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専門家会議の報告が5月1日に出た。
→ 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月1日)(PDF)
→ 概要(PDF)
要旨は新聞などで報道されている。たとえば、こうだ。
西村康稔経済再生相は会議後に会見し、緊急事態宣言を延長する必要性について「緩和すれば感染拡大が再燃し、これまでの行動変容の努力や成果が水の泡になる恐れがあるとの評価をいただいた」と述べた。
( → コロナ、長期的な対策強調 専門家会議提言案「緩和なら感染再燃」:朝日新聞 )
「緩和なら感染再燃」というが、その根拠は何か? そう思って、上記の PDF を読んだが、根拠は何も書いてない。単に上の結論が書いてあるだけだ。
これでは何の学術的な根拠もない、ただの「思いつき」であるにすぎない。
本来ならば、こういうふうに書くべきだった。
「緊急事態宣言のあと、人と人との接触がこれこれの割合で減っているというデータが出た。その結果として、緊急事態宣言のあと、2週間後には、感染者の減少が確実に出た」
なのに、そういう実証データを出さない。単に思いつきの感想文があるだけだ。これでは「小学生の作文だ」と言われても仕方あるまい。中学生ならば、ただの主観的的な思いつきではなくて、もうちょっと根拠のある客観的な文章を書くものだ。
まったくひどい報告書だ。科学の名に値しない。
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そこで、私がかわりに実証して上げよう。緊急事態宣言のあと、2週間後には、こういう結果が出た。
全国の感染者数は、こうだ。

7日間平均のグラフは、こうだ。

出典:朝日新聞
より正確には、上記の専門家会議の報告に掲載されている「発症日のグラフ」を見るといい。(陽性の判明日でなく。)

これら三つのグラフは、次の二点を意味する。
(i)
・ 陽性の判明で見ると、大局的には、4月15日から4月30日まで、一定の割合でなだらかに減少している。
・ 発症日で見ると、4月1日以後、ずっとなだらかに減少している。
・ いずれで見ても、なだらかに減少している。
(ii)
4月7日以後、緊急事態宣言をなしたことの効果はまったく見られない。
本来ならば、緊急事態宣言の効果の有無ゆえに、次のようになるはずだった。
・ 4月21日(4月7日の2週間後)までは、急増が続く。
・ 4月21日以後は、鈍化から減少に転じる。
しかし、このようなシナリオとはまったく異なった結果になった。この意味で、専門家会議の示したデータは、「自説が間違っていること」を完璧に証明していくのである。
※ 「仮説の不成立」という形で、仮説が成立しないことがわかる。
にもかかわらず、彼らはそのことを記してないのだ! 自分で自説の検証ができていない。不誠実というか、愚かというか。……自説の検証を、やろうともしていないのだから、不誠実というべきだろう。
※ もっとも、「自説の検証」をやれば、「自説が間違っていること」が立証されてしまうのだから、やむを得ないが。……たぶん、私が上に書いたことは、専門家会議の誰もが自分で理解しているはずだ。にもかかわらず、その真実を隠蔽しているのである。「自説が間違っている」ということを知っていながら、あえてその真実を隠蔽しているわけだ。
( 隠蔽は、安倍首相が得意なやつだ。)
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では、正解は?
もちろん、「海外の流入があったから、3月後半の急上昇があったが、国際便が途絶えて海外の流入がなくなったので、以後の感染は急低下した」である。
この件は、すでに述べたことだから、ここには書かないでおこう。細かな話は、下記に記してあるので、そちらを参照。
→ 西浦モデルの失敗の理由: Open ブログ
[ 付記 ]
報告書の 10ページ目に、次の文章がある。
現在、緊急事態宣言下において、外出自粛や特定の業種の営業自粛等、前例のない対策が講じられており、これにより、我が国の新規感染者数は総じて減少傾向に転じたと判断されている。
「これにより」と言っている。つまり、「緊急事態宣言のおかげで、新規感染者数は減少しました」という主張だ。ただしそれは、自分の判断ではない。
「判断されている」だってさ。失笑。
そんなふうに他人事で語ってどうする。それを「判断する」のは、自分たちのやるべき最重要の仕事だろ。なのに、自分で判断しないで、他人任せにして、いつのまにか「判断されている」ことにしている。
そして、それというのも、「自分で判断する」ことができないからだ。つまり、「緊急事態宣言下において、外出自粛や特定の業種の営業自粛等、前例のない対策」と「我が国の新規感染者数は総じて減少傾向に転じた」こととの、因果関係を結びつけることができないからだ。
それもそうですよね。緊急事態宣言は4月7日なのに、急激な減少は4月1日から始まっているんだから。因果関係を結びつけることなど、できるはずもない。(順序が逆だ。結果のあとで原因が来ることになる。)
専門家会議は、きちんと因果関係を付けて、理由とともに「自ら判断する」べきだ。「判断されている」なんていう他人事の態度をやめるべきだ。
【 補説 】
おまけで、追加の話。
専門家会議の報告には、次の文章がある。
現在の英国において、最適な「緩和」をとった場合でも、ピーク時の患者数が一般病棟とICU双方のキャパシティの8倍を超えると予想されるため、現時点では「抑制」が唯一の実行可能な戦略。
たしかに、英国は「緩和」でなく「抑制」という戦略を取っている。つまり、強い「ロックダウン」をしている。
では、その結果は? 結果についても言及するべきだった。
専門家会議がサボっているので、かわりに私が示しておこう。英国の対策の結果は、こうだ。

