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モデルの失敗
政府は「対人接触の8割減」を狙うが、その理由は、西浦モデルだ。だが、その西浦モデルは失敗した(間違いだと判明した)。すでに述べた通りだ。以下のように。
→ 専門家会議の報告: Open ブログ
※ 65%の対人接触の削減では、20日後まで急増が続くというモデル。現実には、50%程度の削減だったが、緊急事態宣言の5日後から急増が止まった。
→ 緊急事態宣言の2週間後: Open ブログ(4月22日)
→ 4月24日の感染者数: Open ブログ
※ 4月22日および4月24日の時点で、「緊急事態宣言の2週間後の時点で、感染者数の急減という効果はまったく見られない」と判明した。
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以上のように、西浦モデルは完全に失敗した。
・ 急増の停止を見抜けなかった。
・ 予定した急減が起こらなかった。
このように、二重の意味で、大ハズレとなった。つまり、完全に失敗した。「少しはズレた」というようなものではなく、北向きと東向きぐらい、まったく見当はずれの予想をしていたからだ。(正反対というほどひどくはないが、まったくの無意味とは言える。)
ではどうして、西浦モデルは完全に失敗したのか? それを探ることで、政府の方針(8割削減という誤った方針)の是正の仕方もわかる。
以下では、私の解釈を示そう。
理由:感染倍率 2.5
理由の一つは、「感染倍率を 2.5 と見なしたこと」である。
※ 感染倍率 = 基本再生算数 R0
感染倍率を 2.5 と見なすというのは、欧米並みの急激な感染増加があると危惧した場合の想定値だが、欧米ではマスクなしなので、参考にならない。その参考にならない値を勝手に想定したせいで、モデルと現実が大幅に狂った。
現実にはどうか?
(1) 急増期
3月下旬頃の急増期には、感染が指数的に増加した。このときは、見かけ上は、感染倍率は 1.7 程度となっていた。
→ 専門家会議の失敗の理由: Open ブログ
しかし、このような急増期でさえ、1.7 であるにすぎなかったのだ。なのに、「 2.5 」という数値を採用したのは、あまりにも過大な数字であり、およそ現実離れした数字だった。つまり、モデルにおける数字を取り違えた。
※ 2.5 は、2〜3日で倍増。1.7 は、1週間で倍増。
(2) 急増の理由
では、感染倍率を 1.7 にすればよかったか? 違う。この時期にあったのは、「感染倍率の急上昇」(二次感染の増加)ではなくて、「海外からの流入の急増」(一次感染の増加)だった。一次感染の増加を、二次感染の増加だと見なす、という認識そのものが誤りだった。
→ 専門家会議の報告: Open ブログ
ここでは「感染倍率が急上昇した」という認識そのものが狂っていたわけだ。
(3) 正しい感染倍率
では、感染倍率は? 「海外からの流入の急増」が終わった時期、つまり、4月12日から 24日までの感染者数を見ればわかる。おおよそ、なだらかな減少が続いている。
→ 緊急事態宣言の2週間後: Open ブログ
→ 4月24日の感染者数: Open ブログ
こういう感染者数の減少傾向を見ると、正しい感染倍率は1を少し割る程度、つまり、0.8〜0.9 ぐらいだ、と推定できる。
つまり、正しい感染倍率は 0.8〜0.9 ぐらい であるのに、それを 2.5 ぐらいだと想定したところに、西浦モデルの根源的な失敗があった。
現実には、「放置すればゆるやかに減少する」という感染倍率( 0.8〜0.9 )なのに、「放置すれば急増する」という感染倍率( 2.5 )を取ったのだから、予想が大ハズレするのは当然だ、と言える。
理由:対人接触
西浦モデルでは、「感染が増加する理由は、対人接触があるからだ」というふうに考えている。そういうモデルを取っている。その根拠は、「対人接触で感染をもたらす飛沫感染」である。
しかしながら現実には、「対人接触なしで感染をもたらす接触感染」が大部分( 86% )であって、「対人接触で感染をもたらす飛沫感染」は少数( 14% )であるにすぎない。
→ 接触感染とマスク: Open ブログ
現実の感染は接触感染が大部分なのに、飛沫感染だけを考えて、対人接触(つまり人的接近)ばかりを減らそうとしたところに、西浦モデルの根本的な誤認があった。
※ では、どうすればいいか? 接触感染をなくすために、飛沫を飛ばさないようにした「マスク義務化」を実施した場合のモデルを計算すればよかった。そうすれば、「対人接触の8割減」の効果と、「マスク着用率が 80% から 95%に上昇すること」の効果が、ほぼ同等だと計算できるはずだ。
→ 緊急事態宣言の2週間後: Open ブログ
どうせモデル化するなら、こちらの想定でモデル化すれば良かった。
