2020年03月24日

◆ 夏の五輪よりも冬に備えよ

 夏の五輪のことばかりが話題になっている。だが、夏のことを憂慮するより、冬のことを憂慮するべきだ。

 ──

 (1) 冬の感染地獄

 五輪については、世界中の人が騒いでいる。IOC や安倍首相も延期について議論している。世界の大勢は延期に傾いているので、延期になりそうな雰囲気だ。
  → 東京五輪、1年延期で検討 大会組織委 :日本経済新聞
 ( ※ 延期の期間は、1年や2年や4年など、さまざまな案がある。)

 延期の是非については、前項や別項で論じたので、本項では扱わない。ただ、それとは別に、それにともなう弊害について論じよう。
 前項でも述べたが、延期をすれば、それにともなって弊害が生じる。そいつはとても大きな弊害だ。
  ・ 今夏の被害は最小化する。感染者数は最小だ。
  ・ 今夏に免疫を付けた人が最小なので、来冬の被害は最大化する。死者も最大だ。

 なるほど、延期をすれば、夏の被害を最小化することができる。人々は夏のことしか考えていないので、「夏に被害を最小化すれば、それでいい」と思い込んでいる。
 しかし、夏に被害を最小化すれば、その分、冬の被害は最大化する。夏には患者が少なくて、病院のベッドは空いているだろうが、冬には患者が激増して、病院のベッドは大幅に不足するようになる。(ちょうど今のイタリアのようになる。ほとんど地獄だ。)

 本来ならば、「冬にはイタリアのようにならないこと」を目的として、夏の感染者を増やす(冬の感染者を前倒しする)べきであったのだが、そういう最善の策は取られないことになりそうだ。
 とすれば、「冬の感染者が最大化する」という事態を覚悟して、冬の地獄に備えるべきなのだ。「その地獄は自らが招いたものだ。自らが引き起こしたものだ」と覚悟した上で、その地獄のなかで耐える覚悟をするべきだ。
 冬には、大量の死者が出て、阿鼻叫喚の地獄となりそうだ。そのときになって後悔するのは確実だ。ならば、その後悔の量をなるべく減らすように、今のうちに対処しておくべきなのだ。
 
 ※ 具体策は以下で。


 (2) 軽症者用の施設

 冬には莫大な感染者が発生する。ここで、軽症者がベッドを占めてしまうと、重症者があぶれてしまうので、重症者の死者が激増する。つまり、医療崩壊だ。
 これを避けるには、軽症者を分離することが必要だ。肺炎の治療設備のある高度な施設からは退院してもらって、隔離ができるぐらいの低度な施設に移ってもらうことが必要だ。
 そのためには、軽症者用の施設を大量に用意しておくことが必要だ。

 具体的な候補は、次のようなものだ。
  ・ 五輪の選手村
  ・ 国有の宿泊施設
  ・ 古くなったホテル


 古くなったホテルというと、さびれた地方のホテルが思い浮かぶ。鬼怒川の古いホテルなどだ。これらを一時的に、軽症者用の隔離施設にしてもいいだろう。(同様のことは諸外国でもやり始めている。)

 現状では、「軽症者は自宅隔離」という方針のようだが、これだと、家庭内感染を引き起こしやすい。独身者ならいいかもしれないが、家族持ちには好ましくない。
 ただ、家族持ちの場合は、病人を自宅に残したまま、家族がよそに避難・疎開する、という方法もある。しかしこれだと、軽症者が重症化して死ぬ危険もある。できれば軽症者を収容する専門施設を用意したいところだ。
 そして、そのためには、国が今のうちに施設の整備を始めることが必要だ。「五輪延期」なんてことに騒ぐよりは、「冬の感染爆発に備えて施設を整備すること」の方がずっと重要なのだ。
 

 (3) 医療の人員配置

 冬に感染爆発があると、医療の人員が大幅に不足するという懸念もある。
 そこで、イタリアではどうかを調べてみた。イタリアでは、すでに医療崩壊が起こっていて、医師と看護婦の人材不足が報じられている。そこで、どうなったか?
 21日の時点で約3700人の医師や看護師が新型コロナウイルスに感染。現場を離れなければならなくなり、現場の態勢に影響を与えている。
 政府は20日、感染が集中する同国北部の医療現場を支えるため、300人の医師を緊急募集。発表から24時間という短い受付期間にもかかわらず、全国の医師7923人が応募したという。
( → イタリア、医療現場の叫び 3700人感染「今すぐ人材を」 保護具が不足、再利用 新型コロナ:朝日新聞

 医師不足が起こったのだが、募集すると多数が応募してくれたようだ。300人の募集に、7923人が応募したのだから、大幅に余っている。つまり、人材不足は、全国規模では発生していないようだ。ただし地域的には、人材不足が発生している。(北部地域でばかり不足が発生している。)
 これは、(全体的な)不足というよりは、ただのミスマッチだ。量そのものは十分に足りているのに、配分が下手なせいで、局地的に不足が発生する。(経済学における「ミスマッチ」の典型的な例だ。)
 ここにあるのは、政府の無策だけだ。政府が無策だから、ミスマッチが発生する。
 だが、ここでは、政府を非難するだけでは足りない。政府の無能のせいで、国民の命が奪われるからだ。