イギリスの全国ロックダウンは、3月23日から始まった。その2週間後は、4月6日。では、その日以後、感染者の減少はあったか? 見ればわかるとおりだ。
4月6日以後、感染者数の減少などは起こっていない。どちらかと言えば、「増加して、高止まり」である。ロックダウン開始以前よりも、ずっと悪くなってしまった。
ただし、次のことは成立するかもしれない。
「ロックダウンをしたことで、急増のペースが止まった。さらに急増し続けることはなくなった」
そのくらいの効果はあるかもしれない。
しかしながら、ロックダウンをしていないスウェーデンでは、やはり同じように「頭打ち」の状態にある。
しかもスウェーデンでは、人口当たりの死者数が 263 であって、イギリスの 394 よりもずっと低い。( 100万人あたりの死者数。)
ここでもやはり、「ロックダウンをしている状態の方が、ロックダウンをしていない状態よりも、悪化している」ことになる。それも、大幅な割合で。
専門家会議は、どうせ英国についての報告を出すなら、英国の施策の結果がどうなったかも記すべきだった。それをしないのでは、「自説にとって都合の悪い事実はすべて隠蔽している」と言われても仕方あるまい。
( 安倍流だけど。)
検査の目的は、
政府は、感染者数を把握したいのではなく、
全体傾向の把握ができればOK。
且つ、ロックアウト云々を判断できればOK。
他国は、院内感染を防ぐために、
可能な限りの検査を行うスタンス。
日本もせめて医療や介護関係での検査の徹底など、
やった上で、
傾向把握で今まで程度の少ない検査を続ける。なら、
まだ論理的ですが、
院内感染検査の徹底もせずに、院内感染したらマスコミで公表される。
これでは、実務の病院側は疲弊する側で誰も協力できない。
病院側が院内感染の懸念で検査を要求しても、
院内感染するまでは結局、検査拒絶される構図。
マスコミが弾劾しない限り、何もかわらない。
弱いものがチューチュー吸われる構図が、
旧来は政府体制だけだったが、今はウイルスが重ねて吸う構図。
自分は、社会の悪を告発する役目をマスコミが負っていると考えますので、
マスコミの矜持次第、むしろマスコミ頼みな感。
バブルの時はCMで謳歌できる業界、今は本来の職務をして欲しいところ。
見解もこのブログと大体同じかと。