2020年04月09日

◆ ロックダウンの効果

 ロックダウンの効果は、最近になって、ようやく出てきたようだ。(ニューヨークで)

 ──

 (1) 遅ればせの効果

 都市封鎖(ロックダウン)の効果はない……と先に述べた。
  → 緊急事態宣言は無効: Open ブログ

 だが、これは早計だったようだ。ロックダウンをしても、すぐには効果は出ないのだが、潜伏期( 10〜14日)を経たあとでは、ようやく効果が出てきたようだ。遅ればせではあるが。

 次の報道がある。ニューヨークの状況。
  → ニューヨーク感染爆発にピークアウトの兆し 強力な「人出減らし作戦」が奏功か
  → Bleak Records in N.Y. and N.J., but Leaders See Coronavirus Curve Flattening

 いずれの記事でも、感染者数の伸びが鈍化していると述べている。
 1番目の記事には動画があり、そこからグラフを抜粋すると、こうだ。


ny-corona.jpg


 急激な伸びが鈍化しているだけでなく、すでに増加から減少に転じている。
 ニューヨークでは、都市封鎖をしたのが3月22日で、12日後が4月3日だから、ちょうど潜伏期の過ぎたころから減少に転じたと言える。
 したがって、「都市封鎖は、すぐには効果は出ないが、潜伏期を過ぎたころから、効果が現れる」と言ってよさそうだ。

 ※ 「都市封鎖には効果がない」と述べた前言は撤回した方がよさそうだ。


 (2) マスクの効果

 ただし、ニューヨークの感染者数の減少が、ロックダウンだけでできたかというと、疑わしい。ちょうどこのころ、「マスクをすべきだ」という論調が上がったからだ。
 先にも述べたように、WHO は3月26日には、マスクの着用を推奨するようになった。
  → マスクの話題 1 (コロナ): Open ブログ

 このころから、マスク着用の意識は広がりつつあった。
 ニューヨーク市内では以前はあまり見かけなかったマスクやゴム手袋をしている人が増え
( → 増えるマスク、ゴム手袋着用者 「最も静かなNY」―米:時事 3月23日 )


 それ以前の3月20日の段階では、マスクは普及していなかった。
  → マスクをしない米国人と“くしゃみは口を覆って”の車内放送

 つまり、ニューヨークでマスクが普及し始めた時期と、都市封鎖をした時期は、どちらも3月22日ごろだ。となると、どちらの効果が出たのかは、にわかには断定できない。
 はっきりしているのは、「マスクと都市封鎖を組み合わせた場合には、感染拡大を抑止する効果が出る」ということだ。どちらの効果が大きいかまでは、はっきりとしない。

 ※ ニューヨークの場合、当初はマスクをしている人の割合は多くなかっただろうが、マスクをしている人の割合がどんどん急激に高まっていったはずだ。となれば、その急激な変化は、統計に表れても、おかしくない。

 なお、CDC が「マスクをすべし」と明示したのは4月3日だ。
  → 米国の新型コロナウイルス対策が、一転して「布マスクでも着用すべき」になった理由|WIRED.jp
 これは、時点が遅すぎるので、統計に効果を及ぼしたとは言えないだろう。この影響が出るとしたら、早くても1週間後だから、まだ影響は出ていないはずだ。
( ※ 影響が出たとしたら、CDC の方針ではなく、別のことが理由だろう。)


 (3) ロックダウンの種類

 ロックダウンといっても、実は、いろいろな種類がある。日本では「外出自粛の要請」というだけで、ロックダウンとは言えないほど軽いものだが、欧米でも特別に強力なわけではない。
 強力なタイプは、次の3条件を満たす。
  ・ 違反者は処罰される
  ・ ほぼ完璧な外出禁止
  ・ 他の地域とは遮断される