 結局、こうだ。
 「政府の無能のせいで、ミスマッチが起こることがある。だから、ミスマッチが起こらないようにするべきだ。そのためには、医療の人員配置を最適化するように、制度を整えるべきだ」
 
 冬になってから「ミスマッチが起こった」と騒ぐより、そうなる前に、医療の人員の最適化ができるように、制度を整備しておくべきなのだ。
 たとえば、東京で感染爆発が起こって、人手不足になる一方で、地方では医者が余っているとしたら、地方から東京へ医者を移すように、制度を整えるべきなのだ。

 ※ 具体的には、移動先の病院を決めるとか、宿舎を用意するとか、給料の支払いを保証するとか、いろいろと制度を整えることが必要だ。冬になってからやるのでは、遅すぎる。


 (4) 夏のイベント

 冬への対策については、上に述べた通り。
 一方、夏への対策は、どうするか? 夏のことというと、五輪のことばかりが話題になるが、五輪以外についてはどうするべきか?

 次の話題がある。
 8月下旬には、24時間テレビが実行される。
  → 日テレ社長、24時間テレビは「必ずやる」 イベント自粛ムードも「やらないといけない使命感」

 これについては、中止の意見は少ない。「そのころには一応収束しているだろう」という予想が多いし、容認論が多い。
  → はてなブックマーク

 しかし、これは奇妙なことだ。8月下旬なら、五輪の時期とほぼ同じだ。むしろ、真夏の五輪に比べて、少し涼しくなる分、感染者は増えそうだ。
 真夏の五輪よりも感染者の増えそうな時期に開催される 24時間テレビを、あえて容認するというのだから、多くの人々の頭は論理が狂っているようだ。


 (5) 夏の規制解除

 もっとも、別の問題もある。「規制をいつまで続けるか」ということだ。
 前々項では、次のように述べた。
 このあと永遠に外出禁止を続けることはできない。一時的に感染の集中を回避することはできるが、このまま永遠に回避し続けることはできない。(やれば餓死する。)
 当面は、「引きこもり状態」で逃げることはできるが、このままの状態を続けることはできない。「出口戦略」が必要なのだ。そのことを考えるべきだ。
( → 新型コロナウイルスの話題 20: Open ブログ

 現状では、都市封鎖(外出禁止)や、入国規制など、さまざまな規制が実施されている。しかし、これは生産活動を停止させるものなのだから、いつまでも続けるわけには行かない。いつかは規制を止める必要がある。
 では、いつ規制を止めるか? 

 (i)夏の前の規制解除
 夏の前に(日本への入国の)規制解除すると、「五輪延期」とは矛盾することになる。
  ・ 五輪の選手と観光客は、入国規制されたのと同じ。(日本に入れない。)
  ・ それ以外の一般観光客は、入国できる。(日本に入れる。)


 これでは、「五輪延期」をしたことの効果がまったくの尻抜けになる。なんのために「五輪延期」をしたのか、わけがわからなくなる。
 「どうせ大量の外国人観光客が来るのなら、五輪延期なんかしなければよかった。馬鹿を見た。おかげで大損だ」
 と地団駄を踏むことになるだろう。

 ま、こうなる可能性は、かなりある。というのは、夏前には新型コロナがほぼ収束している可能性が高いからだ。(というか、最初から収束状態にある、と言える。日本では。……この件は、次項でも説明する。)

 (ii)夏の後の規制解除
 夏の後に(日本への入国の)規制解除すると、最悪の事態となる。解除の時期が、秋であれ、冬であれ、そのころに解除すれば、秋や冬に外国から感染者が大量に流入するので、日本では莫大な感染者が発生することになる。
 どうせなら、夏のうちに大量に流入させておけば、感染者の発生のピークを平準化できたのだが、そうしないので、秋から冬にかけて、とんでもない規模のピークが発生する。(平準化されることなしに。)
 これは、最悪の事態だ。

 まさか、こういう馬鹿げたことはしないだろう、……とは思うが、今の日本人を見ていると、こういう馬鹿げたことを目指しているとしか思い得ない。狂気の沙汰だ。
 冬のことを考えないと、こういうふうに最悪の地獄を目指して進みながら、そのことに気づかないでいるわけだ。レミングの集団自殺のようなものか。

