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(1) 出勤者7割減
首相は新たに「出勤者7割減を」という要請を出した。朝日新聞では1面トップだ。
安倍晋三首相は11日、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、緊急事態宣言が出ている7都府県のすべての企業に対し、職場への出勤者を最低7割減らす要請を出すよう閣僚らに指示した。
「オフィス」での仕事は原則在宅で行えるようにし、「どうしても出勤が必要な場合でも出勤者を最低7割は減らす」ことを求めた。中小・小規模事業者を含むすべての企業に対し、関係省庁から要請を徹底するよう指示した。
( → オフィス出勤者の7割減、首相要請 宣言の7都府県対象:朝日新聞 )
「在宅勤務しろ」と、口先では何とでも言えるが、現実には実行不可能だ。
・ 政府職員は、ほとんどが出勤している。
・ 首相自身が記者会見をオンラインで実施していない。
・ 専門家会議も、オンライン会議をしていない。
いくら「やれ」と言っても、現実には、やる人はほとんどいない、ということだ。「隗より始めよ」とも言うが、首相自身ができていないのだ。
( ※ 特に、記者会見では、オンラインでなく対面形式でやっただけでなく、その場ではマスクをしないまま、せきをしたので、批判された。 → 該当記事 )
( ※ 安倍首相は、首相官邸に隣接する首相公邸に住めば、在宅勤務ができる。なのに、そうしないで、私邸に住んでいる。首相自身が、在宅勤務を拒んでいる。)
在宅勤務が実行不可能であることは、現実の数字を見てもわかる。
会社単位で調べると、「一部でもやっていればイエスになる」ということになるが、それでも、中小企業での実施は26%だけだそうだ。
→ テレワーク 中小企業での実施は26%にとどまる 東京都内 | NHKニュース
では、人数ベースで調査すると、どうなるか?
すでにテレワークを推進中だが、ネットに強い人( LINE の使用者)に限ってアンケートしても、在宅勤務はたったの 5.6 %でしかない。(4月1日)
→ コラム:テレワーク実施率5.6%の衝撃、政府の強い関与不可欠 - ロイター
別の調査では、在宅勤務は 12.6%だった。
→ 東京新聞:在宅勤務は12% 環境整備できず
いずれにせよ、ネット上の調査だ。ここでは、ネットに弱い高齢者は除かれている。こういう高齢者を含めて調査したら、数値はもっと下がりそうだ。
さらに言えば、対象はオフィスの労働者だけだ。飲食業や店舗販売や営業職や、各種の現場職人や、工場労働者にとっては、最初から在宅勤務なんて不可能だ。政府も求めていない。
にもかかわらず、「人と人との接触を8割減らす」なんて、現実には無理に決まっている。
※ どうしてもやるなら、欧米のように、強権的に都市封鎖を発動するしかない。しかしそんなことをしたら、非常に悲惨なことになる。「文明の崩壊」というありさまだ。イギリスの例がある。
→ 日本はまだコロナを侮っている、欧州では完全に戦争 キリスト教的価値観まで破壊したコロナの猛威
(2) 日本の対策
欧米では強固な都市封鎖を実施している。これほどのことをやるのは、死者数が日本の 200倍もあるからだ。それを止めるために、手痛い代償を払う。
しかるに、日本はそんなに多数の死者を出していないのだから、文明を崩壊させるようなこと(手痛い代償)は不要だ。
ではなぜ、日本では少数の死者で済んでいるか? 理由は二つだ。
・ マスクのおかげで、感染者自体が大幅に少ない。
・ アビガンのおかげで、重症化しないで済む。
このどちらも大切だが、何よりも、「マスクをしていること」が大きい。
この点は、前から指摘されていたが、特に前項で、その理由がわかった。
「マスクをしていない人(全体の1割)が、スーパースプレッダーとなって、感染を拡大させる」
ということだ。
このことから、対策もわかる。
「まだ1割も残っている、マスクをしない人に対して、マスクをさせること」
である。つまり、「マスクの義務化」だ。これによって、1割のスーパースプレッダーを抑止することで、感染倍率を引き下げることができる。
( ※ すでに欧米の 2.5 という値よりも低い 1.7 ぐらいになっているが、マスクの義務化によって、1.0 以下にすることをめざす。)
(3) マスク着用率
マスク着用者の割合は、どのくらいだろうか? 私の観測範囲で、体験的に報告しよう。
3カ月中には、おおむね7〜8割だった。
3月末になると、8〜9割ぐらいになった。ただし、3月30日の時点でも、まだまだ気分は緩かったようだ。
3月31日になると、状況が一転した。安倍首相が布マスクの配給を宣言すると同時に、自分自身が布マスクを付けて記者会見をするようになった。と同時に、政府職員も、専門家会議も、誰もがそろってマスクをするようになった。(少なくともテレビに映るような公の場に現れるときにはそうだ。)
さらに、4月7日には緊急事態宣言が出され、あちこちで緊迫感が一気に高まった。
こうして、4月1日〜8日ごろの期間に、マスクの着用率が大幅にアップした。
4月9日以降では、おおむね通行人の 95% ぐらいがマスクをしている。至るところでマスクだらけだ。マスクの義務化までは、あと一歩というレベルまで高まっている。
※ それでも、残りの5%のうちの半分が、スーパースプレッダーになりそうだ。
※ 他の半分は、感染倍率が1ぐらいのマイルドスプレッダーだ。
※ 以前は、8割がマスクありで、2割がマスクなしだ。2割のうち、半分にあたる1割がスーパースプレッダー、もう半分の1割がマイルドスプレッダー。
(4) その効果は?