ただし、どっちにしても、施策の効果を過大に評価しすぎている。現実には、感染の理由は多様にわたるので、特定の経路だけが感染経路のすべてであるわけではない。したがって、西浦モデルみたいに単純化したモデルでは、こうなる。
・ 感染の増加をおおざっぱに予想することはできる。
・ 特定の施策の減少効果は、過大に出てしまうので、無効。
モデルにおいて、特定の施策を取ると、感染者数が急減することになる。しかしながら、そのような「急減」は、現実に起こる急減ではない。「モデルが単純化されていて、条件が簡略化されていること」から来る「急減」であるにすぎない。
従って、モデル上で「ある条件を外すと急減する」というふうになるからといって、現実に「ある条件を外すと急減する」というふうにはならない。モデルと現実とは違うのだ。
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例。
インフルエンザの感染者数のモデルを作る。
「感染の理由は、接触感染だけである」というふうに簡略したモデルを作る。それで感染者数の概数を計算することはできる。(おおざっぱな予想)
そのモデルにおいて、「接触感染が起こらない」と仮定する。その結果は「感染者数がゼロ」となる。
では、現実に「接触感染が起こらない」というふうにすれば、「感染者数がゼロ」となるか? もちろん、ならない。なぜなら、飛沫感染や空気感染の余地もあるからだ。(モデルではその分が考慮されていないが、現実にはモデルとは別の感染が起こる。)
簡略化されたモデルで、「特定の条件を外すと、急減する」という結果が出たとしても、それは、モデルが簡略されていたことが理由なのであって、現実にそうなるということを意味するわけではない。
西浦モデルは、このことを勘違いしている。
対策の誤認
以上のように、西浦モデルには大きな問題がいくつもあるとわかった。要するに、根本的に間違ったモデルなのである。
そして、こういう間違ったモデルを理由に、「対人接触の8割減」なんていう馬鹿げた施策を取っているのが、日本政府だ。
ちなみに、こんな馬鹿げたモデルに政策を左右されている国は、日本だけだ。たった一人の馬鹿学者の愚論に従って、国全体が愚行に走る……なんていう馬鹿げたことをやっている国は、世界広しといえども、日本だけだ。
欧米のロックダウンならば、対人接触の 99% 減を実現しているので、そこそこの効果はあるだろう。しかし、8割減では、残りの2割があちこちでいっぱい飛沫を飛ばす(物を通じた接触感染を起こす)から、効果はほとんどないのだ。ただの無駄だ。
そのことが、ここ1週間の事実(緊急事態宣言の2週間後の急減がなかったこと)から、明らかになったと言える。
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なお、西浦モデルの失敗の理由を認識できないのは、まだ仕方ないかもしれない。
しかし、モデルが正しかったかどうかを、評価しようともしないというのは、まったく非論理的だ。「モデルを理由として緊急事態宣言をした」し、「モデルを理由として緊急事態宣言を延長しようとする」のに、そのモデルの妥当性を今のこの時点で評価しようともしない。これでは、科学を根拠としているように見えて、まったく非科学的である。
自分の言いたいことだけを言っていて、その妥当性を考慮しようともしない。これではただの阿呆でしかない。
※ 無知の知がない。自己反省もできない。科学の逆だ。
【 関連項目 】
西浦モデルへの批判は、別項でも示した。
→ 専門家会議の報告: Open ブログ
※ 「予想と現実とが大幅に食い違った」という話。
【 関連サイト 】
西浦教授が、モデルの算定方法そのものを変えてしまう、という新方針を立てた。
→ 「接触8割減」西浦教授が評価方法提案 一部地域達成か [新型コロナウイルス]:朝日新聞
新しいモデルを使えば、「接触8割減」が達成されるそうだ。
しかし、「これでは本末転倒だ」「何をしたいんだ?」「現実よりも、モデルごっこか?」というような批判が山のように寄せられている。
→ はてなブックマーク
飛沫感染と接触感染は関連していて、大きな要因が『飛沫による接触感染』であることが正確に伝わっていないのではないかと思われます。
そもそも、接触感染でないものを「接触」という言葉で表現することからして、間違いだ。「人と人との接触」というのは、接触ではなく接近のことなのだが。
のリンク先が間違えてます。
それはそうと、素人考えで恐縮ですが、そもそも飛沫感染は、動いているものを吸い込んで感染するというイメージで、接触感染は、付着している(止まっている)ものを、意識せず自ら取り込んで感染するというイメージを私は持っています。これが正しいならば、感覚的にも後者の方が感染可能性が高いかなと、最近思うようになりました。
(ぼちぼちSNSでも西浦氏を糾弾する人が増えつつありますが…)