 この3条件を満たす形での都市封鎖があったのは、中国の武漢だけだ。
 一方、欧米では、「違反者は処罰される」ということぐらいはあるが、他の二点は満たされないことが多い。
 この件については、朝日新聞の調査記事がある。
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京などでも海外と同様、外出の自粛が呼びかけられている。小池百合子都知事は「ニューヨーク、ロンドン、パリなどで行われている都市封鎖、いわゆる『ロックダウン』とは異なる」と述べ、違いを強調しているが、これらの都市は当局が出入りを規制した中国・武漢と違って「封鎖」されていない。
 【各地の特徴的な制限措置】
 ・NY:外出時は他人と距離をとり、違反に罰金。レストランやバーは宅配か持ち帰りのみ
 ・英国:葬式以外の社交行事を禁止
 ・仏:政府が認めた目的以外の外出に罰則。国内移動も制限
( → 「ロックダウン」海外の暮らしは 米英仏「封鎖」なき街 :朝日新聞

 いずれも、武漢に比べると、大甘だ。「日本の緊急事態宣言は甘すぎる」と批判する欧米のマスコミがあるが、欧米だって武漢に比べれば相当に甘いのだ。


 (4) ロックダウンの効果

 では、欧米のような甘いロックダウンは、効果があるだろうか?
 「ない」というのが、これまでの私の判断だったが、これは認識が狂っていたようだ。人の動きがいくらかでも減少すれば、それにともなって、感染の機会も減る。だから、感染の発生もいくらかは減るだろう。「効果がまったくない」ということは、なさそうだ。

 とはいえ、「外出を減らして、人と人との接触を減らせば、感染を大幅に抑止できる」ということは、あまり成立しそうにない。なぜなら、前項で示したように、感染は接触感染を通じて起こるからだ。ここでは、「人と人との接触」は必要なく、「人と人との間接的な接触」、つまり、「人と物との接触」があるだけで、感染は起こるからだ。
 というより、たいていの感染は、「人と物との接触」から起こるのである。このことは、次の報道からもわかる。
 《 手すり・ドアノブ消毒は徹底したのに…大分の院内感染、盲点になった感染経路 》
 対策班は原因の一つに、医師や看護師が使うタブレット端末などを介して感染が広がる「接触感染」を挙げた。
( → (読売新聞)

 他人の触れたタブレットに触れるだけで、感染は起こるのだ。とすれば、人と人とがいくら距離を遠ざけても意味はない。人がいなくなったあとで、物に触れるだけで感染は起こるからだ。
 とすれば、家に閉じこもっているのではなく、少しでも外出すれば、外出した先で物に触れることで、感染は起こりがちだ。
 この意味で、「完全な外出禁止」であるならともかく、買物などを認めるような「甘いロックダウン」なら、接触感染は容易に起こるし、ロックダウンの効果が著しく減じてしまうだろう。このことは、先に「ロックダウンの効果はない」というふうに述べた話と同様だ。


 (5) 正しい対策は? 

 では、どうすればいいか? それも、先に述べたとおりだ。全員がマスクをすればいい。そうすれば、感染者が飛沫を飛ばさないから、接触感染そのものが起こりにくくなる。感染される側があれやこれやと努力しても効果はないが、感染させる側がマスクをすれば、接触感染の危険性は大幅に減じるのだ。
 だからこそ「マスクの義務化が重要だ」と言える。

 政府は「三つの密」とか、「人との距離を保つこと」とか、「外出の自粛」とか、そういう見当違いのことをするよりも、「マスクの義務化」を強力に推進するべきなのだ。現状では、マスクをしていない人が1〜2割ぐらい存在する。ここに含まれる感染者が、飛沫をまきちらして、接触感染を引き起こすのだ。彼らにマスクを義務化することこそ、感染拡大を阻止する最善の方法となる。


 (6) 緊急事態宣言の効果

 日本では、欧米よりもずっと弱い形での緊急事態宣言がなされた。繁華街の人通りは激減したし、商店や飲食店の客も激減したようだが、一般の会社や工場での活動は制限されていない。
 では、そのことで、感染は阻止できるだろうか? 