マスク着用率が上がれば、感染倍率や感染者数は下がりそうだ。では、いつから?
マスクの普及アップは3月31日から4月8日ごろにかけてだ。となると、影響が出るのは(潜伏期を経たあとの)4月11日ごろから始まり、4月25日ごろまでだろう。この期間に、感染者の増加が鈍化しそうだ。そう予想しておこう。
ちなみに、データが公開されている福井県のグラフを見ると、7日ごろから感染者数が減少傾向にある。

出典:福井県内の最新感染動向
緊急事態宣言は4月7日からだし、そもそも福井県は対象にはなっていない。それでも、緊急事態宣言の効果が出る日よりも 10日ほども早く、感染者数が減少傾向にある。これは、それ以前からの「マスクの着用率のアップ」が影響したと推定できそうだ。
あるいは、「海外からの流入」が減少したせいかもしれないが。
(5) 手袋も
マスクだけで済むかというと、そうも行かないだろう。なぜなら、きちんとマスクをしている医療従事者が大量に感染する、という事例が続出しているからだ。院内感染だ。特に、下記。
東京都内で12日、新型コロナウイルスの感染者が新たに166人確認されたことが、関係者への取材で分かった。そのうち約90人は中野区の中野江古田病院から発生しており、……
( → 東京・中野の病院で約90人感染 都内、新たに166人:朝日新聞 )
マスクをしているのに、どうして感染したのか? マスクをしていれば、十分ではないのか?
それについての答えは、すでに示してある。こうだ。
「感染経路の 86% は、接触感染である」
この接触感染は、タブレットに触れるだけでも起こるから、マスクをするだけでは防げない。困った。
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では、どうすればいいか? 「手袋をすればいい」というのが、私のお勧めだ。
手袋というと、手術用のゴム手袋(使い捨て)が思い浮かぶだろうが、これは、問題がある。
・ 通気性が悪くて、長時間の使用に不向き。(かぶれる)
・ 水分を遮断するので、ウイルスは液滴に保たれ、死滅しにくい。
・ 表面に付いたウイルスが、長時間、生き続ける。
・ そのせいで、結局は、手袋を通じて接触感染が起こる。
この問題を回避するには、布手袋(フリース手袋)を使うといいだろう。
・ 通気性があるので、長時間の使用に耐える。
・ 水分を吸着するので、ウイルスはすぐに乾燥して死滅する。
・ ウイルスは布に吸着されやすい。(その後に死滅する。)
・ そのせいで、手袋を通じて接触感染が起こりにくい。
実証したわけではないので、断言はできないが、ゴム手袋よりは、フリース手袋の方が効果は高いと思う。これを、感染者の手に付けさせることで、手を通じた接触感染は起こりにくくなるだろう。
( ※ たとえば、感染者がドアノブに触れるときも、手やゴム手袋で触れるよりは、フリース手袋で触れる方が、接触感染を止める効果は大きいだろう。)
マスクの義務化(一般人向け)とともに、手袋の義務化(感染者向け・一般人向け)も実施すると、効果が上がるだろう。
※ 「手袋を付けろ」というと、「自分が感染しないため」と思う人が多いだろうが、そうではない。院内感染を防ぐためには、医者よりも感染者が手袋をするべきなのだ。ここには発想の逆転がある。(マスクの効果と同様だ。)
《 加筆 》
名古屋で 70人のクラスターが発生した。デイサービスの利用者の集団発生だ。
→ 「同居3人が肺炎…変だ」 病院の機転でクラスター発覚 :朝日新聞
これも「院内感染」に似ている。集団で会食をしたからというよりは、接触感染が起こったのだろう。
