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緊急事態宣言と外出自粛要請のあとでは、「外出を8割減らせば収束できるが、それができなければ感染は拡大する」というふうに政府は述べてきた。その一方で、外出削減は4〜5割ぐらいしかなされていない、という調査結果も出された。
以上のことからすると、感染は今後も拡大すると見込まれてきた。そのせいで、政府は「緊急事態宣言の延長」を考慮しているらしい。
政府は、5月6日までとなっている緊急事態宣言の実施期間を延長するかどうか、来週末にも議論する。東京を中心とした感染者数の拡大ペースや医療機関の逼迫状況から専門家が必要と判断すれば延長が検討される見通し。複数の関係筋が明らかにした。
政府は今月7日、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を発令した。安倍晋三首相は専門家の分析をもとに「私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者を減少に転じさせることができる」との見通しを示していた。
( → 緊急事態宣言、期間延長の必要性を来週末にも議論=関係筋 - ロイター )
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ところが、4月7日から2週間を待たずに4月12日から15日まで、すでに感染者増の減少が見られる。特に、東京都は、下記の通り。
( グラフは、累計ではなく、1日ごとの新規感染者数。
4本の灰色水平線は、50人、100人、150人、200人 のこと。)
( 15日は 127人)

出典:都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
12日は日曜日だから減ったのかとも思えたが、13日に反動の増加があったわけでもない。一貫して減少傾向にある。
さらには、12日には突発的な増加要因もあった。
都内で、12日に新たに感染が確認されたのは165人以上で、このうち、およそ90人は「中野江古田病院」の関係者とみられている。
( → 東京都 新たに165人以上感染 約90人は病院関係者か )
これは、通常の孤発例ではなくて、集団的な院内感染だ。感染者の数が多くても、事例としては「1」とカウントするだけでもよさそうだ。この 90人分を除外すると、12日は 75人だけだったとも言える。つまり、12日の時点で、すでにかなり減っていることになる。( 12日が日曜日だということを勘案しても少なめだ。)
ともあれ、東京都は 11日がピークだったことになる。
全国ベースではどうか? やはり、12日がピークで、以後は減少の傾向にある。(その日の新規発生者数)

出典:新型コロナウイルス感染者数の推移:朝日新聞
以上のことからして、政府の悲観的な予想とは裏腹に、現実には「感染者数はすでに収束しつつある」(収束傾向にある)と見なしてよさそうだ。
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では、収束しつつある( or 収束傾向にある)としたら、その理由は何か?
7日の緊急事態宣言(外出自粛要請)ではあるまい。7日に宣言をして、12日に効果が出るというのは、早すぎる。潜伏期からしても、ありえそうにない。
3日の入国規制の効果が出たと見るのは、ギリギリで可能だ。3日の入国規制があって、12日に効果が出始めて、13日、14日と効果が大きく出てくる……というのは、ありえそうだ。
31日に安倍首相が布マスクをして記者会見をして、それ以後にマスクをする気運が政府や国民の間で高まった(マスクの着用率が高まった)……ということの効果ならば、日程的には十分に考えられる。ただし、それは急激な変化をもたらすことはなく、漸進的な効果をもたらすだけだろう。
以上のことからすると、12日以後に減少が起こったことは、次のように認識できる。
・ 4月3日から入国規制が強化されたこと (主因)
・ 4月1日からマスクの着用率が高まったこと (副因)
比率で言えば、前者の効果が圧倒的に多いだろう。
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実は、以上のことは、前に私が予想しておいたことだ。「入国規制の強化にともなって、潜伏期のあとでは感染者が減少するだろう」と。
→ 東京都の感染急増: Open ブログ
→ 東京都の感染急増 3: Open ブログ
その意味では、「私の予想通り」と言ってもいいのだが、ドンピシャリというわけではなかった。ちょっと予想とは違ったところもある。
(i)「4月3日の 10〜14日後の4月13〜17日をピークとして、その後に減少に転じるだろう」と私は予想したのだが、実際には、減少の時期はそれよりも早まった。11日をピークとして、12日から減少したのである。(これは、潜伏期が私の想定よりも短かったことが理由であるのかもしれない。報道では潜伏期は早ければ5日間になることもあるそうだ。)
(ii)「二次感染があまりにも急激に拡大したので、もはや手遅れだ」(その意味で予想ははずれた)と後日に判断したのだが、実は、手遅れではなかったようだ。(つまり、「予想がはずれた」という判断が誤っていた。当初の予想は はずれなかった。)
「手遅れだ」と判断したときには、感染の急増があまりにもひどいので、「もはや容易には減少しない」「二次感染が勝手に暴走している」と思ったのだが、そうではないようだ。
