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政府は「三つの密」の自粛を呼びかけているが、実は、「会食」こそが危険なのである。口から出した飛沫が食事の上に飛びかかることで、感染の危険が著しく高まるからだ。
本項では、このことを詳しく指摘する。
(1) 「接待を伴う飲食」の自粛
小池都知事が 30日午後8時半ごろから緊急の記者会見を開いて、「接待を伴う飲食」の自粛を呼びかけた。
30日夜、小池知事が緊急の記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、カラオケやライブハウスのほか、バーやナイトクラブといった接待を伴う飲食店などに行くことは当面自粛するよう呼びかけました。
会見では、都が確認した感染経路が分かっていない人のうち38人が、夜間から早朝にかけて営業するバーやナイトクラブなど接待を伴う飲食店の場での感染が疑われていることが明らかにされました。
38人の中には客だけでなく従業員もいて、年齢も20代から70代と幅広く、特に今月中旬以降、ほとんどの日で確認されています。
こうした場所について小池知事は、密閉した空間で人が密集するなど感染のリスクが高いと言われるいわゆる3つの条件が重なるとして懸念を示し、都は、
▽特に若者はカラオケやライブハウスに、
▽中高年はバーやナイトクラブなど接待を伴う飲食店に、
行くことは当面自粛するよう呼びかけています。
( → 接待伴う飲食店などで感染か 当面行かないよう都が呼びかけ | NHKニュース )
→ 「夜間の酒場 出入り控えて」小池都知事会見 冒頭発言全文
どうしてかというと、感染経路が不明な感染者のうち、「接待を伴う飲食」をしていた人が3割ぐらいにも上るからだそうだ。
→ 夜の街でクラスター発生か 経路不明者3割が感染疑い:時事ドットコム
→ 新型コロナ、約30%が「夜の街」で感染。都内で感染源が不明な患者 | ハフポスト

これによると、夜の店で接待を通じたことが原因だ……というふうに見える。何だか、イヤらしい感じですね。女性といちゃいちゃする「濃厚接触」をすることが原因だ、という感じだろうか。
※ 男同士の接待も含まれるかも。
(2) 接待でなく会食
だが、接待するかどうかが問題なのではない。単に「会食」することが問題なのだ。ここでは、
・ 対面形式での飲食
・ しゃべりながらの飲食
という二点が問題となる。
したがって、接待のない友人同士の飲食も同様だし、仲間内のコンパみたいな飲食も同様だし、結婚式・葬式・卒業懇親会などでの飲食も同様だ。これらは別に接待があるとは限らないが、接待がなくても同様に危険なのである。
問題なのは接待ではなく会食だ、と理解するべきだ。
また、それが危険である理由も、「食物に飛沫が飛び散ることが理由だ」と指摘するべきだ。
このことができていないという点で、東京都の方針は見当違いだと言える。何が問題なのかもわかっていないありさまだ。
※ 「接待」が危険なのではなく、「飲食」が危険なのだから、「接待を伴わない飲食」もまた危険だ、と示すべきだ。ただし「自分一人の飲食」ならば問題はない。(会話がないし、「会食」ではないので。)
(3) 三つの密よりも……
会食が危険だということについては、当初に屋形船で感染があったときから、私は指摘していた。「密閉した空間」なんかよりも「会食」が感染原因だ、というふうに。
・ 屋形船は、乗るだけなら問題ないが、会話しながら食べることは不可。
( → 空気感染はあるのか?: Open ブログ 3月02日 )
