2020年04月26日

◆ アビガンで人体実験するな

 「アビガンで人体実験をしよう」という恐るべき提案が出た。

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 「アビガンで人体実験をしよう」という恐るべき提案が出た。マッド・サイエンティスト並みだ。
 おのれの科学的興味(科学至上主義)のために、人の命を無駄に操作しよう、という発想。それも、数人どころか、莫大な数の人命で。

 この意見は、次の記事だ。
  → アビガン 科学的根拠に基づいた議論を(忽那賢志)

 これは明らかに、「人体実験をして、大量の人命を無駄に奪おう」ということを狙っているのだが、そのことに気づかないまま、「科学のためには賛成だ」と同意する人が大量に出現した。
  → はてなブックマーク

 そこで、この難点を以下で説明しよう。

 (1) 重症者/軽症者

 そもそも、前提がおかしい。この人は「アビガンは軽症者にも無制限で投与されている」ということを前提として話を進めている。しかし、そんな前提は成立しない。
 アビガンは、現状では、軽症者には投与されない。(肺に大きな損傷が生じて)呼吸困難になった中等症以上の患者に投与されるだけだ。
 そのことも理解しないで、「軽症者に無制限で投与される」ということを前提として話を進める。
 2020年4月24日時点で日本における新型コロナウイルス感染症の致死率は2%未満です。
つまりほとんどの方が治癒する感染症であり、アビガンを飲んでも飲まなくても良くなるということです。
クドカンさんも石田純一さんも、アビガンを飲まなくても良くなった可能性が高いでしょう。

 こういうふうに「軽症者への処方」を前提としているが、その前提そのものが誤りだ。
 特に、石田純一については事実誤認をしている。石田純一は軽症者ではなく、死にかけた中等症だ。
 15日にPCR検査で陽性となった。治療の経緯については
 「そのときから一刻も猶予ないので、アビガンでいかないかというお話をいただき、1回2回は大量投与でした。呼吸とかも弱くなってきたので、猶予がないということで。
 おかげさまでアビガンが効いて、その後、悪くなることもなく、そんなに急激に劇的に回復はしてませんけど、ぜんぜん悪くなることなくなんとか小康状態、4日間で平熱ぐらいまできました」と、説明した。
( → 石田純一、アビガン大量投与 窮地から回復への道のり語る(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

 酸素吸入器で鼻チューブを受けている写真もある。
  → 東尾理子が連日の謝罪「主人止められず後悔、反省」: 日刊スポーツ
 つまり、「一刻も猶予ない」というほどで、一時は非常に危険な状態だったのだ。決して「アビガンを飲まなくても良くなった可能性が高い」というようなことはないのだ.むしろ、軽症のときにはアビガンを投与されないで、死にかけた段階で初めて、アビガンを投与されたのだ。
 なのに、死にかけた石田純一に対して、「アビガンを投与するな」というのは、「石田純一は死ね」と言っているのも同然だ。
 医者というのは、一般に、患者の命を救おうとするものだ。しかしこの医者は、「死にかけた患者への治療をやめよ」「患者は死ね」「救える命を救うな」と言っているのも同然だ。
 あまりにもひどい。

 いくら「科学的な真実を求める」という美名があるとはいえ、患者をモルモットにして死なせようというのでは、マッド・サイエンティストも同然だ。

 (2) 致命的

 「有効性をはっきりと確認するためには対比実験が必要だ」
 という主張がある。たしかに、二重盲検などの対比実験は、やった方がいい。
 ただし、そのような対比実験をしてもいい場合には、条件がある。「プラセボを与えた被験者が死なない」ということだ。命に関わりがない範囲であれば、対比実験をしてもいい。
 しかし、命に関わりがある場合には、話は別だ。「プラセボを与えた被験者が死ぬ」ということが判明している場合には、そのような実験は、人の命を奪う実験である。人の命をもてあそぶようなものだ。こんなことをするのは、マッド・サイエンティストも同然だ。

 ちなみに、癌治療薬のオプジーボ(一般名:ニボルマブ)の場合には、対比実験は途中で中止された。なぜなら、薬を与えた側は大幅に存命できるのに、薬を与えない側(プラセボの側)は次々と死んでしまったからだ。「これ以上、対比実験を続けるのは、救える患者をあえて死なせることを意味するので、人道的に許されない」というふうになった。かくて、対比実験は途中で中止された。(薬は「確実に有効だ」というデータをすでに得られていた。数的・規模的には小さかったが、統計的な有効性は明らかだった。)