4月3日から、帰国者の全員が PCR 検査されるようになったのにともなって、感染者は漏れなく隔離されるようになった。これまでのように市中に野放しになることはなくなった。ようやく他国並みの入国規制がなされるようになった。この効果が非常に大きく働いたようだ。
要するに、「東京都(など)の感染の急増は、海外からの流入が主因であったから、この穴をふさぐことで、感染者の急増は防げるようになった」ということだ。
一方、政府や専門家会議は、「感染者が急増したのは、感染倍率が急激に上昇して、二次感染が急増しているからだ。だから、感染急増を阻止するには、人と人との接触を減らすしかない」と述べたが、それは正しくないのだ。そのことが、「すでに大幅に減少傾向にある」というグラフから判明する。
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ついでに、今後の予想も考えよう。
仮に政府の見解が正しいとすれば、今後はこうなるはずだ。(東京都で)
「 12日から15日までの減少は、ただの一時的な変動にすぎない。16日以後は、また元のように増加するだろう。元の急増の伸びに戻って、11日ごろの 200という数値を大幅に上回り、250、300、350 というような数に達するだろう。その後、4月7日の緊急事態宣言から2週間後の4月21日ごろから減少に転じるだろう。その後はどんどん減少していくだろう」
一方、私の予想では、こうなる。
「海外からの流入が止まったのにあわせて、12日以後ははっきりとした減少の効果が続く。この減少の効果は(おおざっぱに)1週間ぐらいは続くだろう。その後は、なだらかな減少が続く。東京都では、1日に 50人以下の水準が続くようになるだろう。5月7日に、緊急事態宣言の再延長はなされないだろう(解除されるだろう)」
では、5月7日に緊急事態宣言が解除されたら、どうなるか?
仮に政府の見解が正しいとすれば、今後はこうなるはずだ。
「外出の抑制の効果が大きかったのだから、外出の抑制が解除されれば、感染者は急増するだろう。ふたたび、大幅な急増が起こって、短期間で緊急事態宣言の再発が必要となるだろう」
一方、私の予想では、こうなる。
「外出の抑制の効果は小さかったのだから、外出の抑制が解除されても、感染者はほとんど増えないだろう。むしろ、マスクの着用率が以前よりも高まったので、マスクの効果で、感染者はなだらかに減少するかもしれない。増えるか増えないかは微妙なところだが、どっちにしろ、なだらかな増加または減少となるだろう。つまり、急増することはないだろう。だから、緊急事態宣言の再発は必要とならないだろう」
《 加筆 》
今後の減少については、いくらか先を読める。東京都の検査実施数を見ると、陽性者の判明に3日ぐらい先行している。そのデータを見ると、8日ごろにピークがあって、9日以後は一貫して急減している。
→ 都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
このグラフから予想すると、感染者数は 16日以後も一貫して急減しそうだ。
※ また、減少の開始日は9日であることから、「外出自粛のおかげ」という説は明白に否定されることになる。(外出自粛は7日からで、潜伏期を考えると、9日に効果が出るはずがない。)
[ 補足 ]
感染倍率も考えよう。
3月中旬以前の感染倍率は 0.95 ぐらいだった。(これはマスクの着用率が7〜8割のとき。)
その後、海外からの流入者が出たときには、感染者が増えた。すると、見かけ上の感染倍率が上昇した。1.7 ぐらいだ。これは、二次感染が起こったと見なしての数値だが、実際には、海外からの流入が多かっただけだとすれば、真の感染倍率は 0.95 ぐらいのままだったことになる。(実際には一次感染が増えただけだったのに、二次感染が増えたと勘違いして計算したので、見かけ上の数値が高まっていた。)
今後、感染者数の増加がどんどん減って、感染倍率がどんどん滴下していけば、「外出自粛の意味などはもともとなかったのだ」と判明するだろう。
つまり、政府や専門家会議が「外出を減らせ」と大騒ぎしているのは、ただの無意味な空騒ぎにすぎなかった、と判明するわけだ。
※ ただし、数字を見ても、正しく判断するだけの能力はないかもしれない。だとしたら、いつまでたっても、「外出を減らせ」「家に留まれ」と言い張り続けることになる。そのせいで、経済的には破滅となり、あちこちの飲食店やサービス業などが倒産のハメに至りそうだ。……政府の愚かさのせいで。
[ 付記1 ]
過剰な狂気的な妄想の例。
新型コロナウイルスの流行対策を何もしないと、国内での重篤患者数が約85万人に上るとの試算を、厚生労働省クラスター対策班の西浦博・北海道大教授が15日、公表した。また、重篤患者のうちほぼ半数の40万人以上が死亡すると予測している。
( → 「対策何もしないと重篤患者85万人」北大教授試算 「対策で流行止められる」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース )
[ 付記2 ]
ついでだが、自宅に留まっても感染した、という例もある。
→ 外出禁止が続く米国に衝撃 自宅に3週間こもり続けた女性が新型コロナに感染
どうして? と疑問に思いそうだが、理由も書いてある。
「玄関に食料品を届けたボランティアの女性と会った」