代わって藤井モデルがあります。こちらは混ぜて書いてはいますが、二つの感染ルートの違いを理解し、区別しています。
こちらがずっと優れていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=Vu3EbKx_uU4
藤井さんのモデルには、こういう「全員マスク」という概念がないし、「マスク義務化」という施策もない。「集団で防御する」という発想がなくて、あくまで「一人一人で防御する」という発想だ。発想の仕方は、専門家会議と大差ない。
ミクロ(個人)のレベルで考えていて、マクロ(国民全体)のレベルで考えていない。
そもそも、方針を YouTube なんかで示すのが駄目だ。ちゃんと文書で示すべき。こんなのしかない。
https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0584.html
- SIR っていう、最終的な累計感染者数が何千万人なのかとか、収束までが月単位なのか年単位なのかがざっくりわかるモデルを使って計算しました。数日、数週間の予測には向きません。
- 日本では全体的な感染者数がまったく把握できてないので、係数がまったくわかりません
- てっきとうな係数で計算しました。ただの計算なので、感染者がすっごいことになるという計算もできるし、少ししかでないという計算もできます
- そのなかの一つの場合だと 80% 感染倍率を減らす必要があります。もちろん適当な係数なので、なにもしなくて良い場合もあるし、99.999% 減らす必要がある場合もあります。
そして、やはり専門家会議なるの問題でしょう。物理屋や数学屋がいないのでしょう。西浦氏がまちがっていても、それくらい指摘すれば良いのです。自力で吟味できないなら、外から募れば良いのです。
私は西浦氏の計算がでたらめであったこと自体はどうでも良いと思うのですが、それがでたらめであるという説明をしてないので -50点、専門家なる方々がその吟味をしてないので -50点、合計 -100 点、そんなところかと思ってます。
@日々PCR検査で診断されるコロナ感染者数は、検査体制の不備によって感染の実態を表していない。
現在公表されている感染者はあくまでPCR検査が実施された有症者に基づき算出されるものだが、実際には検査体制に問題が多数存在しており、コロナ感染の有症者総数を捉えたものではない。
PCR検査数は各々の自治体においてキャパシティが存在しており、日々判明する感染者は自ずと上限が存在している。(確定日別で感染者数を見たとき、日々に陽性を出せる患者数は上限で平坦になっているのでキャップがかかっていると考えられる。)
このような場合には統計学的に代入法といった方法で、陽性率や重症者数等からバイアス補正して実際の感染者数を判断する必要がある。
補正を含めて感染者数を見たとき、感染者数のピークは先週となっているように見える。今週はやや増加数が減少しているように見えるが現状では判断できない。(24日時点)
https://youtu.be/0M6gpMlssPM?t=463
緊急事態宣言の発令をもって、二次感染者数が減少に転じたと言える明確な証拠は現時点で存在しない。
https://youtu.be/0M6gpMlssPM?t=4888
A現在データから判明している確定患者数というのは明らかに氷山の一角で、推定ではその10倍以上の感染者が存在している。
PCR検査を実施するのは有症者であり、無症状の者、症状があっても申告しない者が多数存在している。
海外で判明している感染実態のデータからの指摘、慶応大学のコロナ外の目的で入院している患者の陽性率(67人中4名陽性)から判断した場合、現状の検査数は明らかに患者の実態を反映していない。西浦氏の推定では10倍以上。
今後追加検査によって、実際の感染者数がどのようになっているのか把握する必要がある。
https://youtu.be/0M6gpMlssPM?t=3986
https://youtu.be/0M6gpMlssPM?t=5680
それは別に問題ない。実際の数が何倍あっても関係ない。本項で話題になっているのは「増えるか減るか」という相対的な傾向(増減比)であって、実際の数ではない。
何らかの歪みがあるとしても、その歪みは日々に変動するものではないから、考慮する必要はない。
ただし、歪みが日々に変動することもある。それは、4月13日以降に民間検査が導入されたことだ。これによって検査数が増大した。そのせいで、陽性者も増大した。……この歪みは考慮する必要がある。そのことで、「15日以後に増回した分は、それを補正して、少し少なめに見た方がいい」とは言える。
> 感染者数のピークは先週となっているように見える。今週はやや増加数が減少しているように見えるが現状では判断できない。
