2020年05月08日

◆ 新型コロナと九月入学

 緊急事態宣言で休校期間が延びている。そこで、九月入学を推進する声が多いが、しかしこれには、巨大なデメリットがある。人々は気づいていないが。

 ──

 緊急事態宣言で休校期間が延びているので、九月入学を推進する声が多い。下記のように。
  → コロナ禍で機運高まる「9月入学・始業」、絶対にやるべき3つの理由
  → 「9月入学」は実現可能だ!〜問題点と対処法 - 登 誠一郎|論座
  → 「9月入学」はコロナ禍にある子どもを救うのか シミュレーションする
  → 新型コロナ長期化で「9月入学」へ移行に賛成/反対?:日経
  → 新型コロナ:9月入学、導入せかす知事ら 背景に地域の窮状と思惑
  → 全国の高校生がウェブ会議 「9月入学」などで意見交換 | NHK

 一部では賛否両論を示している例もあるが、多くは賛成論であるようだ。
 だが、そのいずれにおいても、巨大なデメリットがあることを見失っている。「1%にも満たない生徒が留学で有利になる」というような小さなメリットを掲げるくせに、「すべての生徒がこうむる巨大なデメリット」については目をふさいでいる。
 では、その巨大なデメリットとは何か? 

 ──

 それは、こうだ。
 「四月入学から九月入学に転じるときには、移行期間が生じる。つまり、半年間の休校期間が生じる」


 これは形式的なことだが、実質的には次のことを意味する。
 「教育期間が半年間も延びる。その分、卒業後の社会人期間が半年間も縮まる」


 では、これがなぜ問題か? 
 教育期間が半年間も延びるのにともなって、人の人生(寿命までの期間)が半年間も延びるのであるなら、別に問題ない。しかし寿命は一定だ。九月入学に合わせて、人生が半年間も延びるわけではない。とすれば、卒業後の社会人期間が半年間も縮まる。その分、生涯年収は半年分も減少する。

 本来なら、22歳から 61歳まで働けるはずだった。なのに、卒業が 0.5年間も遅くなれば、働ける期間は 22.5歳から 61歳までとなるので、半年分、働ける期間が短くなる。その分、生涯年収は半年分、減ってしまう。また、国全体の GDP も、同じ割合で減ってしまう。
 特に初年度は、新卒社員の入社が4月から半年ほど遅れるので、若手の戦力を大幅に失ってしまうことになって、業務が停滞する。(国際的にも不利になる。)

 ──

 この問題を本質的に捉えるなら、こうなる。
 「四月入学から九月入学になると、移行期間の半年分、すべての生徒が半年間の留年したことになる」


 「半年間の留年」と言ってもいいし、「半年間の浪人」と言ってもいい。どっちにしても、学業の期間が現状の(6334の)16年間から、16.5年間に延びる。これは、1年の留年や1年の浪人の、半分があったのと同じことだ。人生において半年間を無駄にするのにも等しい。寿命が半年分だけ短くなったのと同じだ、と言えなくもない。

 だから、このことを理解すれば、「九月入学」なんかを望む生徒はほとんどいなくなるだろう。(半年間の留年を望む生徒はいない。1年間の留年を望む生徒がいないのと同様だ。)

 どうしても「九月入学」を実施するのであれば、生徒が各人で選べるように、「選択制」にするべきだろう。「九月入学」と「四月入学」の二つを用意して、どちらでも選べるようにするわけだ。
 その場合、「半年間の留年」を望む生徒はほとんどいないはずだ。つまり、「九月入学」を望む生徒はほとんどいないはずだ。たいていの友人たちは四月に卒業するのに、自分だけは半年遅れの九月に卒業するなんて、そんな無駄なことをしたがる生徒はほとんどいないはずだ。
 かくて、選択制にすれば、「九月入学」を望む生徒はほとんどいないことから、自然消滅することになる。これでいいだろう。
 
 だが、どうせなら、「誰も選択するはずがない九月入学」なんてものを、最初からやらなければいいのだ。仮にやったとしても、その選択をした人が、「しまった、やべえ」と後悔するだけだ。だったら、そんな「罠」か「落とし穴」みたいなものは、わざわざ用意しない方が、親切なのである。

 「馬鹿が喜んで近づいて落ちるように、落とし穴の上にゴザを敷いて、その上にバナナを置いておく」
 なんていう手間暇をかけるくらいなら、落とし穴なんてものを最初から作らない方が妥当なのである。……人の不幸を見て喜びたい、という悪魔的な心根であるのならば話は別だが。


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 [ 付記 ]
 次のニュースがある。
 《 横浜市が市立小中学校の児童生徒にタブレット端末 1人1台整備へ 》
 横浜市は4月28日に発表した、新型コロナウイルス感染症「くらし・経済対策」で、児童・生徒の感染拡大防止等のための自宅学習の環境整備の一環で、横浜市内の市立小中学校と特別支援学校の児童生徒にタブレット型PC等の端末を配備する方針を発表。学校休業時における子供たちの教育環境の充実と感染症の拡大防止のため「1人1台整備」に向け、補正予算として101億2000万円を計上した。
( → ヨコハマ経済新聞