これへの対策も同様だ。「手袋をさせること」が対策となる。施設の利用者に、マスクをさせるだけでなく、手袋をさせるべきなのだ。……そうしない限り、今後もクラスターの発生は不可避だろう。
なお、当局は「デイサービス施設の閉鎖」を要請したが、これはまずい。利用者がデイサービスを使えないと、風呂に入れないとか、歩行運動をしなくなるとか、問題が生じる。実際、すでにデイサービスを利用しなくなった高齢者が、(引きこもりの運動不足のせいで)筋力が衰えて、室内で転倒して、大怪我をした、という事例が発生した。(テレビ報道による。)
やみくもに閉鎖ばかりをしていると、かえって死者は増えかねない。「マスクと手袋」こそが最善の施策なのだ。
ただし、それを理解するには、「接触感染こそが危険だ」という意識を広めねばならない。マスクの重要性さえも理解できない専門家会議には、とても無理なことだが。
【 追記 】
前項の冒頭で次のように述べた。
8割は他人に感染させない。
1割は1人ぐらいに感染させるだけだ。
1割は多数に感染させる。(クラスターを発生させる)
感染させる人には、1割と1割で、二種類ある。これはどういうことか?
私は次のように推定する。
・ どちらも「マスクをしない人」である。(全体の2割)
・ そのうち、「動かない人」と「動く人」が半々。
・ 「動かない人」は、専業主婦や高齢者など。(1割)
・ 「動く人」は、会社に勤務する人や学生など。(1割)
・ 前者はあまり感染させないが、後者は広く感染させる。
こう推定したが、このことは、次の記事で裏付けられる。
→ 緊急事態宣言下で今、検討すべきこと|宮田裕章|note
一部抜粋すると、こうだ。
それぞれの職業ごとの発熱割合を追ってみると、グループ間で大きな違いが見られます。まず大事なのはグループ5の3密や社会的距離を取ることができるグループです。
家にいることができる人たちは、地域全体の発熱リスクが上がっていっても、横ばいのまま。つまり、特に緊急事態宣言下にあるような状況では、「不要不急の外出を避けること」、「家にいること」が、感染リスクを下げ、社会を守ることに重要であることがデータからも示されました。
一方で、他の職種と比べて人と接触する頻度が高いグループ1「長時間の接客を伴う対人サービス業や、外回りの営業職」は高い割合でリスクが上昇しています。
これは「自分が感染しないリスク」を計量したものだが、同時に、「他人に感染させるリスク」にもなっている。行動の量が、(自分が)「感染するリスク」と(他人に)「感染させるリスク」をともに高めていることがわかる。
そして、ここから得られる結論は、単に「動き回らないこと」(自宅滞在すること)だけでなく、「やむなく動き回る人は必ずマスクをすること」なのだ。……こういうことがデータ分析からわかる。
「動き回ることが感染を増やす」という事実を認識したあとでも、そのあとの判断が異なる。単に「動くことをやめよ。社会活動を停止せよ」と意見もあれば、「動く人には必ずマスクを義務づけよ」という意見もある。そのどちらを取るかによって、以後の進み方はまったく異なるのだ。
※ 本項の (3) では、「2割がマスクなしだ。2割のうち、半分にあたる1割がスーパースプレッダー、もう半分の1割がマイルドスプレッダー」と述べた。この内訳を、上の話で説明したことになる。
[ 付記 ]
ついでだが、都道府県別の感染者数のグラフもある。(前項のコメント欄で教えてもらった。)
(4/12朝の更新)感染者数が100人を超えた都道府県の片対数グラフ.岐阜,石川,茨城が新たに100人超え
— ryugo hayano (@hayano) April 11, 2020
緊急事態宣言が出された7都府県に??
