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(1) 東京で多くの感染
東京で多くの感染者が発生した。23日に 16人、24日に 24人。
東京都では23日、新たに16人が新型コロナウイルスに感染していたことが分かりました。このうち5人が海外からの帰国者でした。
新たに感染が確認されたのは30代から70代の男女16人です。このうち30代の男性がオランダなど3カ国、40代の男性がイタリア、別の40代の男性がカナダ、50代の女性がフィリピン、50代の男性がフランスから帰国した後に発症していました。都はこの5人について渡航先で感染したとみています。また、70代の男性2人が重症です。
( → 東京都で新たに16人感染確認 一日としては最多 )
24日、東京都で新たに17人が新型コロナウイルスに感染したことが分かりました。
関係者によりますと、このうち海外への渡航歴のある人が5人、濃厚接触者が5人、感染経路の分からない人が7人いるということです。23日に都内で感染が確認された人の数は16人で、それを上回りました。新たに確認された17人という数は、都内で一日で感染が確認された人数としては最多です。
( → 東京の感染者さらに増加…昨日の最多を上回る17人 )
報道を見る限り、急にすごく増えたように見える。だが、そうではない。
実は、東京都はもともと、(人口比で見ると)発見数が他県よりも大幅に少なかった。これは、まともに検査していなかったせいだ。
今回、数が急激に増えたのは、おそらく、まともに検査するようになっただけのことだろう。感染者が増えたというよりは、検査による発見数が多くなっただけだろう。(実際、他県並みになったというだけだ。)
《 加筆 》
この件については、次項で訂正を入れています。そちらを参照。
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では、全国レベルではどうか? 調べてみると、全国の感染者数はこうだ。
→ 新型コロナウイルス 国内感染の状況
これを見ると、全国の感染者数は、最近、特に増えてはいない。どちらかと言えば、なだらかに減少傾向にある。
なぜ減少傾向にあるかとい言えば、春による気温の上昇の効果のせいだろう。特に、3月4日以降では検査実施数が増えている( ≒ 発見者数は大幅に増えて当然である)ことを勘案すれば、真の感染者数は減少傾向にあると見ていいだろう。
(2) クラスターの発見?
上記記事では、興味深いのは、感染源がいろいろと多様であるらしいことだ。どこから感染したのかわからない人も含めて、あちこちで散発的に感染が起こっているらしい。
これは、「クラスターの発見に注力する」という、日本政府の方針ががまったく無効である証拠だと言えるだろう。クラスターの発見ばかりにこだわるというのは、専門家会議の方針だが、間違いであると判定できる。
むしろ、一次感染者を漏れなく発見するために、(軽症者を含めて)検査を広範にやるべきなのだ。
(3) ドイツの大量検査
ドイツでは、「感染者に高齢者が少ないので、検査対象に高齢者が含まれていないのだろう」と先に推定した。
しかし実は、そういうインチキな操作があったのではないらしい。事実は次のことであったらしい。
ドイツでは、軽症者を含めて、やたらと大量の検査を実施している。何と、週に 16万件 だ。(1日に3万件に近い。1日平均で 1000件程度である日本の 30倍ぐらいになりそうだ。)
これほど大量の検査をすると、若者も(検査対象に)大量に含まれるので、若者の感染者が大量に現れる。そのせいで、高齢者の感染者が少なめとなる。(高齢者は自宅にこもっているので、感染者が少なめだ。若者は行動範囲が広いので、感染者が多めだ。)
ここで、高齢者も大量に検査されるが、多くの高齢者は、軽症のうちに発見されるので、軽症のうちに治療を受ける。だから、ドイツの死亡数や致死率は極端に低い。
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以上のことから、次のように結論できる。
・ 大量の検査で、早期発見・早期治療が、効果的だ。
・ 少量の検査で、遅めの発見と治療をすると、致死率が高まる。
で、前者の方針を取っているのがドイツであり、後者の方針を取っているのが日本だ。
ドイツでは、ちょっと発熱したぐらいの段階で治療に入る。そのせいで、致死率が低い。
日本では、高熱が続いて肺炎が悪化してから治療に入る。そのせいで、致死率が高い。
どちらが正しいかは、自明だろう。
※ ただし、検査方法は不明だ。ドイツでは迅速検査キットを大量に使っているのかもしれない。日本でもそうするべきなのだが、いまだに PCR検査がほとんどなののかも。迅速検査キットの利用は少数逃げに呈されているのかも。……というのは、統計データに、変化が見られないからだ。
(4) PCR 検査をやめよ
ドイツでは検査の数が多いのに、日本では検査の数が圧倒的に少ない。ドイツ以外の他国に比べても、圧倒的に少ない。では、どうしてか?