 感染の危険が高そうな繁華街の人通りが減ったことで、感染はかなり減りそうに見えるが、繁華街の感染は、もともと少ないだろう。なぜなら、接触感染は起こらないからだ。政府は「人混みにおける感染」を懸念しているようだが、(通気のいい)戸外での感染などは、もともとないはずだ。また、物をいちいち手で取っていじったりしない限りは、接触感染も もともと少ないだろう。対面して食事をしない限りは、食事を通じての感染ももともと少ないだろう。
 というわけで、もともと危険は少なかったので、(新たな措置としての)繁華街での外出制限の効果はろくになさそうだ。

 それでも、さまざまな面での外出制限の効果はあるだろうから、それなりに何らかの効果はありそうだ。感染の急増のペースは下がるかもしれない。……ただし、それが起こるのは潜伏期を過ぎたあとのことだから、4月20日ごろから後のことだろう。その日までは、ほとんど効果がないはずだ。
 また、4月20日の後でも、効果はやはり限定的だろう。

 はっきりとした効果を出すには、やはり、「マスクの義務化」が必要となる。これによって、あちこちで飛沫を撒き散らすことがなくなるので、接触感染の機会が減るからだ。
 減らすべきものは、人の外出ではなく、(人の口から出る)飛沫の放散なのである。
 減らすべきものを間違えているという点で、政府の方針はてんで見当違いであるというしかない。その意味で、緊急事態宣言の効果は(あるにしても)かなり限定的だろう。

 《 加筆 》
 岩田医師や立憲民主党などは、「緊急事態宣言を早く出せ」と言っていたが、たとえ早く出したとしても、効果は少なかっただろう。
 専門家会議の人々は、「人と人との接触を8割減らせば、感染は収束する」というふうにシミュレーションをしていたが、これも認識が甘すぎるだろう。
 いずれの方策を取っても、効果は限定的であるはずなのだ。なぜなら、感染は、「人と人との接触」を通じて起こるのではなく、「人と物との接触」を通じて起こるからだ。
 というか、接触感染は(直接的な)「接触」を通じて起こるのであって、比喩的な「接触」(実際には接触しないで「接近」するだけ)では起こらないのだ。……ここを混同しているという点で、日本全体が狂っていると言えそうだ。

 ※ 「接触」と「接近」との違いは、前項で述べた。
    → 接触感染とマスク: Open ブログ



 [ 付記 ]
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  → 新型コロナウイルス感染拡大への対応で記事を原則無料で公開いたします:朝日新聞デジタル

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posted by 管理人 at 23:10| Comment(7) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マンハッタンの平均所得は850万
ブルックリンの平均所得は350万
国民皆保険でないアメリカの現状では
低所得者はおちおち医者にかかれない
仕事に出かけなければいけないブルックリンの地下鉄は満員だそうだ
自覚症状があっても検査を避けている人がかなりいるらしい
(働かないと生きていけないから)
ニューヨークはまだまだ終わらない
Posted by 老人 at 2020年04月10日 03:52
スマホの動作がおかしくなったのでドコモショップに行きましたが、店員さんから「お客様のスマホを触れないので、指示しますから、操作はご自身でお願いします。」と言われました。結構徹底しているなと思ったのですが、お金は普通に手渡しなのでちょっと変な気もしました。
Posted by ホンロン at 2020年04月10日 08:13
4/9の新規感染者のリストを見ていたのですが、発症日が3月の人が結構多くて、中には3/19とかいう人(島根県初の感染者)もいます。(東京都はそもそも発症日のデータが一つも入っていない!)