 これならまあ、わからなくもない。全国規模で、これをやりますか? (国の補助金も出るようだし。)
 ただ、やったとしても、休校解除には遠く及ばないだろう。
 としても、「九月入学」なんかよりは、はるかにマシだとは言えるだろう。
 
posted by 管理人 at 21:37| Comment(6) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
諸外国の九月入学は日本の四月入学より半年早いタイミングの九月と聞いたことがあります。
このまま日本が九月入学にすると、諸外国より一年遅れてしまう。これは特に幼少期には致命的なロスになると思います。日本の学力低下が加速するのではないでしょうか。
やるなら飛び級など英才教育を並行して才能ある児童を埋もれさせない仕組みを作ることが求められると思います。
Posted by MySweetFeminist at 2020年05月08日 22:15
どうせやるなら半年遅らせるのではなく、むしろ半年早めるのはどうでしょうか。
その年は新一年生の数が倍になる問題がありますが、少子化だし何とかなりませんかね。
働くお母さんが多いので、子どもが学校に上がるのが早まること自体は歓迎されそうな気もします。
Posted by はる at 2020年05月08日 22:37
>諸外国の九月入学は日本の四月入学より半年早いタイミングの九月と聞いたことがあります。
このまま日本が九月入学にすると、諸外国より一年遅れてしまう。

日本では4月〜3月の1年間に生まれた人が一学年なのがアメリカでは9月〜8月の1年間に生まれた人が一学年になっているだけで、小学一年生は6歳〜7歳が所属するという点では同じなので、アメリカが半年早いということは成立しません。
管理人さんが言うように、あくまで移行期においてそれまでの日本の学制と比べて全員が半年遅れるというのが正しい。
移行期間において、同じ日に生まれた日本人とアメリカ人を新規の学制上で比較する場合、9月〜3月に生まれた人は特に損得ない(同じタイミングで同じ学年に入学進級卒業する)が、4月〜8月に生まれた人は丸一年遅れることになる。つまり、(移行の制度設計にもよるが仮に4月〜翌年の9月の1年半を今後新一年生として一緒に小学校に入学させる場合、)日本では(一学年下の6歳と共に)7歳で小学校に入学することになるが、アメリカ人の7歳は既に二年生になるタイミングである。これが現在小中高大に所属しているすべての4月〜8月生まれの損になる。
ちなみに、7歳児と6歳児で最大1年半の年齢差がある学年を想定する場合、若くして入学できたほうの4月〜8月生まれの6歳児が得をするという話では必ずしもなく、同学年に体格・思考力が1年分以上も勝る人たちが大勢居て、それが同じタイミングで倍率が従来の1.5倍に高まった受験に臨むので、実際最も割を食うのはこっちかも知れない。
まあ一学年の人数が一回だけ1.5倍に膨れ上がるのは弊害が大きいので、1年に1か月ずつずらしていって5年の移行期間を取ることになるかなと思います。

>どうせやるなら半年遅らせるのではなく、むしろ半年早めるのはどうでしょうか。
上述のように最終的には遅らせるも早めるも変わらない結果になりますが、早める場合は(これも新一年生を例にとると)今年の4月に入学した新1年生が、ろくに授業も受けていないのに、今年の9月に2年生に進級するという意味なので、これは事実上不可能でしょう。(来年導入するにしても似たようなもの)それは半年早めるという意味ではなく、教育期間を(コロナ休校期間と合わせて)ただ一年短くするということに事実上等しい。
あと、新一年生の数は倍にはならず、寧ろ一時的に半減します。今の一年生が今年の9月に進級して、今年の9月に入学する新一年生は4月〜8月に6歳になる子たちだけなので。
あと、公教育の小中入学進級はなんとかがんばれたとしても、受験、卒業、入社は半年早めるのは無理でしょう。まだやっていない受験や入社試験で今年の9月に入学・入社する?一年留年決定ですね。
遅くする場合と異なり漸進的移行制度も不可能だと思います。

ということで、半年早めるにしても遅くするにしても、移行期間後には全く弊害はないが、移行期間中に弊害が大きすぎるのでやるべきではないというのが結論になります。(管理人さんが端的に仰っている通り)
今は皆がコロナ自粛の狂気に取りつかれていて9月制導入も支持が多いみたいですし、ポピュリストの知事たちはそれに乗っかって更に人々を焚きつけてますが、実際にやってごらんなさい、人々も自分や自分の子・孫がその中に取り込まれるや否や実際が分かってきて不満百出しますよ。特に今の現役世代と4月〜8月に生まれる子供たちは将来にわたって確実に損をしますから。
ゆとり教育の旗振りをした文科省の寺脇研が亡国の貧官として歴史に名を遺したのと同じように、これを実施した政治家・官僚は天下のアホとして名を馳せることでしょう。
Posted by PF at 2020年05月10日 04:22
安倍総理が独断でポンとやってしまいそうで怖い
Posted by あさひ at 2020年05月12日 10:37
東工大学長が、6月入学案を提示しました。


【独自】「性急な9月入学論は待って頂きたい」現実的な解は「来年度のみ6月入学」東工大・益一哉学長に聞くhttps://www.fnn.jp/articles/-/43170
Posted by 反財務省 at 2020年05月18日 22:00
そもそも、夏休みを先取りしたと考えれば十分挽回可能なのに、何考えてるんでしょうか?薄気味悪いですね。
Posted by やまさん at 2020年06月04日 12:48
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