そこは判定しなくてもいい。どっちでもいい。大事なのは「先週には急増が止まった」ということだ。あと、「今週には急減がなかった」ということだ。説明済み。
> 慶応大学のコロナ外の目的で入院している患者の陽性率(67人中4名陽性)から判断した場合
そんな小さなサンプルで調査するデータに、統計的な意味はない。
ちなみに、石川県では院内感染が続出しているが、その院内感染のデータを、日本全体に敷衍することはできない。
院内感染が起こりやすい病院のデータをサンプル例とするのは、あまりにも馬鹿げている。
さらに言えば、実際の数が何倍であろうと、意味はない。数が多ければ多いほど、「コロナは感染しても怖くない病気だ」というふうに判明するだけだ。多くても少なくても、怖さは大差ない。
大事なのは、増減という相対的な傾向だけだ。
そのためには、県別に見て比べることが最も有効だろう。
この手の非線形な式のパラメータは、目標値に合うように、いろんなパラメータを繰り返して決めるのです。この場合の目標値は、日毎のある程度正確な感染者数や、ある程度正確な累計感染者数です。それが全くわかってない時点で、これらの式で物事を判断するということが間違いなんです。
西浦氏たちの根本的な失敗は、数式で判断できる状況にないことすらわかってなかったことです。
ソーシャルディスタンスはかなり取っているようですが、
マスクをしている人はほとんどいませんでした。
で、死者2万人超え。
感染者は14万人くらい。
ロックダウンやらソーシャルディスタンスやらより、マスク義務が大事。
5月6月になって暖かくなったら日本でも非着用者が増えそう。
→ https://www.worldometers.info/coronavirus/country/uk/
マスクなしでロックダウンしていることが、いかに無意味であるか、わかる。
やはりとっくに蔓延していて、PCR検査で殆ど拾えていないと見るのが正しいのではないか。
検査を増やせば見かけ上の感染者はいくらでも増えるように思える。
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020043090070748.html
この時点で何も言えないですね。
被験者も無作為でなく希望者ですし。
> 検査に使用したのは、大手繊維メーカーのクラボウが輸入した試薬キット。
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020043090070748.html
> クラボウ公式:
> 中国の提携先企業が開発したイムノクロマト法の原理に基づいた「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査試薬キット」を日本国内に輸入し、販売することとなりました。
https://www.kurabo.co.jp/pdf/covid19kit20200420.pdf
> 感染症学会は抗体式の検査キットについて、「感染症の診断に活用することには推奨できない」と否定した。
http://openblog.seesaa.net/article/474716324.html
> 感度は、A社2/5、B社0/5、C社3/5 、D社4/5 となった。一方、特異度についてはいずれも 5/5 だった。
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69156
要するに、迅速検査キットは、感度の点ではまったく当てにならない。しかし特異度の点では、いくらかは当てになる。
無作為試験ではないので全く足りていないですね。
>5月6月になって暖かくなったら日本でも非着用者が増えそう
今日の東京はすでに初夏の陽気で暑いです。マスクしてると内部が蒸れてきますし、吐く息があたたかいので息苦しくなります。
確かに感染者数は減少していますが、それ故に変に油断し、マスクを外す人が現れそうな気がします。
(それともすでに外している人が。。。?!)
> ここで計算したのは、再生産数の削減比率である。が、これが「接触の削減」に相当すると西浦さんは説明した(ここでも私はびっくりした。「接触」とは「再生産数」のことだったとは)。
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020043000004.html?page=2
つまり、「人と人との(接近)だけで飛沫感染が起こる」と考えている。「人と物との接触で接触感染が起こる」とは考えていない。全体の 14%のことだけを考えていて、86%のことを考えていない。
→ http://openblog.seesaa.net/article/474477672.html
そういうインチキさが、バレバレとなったわけだ。(実は元からバレていたが。)
なお、記事のタイトルの
> 「接触8割削減」目標は5月6日でやめるべき
という話は、本文中には書いてないようだ。肩すかしだね。