆ 忽那賢志の誤認

 専門家会議の誤認と似た例がある。忽那賢志・医師の誤認だ。

 ──

 忽那賢志・医師の記事が、はてなブックマークで称賛されていた。
  → 緊急事態宣言から3週間 流行状況はどう変わったか(4月29日)
  → はてなブックマーク

 しかしながら、この記事には、専門家会議の報告と同様の勘違いがある。それも、もっとひどい形で。
 本来ならば、たかが一個人の記事をいちいち批判するには及ばないのだが、ここにある間違いを多くの人々が信じているのは好ましくないので、指摘しておこう。

 ──

 間違いといっても、特別な間違いではない。専門家会議がやらかした間違いと同じ間違いだ。
 該当の文章を引用しよう。
 緊急事態宣言から2週間を経過した頃から明らかに新規患者数が減少しています。

c-kutuna.png
東京都


 東京都も1日の新規発症者数が100人を切る日が出てくるなど、緊急事態宣言の効果と考えられます。

 国民の皆さんの努力のおかげで、緊急事態宣言以降実際に感染者は減少傾向であると考えられます。
 海外でのロックダウンのような強制力がない「外出自粛要請」だけでここまでの結果が得られたことは素晴らしいと思います。

 大事なのは、緊急事態宣言という積極的介入(ハンマー)を行うことで、実効再生産数を大きく下げることでした。

 いずれも、
 「緊急事態宣言のおかげで、新規感染者数が大幅に減少した」
 という認識をしている。だが、これは間違いだ。

 ──

 この認識が間違いであることは、先に示したとおりだ。
  → 専門家会議の報告(5/1): Open ブログ
  → 続・専門家会議の報告(5/1): Open ブログ

 ただし、この二つとは、用いているグラフが違うので、単純には「メチャクチャな誤認だ」(馬鹿丸出しだ)とまでは言えない。
 
 専門家会議の方は、
 「4月7日以後の行動制限のせいで、3月25日〜3月末の感染者減少が起こった」
 ということ(未来が過去に影響するということ)を主張した。これは明らかなデタラメだ。非論理的すぎる。

 忽那賢志・医師の方には、そういう非論理的な説明はない。かわりに、別のグラフを取ることで、一応合理的な説明をしている。以下では詳しく説明しよう。

     *     *

 彼は、全国のデータを取るかわりに、東京都のデータを取る。なぜか? 全国のデータを取ると、専門家会議と同じ非論理的な結論に陥ってしまうからだ。それでは自説にとって都合が悪い。
 そこで、自説にとって都合のよいデータを取ることにした。そのようなデータは、全国の各県のどれを取ってもうまく行かないが、ただ一つ、東京都のデータだけは、特別な歪みが生じているので、自説を補強するデータとなる。そこで、東京都のデータを取るのだ。


c-kutuna.png
東京都



 これを見ると、全国や他県のデータとは明らかに違うところがある。全国や他県のデータでは、おおよそなだらかに減少していくのだが、東京都のデータだけは、4月21日から24日にかけて、数が増加している。(小さなピークがある。)

 なぜここで急激な増加があったかというと、院内感染という形のクラスター発生があったことが、大きく影響しているようだ。
  → 21日に都立墨東病院で院内感染
  → 22日に東京都済生会中央病院で院内感染
  → 24日に練馬光が丘病院で院内感染

 院内感染とは別の理由も関与していそうだが、ともかく、東京都だけは、この時期に数字が高まっている。
 そこで、これを見て、こう解釈した。
 「4月24日までは、数字が高かったが、4月25日以後は、数字が急減した」

 こういうふうに認識したので、次のように結論した。
 「4月24日までは数字が高かったのに、4月25日以後は数字が急減したのは、4月7日に緊急事態宣言があったからだ」


 こうして彼は、都合のいいデータを取ることで、自説の正しさを実証することに成功したのである。

 ──

 しかし、こういうことは、科学者が一番やってはいけないことである。
 「たくさんあるデータの中から、都合のいいデータだけを採用して、他のデータをすべて無視する」


 これは、STAP細胞事件で、女性研究者がやったことと同じである。いわゆる「チャンピオンデータの採用」というやつだ。
 これをやらかした女性研究者は、「データの捏造だ」とさんざん批判された。
 だったら、忽那賢志・医師も同じことをやらかしているのだから、同じように批判されても仕方ない。

