2020年04月26日

◆ マスク再利用の指針は誤り

 厚労省が医者向けに「マスク再利用の指針」を示しているが、これは誤りだ。正しい方法は「水洗い」だ。

 ──

 朝日の記事に、N95 マスクを再利用する話が出ている。
 医療従事者の院内感染を防ぐには、高性能なN95マスクや、医療用ガウンといった防護具の十分な供給が必要だが、今も不足している。新型コロナに感染した患者の専用病棟がある川崎市内の病院では、使ったN95マスクを更衣室で陰干しし、再び使う。本来は1回限りの使用だが入荷が滞っている。厚生労働省の指針に従い、付着したウイルスが感染力を失うとされる72時間経ってから再使用する。
( → 欧州で医師ら感染、死亡例多数 日本でも足りない防護具:朝日新聞

 ここでは、「陰干しし、再び使う」という話が出ている。しかし、陰干しでは、紫外線による消毒ができないので、不衛生だ。
 では、それを推奨する「厚生労働省の指針」とは、どんなものか? 調べてみたら、こうだ。
 厚生労働省は本来使い捨ての医療用高機能マスク「N95」について、滅菌処理などをして再利用するよう促す事務連絡を出した。
 使用後は手術器具用の滅菌器を使ってN95を滅菌する方法を示した。滅菌器を使う場合はN95の利用は「2回まで」とした。
 滅菌以外も、医療者1人に5枚のN95を配布し、5日間で順番に使う再利用法を提案した。海外の研究で、このウイルスがプラスチックや紙の上では72時間しか生存できないとの報告があることを受けての措置。一度使ったN95は通気性のよいバッグに保管し、ウイルスが自然に死滅するのを待って再利用する。
( → 医療用「N95」マスク再利用促す 厚労省、不足受け容認 自然消滅待つ方法提示 - 毎日新聞

 より詳しい話は、公式文書を見るとわかる。
  → N95 マスクの例外的取扱いについて(厚労省)
 ここには、「過酸化水素プラズマ滅菌器」を使った滅菌法が示されている。次のように。
※ N95 マスクの再利用法

・過酸化水素水プラズマ滅菌器を用いた再利用法
  米国において、一部メーカーと規制当局との連携により、手術器具の滅菌などに用いられている過酸化水素水プラズマ滅菌器の使用により、N95 マスクの滅菌及び再利用が可能であると示唆されていることを踏まえて対応すること。ただし、3回の再利用でN95 マスクの換気能が低下するため、再利用は 2 回までにすること。

・過酸化水素水滅菌器を用いた再利用法
 米国において、一部メーカーと規制当局との連携により、手術器具の滅菌などに用いられている過酸化水素水滅菌器の使用により、N95 マスクの滅菌及び再利用が可能であると示唆されていることを踏まえて対応すること。10 回までの再利用が可能

・1人に5枚のN95 マスクを配布し、5 日間のサイクルで毎日取り替える再利用法
 新型コロナウイルス感染症はプラスチック、ステンレス、紙の上では 72 時間しか生存できないことが報告されていることから、N95 マスクを 1 人につき5枚配布するとともに、使用したものを通気性のよいきれいなバッグに保管し、毎日取り替えて 5 日間のサイクルで使用すること。

 ──

(本情報は、米国において新型コロナウイルス感染から医療従事者の個人用防護具の N95 マスク不足の緊急事態を解消するため、米国 ASP が米国政府 FDA と CDC(疾患予防管理センター)と協力し、非常事態宣言下の緊急許可(EUA: Emergency Use Authorization)における一時的な緊急措置として作成した、本来単回使用である N95 マスクの再生処理に関するインストラクションを参考に作成しております。)

 ここで、「過酸化水素水プラズマ滅菌器」「過酸化水素水滅菌器」というものを調べると、下記の案内が見つかった。
  → 過酸化水素ガス滅菌器 - サラヤ株式会社 (重い)
 ここには、次の記述がある。
 「ヒドロキシルラジカルや有機ラジカルなどの殺菌力の強いラジカルの作用により」
 どうやら、過酸化水素水から発生される水酸基ラジカルなどを利用するらしい。そのことで、ウイルスを破壊するわけだ。

 しかし、この方法だと、ウイルスの死骸は洗い流されない。だから、数回の利用でマスクは目詰まりしてしまって、再利用が不可能になるだろう。実際、厚労省の指針では「2回まで」と記されている。これでは物足りない。

 むしろ、「水洗いして、ウイルスを洗い流す」という方針の法が好ましい。これなら、目詰まりしたウイルスを洗い流すので、数十回も再利用できるだろう。
 この件は、前に述べた。
  → マスクの話題 2 (コロナ): Open ブログ
 マスクがウイルスを除去するのは、マスクにフィルター機能(ふるいとしての機能)があるからではない。マスクはウイルスを吸着するのだ。そして、時間がたつと、吸着されたウイルスの量が増えすぎるので、マスクの機能が衰える。だから、水できれいに洗い流すことで、吸着されたウイルスを除去して、再利用が可能となる。(洗剤を使うのも良い。)