 (iii)規制解除なし
 最後に、「規制解除なし」という案もある。この場合は、一種の鎖国状態となる。日本だけでは成立するかもしれないが、諸外国では規制はきっと解除されるだろう。
 少なくとも「都市封鎖」「外出規制」については、諸外国では解除されるはずだ。(さもなくば国家が崩壊する。)
 それにともなって、入国規制も解除されるだろう。(どうせ国内では蔓延しているのだから、入国規制は意味をなさない、と気づくはずだ。)
 この状況では、日本だけが入国規制をするのも無理っぽいので、「規制解除なし」という方針は取りづらい。
 また、いつまでも「規制解除なし」だと、観光業が壊滅して、大量の失業者が発生する。
 というわけで、「規制解除なし」も駄目だ。

 (iv)推奨策
 あれもこれも駄目だとなると、「ではいったいどうすればいいのか?」という質問が来るだろう。そこで、まともな案を出そう。こうだ。
 「五輪は延期しない。入国規制は、暖かくなった五月ごろに解除する」


 五月ごろに入国規制を解除すると、それ以後は外国人の流入を大量に認める。感染した外国人を通じて、国内で感染者が多発するのも容認する。そのことで、夏の感染者を増やして、冬の感染者を減らす。つまり、ピークの平準化をするわけだ。
 このことは、前項で詳しく述べたとおりだ。
  → 五輪の延期は可能か?: Open ブログ
  → 五輪の延期は最悪だ: Open ブログ

 要するに、五輪の延期なんかをするから、どうにもならない困った状態になるのだ。それというのも、「夏の感染を免れよう」とするせいで、「冬の感染を最大化する」というふうにしてしまうからだ。
 ここでは、「冬の感染を最小化する」というふうに、目的を転換するべきだ。そうすれば、「夏の感染はある程度は甘受するべきだ」というふうに方針を転換することができる。

 こういう合理的な方針をとれるかどうかが、被害の最大化を避けられるかどうかの分かれ目だ。



 【 追記 】 ( 2020-03-25 )
 五輪の1年延期が決まったようだ。
  → 東京五輪・パラ 1年程度延期を合意 安倍首相とIOC会長 | NHKニュース
  → 東京五輪・パラ 1年程度の延期を承認 IOC臨時理事会 | NHKニュース

 しかし、これで1年後に開催されることが決まったわけではない。すでに述べたように、1年後にはもっとひどくなっていて、開催できなくなる危険がある。
 特に、スペインかぜの例では、1年目の夏よりも2年目の夏の方がひどかったのだ。新型コロナもそうなる可能性が十分にある。( ※ なぜかと言えば、2年目の夏の前に、冬の大感染があって、その余波が続くからだ。)
  → 五輪の延期は可能か?: Open ブログ の [ 補足 ]

 1年後に無事開催できる可能性は、かなり低い。とすれば、「1年後の開催に向けて準備しよう」と思うよりは、「1年後に開催できなくなった場合に向けて準備しよう」と思う方がいい。
 私が最もお薦めするのは、こうだ。
 「こんなことなら1年前に開催しておけばよかった。延期をなければよかった……と後悔するための、後悔大会を開く」
 これをもって五輪のかわりの大会とすればいい。五輪は中止。(または翌年に再延期。)

 こうして、冬に備えるだけでなく、来年夏にも備えることができる。 (^^);
posted by 管理人 at 23:35| Comment(4) |  インフルエンザ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2020年03月25日 08:00
 いつも記事をありがとうございます。

 本稿全体の趣旨に関して…、
 2020 or 2021年の東京オリパラよりも、2022年の冬季オリパラのほうが心配ですよね。何しろ開催地が北京…。あと2年を切っているのですから、まさにスペイン風邪のときのような再燃が起こりそうです。中国では、破天荒な横紙破りの策を連発して、何とか数字上は抑え込んだかたちにしているので、湖北はもちろんそれ以外の地域は、抗体を持っていない人民だらけでしょうから。

 約2年後の2022年北京冬季五輪はどうしたらよいでしょうか?
Posted by かわっこだっこ at 2020年03月25日 11:59
> 約2年後の2022年北京冬季五輪はどうしたらよいでしょうか?

 経済活動を全部停止させるわけには行かないんだから、他の経済活動といっしょで、やってもいいでしょう。五輪だけを特別視する理由はない。

 五輪だけやめて、他のイベントは全部やり放題となったら、物笑いのタネだ。

 まあ、人類はコロナと共存するしかない。「コロナを撲滅するまで活動停止する」というふうにしたら、餓死するしかない。
Posted by 管理人 at 2020年03月25日 12:42
> 経済活動を全部停止させるわけには行かないんだから、他の経済活動といっしょで、やってもいいでしょう。五輪だけを特別視する理由はない。

 ⇒ 私は五輪にはあまり価値を感じませんが、管理人さんと同じく、他の経済活動を全部停止させて五輪だけを開催する、などとは思っていません。

 2022年の冬季に予定どおり開催するにしても、あの中国の人口マスと広大な国土で、「冬の感染を最小化する」、いっぽう「夏の感染はある程度甘受する」という方策が効果的に実現するのかな、と。一帯一路政策で、中東やアフリカとの関わりもあることですし。
Posted by かわっこだっこ at 2020年03月25日 13:01
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