発症日の分かっている人の内訳は、検査陽性となった4/9の1週前の4/2までの発症者が127人、4/3以降が100人で、ピークは4/1の30人で次が4/2の27人、次が4/3の24人となっています。
このあたりは、潜伏期間からして3月の3連休前後に感染したと考えられますが、4/4以降の発症者はかなり少ないんですよね。
日毎の発症者は以下です。

3/19 1
3/24 1
3/25 3
3/26 4
3/27 14
3/28 6
3/29 7
3/30 12
3/31 22
4/1 30
4/2 27
4/3 24
4/4 17
4/5 19
4/6 23
4/7 8
4/8 8
4/9 1

発症/受診から検査の待ち時間が影響している可能性もあり、断定的な事は言えませんが、発表されている感染者のグラフは少し前倒ししてみる必要がありそうです。

それにしても東京都はなぜ発症日を公表しないのか。
これがあれば、実際の感染状況の推測がかなりしやすくなるはずですが。

データの出所は下記ページの「発表された症例一覧」のcsvからです。
https://gis.jag-japan.com/covid19jp/
Posted by Ω at 2020年04月10日 11:06
結局ガウス関数は偶然その感染者増加の軌道を、同じくしている場合もあるものの、マスク着用や接触機会軽減等の対策によって軌道は変わってくるもの、何もしなければ当然増加する。という認識でよいという事ですよね。
Posted by gunts at 2020年04月10日 13:40
中国の自信の根拠はどこにあるのでしょうか?
何があるのでしょうでしょう?
武漢の封鎖を解き、移動の自由を認めたのは何故でしょう?

個人をトレースできるITツールがあるからでしょうか。
狡猾かつそれなりに賢明な中国共産党の頭脳は侮れません。

仮説として、
中国の死者数、患者数、検出感染者数は、発表の10倍。
潜在感染者数=無症状非検出感染者数は、検出感染者数の数10〜100倍あるとして、既に「集団免疫」に近い状態が達成されている。
と、そんな根拠があるのではないか。

武漢、イタリア、スペイン、フランス、アメリカの初期の死亡者数の多さは、新型コロナの病原性の高さではなく、医療現場の人・体制が目を覆うばかりの「パニック」に陥った結果、ではないか。

日本や東南アジアの仏教国、東欧やロシア、たぶんアフリカも、目を覆うばかりに短期間に死者を出した国々とは違った何か、医療機関の落ち着き・余裕やパニックに陥りがたい国民のメンタル、そして逆説的には医療の不備が幸いしている、とは考えられないか。
直ちに検証できませんが。

新型コロナの対感染者致死率は、インフルエンザと似たり寄ったりの0.1〜0.2の間であり、潜在感染者の裾野はかなり広範囲なのはないか。

新型コロナパンデミックは、世紀の「パニック」・世界的な集団ヒステリーだったということになりそうな気がしているのですが。
Posted by geturin at 2020年04月10日 14:37
> 中国の自信の根拠はどこにあるのでしょうか?

 中国と韓国は、一時は急増があったが、その後は(都市封鎖と)マスクによって、増加を止めました。
 台湾と日本は、最初からマスクをしていたので、最初から増加がありませんでした。

 これらの4国はいずれも、ある時期からマスクによって感染の急増を止めていました。(ベトナムやシンガポールもそうかも。)

 これらのうち、中国と台湾と韓国は入国規制を早期に実施したので、急増なし。
 日本とシンガポールは入国規制が遅れたので、途中から急増。

 この件は、「東京都の感染急増」というシリーズの 1,2,3 で述べた通り。(本日の 3 でも。)
Posted by 管理人 at 2020年04月10日 23:45
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura?utm_source=dynamic&utm_campaign=bfsharetwitter

西浦氏の 8割の根拠がやっと出てきたけど、彼、考え間違ってますね。感染者数への係数だったものを、途中から人口全体に掛けちゃってる。

全人口でならせば、わずかに行動を減らせば良いことになり、https://www.google.com/covid19/mobility/ ですでに数値に表われるくらい減れば流行は抑えられる、ということになります。彼自身の考え方に基づけば、ですけど。
Posted by 佐賀 at 2020年04月11日 18:40
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