スポーツジムや屋形船で危険が生じることの理由は、「換気が悪く、人が密集するような空間」にいることではなくて、スポーツジムでは「飛沫感染と接触感染」であり、屋形船では「会話しながらの食事」なのである。こちらが真犯人だ。この真犯人を見失って、別の犯人ばかりを追い求めても、事件は解決しないのである。そのあげく、真犯人が野放しになったせいで、被害者が続出することになる。
( → 飛沫感染と空気感染: Open ブログ 3月03日 )
屋形船では、食事こそが重要だ。会話しながら、飛沫が飛び散って、その飛沫が食事にかかるので、食事経由で感染する。ここでは、(会話しながらの)「食事」が要件なのだが、新指針には含まれていない。食事のかわりに、換気や密集などを重視している。見当違いと言うしかない。
( → 新型コロナウイルスの話題 11: Open ブログ 3月10日 )
政府は当初、「換気が悪く、人が密集するような空間」だけを感染経路に含めていた。「会話・会食」は含まれていなかった。
その後、3月9日になって、「会話」を含めるようになった。このとき、「三つの条件」というのが示されたが、このとき初めて、三つ目の条件として「会話」が含まれるようになった。
→ 「満員電車」も条件が揃えば、感染要因に。政府の専門家会議が初めて言及【新型コロナ】 | ハフポスト
この件は、発表の翌日に本サイトで言及している。
これまでは、「換気」「密集」だけに着目していたのに、今度は「会話・発声」を加えた。一歩前進ではあるが、まだまだ駄目だ。
( → 新型コロナウイルスの話題 11: Open ブログ )
この時点で、「会話」は含まれていたが、「会食」はまだ含まれていなかった。(いくらか含まれるようになったのは、30日の東京都の方針が初めてであるようだ。)
なお、この時点でははまだ「三つの条件」という言葉があるだけで、「三つの密」という言葉は使われていなかった。
「三つの密」という言葉が初めて使われるようになったのは、次のツイートのころらしい。
【注意喚起】#新型コロナウイルス に関するお知らせです。集団発生のリスクを下げるために3つの「密」を避けて外出しましょう。
— 首相官邸(災害・危機管理情報) (@Kantei_Saigai) March 17, 2020
@換気の悪い密閉空間
A多数が集まる密集場所
B間近で会話や発声をする密接場面
詳細はこちらをご覧ください▼https://t.co/GTXEBrZuFc pic.twitter.com/3d0Rkf9omi
Google のキャッシュによると、「 4:29 PM - 17 Mar 2020」という日付があるから、17日ごろから使われた言葉らしい。
ここで、問題点を指摘しよう。
「三つの密」という言葉は、ただのダジャレであって、不適切だ。密閉と密集という「二つの密」ならば、まだわかる。しかし、会話を「密接」という言葉を使って「密」で表現するのは、どう考えてもおかしい。ただのダジャレであるにすぎない。そのせいで、見当違いの理解をされている。
30日(?)ごろの朝日新聞の夕刊の漫画では、「三つの密」の三つ目を「密接」でなく「密着」と理解している話になっている。こういう見当違いの理解をされるのも、「密接」なんていう見当違いの言葉で表現するからだ。ダジャレを優先して、意味の通らない言葉を使うなんて、本末転倒すぎる。
どうせ言葉遊びをするなら、こう語るべきだった。
「二つの密と、二つの会。密閉・密集、会話・会食」
これならば、誤解の余地がなかった。結局、政府も、専門家会議も、東京都も、「三つの密」という言葉を使う時点で、ダジャレを優先して、言葉の伝達を無視してしまったのだ。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
なお、「専門家会議はダジャレなんか言わないだろ」と思うかもしれないが、言っている。
専門家会議・尾身茂副座長:「3つの密をできるだけ避けて頂きたい ......