このボランティアの女性がマスクをしていなかったとしたら、飛沫をまきちらして、自宅にいた女性の服に飛沫が付着することになる。こうなれば、あとは接触感染が起こるのは当然だ。
この女性は「接触感染」に考えが及ばなかったわけだが、馬鹿にすることはできない。なぜなら、同様のことは、日本の政府や東京都や専門家会議にも当てはまるからだ。
特に、「屋形船で対面する食事をしてもOK」「飲食店で対面して会話しながら食事をしてもOK」という基準を出しているのだから、日本の政府や東京都や専門家会議は頭がおかしいとしか思えない。
のみならず、「マスクを推奨する」という方針を出していない東京都と専門家会議は、なおさらひどい。「布マスクは必要だ」と述べた安倍首相の方が、はるかにマシである。
布マスクでさんざん馬鹿にされている安倍首相の方が、専門家会議よりもずっとマシなのだから、専門家会議のひどさがわかるというものだ。
→ 専門家会議の失敗の理由: Open ブログ
【 関連項目 】
→ 東京都の感染急増: Open ブログ
→ 東京都の感染急増 2: Open ブログ
→ 東京都の感染急増 3: Open ブログ
という人々の行動の(つまり意識の)変化の原因を考えたとき、個人的には首相よりも志村けん氏の方が理由としてしっくり来ます。
それまではどこか他人事のように感じられたのだが、急に現実感を伴って襲いかかってきた感じがあった。
※ 私自身は行動を変えたわけではないので、あまり意識しなかった。実は私は、この半年間ぐらい、ずっとマスクを続けている。晩秋になると、「顔が冷たくなるので防寒のため」を主目的に、外出時はマスクをしている。
3/30の都知事会見では、それまで掛け声ばかりだったのが厚労省クラスター班から感染者数の予測という具体的な数値の提示もあったので、その影響かと感じてました。
そこで4/1にアベノマスク発表があって全員ズッコケたと。
今後の予想についての話。
欧州の感染倍率2.5を当てはめた数値らしいですよ
マスクの重要性を入れてないんですね
陽性数については、東京の場合、保健所(検査施設)がボトルネックになっているということがわかっています。少なくとも医師が検査が必要だと判断した人については全て迅速に検査できる体制が早急に必要だと思われます。
まあ、上記の推測が誤っており、医師が検査が必要だと判断した人数が実際に減少していればよいのですが・・。
たしかにそうですが、この件数は、3月後半以後の感染者急増の時期にも、急増が見られないんですよね。
つまり、感染者数との相関関係がない。感染者数とは関係なく、一貫して増加傾向にあると見なせます。「不安を感じている人の数」みたいな感じです。
> 保健所(検査施設)がボトルネックになっている
検査実施数の最大値は 1000件ぐらいですが、現在はその5分の1以下になっているので、処理能力がボトルネックになっているということはないでしょう。むしろ、検査が少なくて、暇になっていると思えます。
前日よりは増えているが、ピーク時よりはずっと低いので、おおむね減少傾向の経路をたどっていると言える。
「放置すれば感染が急増する」という専門家会議の認識とは正反対のコースを取りつつある。
16日分を含むグラフは
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58128430W0A410C2CC1000/
→ https://covid19-fukui.bosai-signal.jp
検査数も、今週は激減している。(日数不足の点を考慮して補正しても、激減している。)
福井県を見る限り、東京以上に大幅な減少傾向にあると見なしていいだろう。
※ 福井県は、人口当たりの感染者数が、東京に次いで、全国2位。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/20200414/3050004475.html
その一方で、検査数は激減している。15日は 320人であるにすぎない。なのに、16日、17日と、200人前後の感染者が出ている。
これではつじつまが合わない。
これを合理的に説明する説はただ一つ。
「民間の検査が急に大幅に増えた」
これを裏付ける情報をググったら、すぐに見つかった。(実は調べる前から知っていたが、確認のため。)
港区と新宿では、数日前に、検査の民間委託を始めたのだ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200414/k10012385511000.html
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041602000143.html
というわけで、感染者数が増えたのは、「実際に感染者が急増したからではなくて、検査量が増えたのにともなって、発見される人が増えた」というだけのことだ。
検査量が増えて、未調査の人が減ったのは、歓迎するべきことだ。統計上は、感染者数が増えているが、悲観するべきだというよりは、むしろ(検査の)状況が改善しているとみるべきだろう。
総合的には、実質的な感染者数は減少傾向にあると見なしてもいいと思う。
来週になれば、事態については、いっそうよく判明するだろう。
→ https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-symposium
だったら、4月中旬の減少傾向を説明できない。
本項では、「4月中旬の減少傾向は、4月3日に入国規制が強化されたから」と説明している。これは以前の予想通り。