 ちなみに、「他県のデータ」は、次項にある。そのほとんどの県では、「4月11〜12日ごろにピークがあって、以後はなだらかに減少する」というグラフだ。
  ※ 全県を調べたわけではないので、未確認だが。

 ──

 もっと正確に事実を捉える方法もある。
 適切なのは、専門家会議のデータだ。そこでは、東京都のデータもある。ただし、PCR 検査結果 判明日のデータでなく、推定感染日のデータを示している。
 これだ。(再掲)


c-R0-2.png


 見れば明らかなように、3月27日にピークがある。緊急事態宣言の4月7日を境に、「それ以後には明白な減少がある」というふうになっていいはずなのだが、現実には、そんなものは見られない。
 つまり、「4月7日以後に、緊急事態宣言の効果で現象が起こった」という説は、完全に否定されるのだ。それが、専門家会議の報告のデータが示していることだ。

 かくて、忽那賢志・医師による「自分にとって好都合なデータだけを勝手に採用することで、自説が正しいことを立証する」という方針は、自分勝手なご都合主義として、完璧に否定された。

( ※ 勝手なデータを取ることを許さず、公正なデータを取ることによって、欺瞞が判明した。)
 


 [ 付記 ]
 忽那賢志・医師のやったことは、STAP細胞事件の場合と、基本的には同じである。どちらも次の原理で誤認をした。
  ・ 自分の信じる仮説があった。
  ・ その仮説を実証するためのデータを求めた。
  ・ 得られたデータのほとんどは、仮説に否定的だった。
  ・ たった一つ、仮説に適合するデータがあった。
  ・ そのデータは、コンタミで汚染されたデータだった。
  ・ コンタミのせいで、たまたま仮説に適合しただけだった。
  ・ しかし、そのデータこそが真実だと思って採用した。
  ・ 「この仮説は正しい。実証した」と発表した。
  ・ しかしその実証に再現性はなかった。
  ・ 他のデータはすべて、仮説に否定的だった。
  ・ ご都合主義の手法をとったことが暴露された。


 ここまでは同じだ。ただし、以後は違う。
  ・ STAP細胞の女性研究者は「捏造した」と批判された。
  ・ 忽那賢志・医師は、すばらしい才人だと称賛された。


 教訓。
 詐欺師は、バレたら、非難される。
 バレても、世間がそれを信じていれば、称賛される。



  ※ 以下は、細かな話。(読まなくてもいい。)

  
 [ 補足 ]
 「4月24日よりもあとでは(緊急事態宣言の効果が出て)急減している」
 というのが忽那賢志・医師の判断だ。だが、近日分まで含めて、東京都のデータの続きを見ると、そうは言えないことがわかる。


c-tokyo7.png


 4月25日から4月30日までを見るなら、「急減した」と見えるが、そのあとではまた急増してしまっている。これでは、 「(緊急事態宣言の効果が出て)急減している」とは、とても言えない。

 では、正しくは、どう見るべきか? 
 4月25日から4月30日までは減っているが、その前も後も、ともに増えている。とすれば、これらのすべての増減は、「東京にだけある、特別な変動要因のせいだ」と見なせばいい。
 どうせ他の県では、なだらかに減っているのである。だとすれば、「4月12日以後はなだらかに減っている」という、全国的な傾向だけが真実だとわかる。
 東京だけを見ると、特別な凸凹が見つかるが、そのような凸凹にこだわる必要はないのだ。そんな凸凹は無視すればいいのだ。

 なのに、無視するべき凸凹に特別な意味があると信じて、「緊急事態宣言の2週間後から数字は急減した」と思い込んだのが、忽那賢志・医師だ。
 自らの妄想に従って、ありもしないものを見てしまったのである。



  幽霊の 正体見たり 枯れ尾花




 【 関連項目 】

 → アビガンで人体実験するな: Open ブログ

 忽那賢志・医師がアビガンに否定的であることを批判している。アビガンで助かった人はたくさんいるのに、「アビガンが効果があるかどうかは不明だから、なるべく使うのをやめよう」と言っている。
  → アビガン 科学的根拠に基づいた議論を(忽那賢志)
 自分の主張のために患者を実験のモルモットにしよう、という主張。コロナ患者の治療を止めて、その途中では治療中止による死者を大量に出してしまえ、という主張。ほとんど殺人実験だ。

posted by 管理人 at 21:20| Comment(1) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後の少し前に [ 付記 ] を追加しました。
 STAP細胞事件との共通点を示す。
Posted by 管理人 at 2020年05月04日 23:25
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