釈明する人の理由によると、「保健所では働きずくめで、精勤している」ということなので、サボっているわけではないらしい。単に能力が足りないだけなのかもしれない。
しかし、そうだとしても、保険診療(≒ 民間の検査施設の利用)が可能になったあとでも、なおも検査数があまり伸びないというのは、不思議だ。
この現象を説明するには、次のように考えるといい。
「保健所の検査は無料だから、みんなが保健所を利用したがる。民間の検査施設や、迅速検査キットは、有料だから、みんなが利用したがらない」
だとすれば、次の対策を取るべきだろう。
・ 保健所の検査の無料化はやめる。(3割負担とする。)
・ 検査は、迅速検査キットをすでに使った患者のみとする。
(PCR検査は、確定診断にのみ用いる。)
・ 最初の検査は、迅速検査キットにする。(義務づけ)
これは事実上、「 PCR検査をやめる(減らす)」ということを意味する。今後はこの方針を取るべきだろう。
その上で、迅速検査キットを「週 16万件で実施」という体制にするべきだろう。
今のところは患者が少ないから、実際に「週 16万件で実施」にすることはないだろうが、冬になればそうなる必要性に迫られるのだから、今のうちに体制を整えておくべきだ。そうするかどうかが、大量の死者を避けられるかどうかの分け目だ。ドイツの事例がそれを教えている。
※ 人口を考えれば、「週 20万件で実施」が妥当だろう。
(5) 和歌山県の成功例?
初期の話だが、「和歌山県では、十分な検査をしたことで、封じ込めに成功した」という例があった。前に紹介したことがある。
→ 新型コロナウイルスの話題 11: Open ブログ
この話を、「和歌山県の成功例」という形で紹介している、米国の記事がある。
日本の和歌山県の新型コロナウイルス対策に、米紙「ワシントン・ポスト」が注目。政府の対応を待たず、知事の強力なリーダーシップの下で迅速な検査と感染ルートの追跡を徹底した結果、封じ込めに成功したと称えている。
それは、迅速な判断と行動によって新型ウイルスの流行を抑制し、感染の連鎖を断つことができるという教訓である。
( → 米紙が新型コロナ対策で「和歌山モデル」を絶賛 | 日本政府の指針に従わなかった勝利 | クーリエ・ジャポン )
なるほど、これは初期には成立した。「濃厚接触者の検出をすることで、クラスターの発生を抑止する」という方針だ。
しかし今では、海外からの一次感染者が急増しているので、この方針ではもはや不十分だ。
なのに日本政府は、この方針にこだわる。そのせいで、海外からの一次感染者の発生に、対処できなくなっている。(軽症者の検出には及び腰であるせいで。)
これはつまり、過去の成功体験にこだわるせいで失敗する、という構図だ。そろそろ、頭を切り換えないと、大規模感染を防げなくなるだろう。
なお、各国が「和歌山を真似よう」としても、無理だ。今のように各地で大量に感染者が発生しているときに、クラスターを追おうとしても、追える(追い切れる)わけがない。あまりにも多すぎるからだ。
問題の根源は、「発生した感染者をどう追うか」ではなくて、「感染者の発生がもともと生じないようにすること」なのである。そして、そのための方策は、マスクだ。
(6) 東京都で感染爆発?