都道府県名の後ろに感染者が2倍になる日数(最近1週間のトレンド)を付記 - 数字が小さいほど危ない
(https://t.co/0sNBn0LVz6 よりデータ取得) pic.twitter.com/o4mtJxNGAI
名古屋で 70人のクラスターが発生した……という話。
(一部抜粋)水分を吸着するので、ウイルスはすぐに乾燥して死滅する。
> マスクの義務化(一般人向け)とともに、手袋の義務化(感染者向け・一般人向け)も実施すると、効果が上がるだろう。
> ※「手袋を付けろ」というと、「自分が感染しないため」と思う人が多いだろうが、そうではない。院内感染を防ぐためには、医者よりも感染者が手袋をするべきなのだ。ここには発想の逆転がある。(マスクの効果と同様だ。)
⇒ 全く同意です。少し長く使うなら布手袋ですが、使い捨てなら紙(不織布)手袋というのはどうでしょう(吸湿力が高いので表面がより早く乾く)? 調べたら、日本のECサイトでは見つけられなかったのですが、中国のアリババではありました(↓)。
https://japanese.alibaba.com/product-detail/disposable-medical-gloves-hygienic-washing-gloves-disposable-non-woven-glove-62063841783.html?spm=a2700.8699010.normalList.49.46c35f7a7odwEY
コロナ以降に出てきたものかはわかりません。これはミトンタイプですが、通常の5本指タイプに作り直せば汎用性が上がると思います。スーパーとかで品出しをしてる人など、装着してほしい人はたくさんいます。これからは、意外な紙製品がたくさん出てくる気がします。
主旨にはもちろん賛同ですが、細かいところで一点。
・ 「動かない人」は、専業主婦や高齢者など。(1割)
・ 「動く人」は、会社に勤務する人や学生など。(1割)
とありますが、国内・海外ともに、入居高齢者(動かない)を介した福祉施設クラスターや、入院患者(動かない)を介した病院クラスターも起こっています。また、全国を移動しても人との接触機会が殆どない長距離ドライバーのような職種もあります。よって、
・「人と会わない人」(1割)
・「人と会う人」(1割)
とするのが適当では?(どちらが分かりやすいか、だけの話ですが)
また、不特定多数の人に対応する医者・介護士・警察官・営業職などは衛生管理が割と徹底していると思いますが、その周辺の人たち(内勤職員など)が緩い気がします。だからクラスターが起こるのかな、と。
こういう「人と会う」職場では、中には接触の機会が少ない人がいても、全員にマスク・手袋を徹底させて、全体の基本再生産数R0(感染倍率)を地道に下げていくことが肝要でしょうね(それしか今はできない)。
先日、ソフトバンクの孫さんが中国BYD社と連携してマスク3億枚を作らせるというニュース(↓)がありました。このうち1億枚は医療用N95規格なので、医療現場に行き渡った後は、さっきの職場の人たちにもN95を配布して活用すべきだと思います。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57966690S0A410C2000000/
入居高齢者(動かない)は、感染させる人ではなく、感染させられる人だから、クラスターの感染者としてはカウントされません。
デイサービスの利用者だと、感染させる人にカウントされることもあります。
人と会うかどうかはあまり重要でないです。長距離運転手でも、マスクをしなければ、あちこちのサービスエリアで飛沫を撒き散らすことになるので、そこの食堂やトイレなどから接触感染が起こりそうです。
N95マスクは、車中泊をしていても息苦しくなって長時間使用に耐えない……と、かわっこだっこさんが体験記を記していたはず。印象的だったので、記憶に残りました。
手術中の医師ならば問題ないでしょうが、歩く人だと、呼吸があるので、N95マスクは使用は無理でしょう。病院の看護婦さんたちも、長時間使用は無理だと言っていました。たぶん、手術室の外では(動くので)無理だ、という意味。
まあ、本稿の趣旨に関わるところは、管理人さんが述べられているとおりで変わりません。
https://article.auone.jp/detail/1/2/2/2_2_r_20200410_1586502902570916
「東レ、マスク材料増産へ」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041300629&g=eco
少なくともマスクの材料については増産されるようだ。ただし、問題は生産設備なのだが。
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「マスク不足はなぜ起き、どうやって解消すべきなのか」
https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/04/post-61.php
マスクの生産の増大が大切だ、と述べているところはよい。だが、そのための方策として、政府の補助金と介入と市場原理で解決できると言っているのが、甘すぎる。長期的には市場原理は成立するが、短期的な急増は市場原理では不可能だ。なぜなら「マスクを生産したい」と思っても、「生産するための製造装置が売られていない」という問題があるからだ。本項で述べた通り。
ここに気づかないようでは、どうしようもないね。真実をまったく見抜けていない。