 では、アビガンの場合はどうか? これも、オプジーボと同様だ。
 「人工呼吸器を使う患者は、ほとんどが死ぬ」というデータが出ている。一方、アビガンでは、「全員が助かる」というわけではないのだが、「大半が助かる」という報告が出ている。
  → 人工呼吸器の不足と供給: Open ブログ

 このような状況で、「データを得るために、助かる患者にもプラセボを与える」というのは、人命をもてあそぶマッド・サイエンティストの発想だろう。

 ※ 「アビガンが有効だとは判明していない」というのが筆者の主張だ。だが、それは重要ではない。重要なことは、「アビガンを使わないと死ぬと判明している」ということだ。(重症者はそうだ。)……ここを理解していないと、患者を無駄に殺すことになる。自分が患者を殺していると理解しないまま、殺すことになる。ひどいものだ。

 (3) 承認済み

 それでも治験が必要だとしたら、それは、「使った場合の副作用を確認するため」である。
 しかしアビガンはすでに「インフルエンザ治療薬」としての治験を済ませており、承認も得ている。
 今回の治験は、あくまで「適用外使用」の治験であって、「薬剤としての認可」のための治験ではないのだ。したがって、「副作用を調べるための治験」などは必要ない。
 この点を混同してはならない。

 (4) 政府は?

 上記のマッド・サイエンティストの意見は別として、政府はどうか? このような「人体実験」を推進しようとするか? いや、そうではないようだ。
 先日、民放の番組で、岡部信彦が「アビガンの対比実験」という方針を否定していた。「プラセボを与える(治療しない)のは非人道的だから無理」という趣旨だ。
 たしかに、そうだ。プラセボを与えるぐらいなら、単に「アビガンを投与しない」という処置を取ればいい。それで、そこそこの対比実験を取れる。二重盲検法ほどの厳密さは得られないが、アビガンは「気のせいで効く」(プラセボ効果がある)というような薬ではないので、二重盲検法という厳密な試験をする必要はない。
 特に、「アビガンを使わないと、死んでしまう」という例なら、山のように見つかっている。(海外で。)

 どうしても対比実験をしたいのであれば、海外にアビガンを提供して、海外で対比実験をすればいいだろう。それなら、特に問題はあるまい。(外国はもともと「アビガンなし」が原則だからだ。)
 一方、日本ではそうではない。「中等症以上ではアビガン投与が可能」という日本において、「アビガン希望者に対して、プラセボを与えることで、わざと死なせる」というような実験が許されるはずがない。(人道的に。)
 科学のために人体実験をしようというのは、科学的ではあるかもしれないが、あまりにも非人道的だ。それは、科学を名分にしたマッド・サイエンティストの発想だというしかない。


mad-sci.png




 [ 付記 ]
 同情的に言えば、この医師がマッド・サイエンティストであるわけではない。彼は単に、「軽症者にアビガンが無制限に投与されている」と事実誤認をしているだけにすぎない。だから、あのような馬鹿げた記事を書く。
 なるほど、「軽症者にアビガンが無制限に投与されている」という事実があるのなら、「軽症者にアビガンが無制限に投与してもいいというための治験をせよ」という提案は妥当だ。
 しかし、その前提そのものが間違っているのだ。現状では、「放置すれば死にそうになる」という中等症以上の患者のみが投与の対象なのだ。
 事実誤認をすると、その主張がマッド・サイエンティストも同然となる。いくら頭が良くても、現実認識が間違っていると、方針を根本的に間違えてしまう。……そういう教訓だ。
 まるで、現状認識を誤ったまま開戦に突入した、旧日本軍みたいなものだ。

 ──

 本項のポイントを言おう。
 治験であれ何であれ、実験をしてもいいのは、人の命に関わらない場合だけだ。つまり、(薬が)有効でも無効でも、人の命に関わらない場合だけだ。
 一方、使えば死ぬような場合も、使わなければ死ぬような場合も、どちらも人の命に関わる。だから、そういう治験をなしてはいけない。いくら科学のためであれ、人の命をもてあそんではいけない。「科学的であろう」とすることを最優先として、人を死なせてはいけないのだ。
 簡単に言えば、「マッド・サイエンティストになってはいけない」のだ。これが本項の核心だ。



 【 関連サイト 】

 (A) 肺の損傷

 呼吸困難になった中等症以上の患者では、肺に大きな損傷が生じている。
  → 新型コロナウイルス感染症から回復しても肺には深い傷跡が残るとの指摘 - GIGAZINE

 石田純一も、このような状態だった。しかし彼は日本にいたおかげで、アビガンの投与を受けたから、助かった。
 仮に、彼が日本以外にいたら、そのまま症状が悪化して、死んでいただろう。芸能人で死んでいたのは、志村けん・岡江久美子の両名だけでなく、石田純一も名前に加わっていただろう。

( なお、志村けん・岡江久美子の両名も、早期にアビガンを投与されていたら、助かった可能性が高い。しかし本項の医者なら、「アビガンを投与されないと死ぬ例が見つかったぞ。科学的な対比的事例が見つかった」と大喜びだろう。人が死ぬと喜ぶ科学者。)

 (B) アビガンは効かない? 