東京都で感染者が増えたのを見て、「東京都でも感染爆発が起こるかもしれない」と懸念する人が多いようだ。
→ はてなブックマーク
だが、これは勘違いだ。感染者数が多数発生することと、感染爆発が起こることとは、関係ないからだ。
感染爆発が起こるかどうかは、感染者の発生数によるのではなく、感染率(感染倍率・増殖率)による。
感染率が高ければ、感染者の発生数が少なくても、感染爆発は起こる。(武漢がそうだ。)
感染率が低ければ、感染者の発生数が多くても、感染爆発は起こらない。(最近の韓国がそうだ。)
結局、感染率と、発生数とは、別の概念なのだ。両者を区別するべきだ。感染爆発を避けるには、感染率の低下があればいい。感染者の発生数は、感染爆発とは関係ないのだ。
※ 発生率(= 発生数÷人口)も、感染率とは関係ない。
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参考。
似た例として、原爆の連鎖反応がある。一つの原子から、二つの中性子が発生すると、2倍の増殖率となる。
・ 増殖率が高ければ、あっというまに爆発が起こる。
・ 増殖率が低ければ、収束する。
・ 増殖率が1ぐらいならば、安定した状態となる。これが原子炉の運転だ。
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このような倍率(感染率)を下げることが、感染爆発を避けるために必要なことだ。
一方、海外からの感染者の流入は、外部要因である。これは、入国規制しない限り、制御できない数だ。ある程度は、諦めるしかない。
そして、感染率を下げるには、マスクが大事なのだ。
【 関連項目 】
マスクの重要性については、前に何度も述べた。たとえば、
→ マスクで医療崩壊の阻止: Open ブログ
→ マスクで飛沫感染防止: Open ブログ
※ マスクについては、翌日分でも述べる。
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以後、番号の繰り下げ。
・ 増殖率が高ければ、あっというまに爆発が起こる。
・ 増殖率が低ければ、収束する。
・ 増殖率が1ぐらいならば、安定した状態となる。これが原子炉の運転だ。
> このような倍率(感染率)を下げることが、感染爆発を避けるために必要なことだ。
⇒ これは、感染症学でいうところの、基本再生産数(R0)、実効再生産数(Re)⇒「ひとりの感染者が死ぬか治癒するまでに、あらたに何人の人に感染させるか」の概念を例えておられるのでしょうか? 筆者が使用している「感染率」「発生率」「増殖率」という言葉が、他の人にはわかりにくいかもしれません。
・感染率:いま現在の、人口に対する感染者の存在率。市中感染率。
・発生率、増殖率:今後の感染の広がり方に関わる率。=(基本 or 実効)再生産数。
以下は、末尾のリンクの記事(池田信夫氏の記事ですが、参考までに我慢してここだけ読んでください)からの抜粋(※)です。
※ しかしこういう批判は誤解である。集団免疫はインフルエンザなどでも使われる考え方で、たとえば基本再生産数2の感染症では、集団の半分が予防接種で免疫をもてば、実効再生産数は1になり、感染の拡大は止まる。
ワクチンのない新型コロナでは、予防接種の代わりにゆるやかに感染を広げる。コロナウイルスの基本再生産数は、WHOの推定では1.4〜2.5だが、2とすると人口の半分が感染したとき感染の拡大は終わる。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59818?page=2
・感染率や増殖率は、(基本 or 実効)再生産数の例えと考えるのが正しそう。
> 結局、発生率と感染率は、別の概念なのだ。両者を区別するべきだ。感染爆発を避けるには、感染率の低下があればいい。感染者の発生数は、感染爆発とは関係ないのだ。
でもやはり、この「感染率」とは異なると主張されている「発生率」の概念がわかりません。すみません。
本項に限っては、解説付きなので、誤解の余地は少なそうです。
発生率は、全人口に対する新規発生患者の率のことを言っています。単純な割り算の比率。現状値。……増加率と対比した概念。
> 報道を見る限り、急にすごく増えたように見える。だが、そうではない。実は、東京都はもともと、(人口比で見ると)発見数が他県よりも大幅に少なかった。これは、まともに検査していなかったせいだ。
⇒ もともと検査していなかったのは、仰るとおりです。検査ペースが上がってきた2/15から最新の3/25まででみると、40日間でのべ3340件ですから平均で83.5件/日となり、人口1300万人都市にしてはむっちゃ少ないです。1/31には210件、2/27には191件検査しているので、キャパは200件以上あるようなのに、これです。
しかし、ここ2日間の大量発生を見ると、3/25報告ぶん41人は3/24の74人(86件)検査から、3/26報告ぶん47人は3/25の95人(108件)検査からなので、明らかに陽性発見率というか、感染者に的中する率が上がっているようです。もちろん、台東区の永寿総合病院のクラスター調査で濃厚接触者(容疑者)を調査したぶんが含まれていることもあるでしょう。一方で、感染経路不明者が、3/25は41人中10人、3/26は47人中23人なので、市中感染が広がっていることが危惧される状況だと思います。
※ 都内の最新感染動向のサイト
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
※ 実は、本当は昨日のうちに書くはずだった内容だったのだが、昨日はお休みしたので、公開が1日、遅れてしまった。
そのためにマスクが非常に重要な役割を持つ。
日頃の管理人さんの言葉が頭に浮かびました。
改めてマスクは重要だと感じました。
https://www.youtube.com/watch?v=U6majROGQNM&feature=youtu.be&fbclid=IwAR1anIg-QAUMi_zU8uP27Kk8tux2H-SmbLbnLtwpWoyIuVvVe_zr79R5y3A