 つまり、「ウイルスを洗い流す」ことが大事なのだから、「洗い流さずに滅菌するだけ」という方針では不十分なのだ。
 また、滅菌するだけでは2回で利用できなくなるが、洗い流せば数十回も利用できるようになる。
 この二つの意味で、厚労省の方針は間違っている。「間違いだ」と大々的に指摘するべきだろう。

 ──

 そしてまた、正しい方針を示すべきだろう。その方針は、上記項目似も記してあるが、要点を述べると、こうだ。
  ・ 水洗いする。(手もみ洗い。)
  ・ 温度は、いったん高温で殺菌してから、中温で手洗い。
  ・ 洗剤を使うと、なお良い。
  ・ 漂白剤を薄めて使ってもいい。(手荒れに注意。)
  ・ 天日干しにして、紫外線で殺菌する。


 ちなみに、厚労省の推奨する「陰干し」は駄目だ。
  ・ 「陰干し」は、布を傷めないためにやるのであって、使用回数の少ないマスクのためには、無意味。
  ・ 陰干しだと、紫外線を浴びないので、殺菌効果が薄れる。
  ・ 陰干しだと、湿度の高い状態が続くので、ウイルスが死滅しない危険が高まる。


 最後の危険に付いては、下記情報(前出)を参照。
  → 新型コロナウイルス、プラスチックなどの表面で最長3日間生存
  → 新型コロナウイルス、表面でどれくらい生きられる?
 前者を読むと、3日間(72時間)で安全になるようにも見えるが、そう生易しい話ではない。
 後者を読むと、次の文章が見つかる。
 他のコロナウイルスは高温多湿の環境で早く死滅するが、SARS系のコロナウイルスは56度以上の環境で、15分ごとに1万個のウイルスが死ぬ程度だという。
 段ボールなど吸収性の高い天然繊維の上では、プラスチックや金属の上よりも、ウイルスは素早く乾くようだ。
( → 【解説】 新型コロナウイルス、表面でどれくらい生きられる? - BBCニュース

 つまり、湿度の高い場所で陰干ししたのでは、ウイルスが死滅しない危険がある。むしろ、早く乾燥させることが大事だ。そのためには天日干しをする方がいいのだ。(紫外線だけでなく、乾燥のために。)

 「72時間放置しただけで、再利用する」という厚労省の指針は、危険性が高い。
 「水洗いしてから天日干しすべし」というふうに指針を改めるべきだ。
 厚労省は危険な方針を撤回して、正しい指針を示すべきだ。(マスクの再利用の指針。)

 ──

 結論。

 厚労省の指針は間違いだ。そのせいで、再利用が2回に限られている。だから、マスク不足になる。つまり、N95マスクが不足しているのは、厚労省が間違った指針を出しているせいだ。



 【 関連項目 】
 「水洗いしないと、マスクが目詰まりする」
 という話は、前にも述べた。台湾の電鍋(加熱で殺菌する)の話題。
  → マスクの話題 2 (コロナ): Open ブログ の (8)

 一部抜粋しよう。
 この方法はまずい。吸着されたウイルス(の死骸)が、洗浄されないまま残るので、吸着の能力がどんどん劣化するからだ。( ※ 本項 (1) の吸着の話を参照。)
 殺菌のことばかりを考えて、吸着のことを考えなかったのが、致命的なミスだ。「この方法は駄目なので、きちんと湯で洗いましょう」と広報するべきだろう。

 なお、この項目には、次の話もある。
 塩素系の漂白剤で洗うといい……と政府が広報している。

 しかし、これはよくない。「塩素系の漂白剤」は、使うと、布がすぐにボロボロになる

 個人用ならば、塩素系の漂白剤は使わない方がいい。数十回も再利用するからだ。(ボロボロになると困る。)
 ただし医療用の N95マスクならば、10回ぐらいしか再利用しないだろうから、殺菌力を優先して、塩素系の漂白剤を使ってもいいだろう。(耐久性は重視しなくていい。)

posted by 管理人 at 12:10| Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
N95などのマスクの繊維は静電気を帯びていてウイルスなどの微粒子を吸着するので
水に濡れると静電フィルターとしては使えなくなってしまうようです
それでもただの不織布のマスクとして再利用はできると思いますが
Posted by 水洗いは禁物 at 2020年04月27日 04:31
> 水に濡れると

 濡れているときはそうだけど、乾かせば元に戻りますよ。
 静電気を使うのは、普通の不織布フィルターも同じです。吸着の原理は、静電気やファンデルワールス力などの分子間力。この件は前に述べた。下記のコメント欄。

 http://openblog.seesaa.net/article/474388956.html
Posted by 管理人 at 2020年04月27日 07:10
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