 「アビガンは効かない」と言い張る人がいる。だが、その根拠は薄弱だ。
 「インフルエンザにもちょびっとしか効かないインフルエンザの薬を、COVID-19に使ったら効く」と思える理由、ぼくには思いつきません。
( → アビガンは効かない|k_owaki|note

 それは筆者が思いつかないだけだ、と答えよう。無知な筆者に教えれば、こうだ。
 「タミフルは、インフルエンザA型に特化した薬だ。アビガンは、鳥インフルエンザにも効くほど汎用性があるが、効果が薄い薬だ。両者は性質が異なる」


 特化した薬と、汎用性がある薬は、別のものだ。
 タミフルは、インフルエンザA型に特化した薬であって、インフルエンザB型には無効だし、まして鳥インフルエンザには無効だ。それどころか、インフルエンザA型の変異型にさえ無効だ。
 タミフル耐性ウイルスが出現した、と話題になったこともある。インフルエンザA型は、もともと Aソ連型が流行していたが、それに変異型が生じて、タミフル耐性を持つようになり、タミフルが効かなくなったので、2008年ごろにはタミフル耐性ウイルスが猛威を振るった。
 ところが、2009年に登場した豚インフルエンザのウイルスは、タミフル耐性がなかった。だから 2009〜10年の冬には、豚インフルエンザにタミフルが効いた。おかげで、(前年比で)死者が大幅に減少した。
 アビガンは、鳥インフルエンザにも効くほど汎用性があるが、その一方で、インフルエンザA型には効果が弱い。だから、普通のインフルエンザA型にはアビガンは使わないことになっている。将来に来るかもしれない鳥インフルエンザのために備蓄されているだけであって、普通のインフルエンザには使われないのだ。……これがアビガンの現状だ。
 このように、「特化した薬」と「汎用性のある薬」を区別するべきだ。そうすれば、「インフルエンザA型ウイルスに効かない薬が、他のウイルスに効くはずがない」というような愚論の馬鹿馬鹿しさがわかるだろう。ど素人の愚論だ。
 上記のページは、自分の無知さ(素人ぶり)を暴露しているだけだ。
posted by 管理人 at 14:39| Comment(13) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に加筆しました。
   (B) アビガンは効かない?
 という箇所。
Posted by 管理人 at 2020年04月26日 19:17
管理人さん、よくぞ言ってくれたということで大拍手です。当初「アビガン 科学的根拠に基づいた議論を」の記事を読んだとき、何となく引っかかりながらもそんな考え方もあるのかなという様な印象でした。しかし、よくよく考えてゆくうちにこんな状況下でよくそんなことがいえるな!今回は適用外とはいえ一応とっくに承認されている薬なのに!ましてやほぼ代替え手段がない状態なのに!とムラムラ怒りが湧いてきていました。新聞によれば厚労省の技官連中も何故かやたらに慎重なスタンスをとっているようですが、こちらは70過ぎの老人なので気が気ではありません。現代ビジネスの「世界が待望する「コロナ新薬」を素直に喜べない理由」という記事も何か勘違いしているようで気になります。
Posted by 花咲じいじ at 2020年04月27日 01:20
有効そうな薬がまだわかっていなくて対処療法をやっていた頃のデータと比較すればいいんじゃないのかな。
中国での1月のデータ、日本での2月、3月のデータがあるだろうし、
それと比べてどうなのかを見ることはできそうに思う。

2月の気候とかの要因が入ってしまうけど、人体実験をするよりはマシだろう。
Posted by a at 2020年04月27日 02:08
軽症者、重症者の定義がよくわからないですよね、山梨で髄膜炎になった人も軽症者扱いとか。特に高齢者や基礎疾患のある人は早めに検査して、感染者にはアビガン渡るようになれば良いと思いますが
Posted by gunts at 2020年04月27日 07:52
重症者でアビガンないと助からない、てのもまだ不明ですよ。私自身は眉唾だと思ってますが、BCG摂取国は死亡率が低い、というのもありますので重症化して助かる人はアビガンではなくBCGが効いてる可能性だってあります。実際BCGは高齢者の肺炎を抑える可能性は高いらしいので。