( → “3密”徹底回避を求める コロナ専門家会議が苦言 2020/04/01 )
自分で言い出したのではないようだが、このダジャレが気に入っているらしくて、専門家会議もこのダジャレを使っている。
ここではもちろん「会食」は抜けている。せっかく二日前に都知事が「接待を伴う飲食」という言葉で「会食」の問題点を指摘しているのに、専門家会議はそれをすっぽりと抜き落としている。(無視された都知事が可哀想だ。)
(4) マスク
実は、マスクをすれば、上記の問題のいくつかは解消する。
・ マスクありの会話なら危険性は少ない。(マスクなしの会話は危険だが。)
・ マスクありの会食はできない。(マスクしながらの食事はできないので。)
というわけで、いちいち「会話・会食」を止めるよりは、単に「マスクしろ」というだけで片付くことが多い。
なお、マスクなしで会話する人がいたら、その人を退場させるといいだろう。あるいは、マスクなしで会話する人がいたら、他の人が(もしくは自分が)退出すればいい。「こんな危険なことをする奴と同席できるか」と席を蹴ればいいのだ。
学校の卒業式なども、「マスクを義務づけての参列」ならば、特に問題はないとも言える。
※ ただのセレモニーだから、やる意義も少ないが。
(5) 京都産業大
京都産業大で感染者が多数出た。感染者が卒業式に出席したと言うことで、この行為を批判する人も多いようだ。
だが、勘違いしてはいけない。感染者が出たのは、卒業式ではなく、そのあとの懇親会とカラオケだ。懇親会では会食があるし、カラオケでは飛沫を飛ばす発生がある。どちらも最も危険な行為だ。ここで多数の感染があった。
一方、卒業式の参加者には、感染者が出たわけではない。たぶん、多くがマスクをしていただろうし、また、空間も広かった。当の感染者もほとんど発声しなかったはずだ。ここでは特に問題はなかったのである。
両者を混同している人が多いようなので、混同しないように注意しよう。特に、危険なのは「会話・会食」だと留意しよう。
※ 専門家会議は「密接」だけを強調しているので、何のことか通じないだろうが。
(6) 他の例
ある研究機関では、食堂は対面が禁止されて、横に並んで座ってとる形になったそうだ。人づてに聞いた話だが、なるほど、と思わせる。
東大では、会議はオンライン・アプリの ZOOM を使うようになったそうだ。下記のもの。
→ https://zoom.us/jp-jp/meetings.html
ただし、ZOOM には次の問題が生じたそうだ。
→ ビデオ会議アプリ「ズーム」使用中にポルノ画像:AFPBB News
[ 余談 ]
本項は、3月30日の都知事会見のあと、31日の報道を受けて、書いたものです。
本当は 31日に書いて公開するはずだったんだけど、当日は疲れてくたびれてしまったので、書くことができず、かわりに書き溜めておいたストック記事をアップロードしました。
というわけで、本項は1日遅れの公開(4月1日)となりました。速報性が遅れて、ごめんね。
⇒ 3/25の小池都知事の会見を生で見ていましたが、小池さんは「密閉・密集・密話(みつわ)」と、専用のフィリップを示して強調・発語していました(下のリンク@)ので、少しマシですね。ただし、筆者ご指摘の「密閉・密集」と「会談・会食」のように、「場所」の条件と「人」の条件のように層別して分かりやすくまとめていませんので、合格点はあげられませんが。さらに、「ノー スリー 密(みっつ)」というのは、他と同じく明らかにダジャレでしょう。
当然ながら、政府(官邸・厚労省)や専門家会議は落第点です。これらの人たちには、リスクコミュニケーションの基礎(下のリンクAなど)からやり直してほしいものです。
@ https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032501386&g=soc
A https://resilient-medical.com/risk/communication-definition-example
※ (西浦教授の)動画の後半で呈示されていたグラフ。ググると、画像が見つかったので、拾っておいた。
…いやーギャグみたいですね。
それ、私も気になったので、首相動静を調べてみたら、3月に入ってからは、会食をしていないようです。……と思ったけど、調べ直したら、やっていた。
→ https://www.asahi.com/articles/DA3S14408072.html
あと、一定時間人と接するとか言ってますけれど、この「一定時間」どいうのはどの程度の時間なのかどこにも示されていません。とにかく具体性がないのです。
専門家会議の人たちは危機感を煽るけれど(危機的状況になりつつあるというのは本当なんでしょうけれど)どうしたらその危機を回避できるのかということに対し、まるで無策、無力です。これは、専門家会議のメンバーが感染症の専門家に偏っているためだど思います。
それを根拠に擁護する人が湧いてくるのもギャグみたいですけど…
知り合いのレストラン(都内・人気で予約が取りにくい)も、自粛を狙って(?)ここぞとばかりに予約がガンガン入ってくるそうです。
まだまだ世間は能天気ですね。
店の名前は出さないでって言われてるし
そんなあまちゃんで感染防げるのか
若い人は大丈夫なんて間違った情報が流れてるけど
さすがに0才児は、まだ免疫ないんだから
人工乳で育ててるお母さん気をつけてあげてね
毎日新聞より
『安倍首相、政治家と1カ月ぶりの夜の会食、二階氏、王貞治氏らと』
https://news.yahoo.co.jp/articles/55d8d66a0c56686a9fff0ff04711b2a31486147d