この辺はそのうちアビガン投与群と非投与群の比較データが出ると思うのでそれではっきりするかと。中国ではアビガンともう一つの薬での群で大差ない、ってデータでてるし、試験管じゃアビガン効かないって出るんで個人的にはアビガンの効果って今期待されてるほどじゃないんじゃないかなぁと思ってます。

その点、イベルメクチンは統計データで有意差あるみたいなんでこっちの方もアビガンと同じくらいには騒がれてほしいなぁと思ってます。これだって日本人が開発に関わったくすりなんですし。
Posted by しかし at 2020年04月27日 12:43
> BCG摂取国は死亡率が低い

 それは間違いだと説明済み。中国と韓国の初期がそうだ。

> 重症者でアビガンないと助からない、てのもまだ不明ですよ

 不明じゃないですよ。そのデータはすでに出ている。本文中で示したリンク先で説明済み。

> アビガン投与群と非投与群の比較データが出る

 それを見ればいいのだから、二重盲検法という人体実験(プラセボ投与)なんかは、やめればいい、というのが本項の趣旨です。
 
> 今期待されてるほどじゃないんじゃないかなぁと思ってます。

 もともと特効薬だとは期待されていません。あくまで増殖を防ぐだけで、ウイルスを殺すわけじゃない。基本的には免疫力頼み。だから、ひどい重症では、効果がない。軽い重症(中等症)ぐらいでは効果がある。
 他の薬はことごとく無効と判明した中で、たった一つだけ有望なのだから、これにすがるのは当然だ。

 その後、イベルメクチンが有望らしいとなったが、これはアビガンの有効性の有無には影響しない。

 私だったら、重症化したら、イベルメクチンとアビガンの併用療法を望む。石田純一は、症状がひどく悪化したので、一時はアビガンの大量投与をしたそうだが、その副作用らしくて、肝臓が悪化したらしい。アビガンの大量投与が必要なほど、病状が悪ければ、イベルメクチンを併用したい。
Posted by 管理人 at 2020年04月27日 12:54
パルマ大の発表によれば、COVID-19は血管を攻撃し、その結果血管が損傷し
血栓ができ、肺であれば肺炎になったり、血栓が脳に飛べば脳梗塞になって
早期に重篤且つ死に至るとも。
Posted by 菊池 at 2020年04月27日 12:55
Posted by 菊池 at 2020年04月28日 19:26
アビガンがなかなか認可されなかった理由、ついに暴露されました。厚労省の天下り先の会社でなかったから
http://shiaoyama.com/essay/detail.php?id=1758
Posted by gunts at 2020年05月06日 08:19
 新薬の認可には数年間がかかるのが普通です。コロナが出てからまだ半年もたっていないので、5月中に認可されるアビガンは、特急です。批判は「超特急にしないのは遅い」というもの。
Posted by 管理人 at 2020年05月06日 08:50
 ちゃんと文中にリンクが記してあるのに、リンクが読めないの? 
 → http://openblog.seesaa.net/article/474696074.html

 この (14) です。
Posted by 管理人 at 2020年05月06日 19:45
 どうせまた、「ソースがない」とか「一次ソースを出せ」とか、文句を付けるんでしょ? 

 はいはい。そーすか、そーすか。

 だいたい、自分の読解力不足でリンクを読めもしないで、教えてもらったあとで、お礼の一言も言えない人間が、何を偉そうに言っているんだか。まずは、お礼の言葉を言うだけのエチケットを身に付けてからの話だ。
 やたらと人に注文してばかりいるが、いったい、何様のつもりなんですかね? 
Posted by 管理人 at 2020年05月06日 20:13
> それはアビガンを使わないと死んでしまう例ではありませんが。

 そのデータ単独ではそうです。だが、日本の「アビガンあり」のデータと照合すると、ちゃんとわかるんです。二つセットで判明するんです。
 あなたは、その文章のある箇所(一部分)だけを理解して、それより前に書いてある文脈を理解できない。長い話の流れを理解できない。小さな短文しか理解できない。

 そして、自分の曲解のせいで、おかしな解釈が生じると、「自分が誤読したのだ」とは思わずに、「筆者がデタラメを書いている」と決めつけながら、非難する。
 そのあと、自分の誤読を指摘されるのだが、勘違いして攻撃したことのお詫びもしないで、しらばっくれる。
 毎度毎度、その繰り返し。

Posted by 管理人 at 2020年05月06日 21:58
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